翌日。
新しく通うことになる学校のセーラー服に袖を通し、凛は硯谷高校へと向かった。
自転車で三十分程もかかった。ただし、これは下り坂での時間だ。帰りはどれだけの時間がかかるのか、想像もしたくない。
そして到着した新しい学び舎は、年季の入った2階建ての古い木造校舎。まばらに登校して来る生徒達が、チラチラとこちらを見ているのがわかる。
生徒数が少ないせいで、転校生だということが簡単にわかるのだろう。
凛は居心地の悪さを感じながら、職員室へと向かう。ここで担任の先生と会い、教室まで案内してもらう段取りになっている。
「失礼します」
扉をスライドさせて中に入ると、
『パンッ!』
と、クラッカーが鳴らされ、紙ふぶきが顔に飛んできた。
「!?」
突然のことに、眼を丸くしてしまう。
「ようこそ~硯谷高校へ」
二十代前半辺りの新米教師といった風な、威厳も何もないような女性であった。
ウェーブのかかったロングヘアを揺らしながら、女性はにへら~と笑いながらパチパチと手を叩いている。
「は、はぁ……」
凛の方は突然のことに、眼を丸くして生返事をすることぐらいしかできない。
「優奈先生! また貴女はこんな真似をして……教師としての自覚をそろそろ持ってください。いつまでも学生気分でいられたら、こちらも迷惑です」
怒声を放ったのは、神経質そうな男性教師だった。顔つきは三十代後半と言ったところだが、日々のストレスが凄いのかオールバックにした髪には白髪が目立ち始めている。
「あぅ……す、すいません……」
無関係の凛が気の毒になるほど、女性教師は涙目になって頭を垂れた。
「本当に! 気をつけてくださいね」
男性教師は言うだけ言うと少し離れた席に座り、不機嫌そうに書類仕事をはじめた。
「また怒られちゃった……」
また、ということは、いつも怒られているのだろう。あの男性教師の怒りようからして、かなりの頻度なのかもしれない。
「あ、ごめんね~。先生は、2年生のクラスを担任してる風見優奈です。よろしくね」
しょんぼりとした顔から一転、締まりのない顔で笑いながら挨拶してきた。
「はぁ、よろしくお願いします」
「それじゃあ、教室に案内するね」
凛は優奈先生の後を付いて歩きながら、木造校舎を物珍し気に見回す。
今の時代、ほぼ全ての学校がコンクリートで作られている。
以前に凛が通っていた学校も当然コンクリート製だったので、こういった木造校舎は見ているだけでも面白い。
数分ほど歩いて校舎のに2階まで行き、2年1組というプレートがかかった一室で優奈先生は足を止めた。
「はい。つきましたよ~。ちょっとここで待っててくださいね。先生が入ってくださいって言ったら入ってくださいね」
「わかりました」
最初から一緒に入ればいいと思うのだが、何か不都合でもあるのだろうか?
