ウィッチーズは全く出てきません。
雲一つ無い青く澄みきった空の中、幾筋もの白線が真っ直ぐに描かれてゆく。
その先頭を爆音をたてながら飛行している影…青空には適していない……むしろ空では目立つ森林迷彩に包まれたその機体には白縁の日の丸が数ヶ所に施されており、日本の空自にそれが所属していることが誰にでもわかるようになっていた……が、
そんな考えはこの世界では全く通用しない別次元のものだった。
(ホントいったい何なんだあいつらは……さっきからずっと追いかけ回して来てるし……あぁもうあの
左フットペダルを踏みつつ操縦桿を左へ傾け機体を左へやったりその逆をやったりするが後ろの連中はピッタリくっついてくる。幸い機銃を撃ってきたりミサイルのレーダー照射のアラートも鳴らないのでまだただの追いかけっこだ。
僕は徐に置いている左手を見つめ……前方に意識を戻し集中させると
「これなら……追い付けまい……!」
そう呟いてエンジンのスロットル・レバーをMILの位置からMAXまでゆっくりと押し進めアフターバーナーた。
……時を遡ること数日前……
(……ん?……あれ?夢……?)
何があったか知らないが…ふと気がつくと何処かわからないが和風な屋敷の縁側に座っていた……ちゃんと温かいお茶が入った湯飲みを持った状態で。
日の光と鳥の鳴き声……植物の匂いや温かい風が心地良い……
(…………でも何故に?……てか此処何処……?)
「あら、珍しいですね。こんな所にお客さんが来るなんて。」
いきなり後ろから声が聞こえビックリしたので後ろに振り向けば其処に居たのは綺麗な黒髪をした割烹着姿の女性が湯飲みを載せたお盆を持って立っていた。
「ど、どうも…こんにちは……」(うわぁ……状況が全く理解できないや……)
「ふふふ、こんにちは。あ、少し待っててくださいね。」
「あ、はい。」
そして彼女は微笑んだ後僕からは襖によって見えない部屋の奥へと消えていった。
(………あの人誰だ?……夢にしては随分と意識とかハッキリしているし体の感覚もある……)
現実とは到底かけ離れた非現実的な状況に現在陥っているわけだが……もしこれが夢だったとしたら?
……どうしようもない。僕には為す術が全く無い状態であり、場に流されていくしかないと思える。
今まで夢の中で「あ、これ夢だ」と自覚できた経験は1度のみであり、その時は自分に起きろと割りと強く念じたのだが……何も起こらなかったことが強く印象に残っていた。
これから何が起こるかだなんて生憎見当がつかないためか急に頭の中が不安と恐怖で一杯になってゆくのが自分でも感じた……そんな不安で仕方ない僕の頬を冷や汗がダラダラと伝っていき…顎に到達しようというちょうどその時彼女が戻ってきた。
「お待たせ致しました。申し訳ありませんがこちらについて来てもらっても?」
「は、はい。」
そう立ち上がろうとして気がついた。なんで俺甚平着ているんだ?まぁよく寝るときは着てたから慣れてるけど……気を取り直して立ち上がり、湯飲みもちゃんと持って彼女の後をついていく。
四部屋分ほど移動した先に居たのは……布団で寝ている様子の御爺さんだった。
(おぉ…テンプレな神様みたい……)
その老人は頭髪は残っておらず、それとは逆に眉と口周りが伸び放題でシワが至るところにあるというありきたりな神様のイメージをそのまんま具現化したかのような外見だ。
「テンプレかは知らんがわしはれっきとした神じゃよ?」
「………へ?」
「ところで唐突なんじゃがお主アニメの世界で戦ってみたいと思わんか?」
「………へ?」
神を名乗るその人は仰向けの体勢から少しこちらへ頭をずらして顔を向けてくる……けど目が眉毛に隠れて表情が一切見ることができない。
「きえぇぇぇいぃぃぃぃ!」
「っっ!?!?!?」
そしていきなり布団から荒ぶる鷹のポーズで高く飛び上がったと思ったら…
「ぐえぇっ!?」ゴンッ!!
案の定低い天井に頭を強打し床にある布団にまた頭からダイブ……八つ墓村にでてきそうな体勢で固まっている。なんか…このじいさんの行動はなにかと俺の心臓に悪いな……
「だ、大丈夫です…か……?」
声をかけるとその人は起き上がり
「ふぇ……ふぇっふぇっふぇ…だ、大丈夫じゃよ……グハッ」
(だ、大丈夫なんだよ…ね?青い顔して血反吐吐いてるけど本人大丈夫って言ってるから大丈夫…なんだよね?…あ、また倒れた……)
「フフフフ♪」
隣で彼女笑ってるから大丈夫なの…かもしれない。
「お主っ!」
「はっ、はいっ!」ビクッ!
