【管理局聖王教会内部】
「そう言えば何か解ったことなどはありますか?」
「あ……」
ある一定の期間に私達はここに集まって予言について話し合う。メンバーは私、カリム、リンディさん。後は通信でクロノ君。
と言っても、今回は色々と立て込んでいて予言のことはすっぽりと頭から抜けていたんやけど……
「もしかして忘れていたのですか?」
「いやぁ、ごめんな。ちょっと忙しかったから」
『機動六課の設立理由を忘れるのはどうかと思うが』
「まあまあ、はやてちゃんも大変だったんだし」
『母さんは最近といえば居酒屋の話しかしてないじゃないか』
「うっ!」
居酒屋かぁ、確かリンディさんも典矢の店に行ってるんやったよな。私らは居酒屋の時は行ってないから会わへんけど……
まあ、それはさておき予言のこと。調べたりはしてないけど今なにか思いつくかも知れやん。
――王の翼、無限の欲望が交わりし地
――大地の法と蒼き機械が対峙する
――法の者は地に伏せ、王の器は新たな翼を手に入れん
――青き機械が堕ちる時、天よりの使者が現れ終止符を打つであろう
以前にカリムが予言した内容。正直何がなんやらさっぱりやった。今もあんまりわかってないけど、この中では管理局に何かしら大変なことが起きるとカリムは睨んでいる。
大地の方……多分地上部隊の事やと思うんよな。だから私達が何かあった時のために動けるように機動六課を地上部隊に設立して戦力を集めたねんけど……
「私の方では新たな情報は得られませんでした……」
「うーん、私は忘れてて調べてすら無いけど何か引っかかるなぁ」
重要な言葉は……王とか蒼き機械?
何か出かかってんのやけどなぁ……機械といえばハコちゃん思い出すけどあの子青色違うし……
王って聞くとオリヴィエのクローンであるヴィヴィオを思い出すんよなぁ……流石に違うと思うけど……
「なあカリム?一個聞いていい?」
「はい、何でしょうか」
「聖王ってさ、何か翼みたいな物持ってなかったん?」
「はぁ……どうして聖王様の話が出たのかはわかりかねますが、翼というよりは兵器としてゆりかごと呼ばれる飛行戦艦がロストロギアとしてありますね」
へ?そんなのあるん?解釈としては翼として言えやんこともない……
「と言っても聖王様が居ないかぎり機動すら出来ませんよ?子孫でしたら可能性もありますが聖王様に子孫などは居ませんし」
「………」
あかん、もしかしたら予感的中したかもしれやん……よくよく考えてみたらおかしいんや。なんで今さらヴィヴィオが誕生したんや。一体誰が、何の目的を持って……
予言の中で見れば、無限の欲望か蒼き機械ってところが怪しいかな……どちらも見当がついてないけど…
『どうして聖王の名前が出てきたんだ?はやて』
「うーん………正直話したないんやけどなぁ」
「教えてちょうだい。もしかしたら重要な事かもしれないから」
「じゃあさ、カリムには一つだけお願いすることがあるねん。今から話すことを聞く上で……」
「わかりました。無茶な要求でない限り聞きましょう」
まあ、この3人やったら信頼できるし大丈夫やろ……
「あんな、私聖王のクローンに会ったねん」
「は?」
「へ?」
『なんだと?』
ああ、やっぱり驚いてるかぁ。まあしゃあないよね。私もいきなり聞いた時はものすごく驚いたし……
「ちょ、ちょちょちょ待ってください!え?聖王様のクローン?知りませんよ!そんな話!」
「こうなると思ったから言いたくなかったんよ。でもカリム?お願いっていうのはそのクローンを聖王教会で保護するなんてことをしやんといて欲しいってことなんよ」
『どういうことだ?』
「あんな、正直あの子に会ったんは偶然やったんよ。私がよく行く店におるんやけど、そこの店長が引き取ったらしいねん」
「一体聖王のクローンを引き取るってどういうことよ……」
「さあ?何でも知り合いに頼まれたらしいで。まあ、クローンやって聞いたのはプレシアさんからなんやけど……」
『その事をその店長は知っているのかい?』
「まあ、知ってるよ」