優奈先生は凛を残し、一人で教室へと入る。
ざわざわと煩かった教室が静かになった。
『は~い。みんなに今日はニュースがあります。なんと転校生が来ました!』
『はいはーーい! 男子ですか? 女子ですか?』
聞き覚えのある声がする。勇愛の声だ。
『ふふふ~。なんと女子です! 可愛い子ですよ。男子のみんなは嬉しいかな~?』
『う~っす。嬉しいです』
『どんなヤツなんだよセンセー。早く紹介してよ』
『俺は知ってるぜ。昨日会った』
数名の男子の声の後、また知っている人の声が聞こえた。竜兵だったか。
「そういえば、名前を聞いていなかったな」
まあいい。また後で聞けばいい。
『それじゃあ凛ちゃ~ん。入ってきていいわよ。みんな拍手~』
優奈先生の声で、ぱちぱちと拍手の音が響いた。
なるほど。これがやりたかったのか。
凛は気恥ずかしさを覚えながら、教室に入る。
思ったよりも、生徒数がさらに少ない。合計で17名だけだ。
「それじゃあ凛ちゃん。自己紹介お願いね」
優奈先生の言葉に従い、凛は九名のクラスメイトの前で自己紹介を始めた。
「五十嵐凛です。東京から引っ越してきたばかりで不慣れなところもありますが、よろしくお願いします」
視線を教室に巡らせて見ると、喫茶店で出会った、勇愛とリアと竜兵と目が合う。
初めて通う学校のクラスだというのに、見知った顔があるというのは少し不思議な気分だ。
「それじゃあ、みんな凛ちゃんに質問とかあるかな~?」
その言葉を皮切りに、クラス中から『東京はどんな所?』『趣味は?』『好きな物は?』『前の学校ってどんなんだった?』等々、様々な質問が飛び交った。
「ねぇねぇ! 凛って部活何入る?」
そんな中で、一際大きな声の質問が、凛の鼓膜を叩いた。勇愛だ。
「部活? まだ、決めてないな。前の学校では、デュエル部に入っていた」
「ホントに!? ここにもあるよ! ねぇねぇ、入部しよう!」
凛がそう言った瞬間、勇愛は目を輝かせた。だが凛は同時に、教室にいる勇愛以外の人間全てがなんとも言えない微妙な表情になったのを見逃さなかった。
・ ・ ・ ・ ・ ・
一時間目が終わった後の休み時間。転校生は囲まれて質問攻めにされる時間だが、凛は質問を受けてはいなかった。
「じゃあ、凛が入る部活はデュエル部ね」
勇愛が嬉々として勧誘活動を行っているせいで、他の生徒が近寄れないのだ。
「デュエル部と言われてもな……」
全国の学校では部活動としてデュエルモンスターズをプレイしている所も多い。毎年秋には、全国大会も開催されている。
「私は、帰宅部にするよ」
凛も、以前の学校ではデュエル部に入っていた。そこで日々、デュエルの腕を磨いた。全国を制するために、ただ強くなるために。毎日毎日、デッキを弄り、実戦をくり返す。充実した日々ではあった。しかしどこか、息苦しくもあった。他者を蹴り落とし、勝者になることに疲れてしまった。
「なんでー? 楽しいよ? 一緒にデュエルしよ! そんで全国を目指そう!」
「すまないが部活でデュエルをする気はもう無いんだ。遊びでやるんなら付き合うよ」
「む~……」
勇愛はリスのように頬を膨らませて、不満をアピールする。まるで幼児のような態度だが、不思議と笑いがこみ上げてくる。
「アホ! 入らへん言うとるやろ! 凛めっちゃ困っとるやないか」
どう言ったら諦めてくれるか思案していると、横から助け舟が入った。
「で、でもリア。凛ってデュエルできるんだから、入ってもらったら助かるじゃん」
「あんなぁ。人には都合っちゅーもんがあるやろ。そんな無理に誘っても、困らせるだけやっちゅーねん。ホンマごめんな。勇愛に悪気ないから、許したってな」
「うぐぐ……」
ぐいぐいと勇愛の頭を押し下げて、リアも自分の頭を深々と下げる。人形のような美貌を持った白人の少女が、関西弁で喋っている姿は中々にシュールである。
「ところでリア。この学校では、部活動は絶対入らなければならないのか?」
「あはは。リアでええよ。言いづらいやろ? 部活な。特にそういう決まりはないよ。というか、部活動自体がそんなないんやけどな」
「そうなのか?」
「正式な部として残っとるのは、確か野球部と茶道部と陸上部ぐらいやな」
「ん? デュエル部は違うのか?」
「んー……去年までは部やったんやけどな? 人数3人で今は同好会に格下げされてんねん」
「なるほど」
3人というのは、勇愛、リア、竜兵のことだろうか。
「4人になったら部になるんだ。だから凛はデュエル部に入ればいいと思います!」
「あんた黙っとり!」
すかさず勧誘活動を再開しようとした勇愛を、リアは一喝して静止させた。
「で、でも……部員4人にしないと、デュエル部無くなっちゃうじゃん」
「そりゃそうやけど、だからって五十嵐さんが入る道理はないやろ」
「無くなるのか?」
正式に認可されなくても、同好会なら存続できそうなものだが。
「ああ、なんちゅうかな……なんや学校でカードゲームするんはあかんっちゅーセンセがおってな。いろいろ圧力かけて、潰そうとしてんねん」
「ホントむかつくよね。あのハゲ!」
「勇愛、いつも言うとるやろ。あれハゲちゃう。オールバックや。それと本人のおらんところで悪口言うたらあかんで」
オールバックの教師。凛が職員室で見たあの男性教諭だろうか?
