・・・・・しかし、いつまで経っても衝撃は来ない。
明らかに振り下ろされた拳。
鈍い音。
暴風と勘違いするような風が吹き荒れ、俺の体を撫でた。
眼を閉じていても、そのエネルギーはひしひしと伝わって来ていた。
俺はゆっくりと、眼を開く。
拳の、圧倒的エネルギーの残響。
そして、舞う鮮血、流れる青い、青い、髪。
”器”よりも小さい体は。
全力の拳を、その身に受けていた。
俺を、護る様に。
傷だらけの体を、気にもしない様に。
「・・・テン、シ・・・!?」
俺が声を漏らすと、天子が後ろに倒れ込んだ。
その体を支え、自身の膝に頭を乗せる。
「・・・気づいてた?真。貴方ね、」
「私を殴った時、霊力使って無かったんだよ?」
天子は嬉しそうに笑う。
こんな時に、こんな状況で。
「へへ、こんな時になんなんだけどね、嬉しかった。あんな風に言ってても、やっぱり、優しいんだなって。痛かったけどね。死には、しなかった!」
天子は俺の頬に手を触れ、微笑む。
「真も。・・・死なないで。私は・・・これ、くらい、しか。」
大きな紅い瞳から大粒の滴が零れる。
唇を噛みしめながら、その涙を手で拭う。
それでも、彼女は微笑む。
「出来ないからさ・・・!・・・ごめん。ごめんね。・・・頑張っ、て、ね?」
俺の頬に触れていた手が、地面に落ちる。
少し跳ねた手は、地面に触れた途端動かなくなる。
天子の眼が閉じられ、体から力が抜ける。
腕にかかる重みが強くなり、視界から色が無くなる。
白一色の世界。コマ送りのように過ぎゆく時は、非情にも戻る事は無い。
・・・ふざけんな。
頭の中、奥の方から”器”の声が聞こえる。
そんな。目覚めるはずは無い・・・!
・・・邪魔、なんだよ。
五月蝿い!お前より俺の方が強いじゃないか!
・・・人一人護れないのに、強いとか何もねえだろう。
返せ。返せよ。
俺は。俺は・・・・!
五月蝿い、ウルサイウルサイウルサイーーーーー
「ウウウウウウああああああああああああ!!!」
俺は、天音 真だーーーーーーーーーーーー!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
呑み込まれて、意識が消えた。
目覚めたのは、天子が俺の前に立ちはだかった時だった。
その間、何が起きたのかも。何をしたのかも覚えていない。
ただ一つ。 天子を俺が護れなかった。
これが、事実だ。
自分自身が、許せない。
俺の眼は、大空の様に。
一点の曇りも無く、ただただ蒼い。
燻る火種の様に、燃え上がろうとしている力、魂を。
俺は、解き放った。
「バーーーーーーストオオオオオオオオオ!!」
溢れ出た霊力が、蒼き焔の様に揺らめく。
出力、7%。
限界。
体から雷の様に、霊力が飛び散る。
それを感じながら、俺は姿勢を低くする。
そして、加速。
弾丸の様に気の懐に潜りこんだ俺は、右手をしならせる。
蒼い奔流が渦を巻き、右手を光らせ。
俺は、全力で振りぬいた。
「霊刀!![羅刹]!!」
柄20cm、刃が1mの蒼く光る両刃刀は軌跡を残しながら、気の腹を切り裂いた。
そのまま、俺は右腕に異常な量の霊力を流し始める。
溢れ出る霊力が更に大きく、更に揺らめき、右腕が閃光を放つ。
・・・・これで、終わらせる。
右の拳を気に当て、俺は激痛を無視しながら更に霊力を流した。
「スーパー、ノヴァァァァァァァ!!!!」
辺り一帯を白い光が包み込み、異常なエネルギーに気は目を見開いた。