東方夢幻魂歌 完結   作:ラギアz

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エピローグ
エピローグ「虹」


「妖夢、悪い事は言わない。だからもうお酒は止めるんだ!泥酔してんじゃねえか!!」

 

「酔ってない!」

 

紫も和解し、黄昏もどっかの監獄へ送り。

長い長い夜も終わり、やっと休める・・・そう思えたのも一瞬だった。

どうやらこの幻想郷では異変の後は誰彼構わず呼んで宴会!という暗黙のルールがあるらしく。

そう。もう察してくれ。

 

夜明けの六時ごろから、人を呼んで七時ーーー

宴会の準備が終わったのは八時、さあ乾杯で今は夕方の四時ーーー

 

「八時間も飲み続けてるじゃねえか!?流石に水呑め!!」

「むうー?師匠に逆らう気ですかぁ~?」

 

「・・・ほら、危ないから刀地面に置いて。」

「地面なんてなぁいれぇすよぉ~」

 

顔を赤らめて呂律が回らなくなり、ふにゃふにゃしている妖夢の破壊力は確かに抜群だ。

でも、それ以上に抜身の刃を扱っている妖夢が怖かった。可愛いけど。

 

「・・・床?床に置いて。」

「ふぁ~い」

 

博麗神社の中、襖を取っ払って大きい机を幾つも並べ、夕日の明りと静かに燃える蝋燭の明りだけで霊夢達はお酒を楽しんでいた。

そんな中、お酒が飲めない俺は色んな人に絡まれている。皆独特だ。

 

「・・・あら、真。お酒に酔ってる女の子を介抱して色んな事をするつもりなの?」

「咲夜さん!?そんな事しませんからね!?」

「冗談よ。私を置いておいたら・・・許さないからね?」

「はい(迫真)勿論です(無)」

 

ワインを傾けている咲夜さんも頬を朱色に染め、いつもきっちりと留めているメイド服のボタンを何個か外していた。正直目のやり場に困る。かといって妖夢の方に向くと視線が突然ナイフに代わるのは実証済みだ。

 

「・・・あら、真お酒飲んでないの?」

「おいおい、今回の異変の主人公が何でのんでないんだ。ちまちまおつまみ摘まんでるだけじゃつまらないぜ?」

 

「・・・えっと、霊夢と魔理沙って未成年だよね?」

 

「「ここでは関係ないのよ(ぜ)」」

 

「えー・・・うっそー・・・」

 

日本酒だろうか、木の升を片手に持ち巫女服を緩めた霊夢、帽子を外し霊夢の肩に捕まっている魔理沙が俺の前に立ちはだかった。魔理沙の左手には明らかに度数の高いお酒が握られており、かと思えば霊夢の右手には魔理沙のらしきお酒の器がある。

 

「・・・ナニヲスルノ?」

「飲ませるの♪」

 

思わず片言になった俺に霊夢は優しい笑み(悪魔の笑み)を向け、すっと身を引いた。

 

「ふっふっふ、逃がしましぇんよ~。師匠を馬鹿にした罰です」

「真がお酒に酔ってくれたら私の事を襲ってくれるかしら?」

 

・・・瞬間、ガシっと咲夜さんと妖夢に両腕を掴まれる。

幸いと言うべきか無いので、頬のすぐ近くに在る顔さえ耐えれば特には焦らない。

 

「ねえ今失礼な事考えた?」

 

咲夜さんのエスパーには度々驚かされるが。

 

「・・・え?真面目に来るの?飲ませちゃうの?」

「大丈夫だ、アルコール13%程度だぜ」

 

「大丈夫じゃないよ!!たっけえよ!!」

 

しかし、そんな俺の叫びも聞き入れられることは無かった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「あったま痛い・・・」

 

お酒を飲まされ、全てを噴き出した後直後に、俺は博麗神社の外へ出て来ていた。

まだ冬の名残か肌寒く、その吹き付ける冷たい風が今の俺に丁度良かった。

 

そのまま長い長い階段の天辺に腰かけ、長いため息を吐く。

視線を上げれば広大な自然が広がり、茜色の夕日が空と言うキャンパスに色を塗りたくっていた。

 

するとストン、と言う音と共に視界の端で赤いマフラーが風にたなびき、金色の簪が目に映る。

 

「・・・暁。どうしたの?」

「お酒・・・飲まされかけたから・・・アルコール燃やして飛ばして出て来た・・・」

 

顔を青ざめながらぽつり、ぽつりと暁は呟く。

明らかに苦労してきたことが分かるような雰囲気を纏いながら、彼女は俺と同じように夕日を見つめた。

 

「色々、あった、ね。」

「うん・・・最初は敵だったのになー」

 

「むう・・・いじわる」

「ごめんごめん。」

 

小さく暁は呟き、俺はそれに茶化すように答えた。

 

 

本当に、幻想郷に来てから今までいろんな事があった。

全部が全部いい思い出ってわけでは無いけど、全てが宝物だ。

折れてしまった村正を引き抜き、暁はまた悲し気に口を開く。

 

「・・・昔は、夜が怖かった。暗くて、何も見えなくて。怖くて眠れなかった時が良く在って・・・それでね、眠たい時に見る朝日が凄く好きだったの。今もそう、なんだけど」

 

流石にもう眠れない事は無いよ?

