天使の飲食店   作:茶ゴス

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第44話

 砕け得ぬ闇の展開する結界内。赤黒い空間に囚われているなのは達は自分達の攻撃に全く動じていない少女の姿に少なからず動揺していた。

 皆が時間を稼ぎ、動きすらも止めてくれ、直撃したはずなのに無傷である。非殺傷設定ではあるものの何かしらのダメージを負わない筈がない。それなのに無傷であるということは単純に砕け得ぬ闇の防御力がずば抜けているということ。

 

 勝ち目がない。どれだけ相手の攻撃を凌いでも、どれだけ相手の動きを止めようとも。ダメージを与えられなければ勝ち目なんかはない。

 暴走を止めるにしろ相手を力で凌駕しなければいけない。

 

 しかし、なのは達にはその手段がなかった。

 

 最高威力を誇るであろうスターライトブレイカーも効かなかった。これが周囲の魔力が軽薄であったならばまだ望みはあっただろう。しかし、相手がばらまく魔力によってほぼ最大威力のスターライトブレイカーであったのだ。

 現状、彼女達に砕け得ぬ闇を倒す方法がなかった。

 

 

 それでも絶望している訳にはいかない。このままでは砕け得ぬ闇は暴走し、地球を崩壊させてしまう。どうにかシステムを掌握しなければいけない。

 

 砕け得ぬ闇の攻撃が激化する。魔力弾の一発一発の威力が上昇し、密度すらも上がっていく。爆音が一度響くが気にする余裕などはない。

 ザフィーラを筆頭に障壁を張るが、どの程度持つかは解らない。

 

 フェイトが隙を見て接近しようとするも直ぐに魔力弾の嵐に身動きが取れなくなる。ユーノ達も再度動きを止めようとバインドをしかけるもシグナム達の障壁では防ぎきれずに攻勢に出ることが出来ない。

 

 ジリ貧。砕け得ぬ闇は消耗する様子もなくなのは達を追い詰めていく。

 

 展開する障壁の魔力が足りなくなってくる。それに対し放たれる魔力弾は更に威力が上がっていく。

 

 

 

 

 

 

 そして、拮抗は敗れた。

 砕け得ぬ闇が魔力弾へ一層魔力を込めて放った。それは満身創痍で防いでいたなのは達に迫っていく。

 ユーノや近くにいるフェイト、クロノの方にも届く。

 

 

 

 その魔力弾は障壁をたやすく破り、今まで防いでいた魔力弾の弾幕が押し寄せる。

 

 直撃すればバリアジャケットごとやられてしまう。非殺傷設定ではなければ命だって落とすかもしれない。

 

 

 

 

 しかし、避けようにももう魔力弾は目前。打つ手がない。撃墜されればそれこそ地球が終わってしまう。

 なんとかしなくてはいけない。どうあっても砕け得ぬ闇を止めなければならない。

 

 なのはは動く。せめてシステムを掌握できるであろうディアーチェだけでも守れるように。未来の娘であるヴィヴィオを守れるように。

 

 障壁を貼っていたザフィーラの前に躍り出て、精一杯の障壁を展開する。

 

 

 

 

 

 だが、無情にもなのはの障壁を突き破られた。

 後は誰にも解る結果となる。無数の弾幕は無防備ななのはへと………直撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 全員が来たる衝撃に身体を強張らせ目を閉じた。

 一つ当たればそれを連鎖に無数の弾幕に襲われる。それは明確な事だった。ひとたまりもないであろうその攻撃に怯んでしまうのは仕方ないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 だが、何時までたっても衝撃はやって来なかった。

 

 

 目をゆっくりと開き、なのはは自分の前に立ちふさがる者の後ろ姿を見る。

 長い栗色の髪を左側で一纏めにし、白いバリアジャケットを身に纏った一人の女性。誰もが用意に障壁を破壊された筈の魔力弾を何でもないように障壁で防いでいる。どこか見たことがあるデバイスを持ったその女性は左手を前に突き出しながらチラリとなのは達を見た。

 その瞳が何を写しているのかは解らない。だが、その女性が何者であるのかをなのはは理解できた。

 

 

「わ…たし?」

 

