その背中を追いかけて【瑞加賀】   作:jugger

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1.加賀

「あぁっ!」

「立て!あと三発だ!」

数百人といる訓練生の前で、しつけを受けている子がいた。

「…なんだ?その反抗的な目は」

「うあっ!」

士官が容赦なくバットを振るうと、その尻に深く沈んで、またその子の叫び声が響く。

目を覆うような光景だった。

 

「…あの子、どこの子?」

小さな声で、隣に立っているウチの班長に声をかける。

「あれ、十三班の加賀って子なんだってさ。ヤバいらしいよ、態度とか」

一通り叩き終えたところで、士官が私達に向かって声を上げる。

「貴様らもよーく見とけ!自分の上官の命令は絶対だ!逆らうということは、自分の国の意思に逆らうことと同じだ!それは非国民であるのと同じなのだ!」

これは、見せしめだ。

これだけの大勢の訓練生を集めて、その目の前でしつけを行う。

【反抗することは許さない】と教育するには完璧なやり方なのだろう。

 

*

 

各班の構成は、八人の訓練生から成っている。

その中から一人が班長として任命され、管理も任される。

私は七班の番号二番。

班というものは、施設へやってきた時から基本的にメンバーが入れ替わるなんてことはなく、施設を出るまで生活を共にするのだ。

友情が芽生えることもあれば、喧嘩をすることだってあるが、そのうちに嫌でも絆が深まる。

でも、その加賀という子がいる十三班は異様だった。

食事の時間、彼女に声をかける班員は誰もおらず、同じ班だというのに席を一つ空けて食事を取っている。

ウチの班長が仕入れた情報によれば、加賀は誰と話すことも無いらしい。

訓練は優秀らしく、十三班がしつけを受けるという場面は少なかったが、誰ともコミュニケーションを取らないのは上官に対しても同じで、返事が小さかったり、無視したり、挙句に睨みつけるところもあるそうだ。

 

*

 

「ぐぅっ!」

「加賀ぁ!ほら立たんか!!」

士官も、何かと気に食わないことがあれば加賀を殴る毎日だった。

ここの士官は時々、憂さ晴らしにしつけを行うことがあるが、加賀はその対象になりやすかった。

誰も彼女を助ける人間はいない。同じ班であっても。

助けてしまえば、次からその人間が憂さ晴らしやしつけの対象になることもあるかもしれない。

ここで生きていくためには、士官のご機嫌を取ることが一番大事だ。

彼女が生け贄になってくれていれば、自分達が余計に殴られることはない。

誰しもがそう考えて助けないのだ。

 

「うっ…」

加賀がよろけて、倒れた拍子に帽子が取れた。

あらわになったのは綺麗な長い髪だった。

士官はその長い髪を掴んで彼女を持ち上げる。

「いっ、痛い!」

「痛い?ありがとうございます、だろうが!」

更に殴り飛ばすと、彼女がついに泣き出す。

「泣くな!泣けば許されると思っているのか!国のためにもならん恥さらしが!」

要領の悪いヤツ、と心のなかで呟いた。

 

 

賢く過ごしていれば、泣くこともないのに…。

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