 

と暁は笑い、そして強く続けた。

 

「真が来てくれてから、真と会ってから。・・・朝日がもっと好きになったの。何かね、太陽が真みたいに見えるの。ずっと照らしてくれて、助けてくれて。いつでも傍に居てくれて、周りを見渡したらすぐいる・・・って。」

 

 

村正を納刀し、暁は立ち上がった。

俺の前でくるりと一回転し、夕日を背に彼女は満面の笑顔を咲かせる。

 

「ありがとう。真。私はいつでも前を向いて歩くよ!」

 

頬を赤く染め、彼女は言い切った。

 

 

「・・・ありがとうね、暁。俺も頑張るよ。」

 

俺もしっかりと答え、微笑む。

少し油断すれば涙が出てきそうだ。

夕日は彼女だけを照らし、世界が暁のステージになった様だった。

 

もう一度笑った暁はそのまま博麗神社の中へ駆け戻り、事情を知りその上で友達になった霊夢達の所へと駆け寄って行った。

 

一回目元を拭い、俺は息を大きく吐く。

 

もう、酔いは醒めた。

 

立ち上がり、夕日に包まれている美しい幻想郷を脳裏にしっかりと焼き付ける。

忘れない様に。

幻想なんかに、しない様に。

 

「・・・紫。」

 

俺は誰に言うでも無く、虚空に向かって呟いた。

すると突然背後に紫が現れ、いつも通りに扇子を広げ立っている。

 

「・・・綺麗ね。都会じゃ見れないんじゃないかしら?」

「うん。こんな景色は生まれて初めて見た。」

 

すっと俺の横に並び、紫は遠くを眺める。

山脈が夕日を隠し、藍色の大空が段々と広がり始めていた。

 

「・・・ここに俺が来たのは、偶然なのか?」

「そうね。まだ異変が始まって無かったものね・・・隔の魂を取ったのは私達だけど、貴方が来たのは偶然よ。偶然出来た結界の割れ目に、偶然入ったのが貴方。天音真。」

 

「そうか。・・・でもまあ、これて良かった。」

「そう言ってくれると嬉しいわね。隙間を開けっぱなしにした甲斐があったわよ。」

 

「落ちたのは偶然。開いてたのは必然、か?」

「それもまた運命って奴よ。」

 

突如、紫が扇子を閉じた。

声音が少し低くなり、投げかけられたのは一つの質問ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・もう、帰るのね?」

 

 

 

 

 

 

 

俺は、決めていた答えを出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ。・・・もう幻夢は妖怪の山の山頂に帰ったしな。」

 

「ふうん。あの子は何て?」

 

「えっと・・・『頑張るんだよ!私はいつでもここに居るからね!!』だってさ。」

 

「短いわね・・・あの子らしい。」

 

「泣いてたのは見ないふりした。」

 

「真も泣いてたでしょ。」

 

「まあ・・・お世話になった。母さんの居ない俺にとって、母さんだ!て思える人だったからさ。」

 

「もう、来れないわよ?」

 

「・・・覚悟の上だ。」

 

「そう。・・・じゃあ、病院の手前で良いわね?」

 

「頼む。」

 

夕日は山陰に隠れ、隣に立って居る紫の顔もぼんやりと見える程度になった。

紫が指を鳴らし、俺の背後に隙間を生成する。

 

「・・・ありがとう。それじゃあね、真。」

「ああ。さよなら、紫。」

 

 

 

 

そして、飛び込む寸前。

 

 

「頑張ってくらさいねー!」

 

博麗神社の中から聞こえた一つの声、振られている手。

師匠は俺の旅立ちを知っていたらしい。

 

「・・・じゃあな!皆!!」

 

大声で返した俺は、意を決し隙間に飛び込んだ。

目の前に広がる永遠の暗闇。次元の隙間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・さよなら、幻想郷」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

耳に入る車の排気音、鼻に着く排気ガス。

真っ赤に燃える様な夕空、目の前にそびえ立つ白い病院。

 

俺は一心不乱に駆け出し、病院の自動ドアを潜り抜け、階段を一個飛ばしで駆け上った。

 

最上階。

 

奥の病室に俺は全力で向かい、付いた途端そのドアを大きく開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ただいま、真。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白いベッドの上で、すっかり黒い髪を肩まで伸び、痩せた少女ーーーー

 

 

魂魄隔は柔らかく微笑んだ。

 

窓の外には茜色の夕空が広がり。

 

 

 

「・・・おかえり。・・・隔。」

 

 

 

 

 

大きな大きな、虹の橋が架かっていたーーーーーーーーーー

 

 

幻想は終わらない。

 

 

全てが始まり。繋がっている。

 

夢や幻は、何時でもそこに在り続ける。

 

人が忘れ、霞んだものでも。

 

希望も絶望も、夢想も奇想も。

 

だからこそ、彼は歩み続けた。

 

 

ちっぽけな掌で、ちっぽけな希望を掴んで。

 

 

 

 

 

 

少年と少女は。

 

 

 

 

 

 

今、夢を叶えた。

 

 

 

 

 

 

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