「そや、凛。デュエル部に入れ言うんやないけどな、また勇愛とデュエルしたってんか? いっつも同じ人とばっかで、マンネリ気味なんよ」
「ああ、私でよければいつでも相手になる」
部に入らず、時間のあるときだけ対戦をするというのであれば、凛としても断る理由は無い。
「対戦するんなら入ってくれてもいいじゃん」
「すまないな。部に入ってまで、デュエルをする気は無いんだ」
「う~……そっか……」
ショボーンと俯く勇愛の姿には心が痛むが、やる気の無い人間が部に入っても迷惑になるだけだろう。
「ほら、勇愛。元気出し。別にデュエル部が無くなるて決まったわけやないんやから。来年、新入生が入ることを期待しようや」
「うん。そだね。あ、凛! そんじゃあ放課後に勝負しようね。絶対ね! 約束だよ!」
先ほどのしょぼくれ具合は何処にいったのか、勇愛は再び元気を取り戻し、真夏の太陽のような満面の笑みを浮かべた。
そして放課後。
勇愛とリアに案内されたのは社会科準備室。部屋に入ると、社会科準備室というプレート名に偽り無く、部屋の九割は教材と資料で埋め尽くされていた。そして部屋の隅に、机が一つ設置されている。ここがデュエル部の領域なのだろう。
「狭いとこやけど、堪忍してな」
リアは苦笑しながら、プレイシートを机に広げる。
「竜兵は来ないのか?」
「あ~竜な。最近はなんや忙しいらしくて、来とらんな」
「男一人で居場所が無いんじゃないか?」
「そらないやろ。うちら小1からの付き合いやのに」
幼馴染というヤツか。
「ねーねー! それよりさ、早くデュエルしようよ」
「ああ、わかった」
凛と勇愛はデッキをプレイマットの上に置く。
ふと、ある考えが凛の頭をよぎった。
「そうだ。部に入るという話な、大会とかに出ずに、幽霊部員という形なら、別に構わないぞ」
「それはダメ!」
喜んでもらえると思った提案だが、意外にも勇愛は拒否した。
「だって、それじゃあ凛が楽しくないでしょ? デュエルが好きじゃなきゃ、入ってもらっても意味ないもん!」
「楽しくないと、か……」
そんな感覚、もう忘れてしまった。
「なら……私を楽しくさせてみてくれ。熱くさせてくれ。もしできたなら、デュエル部に入ろう……いや、入らせてくれ」
「ホントに!? じゃああたし頑張る!」
勇愛はニカッっと笑う。
「ええんか? 無理せんでもええねんで?」
「無理はしてないさ。本当に、楽しくデュエルが出来ると思ったら、入りたい。では、いくぞ」
「うん」
「「決闘!」」
「まずは私のターンだ。手札から神の居城ヴァルハラを発動! そしてその効果で、クリスティアを召喚! ターンエンドだ」
『大天使クリスティア(攻・2800)』
以前にも見せた、特殊召喚を完全に封じる凶悪な効果を持つモンスターだ。強力なモンスターを特殊召喚して戦うHEROにとっては、天敵ともいえる相手。だが勇愛は「頑張る」と言ったのだ。ならこれぐらいの逆境は、跳ね返してもらわなければ困る。
「あたしのターン!」
勇愛は手札を見て、考え込む。