私の落とした爆弾に3人は深く考えこむ。まあ、こんな予言があって、死んだはずの王のクローンがおるって聞いたら、まあ色々と考えこむよね。
でもヴィヴィオが作られた理由かぁ……最初は聖王教会の誰かの仕業やと思ったけど、それやったら流石にカリムが何かに勘付くやろ。それがないってことは全く違う人ってことになるけど……
「……これは問題かもしれませんね」
「まあ、リンディさんは会ってるはずやけどなぁ」
「へ?私が?」
「ほら、ヴィヴィオですよ。あの金髪でオッドアイの」
「え!?本当に!?」
『母さん……』
ああ、クロノ君が呆れてしまった。まあそうよね、多分私達よりリンディさんの方が会ったのは早いやろし。それで気付かんのは……
仕方ないか。私達もプレシアさんに言われるまで全く知らんかったんやし。まあ、会った日に言われたんやけど……
「兎に角!少し整理したほうがいいかもしれませんね」
『確かに、無関係とは思えないな』
「まあ、もしヴィヴィオがそうだと仮定してや……予言の王って所に当てはまりそうやな」
「いえ、王の器がヴィヴィオちゃんでオリヴィエが王じゃないかしら?」
「似たようなものだと思いますけど……」
テーブルの上の紙に予言の注釈を書いていく。
とすれば王の翼はゆりかごってことになるかな。
「私も見たいです。写真か何かは無いのですか?」
「ああ、それがなぁ。あるにはあるんやけど見ることが出来ないんや」
『一体どういうことだ?』
「ヴィヴィオのボディガード役がおってな。そいつのせいでどの端末を使ってもどの回線を使ってもヴィヴィオの直接の知り合い以外が見てる時はヴィヴィオに関するデータを開示できやんのよ」
『そんな無茶苦茶な……』
正直私もそう思う。接してきて間隔が若干狂ってる気がするけど、今思ったら近くに居ない相手に対して感情を読み取ってメールするとかぶっ飛んでるとしか言いようが無い。
「まあ、ボディガードや店長の写真はあるで」
「見せてください」
取り敢えずハコちゃんと店長、そしてフェイトちゃんが話している写真を見せる。
「……あのはやてちゃん。もしかしてボディガードってハコちゃんの事?」
「そうやで、リンディさん」
「……いや、まああの子はおかしいわね。確かに」
「え?一体誰ですか?このカウンターでフェイトさんと話している方のことですか?」
「ちゃうちゃう。このカウンターの穴に嵌って寝てる子よ」
緑色の球体の機械を指して言ってあげる。流石にそれには度肝を抜かれたようでカリムは唖然とした顔を、クロノ君は額に手をおいていた。
「そ、それにしても店長さんは随分と若く見えますね。あとフェイトさんは楽しそうです」
「まあ、店長は15歳やから実際若いよ。あとフェイトちゃんの場合は一応旦那やからな」
静寂が部屋を包んだ。リンディさんも今の言葉に絶句して此方を見つめてくる。
クロノ君は抑えている手を両手にしていた。
『運営法に違反していないのか……』
「因みに私となのはちゃんも旦那ってことになってるで」
「どういうことですか!?」
「そうよ!私初耳よ!?」
『……ああ、まあそれは置いておこう』
「「置いておけるわけない!!」」
うわぁ、二人共凄い剣幕やわ。
まあ、衝撃やろからなぁ、私も今でもあんま実感ないし……なのはちゃんはヴィヴィオがおるからあんま意識してないけどフェイトちゃんはプレシアさんのせいで物凄く意識してるんよなぁ……
見た目はいい。料理はうまい。性格もいい。時々天然入ってるところも母性本能がくすぐられる。こちらが知らないことも知ってるけどそれをひけらかさない。
考えてみたら優良物件よなぁ……金銭感覚おかしいけど、お金は持ってるらしいし……
「く、詳しく聞かせてくれないかしら?」
「そうですよ!是非とも彼との馴れ初めを!」
「まあまあ、それは今度話すから。でもほんまに頼むで?カリム。この店長、正直ぶっ飛んでるからヴィヴィオを保護とかせんといてよ?」
「うう、どうしてもダメでしょうか?」
