心の準備ができギュッと目を閉じる。
すると一瞬強い風に吹きつけられたかのような感覚に陥り体に伝わる感覚が劇的に変化するのがわかった。
直後頭のてっぺんから足の先まで圧迫感が襲い耳も耳栓をしたときのように頭の中でモスキート音が流れる。目を開けてみれば計器類とHUDに夜空……
自分の姿を見てみれば…耐Gスーツに酸素マスク、グローブにヘルメットをしていて冷たく乾いた空気が肺の中へと入ってくる。よくパイロットが太ももとかに書類をつけているが、そこにはタブレットがありいろいろと載っていた。
前も上も左右も暗い夜空が広がり星明かりしか見当たらない。……ここはいったい?
ザーッ…カチリ「えーっテステス……こちらじじいの神じゃ。お主無事にそちらへ着いたかの?」
「あっ、はいっ!無事着きました…ってここ何処ですか?」
「あーっとそこはのぉ…確か…ス…ス…「ストライクウィッチーズでは?」そうじゃ!そうそう!ストライクウィッチーズじゃ!」
神様の声に割り込んであの女の人の声がする。
(あ、アニメのやつか)
「まぁまずはその世界と敵の説明じゃ。お主の乗るそのF-1はまずその世界には存在しないはずのオーバーテクノロジーのようなもの……じゃからあまり他人に渡したりするもんじゃないぞう?」
「うっす」
「敵はネウロイと呼ばれる脅威で……まぁ未確認生物のようなもんじゃろう。それに侵略されるらしいんじゃが、お主にはできるだけ人間を助けてもらいたい」
「言われなくとも助けますよ?」
「お主ならそう言うと思っとったわい。それではまずチュートリアルを始めるぞい」
そこからいろいろと説明が始まった。計器類の説明に操縦方法に空戦や対地攻撃の仕方。ある程度教えられた後にそれは始まった。
明るい都市の上空に突如広がるドス黒い雲のような物体の渦。
明らかに異様なその中心から出てきたのは…まるで昔ドイツ軍の試作偵察機Bv141のような左右非対称のフォルムをしたネウロイだった。
表面上には黒と赤の正六角形が広がりまるで蜂の巣が広がっているかのような模様柄をしていた。そして普通の飛行機の大きさではなく、まるでエースコンバットに出てくる航空要塞のような巨体をしており迎撃に出てきたレシプロ機が豆のように小さく見える。
「神様…あいつを落とせば良いんですか?」
「そうじゃ。さっき教えた事をしっかりと復習しつつ攻撃するんじゃぞ。それでは…死ぬんじゃないぞぅ」プツッ
「大丈夫…です。…多分…」
そう呟いて操縦捍を右に倒し機体を反転させた。
F-1の主な任務内容は対艦攻撃、対地攻撃、要撃戦闘の3つ。空中で浮遊するだけのネウロイには空対空ミサイルと空対地装備で対応できるだろう。
タブレットで使用する兵装を選択する。最初に選んだのはAIM-9L空対空ミサイルを4発……この機体に兵装を取り付ける箇所は全部で7つだが、あとの3つは空けておこう。理由としては余計なものを装備して機体を重くしたくないから。
入力するとレーダースコープの下に配置された兵装管制コンピューターのパネルの一部が一瞬の間光る……これで自動的に兵装の各種データが入力されたらしい。
ガードで覆われたマスターアーム・スイッチをONにし武装を使用可能にした後後ろを向いて主翼を確認する……すると主翼下と翼端にはしっかりと選択した空対空ミサイルが左右に2発ずつの計4発が搭載されていた。
レーダースコープを見ると巨大な1つの反応と、複数の小さな反応を示した…この大きな反応があのネウロイで、他の細かいのがあの戦闘機たちなのだろう。ネウロイとの距離は現在50kmほどでミサイルの射程距離は18km……もう少しで……エンジンの出力を一気に上げて近づきたいがこれは実戦な為失敗は許されない。
焦ってしまえばそこで終了だ……慌てず急いで正確に。なるべく視認されぬよう機体の照明も全てOFFにするなどして工夫する。
他にも昔自衛隊のF-86が害獣駆除の為射撃をする際気づかれぬようエンジンの出力を絞ったとされたという本を思い出しそれを真似てスロットルレバーをIDLEにまで下げてエンジンの出力と音量を小さくする。
これでネウロイに真っ直ぐ向かえば気づかれにくいはず……そしてヘッドアップ・ディスプレイ画面内にてミサイルのロックオンがかかる……が、コンピューターが狙っているのはおそらくネウロイではなくそれに立ち向かっているレシプロ戦闘機。
すぐにレーダー調節パネルのスティックで方向を決め標的を切り替えると、本来の目標であるネウロイにミサイルのロックがかかる。
敵機捕捉を知らせる電子音が鳴り響く中兵装の安全装置を解除し発射スイッチに指を添える。大丈夫……さっきの通りやれば成功する……そして俺は深い深呼吸を1つした後スイッチを静かに押した。
シュパァァァァァ
燃えるような音がし前方が少し煙で視界の右側が一瞬塞がる。
発射後すぐに引き起こしにかかり180゜ロールして上(地面)を向き先程のミサイルに目を向ける。
発射されたミサイルが真っ直ぐネウロイへと向かっていく。当たる!そう思ったときそれは起きた。
ピュンッ!
