天使の飲食店   作:茶ゴス

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結構飛びます。
正直作者も3ヶ月程度飛ばす予定がなのは達が数えで19歳を名乗っていたのに気づいたため更に1年飛ばすハメになりました。


第37話

【高町家】

 

 

「俺は今から翠屋の方へ行くけど、何かあったら連絡しろよ?」

 

「もう、私も二十歳になるんだから心配しなくていいよお兄ちゃん」

 

 

 ヴィヴィオに会えなくなってからもう随分経った。機動六課も解散したし今では概ね教導隊での仕事ばかりだ。

 何も言わない典矢君には何度も詰め寄ったけど相変わらず進展はない。あまりに詰め寄りすぎて管理局では変な噂も立っているし、ふんだり蹴ったりだ。

 

 フェイトちゃんは相変わらず典矢君にべっとりで偶にヴィヴィオへのプレゼントを典矢君に預けて渡してもらっているみたい。私も色々と送ったけど、ちゃんと受け取っているのだろうか。ヴィヴィオも来年からは小学校に通う年齢のはずだし、ちゃんと出来るかな。典矢君のことだからちゃんと考えてるとは思うけど……

 

 とまあ、それはおいておいて。私は年末年始の休業に故郷である海鳴に帰ってきていた。今もこたつに入りながらのべーっとしている。

 なんで一人で寂しくいるのかには理由はあるようでない。フェイトちゃんやはやてちゃんは大掃除で忙しいし、アリサちゃんとすずかちゃんは昼間からお酒を飲みに行ってしまったみたいだ。私は誕生日が遅く二十歳にはなってないので遠慮したのだけど、これなら行ったほうが良かったかな。

 

 

「にしても、大掃除終わってるなんて考えてなかったよぉ」

 

 

 フェイトちゃんやはやてちゃんと違って海鳴の家に家族がいる私はお父さんたちが既に済ましてしまっていることがある。正直毎年そのことを忘れて結局大掃除していないのだけど、こうなると暇になってくるのだ。かといって大掃除を手伝いに早めに帰る事も出来ないし、毎年この暇な時間を過ごすしか無いのだ。

 

 こんな時典矢君がいれば時間を潰せるのに……まさか管理局に残るとは思わなかったなぁ。分身だから本体ではないけど。

 そう言えば前にハコちゃんも見かけた。私の顔を見た瞬間ものすごい勢いで逃げられたけど……あんなに速く逃げなくてもいいのに。ちょっとヴィヴィオのことを聞こうと思っただけなのに。

 

 こうなったらフェイトちゃんの家に大掃除手伝いに行こうかなぁ。迷惑かなぁ。

 

 

「ん?」

 

 

 突然端末が鳴り出した。画面にはアリサちゃんの名前。今はお酒飲んでるはずだけど……

 

 

「もしもし、どうしたの?アリサちゃん?」

 

『あ、なのはぁ?あんたなんでこないのよぉ!!』

 

 

 端末から聞こえる声は何だかいつもより甲高くて間延びしている変な声だった。

 うん、もしかしなくてもだけど。

 

 

「アリサちゃん、酔ってる?」

 

『酔ってないわよぉ。それよりはやくきなさい!!』

 

「絶対に酔ってるよ!」

 

 

 私の声にアリサちゃんは笑い声をあげる。それから察するに物凄く酔っているのだろう。少し見てみたい気もする。まだ昼過ぎなのにべろべろに酔っ払ってるなんてアリサちゃんらしくないし。でも、今行ったら巻き込まれるよね。正直大変だと思う。

 

 行くか行かないか迷う所だけど……

 

 

『あ、すずか!あんた私のチーズ取ったわね!!』

 

『えへへ、ちょっとくらいいいでしょ?』

 

『まあいっか。典矢!追加よろしく!!』

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 私が迷っている間に聞き逃せない言葉が聞こえてきた。

 今アリサちゃん、典矢って言った?