 

 顔を洗うときにいつも対面するその顔。少し顔つきは違うし背の高さも違う。それでも彼女は自分であると不思議と理解できた。

 目の前の女性はなのはの言葉に少しだけ微笑み、視線を前方に向けた。

 

 

 

 

 ユーノたちの方も同様に一人の女性が現れていた。

 と言ってもしっかりと確認することはできていない。金色の髪を下ろし、黒いバリアジャケットを身に纏ったその女性は凄まじい動きでデバイスを動かし、迫る魔力弾を全て切り裂いている。

 恐らくは障壁では対処できないとの判断なのだろうが、それでもありえないといえる程の技量と選択だとシグナムは感じた。

 

 

「とり、あえず!みんな彼処にいる集団に合流して!」

 

 

 金髪の女性は魔力弾を切り裂きながらシグナム達へ指示を飛ばす。こうも離れていては守るのも一苦労と成る。ならば一纏めにし、守ったほうがまだ効率的といえる。

 幸いにももう一人の栗色の髪をした女性の方は障壁だけで魔力弾を防げている。しかもまだ余力はありそうな顔をしている。

 

 

「あなたは……」

 

「それは後で話すから!早く行って!」

 

 

 まさに絶技とも言える動きで魔力弾を切り裂く彼女の言葉に従い障壁を張りながらユーノ達は移動する。

 ここでの増援はまさに渡りに船であった。このままではどうしようもない状況で現れたこの二人は少なくとも只者ではないことを理解している。

 

 

 それもその筈、彼女達の見た目はまさに高町なのはとフェイト・テスタロッサ・ハラオウンをそのまま大きくしたような姿だったのだから。

 

 

 

 

 

 

 障壁を展開し、過去の自分を守るなのはは苦笑いを浮かべていた。確かに迫り来る魔力弾はとんでもない威力のものだ。以前の自分では到底防ぎきれないその圧力。だが今では余裕を持って防ぐことが出来る。

 その原因は理解している。自身の右手に持つデバイス、レイジングハートのお陰だ。以前フェイトが典矢のおかげでバルディッシュの性能が上がり、魔力効率が上昇したのと同じようにレイジングハートも典矢のお陰でその性能を引き上げている。

 

 過去に来る前に典矢が急いで手を加えた自身のデバイスを握る手に力が入り離れた場所でユーノ達をこちらに連れてこようとしているフェイトへと視線を向ける。

 

 当初はヴィヴィオを迎えに来ただけだった。だけど典矢やプレシア・テスタロッサからこの世界で起きていることを大まかに聞き、それの解決の手伝いを行っている。

 思ったよりも相手は強そうだが、更なる強化を果たしたバルディッシュを持ったフェイトと一緒ならば負けるつもりはしないとなのはは心の中で呟き、障壁の効果範囲を広げながら、レイジングハートへと周囲の魔力を収束しだすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

【数分前】

 

 

 

 巨大な魔力反応を起こした上空に浮かんだ魔法陣から現れたのは3人の魔導師であった。典矢によって送り込まれた3人、高町なのは、フェイト・テスタロッサ、八神はやては過去の海鳴市に到着すると同時に海に浮かぶ赤黒い結界に目をやった。

 魔法による結界。その中にいる存在は既に聞かされている。過去の自分達では到底倒せない相手。砕け得ぬ闇。3人は互いに顔を合わせると一度頷いた。

 

 

「あ、やっぱりママ達だ!」

 

 

 いざ突入しようとしたが、背後からの声に動きを止め、視線を向ける。

 そこには在りし日の姿で佇むヴィヴィオがいた。はやては見たことがないのだが、なのははよく覚えている。最初の姿ではなく、装甲が剥がれ、顔が完全に露出している状態のヴィヴィオにほっと安堵の域をこぼす。

 やはり親としてヴィヴィオの安否を心配していたのだ。いくらハコやリインフォースがいるとしても心配なのに変わりはない。

 

 

「あのねあのね!ヴィヴィオ2000も倒したんだよ!」

 

 

 嬉しそうに話すヴィヴィオを横目になのは達はどうやって結界内に向かうのかを思案する。

 転移で向かうには少しばかり位置情報が足りない。使用は危険である。ならばどうすべきか……

 

