「ふーっ……こんなもんか」
基地に帰投後の機体清掃。外部に付いたゴミやすす、機銃の発射カスなどを入念に清掃していく。
雑巾をバケツに入れ、瞬く間に水が黒くなっていくのを目にしながらこれからの事について考える。
ネウロイは何処から来るのか、何が目的なのか。まるでSF映画だなと思いながら手を動かしていく。
……ちなみに今はエンジンも電源もOFFになっている。
一応空気取り入れ口には網のカバーが掛けられているが、もしもフィンが回っている時に近づこうものならAV-8BハリアーⅡの事故寸前の映像のようになってしまう。
……まぁあの吸い込まれた人は偶然衣服の金具が空気取入口の縁に引っかかったからいいのだが。
ヴィルケ中佐曰く、なんでもハルトマン中尉が妹さんに水面下でエアーを送る機材の設計を頼んでくれていたという。以前、ハルトマン中尉にエンジン始動を頼んだ際に、自分が今代わりにやっている仕事を本来はどういった仕組みの機材が行うのか聞かれたので説明した事があった。どうやら中尉はその後説明した内容をご自分の妹さんに頼んでくれていたようで、あと一週間程で試作の機材がこちらに届く予定との事。
この世界の人達の作業はいくらなんでも早すぎる。そう思わざるを得ない報告だった。
「さて……」
額に浮き出た汗を拭うと、雑巾とバケツの後片付けを済ませる。
遠くから聞こえるウィッチ隊のエンジン音と発砲音が俺を空へと誘うが、生憎エンジンを唯一始動させられる中尉も居ない為に俺には今飛ぶ事はできない。これじゃほとんどただの一般人だ。
それからというもの場所は変わって武器保管庫。
そこではウィッチ隊の使用する為の火器の整備を行っていた。坂本少佐の刀の様に自分の武器は自分で整備する人もいるが、ここでは殆どが彼等整備兵によって行われていた。
自分の命を預ける物だから……とも思ったが、軽機関銃などの小火器(?)に至っては弾切れと同時にウィッチ達には投棄されてしまう事が多いので俺からは何も言わなかった。
室内に立ち篭める金属と油の重い匂い。工場から納品されたばかりなのであろう木箱が大量に積まれており、壁際には何時でも持ち出せるように銃の類が立て掛けられていた。
何故ここへ来たのか?
答えは簡単、暇だったからである。
何故なら此処で行われる作業でどんな素人でも出来る(かもしれない)作業がある。それは実包への油の塗布と弾倉などへの装弾だったりする。
ウィッチ隊は多国籍なのでそれぞれで違う銃を使う為、それに合わせて弾薬の種類も変わってくるので装填が面倒臭いのが彼等の最近聞いた愚痴だった。
まぁそれでウィッチ達の実力が引き出されるならばと無理やり納得した様子だったが。
紙箱に入れられた実包を取り出すと油の付いた布で軽く拭き、箱型弾倉へと入れていく。
最初は手で入れ、途中からは専用の装弾器を使って込めていくのだが……これが微妙に固く力が必要となる作業となった。
微かな呼吸と金属の擦れ合う音が淡々と流れる中で進む作業。こういった作業に耐えられないという人もいるだろうが、俺はむしろ好きな部類だ。
(でかいなぁ……13mmって)
この基地で使われる銃は対ネウロイ戦を想定したものなので一部の使用弾薬がやたらデカイ。ルッキーニ少尉やイェーガー大尉のように7.62mm弾を使う人もいる程ネウロイの装甲はそこまで硬くないらしく、過去に拳銃弾での撃墜記録もあるらしい。……やっぱウィッチは化け物レベルで強いようだ。
「お?ハジメじゃんか」
不意に出入口から掛けられる声。別の場所に飛んでいた意識は
「あ、どうも。オースティンさん」
「弾込めてんのかよ……飽きるだろ、それ」
「そうですかね?ところでここへは何をしに?」
「ああ。ちとストレス発散にな」
そう言って手に取ったのは棚に立て掛けてあったMG34。ウィッチ隊ではMG42に更新されたとのことで、これはその在庫……つまりお下がりだそうだ。
「おめーも自分の好きな銃持って来て一緒に撃たねぇか?」
「じゃあ……」
残り数発だった弾帯にモーゼル弾を込め、ドラムに詰めて蓋をする。それを所定の場所に置くと、銃を取るべくF-1が置かれている格納庫へと向かった。
場所は変わって屋外の射撃場。自分達の他にも何人か射撃を行う人もおり、どうやらネウロイが基地を襲撃してきた際には普段整備に明け暮れている男性陣も銃を手に交戦するらしい。航空自衛隊の「最低でも〇〇発は年内で撃っとけ」のようなものかと勝手に納得した。
「お前……随分と持ってきたな……」
「これで全部です」
俺の押す台車には64式小銃、MINIMI、9mm機関けん銃、9mm拳銃が乗せられていた。
「知らない銃ばっかだな……つってもあんな戦闘機に積まれてたんだから当たり前っちゃ当たり前か」
「まぁもしかしたらこの世界の未来でも作られるかもしれないですね」
「未来ねぇ……」
そう呟きながら9mm拳銃を手に取るオースティン。
「もし未来ではネウロイが居なくなっていたとしたら……俺達軍人はどうなるんだろうな」
「…………」
どう答えるべきかわからなかった。確かにこの世界の人々はネウロイという共通の敵を前にして結託している。
……その共通の敵が居なくなったら?
