天使の飲食店   作:茶ゴス

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第2話

 正直半信半疑やった。

 あの変な喫茶店の前に書いてあった看板の内容。日によって飲食店の内容が変わるというもの。私があの店に入ったのもただの気まぐれに昼食を取ろうと喫茶店に入っただけだった。

 

 外から見ても内装を見ても何処からどう見ても唯の喫茶店。他の客はおらんけど、何か居心地の良い店。店員は若干幼さが残る顔をしている男性。いや、実際幼かったんやけど……

 その店員さん、本人曰く店長さんの作る料理は正直驚いた。一度グレアムおじさんに連れてかれた高級フランス料理店に劣らないどころか下手をすれば勝っている料理。しかもあの値段。あり得んで……

 

 返ってからコーヒー豆の値段調べたけど、正直びっくりした。200g3000円はする豆、スタバでも900g2000円から4000円や。それであの値段やのに、天使っちゅう喫茶店は手頃なランチに付いてくる。正直ウソっぽい。流石にそれじゃあ商売としては成り立たないと思う。せやけどあの美味しさはそこらの豆じゃあ出せやんのよな。そう考えたら結局500Gであのクオリティはあり得やんってことや。決して安物を使ってるわけやない。せやのにあの値段。気になる。

 

 それにもう一つ気になることが……あの店長さん。魔力こそ感じれんかったけど、こう威圧感というかなんというか、大物っぽい雰囲気を持ってた。最初店に入った時は思わず吃ってもたわ。

 

 

 とまあ、色々考えては見たもののもう一回いかん事には話しにならへん。幸いにもあの店に行った日から二日後の今日は仕事が終わるのが早かった。せやから暇してたザフィーラとヴィータを連れて店に来たんやけど……

 

 

「ホンマにラーメン屋やん!!」

 

 

 見るからにラーメン屋だった。暖簾がかかってるわ屋根の色が違うわ。建物自体が違うようにも見える。更に言えば入り口のドアも変わってる。普通の喫茶店やったドアから引き戸になってる。一体どういうことなんや……

 

 

「なあ、はやて、ここであってるのか?」

 

「その筈や。でもおかしいわ、二日前はちゃんと喫茶店やったんやで」

 

「一体どういうことだ」

 

 

 ホンマにわからん。

 あ、でも店の名前は一緒や、"天使始めました"

 

 ……天使って名前ちゃうんかい!

 店名おかしいやろ!いや、店自体おかしいわ!

 

 

「なあはやて。前言ってた看板見当たらねえぞ」

 

「あ、ホンマや。曜日はないって事言ったから片付けたんかな」

 

「……主、何か機械のようなものがあるが…」

 

 

 看板があった場所には丸っこい小さなロボットみたいなやつが転がっとる。なんかどっかのアニメに出てきそうな黄緑色でご丁寧に顔も着いてるのがわかる。

 

 

『オキャク、オキャク』

 

「うお、はやて!こいつ喋ったぞ!」

 

「デバイスのようなものか……」

 

 

 絶対違うと思う。だってこれ、見たことあるもん。日本に居るときにテレビでやってたあの超有名なロボットアニメにでてくるマスコット

 

 

『オシラセ、オシラセ』

 

「これ、ハロやん!!」

 

『ハロチガウ、ボク、矢澤』

 

「誰やねん!しかも何でそこだけ流暢に話すねん!」

 

『ニッコニッコニー』

 

 

 ホンマなんなんこの店。突っ込みどころが多すぎるで!!

 

 

「で、一体こいつは何の役割を持ってここに転がってるんだ」

 

『ジョウホウ、ジョウホウ』

 

 

 え?なんか頭が割れて光った板が出てきてる。

 

 

『タンマツ、タンマツ』

 

 

 ええっと、ここに携帯電話乗せればいいのかな?

 

 

『ショウニン、ショウニン』

 

「承認って、一体何を……」

 

『ミセ、ナイヨウ、ヒヅケ』

 

 

 店の内容の日付なぁ、なんか10日後の店の内容を知らせてくれるとか?

 

 

『メール、メール』

 

「え?」

 

 

 いきなり何かからメールがきた。

 発信者は矢澤ハコ……目の前のこいつか。内容は……10日後の日付に昼:うどん屋、夜:休みという内容……

 

 

「こいつ、心読みよった」

 

『カンガエル、メールクル』

 

 

 ……一体どういうことなんや。どういった原理でこっちの心を呼んでそれにあった情報をメールで送ってくるなんて……

 

 

「でもこういうのって関係ないメール送ってこやんの?」

 

『メール、ミセノナイヨウダケ』

 

「……わかったわ、ってか曜日がなくて看板がダメに成ったからこれになったっていうんか」

 

『セイカイ、セイカイ』

 

 

 ホンマにあの店長さん何者なんや。こんなん発展してるミッドでもオーバーテクノロジーちゃうの……

 

 

「なあ、はやて、そろそろ食わねえか?腹減っちまった」

 

「せやな。じゃあいこか、二人共」

 

「ああ」

 

 

 

 背後でニュウテン、ニュウテンと言っているハロもどきを無視して暖簾を潜る。

 

