天使の飲食店   作:茶ゴス

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第39話

「ほんまに、ほんまにありがとう!」

 

「……」

 

 

 あれから暫くしてからはやてちゃんは店にやってきた。ヴォルケンの皆にリインフォースさんの姿も見える。本当に生き返ったんだね。典矢君ってやっぱり規格外だなぁ……

 

 

「典矢、キツイの一杯くれ」

 

 

 よく典矢君の店に通っていたヴィータちゃんは早速カウンターに座ってお酒を注文している。平静を装っているけど、嬉しいのがバレバレだね。リインフォースさんが帰ってきた事もそうだけど、典矢君に会えたのが嬉しいんだね。ヴィータちゃんも典矢君がいなくなって落ち込んでたし、仕方ないよね。

 

 ヴィータちゃんの横ではザフィーラさんがいつの間にか現れた肉を食べている。機動六課ではいつも守護獣の姿で肉を食べてなかったからいっぱい食べておくのだろう。

 というより、はやてちゃんの家では食べてないのかな。

 

 

「失礼」

 

「構わないよ」

 

「なのはもここにいたのか」

 

「あそこで寝ちゃってるアリサちゃんの連絡を受けてね」

 

 

 シグナムさんが私達の座っているテーブルの椅子に座ったのを見てからカウンターで一升瓶を抱えて床で寝てしまっているアリサちゃんを指差す。

 アリサちゃん日本酒飲んでたって訳でもないのに、眠ってから典矢君が布団を引いて一升瓶をそっと持たせていたんだよね。つい面白くて写真撮っちゃったよ。

 すずかちゃんは相変わらずニコニコしながらお酒を飲んでる。強いんだね。

 

 

「まさか今年最後にこんな事になるなんて思わなかったな」

 

「そうだね、私も驚きすぎてもう何がなんだかわからないよ」

 

 

 はやてちゃんは感極まったのか典矢君を抱きしめている。まあ、分身か本体かはわからない状況だけど、涙を浮かべて笑っているはやてちゃんを見れば、どっちでもいいのだと思う。

 失った家族が帰ってきたのだ。嬉しさの余り泣いちゃうのは仕方ないよね。

 

 

「所でヴィヴィオはいないのか?てっきりいるものだと」

 

「ふむ、ヴィヴィオ君ならばハコ君と魚釣りに行っている筈だ」

 

「成る程、情報感謝する。所で貴方は?」

 

 

 ヴィヴィオかぁ。そう言えばリインフォースさんが来たっていうんだったら、文句を言わないと。だってあれなんだよね?リインフォースさんがヘタレたせいでヴィヴィオの運動会とか見れなかったんだよね?許しがたいよ。というかスカさん達と典矢君、ハコちゃんにリインフォースさんの集団で応援に行ったなんて、羨ましすぎるよ。

 

 ハコちゃんがまた無駄に有能な所を見せて映像がみれなかったし、今の私は少し怒ってるよ。

 

 

「よくぞ聞いてくれた。見ての通り私は典矢君に雇われ、パン屋の店長兼科学者をしている者だ!」

 

「ついでに元犯罪者」

 

「成る程………犯罪者?」

 

「ふむ?私は今は犯罪者ではないのかね?」

 

「聞いてないの?貴方に手を出すのは危険だからって手配が取り消されたの」

 

「………いや、明確には知らなかったよ。というより、殆ど半信半疑だったさ。まさかそんな事をしでかすとは……」

 

「うん、典矢君のせいだね」

 

 

 最高評議会に入るって正直意味がわかんないよ。

 最近いろんな部隊で支給されてるデバイスも性能が上がったって話だし、典矢君が手を加えたのかなぁ……

 

 

「名前を聞かせてもらおうか」

 

「察しているだろう?私はジェイル・スカリエッティ。典矢君の友人だ!」

 

「………なのは、こいつを逮捕しなくていいのか?」

 

「いいよ。ヴィヴィオにも良くしてくれてるし、本人は悪い人じゃなさそうだし」

 

 

 そんな事よりも悪いのはリインフォースさんだ。目があったので、目配せしてこっちに来てもらう。

 

 

「いや、しかしだな……」

 

「ちょっとシグナムさんは黙ってて」

 

 

 不思議な顔を浮かべてこっちに来たリインフォースさんへ笑いかける。

 そして、何故か少し強張った表情を浮かべたリインフォースさんへ私は出来るだけ優しく語りかけた。

 

 

 

 

 

 

 

「正座」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

「大漁、大漁!」

 