 

 

「アリサちゃん?」

 

『どうしたの?なのはぁ』

 

「今典矢って言ったよね?」

 

『うーん、覚えてない―!!』

 

 

 

 駄目だこれ。取り敢えず確かめないといけない。もしかすれば本当に典矢君かもしれないし。

 

 

 

「私も今から行くからどこにいるか教えてくれる?」

 

『えっとねぇ、何処だっけ?あはははは!!』

 

 

 

 アリサちゃんはだめかもしれない。

 

 

 

『すずかぁ。ここって何処?』

 

『海鳴図書館前の道路沿いにあるエンジェルってバーだよ、なのはちゃん』

 

『だってー!!』

 

 

 

 うん。間違いなく典矢君の店だろう。

 まさか地球の海鳴で店を開いてるなんて。ある意味灯台下暗しだったよ。

 

 

 

「待ってて、今から行くから!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 準備をして私は走った。運動音痴な私が陸上選手顔負けで走っているのは気にしない方向で行こう。魔力で強化とかしていないよ!

 

 とまあ、誰に言い訳してるかもわからない事はおいておいて、海鳴図書館前の道路沿いにある、建物の一角にあるエンジェルという店。同じ建物だけど隣にはstartedという名前のパン屋がある。外から見てみればレジに立つ銀髪の女の子がいる。日本ではまずみない髪の色だし、典矢君の関係者だろう。だって、エンジェルstartedって天使始めたってことでしょ?流石に偶然とは思えない。

 

 取り敢えず、エンジェルという店に入る。

 カランカランと音がなり、窓がないから暗いと思ってたけど淡い証明が案外店の中を明るく照らしている。入ってすぐにアリサちゃんの笑い声が聞こえる。

 

 

 

「あ、なのはだぁ!!」

 

 

 

 奥に進んでみれば案の定カウンター席に座るアリサちゃんとすずかちゃんの姿が。そして、そのカウンターには。

 

 

「典、矢君」

 

 

 見間違うわけがない。彼の姿があった。

 いつも食堂でフェイトちゃんの弁当を食べている彼を見ていた。でもそれは彼ではなかったのだ。今ここにいる典矢君こそが本物。

 

 あの時は会えるのは直ぐだって言っていたのに1年も経ったよ。ヴィヴィオにも会いたかったけど、君にも会いたかったんだよ?

 

 

「早く来なさいよぉ!!」

 

 

 

 アリサちゃんの声は無視して私はカウンターでコップを拭いている典矢君に近づく。

 私がここにこれたってことはもう来るべき時が来たってことなんだよね?

 普通に考えればありえないけど、典矢君ならば未来が見えていてもおかしくない。彼なら何が出来ると言われても驚かないだろう。寧ろ出来ないと言われる方が驚くくらいだ。

 

 

 

「ねえ、典矢君。久し振りだね」

 

「なに?なのは典矢と知り合いなのぉ?」

 

「ちょっと黙ってて!アリサちゃん!」

 

 

 

 すずかちゃんにお腹を殴られて唸っているアリサちゃんを放置して典矢君を見つめる。ミッドチルダにいた頃よりも表情が豊かになっているね。苦笑しながらこちらを見ている。

 

 

「で、今度こそ理由を教えてくれるんだよね?」

 

 

 結局これまで色々とはぐらかされてきたんだ。もう教えてくれてもいいだろう。もし話さないっていうのなら……

 敵わないかもしれないけど、管理局のエースとして精一杯頑張らせてもらうよ。具体的に言えばフェイトちゃんのお弁当に細工をしたり。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは私がお答えしよう!!!!」

 

「アクセルシューター」

 

 

 

 

 

 

 いきなりカウンター横の扉が開き白衣を着た男、ジェイル・スカリエッティが現れた。

 とっさに魔法で迎撃したけど私は悪くないよね?驚いちゃったんだし正当防衛だよ。

 

 

 

 

 

「お、落ち着きたまえ。そんな怖い顔をしていればしわになって……あ、すいません、なんでもないです」

 