今度は人間同士で殺し合うのだろうか?前の世界では主に土地が云々で戦争をしていたように思えるが、それはこの世界でも同じだろう。何処までがこの国で何処までがあの国。そんな問題も今はネウロイに土地を奪われているから後回しなだけであって、いざ土地を取り返せば今度はその土地を巡った争いにでもなるのではなかろうか。
それまで人類の為に一緒に戦ってきた戦友達が今度は国の為に敵になる?そんな事はありえるのだろうか?政府の人間にはどうとでも言えるがそれry
「いだぁあ"!?」
脳天に走る鈍痛。その衝撃は明らかに鈍器で殴られたことによるものだった。
「……ったく、急に黙り込みやがって。考え事とかは後にしろ!後に!」
(オースティンさん……なにもMG34の銃身で殴る事は無いでしょうが……)
鉄帽でもしておけば良かった。
ダン! ダダダダン!
絶えず繰り返される数種類の破裂音とカラカラ跳ね回る空薬莢。燃えた火薬の臭いが鼻を刺す中で、俺は立射体勢で64式の引金を引いていた。
ものの数秒で空になる弾倉。もう一つの弾倉も先程までは空だったのだが、取り替える頃には既に実包が装填されていた。
節約とは言っていた自衛隊とは程遠く、遠慮も無しに俺は引金を引き続けていく。
ちなみに標的となる的の形状は四角や丸形をしており、ネウロイの核を模した赤く塗られた小さな部位も存在していた。
セレクターを引っ張り単発から連射に切り替え、これから襲われるであろう反動に身構える。
凄まじい数の弾痕で色が塗り替えられていく的。塗装が剥げた後に待ち受けるのは弾、弾、弾。既に凹んでいた箇所に襲い掛かった弾頭はいとも簡単に標的とそれを吊るす金具との接続部分を貫通し破壊していく。
「……あ」
反動で大きく振れる銃口は上に跳ね、撃ち抜く予定ではなかった金具部分までも壊してしまった。
弾倉内が空になった事を知らせるホールドオープンによる少しの静寂。
ガシャンと土煙を立てて落ちるネウロイの的を目にした他の射手達の手が止まった。
「「「「ブハハハハハハ!!」」」」
途端に笑い声が響く。
「…………」
状況が上手く掴めていない俺の肩を叩きながら笑うオースティンは腹を抱えていた。
「おまっ……あそこに当てるか!初めて見たわ!」
やらかした。そう思いながら小銃を置いたところで頭に軽い衝撃が襲う。
それが整備班の班長の手に握られた雑誌によるものだと気づくと、班長が口を開いた。
「はぁ……なんでお前はあんなピンポイントに連続で当てるかねぇ……」
自分でもそう思う。
ね、狙い通りだし?(震え声)
それからしばらくして。ようやく俺にも的にはどうにか当てられるようにまで上達した。
単発射撃ならまだしも、跳ね上がりがキツく俺には抑制できない連射は二脚を立てた伏射限定で行おうと思う。
「なんだこれ?ダッサいサブマシンガンだな」
「まぁ僕はその設計になった経緯を知らないんですけどね……」
そう馬鹿にされていたのは9mm機関拳銃。あくまでも拳銃と言い張るためなのか何なのかわからない奇妙な見た目がダメ出しされていたのである。
銃床も付けられず、長い銃身と見せかけ施条の無い消炎制退器。主にその辺りを言われてしまった。
そして何より皆を驚かせた事が1つ。弾倉何個分か撃った際、どういう訳か初弾装填には大切な槓杆部分が途中でへし折れ、宙を舞うのだ。しかも根元から。
「「「「…………」」」」
その時の皆の表情は凄かったとだけ言おう。
F-1と同じようにすぐにお守り効果で修復されるのだが、現役自衛官が予備パーツも無しにこれを持って海外派遣は自殺行為だと思う。有事の際には対応できない。
(マイクロUZIとかの方が良かったんじゃない?)
そんな事を考えながら9機関拳銃のアタレのセレクターを押し上げながらカチャカチャと変えて暇を潰していた。
結果、一番の高評価はダントツでミニミだった。
……当たり前だよなぁ!?
見てくださった方、ありがとうございますm(_ _)m
今年で高校三年生。就職希望で色々あるのでもはや亀更新が地球に接近する彗星並の更新速度になっていくと思います。
※誤字脱字のご報告ありがとうございます。次からは減らせるよう頑張ります……