『いい加減、やる気を出してくれないか?』
唐突に響く声
「クリム叔父さん……俺のこと知ってるだろ?俺は何もできない。守れない……」
俺はソファーに寝転びながらそう答える。
『ああ、知っている。だが君が人一倍努力できるのも私は知っている。そして何よりも君はその守れない君自身に腹を立てているのを私は知っている』
図星だった
「だからどうなんだよ……腹を立てたって泣いたって怒りで、涙で人を救えるわけがない……」
『君はエンジンのかけ方がわからないだ「そうやってエンジンのかけ方がわからなかったからって母さんと父さんが死んだ事を片付ける気かよっ⁈」
『すまない……少々迂闊な発言だったな。だがこれだけは覚えていてほしい。君は超人だ。君は家族を救えなかったかもしれない。だが家族以外の人も君が戦えば救えるという事を……』
「それ、何十回と聞いたよ……ごめん。クリム叔父さん少し外に出てくる」
俺は旧ドライブピットから出た。
空気を吸うと言ってもただぼーっと公園のベンチに座りミルクキャンデーを舐めるだけだ。
目の前には子供達が遊んでいる。
唐突にクリム叔父さんの言葉が胸を締め付ける。
俺のお祖父ちゃんはクリム叔父さんの相棒で今じゃあ歴史の教科書に載ってる伝説のヒーロー、仮面ライダードライブだったんだ。まあお祖父ちゃんは寿命で死んじゃったけどね。まあ伝説のヒーローの孫って言ってもみんながみんな仮面ライダーを覚えているわけじゃなくて今じゃあテレビでやっている巨大ヒーローの方が人気だ。
昔は仮面ライダードライブの人形なんてのも売ってたらしいが今の子供たちの手にはアルティメットマンとよばれる巨大ヒーローのソフビ人形が握られていた。
「そりゃあ仕方ないか、もう60、70年ぐらい前の話だもんな。グローバルフリーズも……機械生命体特殊犯罪なんてのも………当時はすごい盛り上がり?というか誰でも知っている常識だったらしいけど今じゃ機械生命体、ロイミュードも撲滅され仮面ライダーも封印され人々の記憶からも薄れていってしまったしあんな奴もいたな〜程度だからな……」
父さんの時はドライブの息子だって大変だったらしいけど……
俺の時はそんな事はなかった。まあそれよりもノイズっていう化け物が増えて人を襲ってるってのほうが認知度は高かった。当たり前だが、
父さん………母さん………
俺の所為で………
父さんと母さんはいつも優しかった……なのに…俺はっ‼︎
父さんが死ななければ母さんも死ぬ事はなかった………俺の所為なのに……クリム叔父さんは責めてすらくれない……あの時、父さんと母さんが炭化していくのを黙って見ている事しかできなかった自分を今でも呪い殺してやりたい……
そう感情が高ぶると手に冷たい感覚が走る。
どうやらペットボトルを握りつぶしていたようだ。せっかく買ったのにな、と見ていると頬になにか冷たい物を当てられるのを感じた。
「冷たっ⁈」
「ハハっ!ホラ、コレやるから元気だしな。アンタの強張った顔じゃあその整った顔も台無しだぜ」
ベンチの後ろには赤い髪の毛の少女がいた。
「隣いいか?」
「ああ……」
赤い少女は俺の座っているベンチに座る。まあ俺は少し端に避けたが、
「ほら、もっと嬉しそうにしろよな。こんなに可愛い女の子がジュース持って隣に座ってんだからさ」
自分で可愛いって……確かにその通りなんだがな……その……うん、なんでもない。
ただ、彼女の言葉で俺が思うのは
「そうだな………嬉しそうに………か……俺にそんな資格あるのかな……」
家族を見殺しにした俺にそんな資格はない。笑顔など…………
「はぁ?何言ってんだ?嬉しいとか楽しむのに資格なんていらないだろう?お前翼に似てるな」
「翼?」
「いや、アタシの相棒さ。まあ今は楽しめよ。アンタが楽しまないとアタシも楽しめないからさ」
「楽しむ……か」
「ホラッ!」
「グッ!離せっ!何すんだよ」
彼女は俺の頬をつまんで引き延ばす。摘まれたところはヒリヒリとし俺は頬を摩る。
「何っていつまでも笑わないから顔のマッサージでもしてやろうかと思って」
「余計なお世話だ。笑わないのは家系だ」
お婆ちゃんも普段は笑わない人だったし……うん。俺もきっとそうなんだよ……
「ふーん、でもお前の目、スッゲェ辛そうだぞ……それじゃあ、いつか壊れちまいそうだ。どうだ?アタシだったら相談とか聞いてやるけど?」
相談か………ノイズのこと、何もできなかったことを話すのか?
「まあ、急に変だよな。話したかったら話してくれ、それまでは突然だけどよアタシのつまらない話でも聞いてくれ」
そういうと彼女は自分の事を話し始めた。
家族が全員ノイズに襲われた事、ノイズに復讐するために必死に努力した事、守りたいものができた事、そして誰かのために何かできるか知った事
「君もノイズに家族を……」
「アンタもか、まあそんな感じだと思ったよ」
「それで、俺に声をかけたのか?」
「いいや?まあ声を掛けたのは3時間ぐらいずっとそこに座ったまま寝もせずにずっと座ってるだけだったから好奇心ってやつ?」
どうやら変人だと思われて声をかけられたらしい……まあそんな事はどうでもいい。
「俺は目の前で家族が、母さんと父さんが炭化していくところを黙って見ているしかなかった………それが何よりも許せなかった…足がすくんだ自分に、ビビって腰を抜かした自分、何よりも絶望した自分に………でもわかってたんだ。俺じゃあノイズに勝てないって、今のままじゃあ……」
右手に力が入り手のひらに爪が食い込む。
「でも、それってこれから同じ事を繰り返したくないって事じゃねぇのかな?後悔したならそれをしないように前に進む。アタシはそうする」
彼女は俺の右手の拳を開いて握る
「もし一人でダメならアタシがついてやる。まあアタシも忙しいからちょっとだけどな?アンタと話してみて楽しかったし……」
楽しかったのか?自分の辛い過去を話して俺はなんか心に溜め込んだものを吐き出せたけど……
「アタシも溜めてたもの吐いたからな……おっと時間だ。翼に怒られんなぁ〜じゃあな。また会おうぜ」
「お、おい!」
「次も公園でな!」
そう言って彼女は走っていってしまった。
結局、名前も聞けなかったし離せなかったな
ジュースどうしよ…男が奢ってもらってるって状況はさすがに………というか恥ずかし……………
一気にジュースを飲み干し後ろにはペットボトルを投げる。もちろんペットボトルはゴミ箱に入った……………筈
まあ、俺ももう少し頑張ってみますか。次会った時に面白い話ができるように……
奏は好きだからでいいでしょうかね。強引なのは御都合主義
全て蛮野天十郎って奴の仕業なんだぜ?って事でお願いします