天使の飲食店   作:茶ゴス

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第41話

「成る程、まさかとは思ったが、やはり過去の世界だったか」

 

 

 急に現れた2人の中で話のわかりそうな方、リインフォースへと事のあらましを伝えていた。

 様々な世界、いや、様々な時間の世界からここに飛ばされた者は他にもいる。今現在、高町なのはの周りをなのはママコールをしながらぐるぐると回っている二人のヴィヴィオに対してもそうだ。

 

 同じ時間軸に二人の同一人物が存在している。それは問題があるのかもしれないのだが、リインフォースはこの世界が既に己のいる世界ではないことを理解している。ヴィヴィオの名前が高町ヴィヴィオだということは未来の話なので解らないが、この世界においてありえないことが起こっている。

 

 リンディ・ハラオウンからの話を聞いている間に他の人達も現れている。その中に、この世界のリインフォースがいたのだ。

 しかし、彼女はこの事件の記憶はない。更に言えば闇の書事件の直後に消えている事は間違いがないため、ありえないのだ。

 

 この世界のリインフォースは何故か寿命が少し伸びたらしいのだが、そのような事は自分には起こっていなかった。

 

 ヴィヴィオの事も考えればここは自分達の世界の過去ではないことを理解できたというわけだが……

 

 

「なあなあ、リインは未来でも生きることが出来るんやね?」

 

「………」

 

 

 それを過去の主、この世界の八神はやてへと伝えることが憚れる。

 希望を持たしてもいいのかが解らない。もしかするとこの世界では自分が蘇ることはないかもしれない。上月典矢がこの世界においてはやて達と接触すれば蘇ることが出来るかもしれない。

 しかし、もしもう一人のヴィヴィオがこの世界におけるヴィヴィオだとするならば……高町ヴィヴィオと言う名前から察するに典矢とこの世界のなのはに接点はない。リインフォースの世界においてヴィヴィオとなのはが接点を持ったのは上月典矢がいたからなのだ。故にヴィヴィオが典矢と接点を持たずしてなのはと典矢が接点を持っているとは考えにくい。つまりは、はやてと典矢に接点がないということ。

 

 それでは蘇ることは出来ない。典矢がいたからこそ己を蘇らせることが出来たのだ。

 と言ってもこの世界において蘇らない保証はない。

 

 

「少し待っていてください」

 

「ん、わかった」

 

 

 リインフォースは己の考えの正確性を得るために高町ヴィヴィオの元へ向かう。

 

 

「一ついいかな?」

 

「あ、お姉ちゃん、どうしたの?」

 

「お姉ちゃん?えっと、リインフォースさんですよね?」

 

 

 高町ヴィヴィオの口ぶりからリインフォースとは家族という関係ではないことが察せられる。

 はやても母親の一人であることからそれは考えにくい……

 

 

「君の世界で私は存在しているか?」

 

「………」

 

 

 その無言に込められた意味をリインフォースは読み取る。無言は肯定と同意義とはよく言ったものでこれで自分が復活し得ない未来が存在することを理解した。

 一礼してリインフォースは次にこの世界のフェイト・テスタロッサの元へ向かう。

 

 この世界において自分の世界と同じように典矢と接触するか否かを確かめる方法は現状において一つしか無い。

 

 

「フェイト・テスタロッサ」

 

「は、はい」

 

「母親のプレシア・テスタロッサは……」

 

 

 リインフォースの言葉にフェイトの顔を俯かせた。

 この反応から察するに、プレシア・テスタロッサは既に生きてはいない。つまり、この世界では典矢がプレシアを助けていないということ。

 

 

「……悪かった。いきなり酷な事を聞いて」

 

「い、いえ!大丈夫です」

 

 

 見るからに元気の無くなったフェイトにリインフォースは罪悪感を感じながらも、はやての元へ向かった。

 下手に希望を持たせても仕方がない。まだ推測の域を出ない事ではあるが、この世界においてリインフォースは蘇らない可能性が高いのだ。

 

 

 

 

「主」

 

「ん。どうしたん?」

 

 

 はやての横にはこの世界の自分がいる。些か変な気分になりながらもリインフォースは重々しくその口を開いた。

 

 

「恐らく、この世界では私。リインフォースは蘇りません」

 

「な!?」

 

「………そうか」

 

 

 はやてにとっては一度は見えた希望が無くなった言葉。この世界のリインフォースにとっては何故かは分からないが理解できていた事。

 未来にリインフォースが存在して何故この世界のリインフォースが生きていけないのか。納得のできないはやては震える声で問うた。何故と。

 

 

「私を蘇らせた者、その人物が主達と接触していないのです」

 