「よし! あたしはおろかな埋葬を発動して、デッキからネクロダークマンを墓地に送る。そんで、ネクロダークマンの効果で、エッジマンを召喚!」
『E・HEROエッジマン(攻・2600)』
「なるほど。こんな方法で上級モンスターを召喚するとはな……だが、攻撃力は2600だ。クリスティアには及ばない」
「まだまだ! 魔法カード、スカイスクレーパー発動! そして、バトルだ!」
「そうか。スカイスクレーパーの効果で……」
「そうだよ! 自分より攻撃力の高いモンスターとHEROがバトルするとき、攻撃力は1000ポイントアップだ!」
「やるやないか勇愛、これで特殊召喚封じは無くなったで!」
『クリスティア(攻2800)VSエッジマン(攻3600)』
『五十嵐凛・800ダメージ。ライフ3200』
「だが、クリスティアは墓地には行かずに、デッキの一番上に戻る。次の私のターン、再びクリスティアを召喚するまでだ」
「むふふ、それはどうかな! あたしは罠カードを一枚伏せてターンエンド」
「…………は?」
「何言うとんねん勇愛……」
凛は眼を白黒させて、リアは盛大にため息を吐く。
「え? え? どしたの?」
「どうしたもこうしたもあるかい! なんで罠とか言うねん!」
「……うぇ!? あたし罠って言った!?」
「言うたわ!」
「こ、これは嘘なの! ひょっとしたら魔法かもしんないでしょ!」
「せめて嘘やのうてブラフって言い方せいや……」
そんなリアの呆れとは裏腹に、凛の心は乱れていた。
(馬鹿な……罠カードを伏せたことをわざわざ宣言する人間がいるか? いるわけがない。なら、ブラフ? いや、そう思わせて、こちらの攻撃を誘っている? っく! わからない!)
ある程度デュエルモンスターズをプレイしているなら、伏せたカードの種類を宣言するというミスをするわけがない。
「私のターン! ドロー!」
理想としては、伏せカードを除去できるカードが引けるまで待つべきだ。だが、このまま何もしないで悪戯にターンを重ねるのは危険極まりない。勇愛の使うHEROは、特殊召喚さえ封じられなければ短期でデュエルを終了させることのできるカード群だ。
(ならば、クリスティアを召喚して特殊召喚を封じて、その間に伏せカードを除去するのみだ!)
凛は覚悟を決めた。
「ヴァルハラの効果を発動! そしてクリスティアを特殊召喚! そしてすかさずバトル!」
「罠発動! エッジ・ハンマー! エッジマンをリリースして、クリスティアを破壊! そして、クリスティアの攻撃力分のダメージを与える!」
「なっ!?」
『五十嵐凛・2800ダメージ。残ライフ400』
「っく! 二度もクリスティアを!」
おまけにライフを大幅に削られてしまった。次のターン、クリスティアはまた出すことができる。しかし、問題がある。ヴァルハラは、自分の場にモンスターが居るとその効果を使うことができない。ヴァルハラの効果を使うならば、このままターンを終了すべきだが、残りのライフは400。次の勇愛のターンでモンスターを出されれば勝負が決まる。
追い詰められている。デッキのパワーは圧倒的にこちらが勝っているのに。相性もこちらに最大限に有利なはずなのに!