 店内は喫茶店のように広いけど、まるっきり内装が変わっていた。いや、おかしいやろ。毎日短期間リフォームでもしてるっていうんか。

 

 

「らっしゃい!何名様で?って、一昨日の」

 

「……店長、キャラ前とぜんぜんちゃうやん」

 

「いや、なんかこっちの方が今の店にはあってると思って」

 

 

 まあ、そうやけど……なんか納得できやん

 

 

「折角もう一回来てくれたんだ、今日は半分にまけてやる」

 

「お、良かったなはやて。ラッキーだぞ」

 

「……もうええわ」

 

「好きなとこに掛けて待っといてくだせえ!注文決まり次第呼んでくれたら向かいますので!」

 

 

 今日は3人ということなのでテーブルに向かう。

 ちゃんとラーメン屋らしく、ホワイトペッパーにブラックペッパー、ニンニクに唐辛子、爪楊枝に割り箸、小皿が置かれてる。なんか小さな壺みたいなのもあるけど……

 

 席に座って壺を開けようとする。

 

 

 目の前に水の入ったコップが現れた。

 

 

「なあはやて、おかしくないか?」

 

「何も言わんでええでヴィータ。私も思っとるから」

 

「……いつ置かれたのかが全くわからなかった…」

 

 

 気を取り直して壺を開けてみる。中には美味しそうな高菜がある。よう見たらテーブルの横にある壁に貼られた紙に高菜のおかわりはお一人様一回までと書かれていた。

 高菜は後で貰うとして、メニューを開く。

 

 ああ、普通のラーメン屋とは違ってこれといったコダワリがないのだろう。醤油ラーメンから味噌ラーメンや豚骨、基本的な物を抑えてある。鶏ガラも美味しそうやし迷いどころや……

 サイドメニューは普通に餃子とかがあるって感じか。炒飯もあるねんな……

 

 

「ヴィータは何食べる?」

 

「何でもいいけど、結構ガッツリ食べたいな」

 

「じゃあ豚骨チャーシューかな。ザフィーラは?」

 

「私はこのスタミナラーメンというものを……」

 

 

 じゃあ、私は……あれ?この一番下のラーメンだけ変やな。スペシャルラーメン?途中で味の変わる?ちょっと気になるな……これにしよか。

 

 

「てんちょー!」

 

「はーい。ご注文はお決まりですか?」

 

「えっと、豚骨のチャーシュー麺にスタミナラーメン。それとスペシャルラーメンって奴と餃子3人前でお願いします」

 

「かしこまりました」

 

 

 メニューを置いて高菜を小皿に盛る。

 蓋をして視線を前に戻すと、そこには美味しそうなラーメンに餃子がある……

 

 

「なあはやて……」

 

「何も言わんでええでヴィータ」

 

「……全く見えなかった……」

 

「……まあ食べようか……頂きます」

 

「「頂きます」」

 

 

 割り箸を割り、麺をすする。

 おお、美味しい。少しこってり系の豚骨ラーメンって感じや。具の海苔も美味しい。チャーシューも一級品や。麺にスープが絡みついてすごい味わいになってる。箸が止まらへん……

 

 

「はやて!ギガうまだぞこれ!」

 

「確かに、この旨味の中にある辛味、食べたことがないほどだ」

 

「これは凄いなぁ。餃子もすごく美味しいし」

 

 

 これでラーメン400Gって安すぎとちゃう?

 

 って、なにこれ!食べてる途中でいきなりスープの味が豚骨から魚介に変わった!

 

 

「へっへっへ、驚いたかい?お客さん」

 

「一体どういうことなんや!なんの前触れもなくいきなり魚介スープになったで!」

 

「簡単なことよ。お客さんが食べる速度を予想して、いい具合に溶けるようにたっぷり魚介エキスを閉じ込めた玉を落としておいたのさ」

 

 

 一体何者なんやこの店長!キャラが一昨日と全然ちゃうやん!

 

 

「何でこの店が繁盛してないんや!味も値段も最高やん!」

 

「いやぁ、日替わりで変わるからじゃないですかね」

 

「わかってて何でやってるんよ!?しかもキャラぶれぶれやで!」

 

「あ、すいません」

 

 

 いやいや、謝らんでもええんやけど……

 

 

「おかわり!!」

 

「へいお待ち!」

 

 

 いや、ラーメン屋でおかわりがノータイムで来るってどういうことなんよ……

 お待ち、って全然待ってないで……ヴィータ、もう気にもせずにどんどん食べてるわ。私も気にしやんほうが良さそうやな……

 

 

 

「私にももう一杯貰えないだろうか?」

 

「へい、かしこまり!」

 

 

 ってかホンマに美味しいな。この値段やしちょくちょく来るのも有りやな……

 

 

 

 後、この店長の正体も確かめやなあかんし……地球に密航してたら流石に見逃せやんのよな……

 でもこんな状況でいつ買い出しに行ってるんやろか……

 

 休みの日もあるけど、半日で往復はいくらなんでも無理がある気がする……誰かに送ってもらってるんやったら犯罪でもないから問題ないんやけどなぁ……

 

 

 一昨日の口ぶりから察するに自分で買いに行ってるっぽい……どうしたらええんやろ……

 

 あ、高菜美味しい。

 

 


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