「もし無理矢理連れてったとしたら店長が大暴れして管理局が滅びるか、それこそとんでもない機械を創りだして………」
いや、まさか……なんかいやぁな事を思いついたというか……わかったというか……
『どうしたんだ?はやて』
「あ、あんな。もしヴィヴィオちゃんが王としたら…店長もこの予言に関わってくると思うんよ……」
『まあ、そうだろうな』
「……蒼き機械…私この予言の内容がちょっと解ったかも……」
「本当ですか!?」
「推測も入るんやけど聞く?」
「ええ。正直もう既に一杯一杯だけど聞かせて」
「まず最初に言っとくけど、この店長はミッドチルダでもオーバーテクノロジーって言える位の機械を作れるんよ。やろうと思えば一瞬で」
『……無茶苦茶な話だ』
「で、それを知った上で聞いてな。もし、地上部隊が何かしらヴィヴィオちゃんに手を出したとするやろ?」
「ええ」
「そしたら店長怒ってとんでもない機械を作るかも知れやんのや」
「……蒼き機械」
「それで地上部隊と戦うっていう事ちゃうかなぁって思ったんよ。まあ、勝手な推測やから宛にはならんけどね」
あははと笑いつつ、頭をかく。
冗談っぽく言ってみたけど、3人の顔は険しいままだ。言ってみたけど私が言ったことは当てはまるっていうのが問題なんよなぁ……
どうしたものか……
と、いきなり私の電話がなりだした。通話相手を見るとリインからや。一体どうしたんやろ。何かあったんかな。
「どうしたん?何か問題でも起こった?」
『大変ですよ!はやてちゃん!今本部から通信が来て、ジェイル・スカリエッティの本拠地が判明したから地上部隊全部隊で強襲をかけると通達が来ました!』
「なんでうちら六課にも来るんよ。専門外やろ?」
『それが、よくわからないのですが、命令で六課も確保に向かえ。との事らしいです!』
「わかった。直ぐ戻るわ」
電話を切り、私の通信を聞いていた3人に視線を向けて、一言だけ残して部屋から出た。
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『ふむ……通信傍受が切れた。いや、妨害か?』
『一体何なのだ、このドナ◯ド・マクド◯ルドと言うものは』
『だがしかし、今の会話、無限の欲望……』
『あの4人はまだ泳がせておいていいだろう。問題は……』
『ああ、ジェイルか。盗聴を切断するなど出来るのは奴しかあり得まい』
『奴め、余程今の会話を聞かれたくなかったらしい』
『だが、これで奴の裏切りは確実のものとなった』
『上層部へ司令を出す。ジェイル・スカリエッティを始末せよ』
『裏切り者には断罪を』
(ドクター……ついに最高評議会が動き出しました)
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【とある研究所】
「そうか、とうとう最高評議会が動き出すか」
「……どうしますか?ドクター」
「仕方ない。背に腹は変えられないよ。彼に助力を願うしかないね」
「間に合わなかったのですか?」
「ある程度はできたけど、完全には無理だったよ」
「では、お電話をお持ちしますね」
「頼むよ」
「入るぞ、スカリエッティ」
「よく来てくれたね、ゼスト君」
「一体何のようだ?ルーテシアも連れて来いなど…」
「えっと、今から管理局の地上部隊がこの研究所を襲いに来るんだよ」
「……迎撃でもしろというのか?」
「いや、君達には逃げてもらうよ。ここに魔力痕跡を残さない転移装置がある。それで脱出するんだ」
「……どういうつもりだ?」
「なに、君達を抱えきれなくなったから放り出すってことさ」
「……そうか……貴様の娘達はどうするつもりだ?」
「……あの子達は残るらしいよ。本当はその装置も渡したんだけどね…」
「……貴様はいつものように逃げないのか?」
「私にはやることがある。何、頼りになる友人がいるから大丈夫だよ」
「貴様の心配はしていない。だが、この装置、ありがたくもらっていく」
「じゃあね、
「……ふん」
さてと、こっから真面目になる(かも)