オルタンシア学園   作:宮橋 由宇

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お久しぶりなのにくっそ短くてすいません。許してください!何でもする訳じゃないですけど!


10話「乙女~女男が男を女にするとか言う地獄にもっとも近い地獄~」

「さて、まずは軽く自己紹介と行こうか」

 

「俺はジム。オルタンシア学園の1‐Bの生徒の一人だ」

 

「顔は良い方だと自負している。ただ、振り向いて欲しい人に限って全く効果がないもんだから、最近はちょっと自信がなくなってきているんだ」

 

「いや、そんなことはどうでも良いんだ」

 

「最近、俺はちょっと厄介な人に目をつけられててね。どうしたもんかとこうして君に話しかけているんだ」

 

「ん?君だよ君。画面の向こうこの俺の言葉を、恐らくは文字媒体で見ているであろう君さ」

 

「わからないか?まあいいさ」

 

「取り敢えず聞けばわかると思うから、細かい説明は省くよ」

 

「色々と言いたいことはあるんだけど、一言で表すとこんなところかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オカマに目をつけられたんだけどどうすれば良いと思う?」

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて話を延々と空中に向けてしゃべること5分。最後にに話しかけてきたジムの目はハイライトが消えていた。

 

「……と言うか僕たちに話しかけていたのか」

「ずっと上ばっかみてるからついにイカれたかと思ったぜ」

 

そのハイライトの消えた目をみていると、あながち間違いでもないのでは。と思うが口には出さないことにする。

 

「で?今度はどんな面倒ごとを持ってきたんだ?」

 

このジム。実は数日前に、女子の着替えを覗きにいこうとしてデュケーヌ先輩に見つかり連行され、こってりと絞られた、と言う経験をしている。状況を聞いた限りじゃルドルフにそそのかされたのが原因らしいが、結局覗きをしようとした事実は変わらないので、そこはどうでもいい。問題なのはその後「デュケーヌ様に叩かれるのが最近快感になってきたんだがどうすればいい?」などと相談してきたことなのだ。

結局うまいこと言いくるめて、保健体育のジャマル先生に全部丸投げしてきたのだが……今度は何があったのだろうか。

 

「実はだな──」

「三行で」

「」

 

説明しようとしたところをデフロットに遮られ、口をつぐむジム。そして少し考えてから──

 

「ジャマル先生に目をつけられた

貞操の危機

助けて」

「頑張れよ」

 

話を聞くやいなや光の早さで見捨てるデフロット。そんな彼をマリユスがジト目で睨み付けていた。

 

「いやほんと!頼むよ!このままじゃ死んじまう!」

「死……って流石に言い過ぎだろう」

 

ジャマル先生だから貞操の危機までは十分にあり得るが、流石に命の危険があるようなことまではしないのではないだろうか?

あれでも教職員の端くれなのだし。

 

「いや本当なんだって!このままじゃ俺が俺でなくなっちまう!いままでの俺が死んじまうんだ!!」

「具体的にどう言うことなんだよ?」

 

要領を得ないジムの主張に痺れを切らしてデフロットがそう投げかける。

 

「だから!このままじゃ心まで完全にメスにされちまうって言ってんだ!」

「体が堕ちてるならもう手遅れじゃ……?」

「多分マリユス突っ込むべきはそこじゃない」

 

「で?助けるっつったってどうして欲しいのよ?」

「え、いいの?今の爆弾発言スルーして良いの? 」

 

何事もなかったかのように会話を続ける二人になにか釈然としないものを感じるが、話が進んでる以上はおとなしく聞いておくしかないと、ジムの言葉に耳を傾ける。

 

「ようは、ジャマルの野郎の興味を俺からそらして欲しいんだ」

「急に口悪くなったなオイ」

「なるほど、用は自分に意識が向かなければ良いってことか」

「そうだ。あの非人間から逃げられるなら誰を生け贄にしても良い!」

「おいこいつ大分クズだぞ」

 

非人間って……そこまで言うか……そこまで嫌いか。

 

(まぁ……一応考えてはみるか)

 

ジムの言葉を前提になにか良い策がないかを考えてみる。

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

 

「ないな」

「うん、ない」

「あるわきゃねーな」

「ちょっと!?」

 

三人一致の答えを出した……が不満だったのかジムがすぐに抗議の声をあげた。

 

「だってよー、狙った男(えもの)は逃がさないことで有名なジャマル先生だぜ?俺らでどうにかできるもんじゃねぇよ」

「その男って書いて『えもの』って読むのやめろ」

「今回ばかりはどうしようもないな。すまないがジム。大人しく堕とされてくれ」

「いや!待て!まだ何かあるはずだ!何か打開策が────」

 

 

ガシッ

 

「ヒッ」

 

帰る準備を始める俺達に焦ったように追いすがろうとしていたジムの肩を誰かが掴む。

捕まれたジムはこの世のおわりみたいな顔をして、ゆっくりと後ろに振り返った。

 

「ジャ、ジャマル先生……」

「あら、ジム。こんなところにいたのねぇ。いらっしゃい、今日の『カウンセリング』をはじめるわよぉ!」

 

「い、いやだぁぁああああ!!!!!!メス堕ちしたくないいぃぃい!!!!!」

 

ずるずると引っ張られていくジム。やがて角を過ぎて姿が見えなくなり、そして声も聞こえなくなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………SEKAI NO OWARI」

「やめてやれよ」

 

ジムが消え、静寂に包まれる教室のなか。その後僕ら、は得体の知れない恐怖に襲われながら、家路についたのだった。

 

あの後ジムがどうなったのか、それは本人とジャマル先生以外にはわからない。……ただ、

 

次の日、ジムの仕草が少し女っぽくなっていたことをここに明記しておく。


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