変な音がした瞬間赤色のレーザーが主翼、胴体、水平尾翼などいろんな所の赤色の模様から発射されミサイルが迎撃されてしまう。一応ミサイルは最高速度ではなかったとはいえそれなりに速かったはずなんだが。
(落とされるか、しかもレーザーかよ……航空要塞のスピリダスの誘雷兵器やビルのエクスキャリバーみたいなレーザー兵器と考えてOKか?)
ネウロイから少し離れ後方を見つつ…何か後ろ見づらいな……20kmほど離れたらロールして方向転換、再び目標捕捉に取り掛かる。
次は1発だけではなく残り3発一辺に発射する。さっきと同様にミサイルが2発迎撃されてしまうが1発がキャノピーに似た部分に命中する。すると
「キィィィィアァァァァァ!!」
突然ネウロイから悲鳴のような超高音が町全体へと響き渡る。
(っ!?何なんだあいつ?生きてんのか?)
爆炎と煙にネウロイが包まれ表面の黒や赤の色をした六角形状の装甲が一部分吹き飛ばされて散ってゆく。一種の無人兵器か何かと思っていた俺は驚きを隠せない。
また次の攻撃を……そう思っていると突然機体に衝撃が走る。
「っ!?何だ!?」
『Fire・Fire・Right.Fire・Fire・Right.』
女性の高い声と警告音が鳴り響く。どうやら右エンジンが損傷、出火したらしく機体の操作が余計に困難になっていく。
……あのレーザーでやられたか?生憎後方は視界が悪く煙を吐いているかどうかも確認することができない。
すると首から下げていた御守りが光りだし警告音が消える。その御守りは通称[タリスマン]……エースコンバットをやった人ならわかるかもしれないが、持っていれば機体を修復してくれ、損傷したとしても回復を自動的にしてくれるチートアイテムだ。
ハッキリ言ってこれ無しでネウロイに立ち向かうのは自殺行為だと思う。そこまで機動性が良い機体ではないし、ましてや相手の兵装はレーザー。避けるのには難しすぎる。
先程のミサイルの次弾装填までは数分時間がかかるようなので他の兵装に切り替える。タブレットで次に選択するのは対地攻撃などに使用されるCBU-87/Bクラスター爆弾。
それは中に202個ものBLU-97/B子爆弾が入っており広範囲にわたる爆撃を可能とするクラスター爆弾のことで、中~近距離からであれば投下後にネウロイ下に広がる都市部に巻き添えにすることもないだろう。
それを5発選択し搭載……する前に機体の修復を待つ。
ご存じかもしれないがこの機体、通常のジェット戦闘機に比べてエンジンの出力が機体に対して不足していて、片発の状態で旋回はかなり失速、墜落しやすく…そうはなりたくない。
確実に機体の損傷率が0%に近づくのを待つ。するとネウロイは都市部への攻撃を開始した……レーザーが一線……着弾した辺りが破裂するかのように爆発し、燃え上がり至るところに火の手が回る。
(はやく!…じゃないともっと人が……!)