「……リインを蘇らせた?」

 

「はい。そして、プレシア・テスタロッサを救った男。ヴィヴィオの父親がいないのです」

 

「そ、それじゃあ、もしその男の人を見つけられたら蘇るかも知れやんってこと!?」

 

「………そうですね」

 

 

 

 リインフォースの返答に僅かながら希望を抱くはやて。どうにか典矢を見つけ出せば家族を失わなくて済むと……

 

 

 

 

 

『ムリ』

 

 

 

 

 しかし、その希望は一体のロボットの一言で一蹴された。

 リインフォースの頭に着地する球体の機械。上月典矢が作り出した規格外の存在は寝ぼけた目をしながらはやてを見下ろす。

 

 いきなり現れ、いきなり否定されたはやては目の前の存在に困惑する。

 頭に乗られているリインフォースは口を閉ざし、矢澤ハコの言葉を待つ。その機械が語る言葉は基本的に真実であり、リインフォースが知り得ない情報を数多く有している。

 そんなハコが断言したのだ。確かな根拠を持った答えを持っているに他ならない。

 

 

 

 

「な、なんでや!」

 

『ゴシュジンハヒトリダケ。ドノセカイニモイナイ』

 

「ど、どうしてそんなことが!」

 

『ゴシュジンダカラ」

 

 

 

 ひどくリインフォースは納得してしまった。典矢の規格外さを傍で一年もの間見続けていたからこそ、その言葉が持つ魔力を知っている。しかし、はやては納得ができない。何故存在しないのか、何故自分の世界のリインが生きられないのか……

 

 

 

「なんでなんよ!なんで、なんで!」

 

 

 

 

「主」

 

 

 

 

 そのはやてを止めたのはこの世界のリインフォースだった。

 

 既に己の運命は知っていた。未来から来た自分に淡い希望を抱いたが、それは手の届かぬ幻想だと知っても、ただ「そうなのか」と理解するだけだった。

 もう覚悟は決まっていた。主との別れも、この世界で消えるのも。全てを受け入れていた。

 

 だからこそ、今も尚抗おうとするはやてにこの世界のリインフォースは語りかけた。優しい言葉で、ただ自分の気持を素直に。

 

 

「私は主に思われて幸せです。確かに、ずっと一緒に暮らせるのならもっと幸せでしょうけど、私はもう十分幸せなのです」

 

「リイン……」

 

「違う世界では貴方と歩める私もいるかもしれない。ですが、例え姿形は無くなろうとも、私の心は貴女と共にあります」

 

 

 幽霊として海鳴市にいたと聞かされたリインフォースは割りと洒落になっていないその言葉に少し冷や汗を掻きながらもはやてを見る。

 涙を浮かべ、一瞬俯くとゆっくりと顔を上げ、まっすぐと二人のリインフォースを見た。

 

 

「そうやね。もう時間もあんまりないんや。だったら一杯思いで作らんとな」

 

「はい!」

 

 

 涙はまだ出ている。しかしはやての顔には笑みがある。真実を伝えた罪悪感を感じていたリインフォースも少し重荷を下ろしたかのように心が軽くなったのを感じながらも、辛い役目を受け持ってくれたハコに心のなかで感謝する。

 

 

 

「う?はやてママ泣いてるの?」

 

「ん?ちっちゃい方のヴィヴィオちゃん、か」

 

「すぐおっきくなるもん!」

 

「はは、そうやね」

 

 

 なのはと遊ぶのに飽きたのか、こちらにやってきたヴィヴィオははやての顔を覗き込みながらはやてに笑いかける。

 

 

「えへへ、悲しいのどっかへとんでっちゃえー!!」

 

 

 はやてのお腹を一度触り、何かをどこかで飛ばすように手を振るうヴィヴィオにはやての顔が綻ぶ。

 人の悲哀を察することが出来るのは子供ゆえかもしれない。

 

 

「ヴィヴィオちゃんはいい子やね」

 

「パパとママ達の子供だからね!」

 

 

 その笑顔にはやては救われた。

 

 

 

 

 そして気付く。ヴィヴィオのおかしな言葉に。

 

 

 ――はやてママ

 

 ――ママ達

 

 

 

 

「なあ、ヴィヴィオちゃん。ヴィヴィオちゃんのママは誰?」

 

「フェイトママ!はやてママ!なのはママ!」

 

「………」

 

 

 高町ヴィヴィオは母親をなのはだと言った。そして、目の前のヴィヴィオは母親を3人あげた。

 

 一度目を閉じ息を吐いて落ち着く。

 

 

 そしてゆっくりと瞼を開き、バツの悪そうな顔をしているリインフォースへと視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういうこと?」

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