『タノシカッタネー』

 

「多すぎだと思うんだけどなぁ」

 

 

 海からあがり、ヴィヴィオから渡されたスーツから着替えた私はヴィヴィオを先頭に典矢が新しく始めたという店に向かっている。

 今日の釣果と言っていいのかわからないけど、取れた魚の量は石鯛2匹、黒鯛1匹、ヒラメ2匹、カレイ1匹、タコ2匹、鰤1匹、カツオ2匹、イカ1匹、サザエ3匹、それとカジキマグロ1匹。正直色々とおかしな魚がいるだろうけど、気にしないでおこう。因みに私が獲ったのはサザエだった。

 一度こういうのって漁業権とか大丈夫なのかハコちゃんに聞いたら、ヴィヴィオの関係者は大丈夫なように典矢がしたと言っていた。何をしたのかは教えてくれなかったけど、それについても気にしない事にした。

 こんなに多くの魚を持てないと思ったけど、ヴィヴィオが目の前に大きな穴を作ってそこに魚を放り込んでるのを見て、私は深く考えないことにした。

 

 

「今日はお刺身食べたいね」

 

『ネー』

 

「美味しそうだね。私も貰っていい?」

 

「いいよ!足りなかったらハコちゃんが獲ってきてくれるし!」

 

 

 うん、一瞬納得しかけたけどハコがヴィヴィオの言葉に衝撃を受けたような顔をしているよ?

 まあ、ヴィヴィオが嬉しそうだしいいかな。

 

 あ。母さんにも連絡しておこう。典矢の店が無くなって少し元気なかったし。年末の忘年会って事でお酒も飲みたいだろうし。

 

 

「あ、彼処がパパのお店だよ!」

 

 

 ヴィヴィオの指差す方向にあるのは大きめの建物。その左側にあるエンジェルと書かれた看板の店。隣のパン屋さんからもいい匂いがするな。また後で行ってみよう。

 

 

「いこ!フェイトママ!」

 

「うん。行こうか。後、ハコ。足りなかったら私達が買ってくるし気にしなくていいよ?」

 

『ダ、ダイジョウブ。ヴィヴィオノキタイウラギレナイ』

 

 

 気持ちはわかるけど、そんなに気負わなくてもいいよ。私はヴィヴィオのお母さんなんだから私も色々としてあげたいんだ。

 

 

『ワカッタ!アリガトウ!フェイト!』

 

 

 そう言えばハコも言葉に出さなくても解るんだったね。ふふ、取り敢えずどういたしましてと言っておくよ。

 

 

 

 

「ただいまぁ!!」

 

『マー!!」』

 

「お邪魔します」

 

「うー?フェイトママ。ただいまだよ?」

 

「ふふ、そうだね。ただいま」

 

「おかえりー!!」

 

 

 ヴィヴィオが元気よく扉を開けたのでそれに続いて私も中に入る。

 カウンターでコップを磨いているであろう典矢へと視線を向ける。

 

 

「………」

 

 

 店の中が色々と大変なことになっているけど、気にしない気にしない。

 

 

「はやて。取り敢えずどこうか」

 

「ん?フェイトちゃんも来たんか」

 

 

 何故かはやてに抱きつかれてる典矢のところに向かって歩いて行く。ヴィヴィオは……一升瓶を抱えて寝ているアリサの所へ行ったみたいだし、大丈夫だろう。

 

 

「はやて、それは私の役目だと思うんだ」

 

「もうちょっと待ってな。典矢に感謝の気持ちをしっかり伝えやんとあかんねん」

 

「………」

 

 

 よく見ればはやてが少し泣いてるのが解った。そこまで典矢に会いたかったのだろう。流石に邪魔は出来ないなぁ。

 仕方ない。分身だけど、今カウンターですずかの相手をしてる典矢の所へ行こう。私も20歳になったし、少しお酒飲もうかな。

 

 

 




オマケ
無人島でヴィヴィオとハコ、あとフェイトが生活した場合






「それでは!ちねりしたいと思います!」

『チネリ!チネリ!』

「小麦粉に水を入れて固めてチネリます!」

「大変そうだね」

「うん!フェイトママも頑張ろう!」




【1時間後】


「チネリ終わった!」

「大変だったね」

「それじゃあ、ご飯を炊こう!」

「じゃあ火を起こさないとね」

『ソンナコトモアロウカト、ココニスデニタイタモノガ!』

「流石ハコちゃん!!」

「………(ちねる必要無かったんじゃ……)」



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