「私はモンスターをセットし、さらにカードをセット。これでターンを終了する」
「それじゃあ、あたしのターンだ! ドロー! 魔法カード死者蘇生を発動! これでエッジマンを復活させる」
良い手だ。エッジマンは守備モンスターに対して貫通能力を持っている。
「バトルだ! エッジマンで裏守備モンスターに攻撃!」
「罠発動、聖域への光。デッキからカードを一枚ドローし、デッキから天空の聖域を発動する!」
「でも、攻撃は無効にならないからそのままバトル!」
「私の裏守備モンスターはコーリング・ノヴァだ」
『エッジマン(攻2600)VSコーリング・ノヴァ(守800)』
「エッジマンは貫通能力があるから、これで終わりだ!」
「それはどうかな? 天空の聖域が場にある限り、私は戦闘ダメージを受けない」
「うぇ!?」
「そして、コーリング・ノヴァは天空の聖域が存在する場合、デッキから天空騎士パーシアスを呼び出すことができる。パーシアス召喚!」
「うぐぐ……ターンエンド」
「行くぞ、ドロー! 私はトラスト・ガーディアンを召喚。パーシアスに、トラストガーディアンをチューニング! 神聖騎士パーシアスをシンクロ召喚!」
『神聖騎士パーシアス(攻2600)』
「だけど、攻撃力はエッジマンと同じだから、相打ちにしかなんないよ!」
「何言うとんねん勇愛。んな甘いわけないやろ。絶対エッジマンぶっ倒されるで」
「リアの言う通りだ。神聖騎士パーシアスの効果発動。エッジマンを守備表示に」
「なにそれ!?」
「そして、神聖騎士パーシアスはエッジマンと同じく貫通効果を備えている。行くぞ、バトルだ!」
「だけど800ポイントぐらい大丈夫だもん!」
「そんなものではすまさん! 手札よりオネストを墓地に捨てて効果発動! 神聖騎士パーシアスの攻撃力は2600上昇する」
『神聖騎士パーシアス(攻・5200)VSエッジマン(守・1800)』
「あぅ……し、死んじゃった!?」
「勇愛落ち着き! ちゃんと算数せえ! デカイ数字で思考停止すな!」
「う、うん……え、えっと、あ! 600残る!」
『八神勇愛・3400ダメージ。残ライフ600』』
「仕留めきれなかったが、次のターンで確実に仕留める! カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」
くそ! せめてあと一枚オネストが手札にあれば倒せたのに!
「私はカードを一枚セットして、ターンエンドだ」
「あ! 笑った!」
「え?」
「ホンマや。凛の笑った顔始めて見たわ。いつもブスーっとしてんのにな」
「む……」
思わず顔に手を当てる。たしかに、笑っている。
「ほら! デュエルって楽しいでしょ!」
勇愛は子供のように顔を綻ばせる。
「そしてあたしが逆転してさらに面白くしてやる!」
「ふん。できるかな?」
「いっくぞー! ドロー! 私は流転の宝札を発動して2枚カードをドロー! そんでバブルマンを召喚して、バブルイリュージョンを発動!」
「バブルイリュージョンだと?」
たしか、手札から罠カードを発動できるようになるカードだったはずだ。何が狙いだ?
「そして魔法カード、ミラクルフュージョン発動! 場のバブルマンと墓地のネクロダークマンを除外して、E・HEROアブソルートZeroを特殊召喚!」
アブソルートZeroには確か、場から離れたときに相手モンスターをすべて破壊するという凶悪な効果があったはず。
「いっくぞー! アブソで攻撃!」
「なるほど。場にはスカイスクレーパーがある。攻撃力を上げて殴り殺す気か。だが! 伏せカード発動! サイクロン。これで場のスカイスクレーパーを破壊する。これで返り討ちにしてやる!」
『神聖騎士パーシアス(攻・2600)VSアブソルートZero(攻・2500)』
『八神勇愛・100ダメージ。残ライフ500』』
「そしてこの瞬間、アブソルートZeroの能力で神聖騎士パーシアスも破壊!」
「それがどうした! 次のターンでモンスターを召喚してそれで終わりだ!」
「むふふ! 次のターンは無い!」
「なんだと?」
「手札から罠カード発動! 英雄変化リフレクター・レイを発動」
「しまった……このための」
バブルイリュージョンだったというわけか。
「自分の融合モンスターが破壊された場合に発動! 破壊された融合モンスターのレベルの数×300のダメージだ!」
アブソルートZeroのレベルは8だ。つまり……
『五十嵐凛・2400ダメージ。残ライフ0』
「私の負けか……」
「えへへ! 楽しかったね!」
勇愛はVサインをして、これ以上ないほどの笑顔を向けてくる。
「ふふ……そうだな……楽しかった……楽しかった、が!」
確かに、楽しかった。熱くなった。だが!
「負けたままで楽しくはない! もう一度だ! 今度は私が勝つ!」
「いいよ! もっかいやろう!」
「そんで、凛。入部はどうする?」
「そんなものは後だ! いくぞ勇愛!」
「よーし! 来い凛!」
返答を後回しにして、凛と勇愛は再びデュエルを始める。
「入部、でええんかな?」
リアは苦笑しながら、その様子を楽しそうに眺めた。