「なんで貴方がここにいるの?」

 

「愚問だ!私はここの店員。いや、今は典矢君をオーナーとしたパン屋の店長を務めているのさ!!」

 

 

 

 予想外な事だった。まさか犯罪者を雇うなんて思わなかったよ。もしかして私たちに話せなかったのってこの男のせいなんじゃ……

 いや、確かはやてちゃんだけ言えないって言ってたしまた違うことかな。

 

 

 

「と、取り敢えず理由を言えば典矢君は何も悪くないのだ!」

 

「ふーん……」

 

「悪いのは全て彼女なのだ!!」

 

 

 

 彼女……女か。なに?新しくヴィヴィオのお母さんでも出来たの?それだったら私ちょっと典矢君に言いたいことが有るなぁ。

 あれ?どうしたの?アリサちゃん。私は怒ってないよ?

 

 

 

 

「そう言えばヴィヴィオはどうしたの?典矢君」

 

「ハコと魚取りに行ったよ、すずかさん」

 

「そうなんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【海鳴公園】

 

 もう、母さんにも困ったものだ。大掃除はやらなくてもいいって……流石に困っちゃうよ。最近は典矢のことであまり母さんに会えてなかったからプレゼント渡したら感動のあまり大掃除を一瞬で終わらすなんておかしいよね。

 母さんも典矢みたいにとんでもない人種だとすこしだけ思うな。

 

 それにしても買い出しかぁ。もうお正月用のご飯はあるし、後は母さん用のお酒とかかなぁ。

 でも私一応お酒買えるけど、どれがいいなんてわからないよ。こんな時典矢がいてくれたらいいのに……典矢に会いたいな。

 

 ん?なんだろう、この曲。どこかで聞いたことがあるような……

 

 

 

「ハコちゃん!準備はいい!!?」

 

『ウン!!』

 

 

 

 

 確か、前にはやての所のテレビで見た無人島生活の時にかかってた曲だったかな。

 

 

 

 

「いくよ!!」

 

『レマゲンテッキョウ!!』

 

 

 

 

 えっと、こうウェットスーツを着た男の人が銛を持って海に飛び込んでたっけ。

 

 

 

 

「海へ!!」

 

『ピョーン!!』

 

 

 

「何でヴィヴィオがいるの!?」

 

 

 

 

 

 信じられない光景に思わず思考を変なほうにやっていたけど、見過ごせない。というか突っ込みどころが多すぎる。はやてがいたら今頃ツッコミの嵐にあふれていただろう。

 どうしてこんな所にヴィヴィオがいるんや!とか、何で海に飛び込んでるねん!とか。

 

 

「え!?冬の海に飛び込んでる!?ちょっと!ダメだよヴィヴィオ!寒いよ!?」

 

 

 私は急いでヴィヴィオがいた場所まで走る。隣にハコがいた気もするけど気にしない。

 ヴィヴィオが飛び込んだ後の海面には泡が立ち込めており、今のが幻ではないのがわかる。

 流石にこんな中で海に入ったら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「取ったどー!!!!」

 

『トッタドーー!!!』

 

 

 

 

 

 

 心配して見ていると、タコが刺さった銛を持っているヴィヴィオとカジキマグロが刺さった銛を咥えているハコが海面に現れた。

 

 

 

 

 

「あ、フェイトママだ!!!」

 

 

 

 

 

 取り敢えず、ヴィヴィオをお風呂に入れたらいいかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 一年の間殆どいない家を大掃除中、チャイムが鳴り響いた。

 手が空いているのもおらへんし、私が玄関に向かった。

 

 その時は何とも思ってなかったんやけどな。今思えば何かを予感していたのかもしれない。

 

 

 私は玄関の扉を開けるのを一瞬戸惑った。

 

 

 何故かはわからないけど、そう思った。

 

 

 

 そして、扉を開けたんや

 

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【海鳴市八神家】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「主、お久しぶりです」

 

 

 

「リイン、フォース……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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