エンジンが回復し損傷率が一桁になる。もうこれでいける……というかいかなけれならないという勝手な使命感にかられる。
45度程度の角度でネウロイへと機首を向け急降下爆撃。投下された瞬間カチャンッという音が響き機体の引き起こしが少し軽くなる。
「っ!!??」
引き起こしの瞬間前から向かってくるのはレシプロ機。まるで流れる時間がゆっくりになったかのように遅く見え視界から色が消えモノクロになる。すぐに操縦捍を左に倒し機体をロールさせて回避を試みる。相手は既に機体を垂直にさせていたのでギリギリですれ違い事なきを得た。
偶然にも空中衝突することはなかったが今のはかなり焦った…走馬灯ではないが周りの時間がゆっくりと流れるさっきのはいったい?
…それよりもネウロイだ。機体が垂直なまま操縦捍を引きネウロイを視界に入れる。
1度に全て投下されたクラスターは空中で分解、子爆弾を大量に撒き散らしてゆきネウロイの広範囲に着弾し表面の黒い装甲を吹き飛ばしていく。
落下途中のBLU-97/B子爆弾のうち幾つかはミサイルの時のようにレーザーで迎撃されてしまっていたが、それ以上の数を大量に叩き込んでやったのだから先程の攻撃よりも損害を与えられた……はず。
そして上空から見ていた俺にあるものが目に止まる。それはネウロイの胴体横……キャノピーに似た部分の中央付近に赤色の光り輝く物体がほんの数秒見えたのである。
神様からの説明ではネウロイには赤いコアがあり、それを破壊すればいいと言っていた。だとしたらあれがコアなのかもしれない。
(武装は何にすれば…?対艦ミサイル?対地爆弾?……いや、どれもアレで落とされる……なら……)
機体をには引き起こし垂直上昇させてタブレットに左手をやる。
選ぶのは爆弾でもなくミサイルでもない。選択したのはJLAU-3ロケット弾ポッド……1つのポッドに2.75inのロケット弾を19発装填可能な空対地兵器である。それを4ヶ所のハードポイントに搭載していく…と、少し速度が下がっていく。空気抵抗か何かかもしれない。
かなり高度まで上がってきたのでエンジン出力をIDLEにまで絞りつつ操縦捍を手前に引く。
すると機体は失速、背面飛行に入りかけていた姿勢から一気に機首が真下を向く。そこで再び出力を戻していく。
そこから見えるネウロイはとても小さく遠い。
HUD内にネウロイを収め発射の瞬間を待つ。そこであることに気がついた…遠くから見ていて初めて気がついたがゆっくりとだがネウロイが進んでいた。
それならば相手の進路方向の予測地点に着弾するようにしなければならない。降下する途中でラダーとエルロンを操作しネウロイの後方から攻撃を仕掛けられる進路になるまで調節する。
無誘導であるロケット弾を当てることは容易ではない。先程は大丈夫だったのに急に不安とプレッシャーに駆られ呼吸が荒くなっていく。
(さっきのクラスターの時を思い出せ……大丈夫…当たる…当てる…当てる…!)
そして俺は兵装リリースボタンを押した。
瞬間視界の左右ほとんどが眩い閃光で包まれ発射されたロケット弾が操縦席の真横を次々に通り抜けて行く。
発射後すぐに引き起こしに掛かり体に負荷がほんの少し掛かってくる。
「ァァァァァァァァ!!」
気味の悪い悲鳴がヘルメット越しに微かに聞こえる。
旋回機動に移りネウロイを確認すると…黒かった表面は白色に輝き正六角形状の物体が次々に剥がれ散ってゆく。それはまるで花弁が散りゆくようでネウロイがどんどんその姿を無くしていっていた。
ネウロイが全て塵と化し消え失せた後には……焼けた家々に崩れた建物、ネウロイによる深い爪痕を残した都市……犠牲者は少なくないだろう。
この世界の人々がどんな人たちかは知る由も無いが、自分に力があるというのならばその力を使って守れる命を守りたい……熟そう考えさせられる光景が下には広がっていた。
(もっとネウロイを倒すことに慣れておかないとこれからもずっと手こずりそうだな……)
都市上空を旋回し続けるのも何なのでその場から離脱する。
(さて…どこで練習しようか?)
ここから当ての無い放浪の旅兼ネウロイ殲滅の生活が始まった。
すぐ完結させるんで許してください(泣)