 

 ヴィヴィオに続くように2体の機械がやってくる。一人は以前管理局陸上部隊を壊滅に追いやったハコが乗る青い機体。そしてとても大きな身体をした黒い機械。その中に誰が入っているのかを消去法で理解したなのは達は話しだす。

 砕け得ぬ闇は放っておいては世界が滅びると……

 

 

 

 それを聞いたハコとリインフォースの動きは早かった。

 ハコは何処からとも無く巨大な銃を取り出すと結界に向かって構える。それは一度フェイトも見たことのあるもの。山ですら消滅させるその兵器を構えたハコに少し苦笑いを浮かべながらフェイトはリインフォースへと視線を向ける。

 

 何度か悩んでいたリインフォースは一度ため息を吐いた後、漆黒の外装を脱ぎ捨てた。

 海に落ちる前に粒子となって消えていく外装を少しだけ目でおったリインフォースは新たに現れたその機体にある一つの銃を取り出す。

 

 いくつかの形態を持った銃。ハコが設計したという時点で色々と不安が残るものとなっているがその威力は折り紙つきである。

 

 ハコとリインフォースは構える。一人は核の威力を考慮した魔力弾。もう一人は銃身に込められた魔力を開放するハドロン砲。

 

 青い機械と白色の機体は並び立ち、結界へとチャージした砲撃を放った。

 

 

 

 

 結果的に穴が空いた。そこへなのは達は突入し、砕け得ぬ闇の討伐へと向かったのだ。

 

 八神はやてだけは外の闇の欠片の殲滅のために残った。既にリインフォース・ツヴァイとはシンクロし。蒼天の書を手に持ったはやては張り切った様子で闇の欠片の大群へと飛翔していった。

 

 

 その後ろ姿を見るリインフォースはいつの間にか姿を消していた妹に苦笑しながらも透明な緑色のエネルギーウィングを展開する。

 

 この場に守るべきヴィヴィオは既にいない。ただこの場には守るべき八神はやてが存在しているだけ。

 ならばこそ、リインフォースは外装を再度装着することはない。

 

 防御力は激減する。ボソンジャンプによる奇襲は出来なくなる。

 

 その代わり、その機体。ハコが手がけたブラックサレナの中身であるそれは、攻撃力、機動力に優れた性能を持ち、オールレンジで戦うことの出来る機体。

 

 それの名は【ランスロット・クストース】

 

 

 円卓の騎士の名を関する機体。開拓者(フロンティア)でも白き忠誠心(アルビオン)でもなく、ただ主とともに在る守護者(クストース)を名付けられたそれは正しくリインフォースのことを示していた。

 

 

 ブラックサレナという呪いで包まれた守護騎士。呪いですらも利用するが、その根底は守護に有る。ハコから説明を受けた時にリインフォースはその機体が自分であることを理解していた。

 

 

 呪いの方は未だ使いこなせていない。ボソンジャンプによる高速戦闘や時間超越の奇襲などはまだ使えない。それでも今の姿、守護騎士としての力は高めてきていた。

 この場においてヴィヴィオはいない。呪いによって彼女を守る必要はない。今必要なのは主を守護し、迫り来る敵を払う剣となること。

 

 

 

 

 

 結界内では高町なのはとフェイト・テスタロッサ。結界外でははやてとリインフォースがその戦意をつのらせていた。




結構ぱっぱと書いたのでいろいろとおかしな所があるかも。
取り敢えずわかり易く解説

典矢によってなのは達が過去の世界に
なのはとフェイトは結界内へはやては結界外へ
ヴィヴィオがいつの間にか姿を消している(ハコは普通にいる)
リインフォースさんヴィヴィオを守る必要もなし、結界を破壊するためにパージしたブラックサレナを再装着はしない。
中から現れたのはコードなんちゃらのランスロットにそっくりな機体(ハコが参考に作ったもの)
主のために頑張るぞ
結界内ではなのはとフェイトが典矢の改造を施したデバイスで戦闘開始


そんな所。勢いで書いたのでうまく表現できていない部分もあると思います。

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