セントラル・ステーション、ミッドチルダ中央区にある大きな駅の前に集合したのは六課に所属する54人。6人はそれぞれ用事があるらしく不参加となった。
「んじゃあはぐれんように付いてきてな」
私の言葉に皆が返事したのを確認し中心街とは反対方向へと進む。
大きな道路の脇にある小さな道に入って裏通りを進む。
仕事帰りの人がちらほらおるけど大通りに比べると遥かに少ない。まだ日は沈むきっていないけど、言い様のない不気味さが漂ってくる……
と言っても目的地はもう目と鼻の先だ。駅から歩いて5分。そう言ってしまえば立地条件は良さそうやけど、ここらへんはそれこそ必要以上に飲食店がある。そんな中でこんな裏通りにある小さな店に誰も足を運ばないのは当然なのかもしれない。
「八神部隊長、一体どんな店なのですか?」
「ん?気になるか?ティアナ。後今は仕事中じゃないから部隊長はいらへんよ」
足を止めずに歩いてて道を曲がる。すると見えてきた。今日の外装は……まあ、普通に居酒屋みたいに見えなくもない飲食店。その名も『天使始めました』。変な名前で変な店で変に特徴的な所。
例えばその店の玄関には看板の役目を果たすロボットが転がって……
「あれ?」
「どうしたんですか?はやてさん」
「いや、ちょっとね」
なんでやろ。前来た時もちゃんとおったのに、今はハコがおらん。気にすることではないと思うけど、何かおかしい気がする……
「はやて、早く入ろうぜ」
「う、うん。じゃあみんなこの店が今日の親睦会の会場やで。味は保証するで」
私が先頭に店に入ると、広い土間に優に100人は入れる座敷型の宴会場が広がっていた。
「……なあはやて」
「何も言わんでええで。ヴィータ」
絶対に店の外見に比べて中の方が広いけど気にしたらあかん。
ここはそういう店なんやから。
「いらっしゃい、はやて様。人数に変わりなどはありませんか?」
「あ、ああ。さっきの通りの54人やよ。今日はよろしく」
いつの間に目の前におったんやろか。後予約の時も電話とかしてないけど私が考えた時に確認のメールが来てた。
おかしいところに突っ込まんようにしやんと……
「じゃあみんな座ろか」
「「「はい!」」」
にしてもこんな座敷で食べるなんてやっぱり地球っぽいなぁ……
ああ、そういえばさっきのこと聞いてみるか。
「なあ店長さん、どうして今日はハコが表におらんかったん?」
「ハコなら出前に行ってますよ」
「……どうやって?」
「普通にバイクにのって行きましたけど……」
「………」
「ちゃんと免許も持ってるので大丈夫ですよ」
……私は何も聞かなかった。
◇
座敷の一番上座の方に座る。隣にはヴィータ、目の前にシグナム。
近くにはヴォルケンの皆以外になのはちゃんやフェイトちゃんまでおる。
「取り敢えず皆鍋でも頼む?」
いつの間にか水や箸、おしぼりがある机から目を逸らしつつ提案する。こんな形式やったら鍋が一番美味しいし食べやすいんよね。
概ねみんな反対はないみたいやから頼もうかな………あ、その必要ないか。
皆机にいきなり出現した鍋や飲み物に驚いているなんて気のせいや。
「取り敢えず乾杯しよか」
音頭を取って乾杯する。私は烏龍茶にしといた。
「後は好きに注文してええで」
今日の食べ放題は時間が決まっていない。普通やったら2時間なんぼとか決まってるのに、店長さんに聞いたら寧ろそんなものがあるのかって言われてもた。変な所で天然やから困るんよな……
あと、お酒も出せるらしく、成人してる人らは飲んでもええってことにしてる。ちゃんと帰れる人限定やけど……ヴィータはチューハイ、シグナムはビール飲んでるわ。
「店員さん!!」
あ、スバルがいの一番に注文しようとしている。あの子は確かよく食べる子やったよね……
「うわ!!」
……スバルが何も言う前にどっさりと食べ物が出現したように見えたけど気のせいよな。
まあ、気を取り直して私も注文しよかな。
そうやなぁ……オードブルとかは……後白いご飯とか食べたいな。
あのさ、注文しようとは思ったけど言う前に来るってどういうことなんよ……
「やっぱギガウマだな!はやて!」
「う、うん。そうやね」
「主、この店些かおかしくはありませんか?」
「……気にしたらあかんねん。気にしたら……」
そうしたら安くて美味しいごはんが食べれるんやから……
「はやてちゃん、この鶏肉凄い美味しいよ」
「はやてさん!このカレーライスっていうのは何ですか!?」
「八神部隊長!大吟醸って美味しいのか!?」
「なのは、醤油とって」
「このケーキ美味しいのですぅ」
「主はやて、良ければ鍋をよそいますが」
「そうなんやなのはちゃん。スバル、カレーはご飯によく合う美味しい物やで。ヴァイス、私はお酒飲んだこと無いからわからへんよ。ちょっとデザートには早くないかな?リイン。あとザフィーラありがとう。よそってくれる?」
………気にしたら負けなんよ……
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【とある研究所】
『デマエ!デマエ!』
「ありがとう。それにしても良く持ってこれたね……」
『アイシャ!アイシャ!』
「ほう?ブラフ・シューペリアSS100か、中々渋いものに乗ってる……いや、合体してるのかい?」
『ハコの旅、大人気作品!』
「いきなり流暢に喋り出して何を言ってるんだい……それにしても、はたして君にはヘルメットが必要なのか?」
『ヒツヨウ!ヒツヨウ!』
「そうか……」
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