「少々時間をわしにくれぬか…?」
「え、えぇ………」
~二、三分ほどしてから~
とりあえず二人で向かい合った状態で落ち着いた……お茶と和菓子を楽しみつつ。
「ほっほっほ、なにやら最近此所に来る客が多いのでの。ちーっとばかしテンションが上がって…。」
「多い…?他にもここに来た人が?」
「そうじゃよ?それにしてもお主……小心じゃのう~。」
「まぁ…そうですかね?」
「うむ。前回来た者はわしの娘のことを鼻の下を完っ全に伸ばし切ってガン見しておったぞ?全く包み隠さずにな」
「へ、へぇ…度胸あるんですかね…」
ちなみにその娘さん(彼女)は先程違う部屋へと行ってしまっていた。
ズズッ「…ふぅ。その前の者は俗にいう[オタク]というやつなのじゃろう。ここに現れたかと思ったらいきなり[おい!じじい!さっさとチート寄越して転生させろ!]なんて言っておった。そんなに自分が特別な存在になりたかったのかのぅ…」
「初対面の人に対していきなりじじいですか…かなり失礼な人だったんですね。その人は…その後どうなったんですか?」
「知りたいかの?」
「は…い…」
「知っても後悔しないか?」
「…やっぱり止めておきます…」
「嘘じゃよ嘘、そんなに怯えなさんな。まぁ…結果からしていうと其奴はの…すぐ死によったよ」
「仲間とかに殺されました?」
「ほう!よくわかったの?確かに其奴は相手を武力で押さえつけてやりたい放題だったのでな、仲間に夜中…寝首をかかれて死によったわい」
「うわぁ……」
「さて、話を戻すが……」
そう言って神様から少し真剣な雰囲気が漂い始めた。
「お主、もう一度人生をやり直してみたくはないかのぅ?但し違う世界で」
(ん?
「らしいの。本来この屋敷は何らかの事があって肉体から離れた魂しか来ることはできんのじゃが…まぁようするに[あの世]じゃな。原因はわからぬがお主は死んだのかもしれぬ…まぁ珍しい幽体離脱ともみてとれるんだがのぅ……」
「まじでか……」ボソッ
「おう、マジじゃよマジ。本気と書いてマジと読むくらいにマジじゃよ」
(なんか凄い親しみやすい神だなぁ)
「ほっほ、ありがとう…ところでお主行きたい世界はあるかの?アニメでも小説でもゲームでもOKじゃ」
「んん~……行きたい世界は……特に無いです…………でも!」
「でも? なんじゃ?」
「戦闘機に乗りたいです!」
「ほっほー男の子じゃのおぅー」
「か……可能ですか?」
「そんなの軽ーくばっちぐーじゃよ」
そう言いながら彼は湯飲み片手にOKサインをしてくれた。
「ほ、ホントですか!?ありがとうございます!」
「じゃがどういうのがいいのかわからんからとりあえず、(ポンッ)これにまとめてみてくれぃ」
そう言い指パッチンで出てきたメモ帳と鉛筆を受け取り箇条書きに書いていく。
・機体は日本の[F-1支援戦闘機]
・急旋回で壊れたりしない
・武装、電源、酸素、燃料無限
・整備不要、修復機能
・身体にかかるGを軽減
・食事の必要無し
・風呂、トイレに行かなくてすむ
ここまでチート(エースコンバット状態)だと拒否されるところがあるかもしれないがそこは無いと願うしかない。目の前に神がいるから何に願えばいいのかわからないが……。そして神に書いた紙を手渡す
「どれどれ……うむ、全部OKじゃな」
「え?そんな数のチート良いんですか?」
「いいんじゃよ。それにな、最初からお主の心をみとるのじゃがこれといって悪い部分などは見当たらん。よってお主ならちゃんとした使い方ができるであろうと考えた…結果よしとするかの」
「あ、ありがとうございます……」
「にしてもお主不死身にしてほしいとか言わないんじゃな?あとイケメンに~とかハーレムに~というやつが今までにいたんじゃが……」
(イケメン?ハーレム?もう恋愛は諦めた俺にそんなものが必要とでも?そんなことに願いを使うなら俺は戦闘機につぎ込むね!)
「お、おう…お主…少し寂しいのう……」
「そうですか?至って普通ですよ?僕の高校では」
「それはそれで悲しい高校じゃのう……」
(そうかな?工業だと女子がいないから気が楽だったしけっこう楽しかったけど……まぁ欠点は┏(┏^р^)┓←これくらいかな……)
「わ、わしは嫌じゃな……まぁそれはさておきお主の願いはこの内容でいいんじゃな?」
「ハイ!」
「それでは叶えるぞ……その願い。準備がよければ目を閉じよ」
「お願いします」
そして俺は両目を瞑った。
…ごめんなさい疑問点があっても何も言わないで…