プロローグ
「お前が二代目【魔王】か」
“…………人……我が君となり、我が身を打ち砕く『
「言葉を発する必要なく、他の意志と“会話”をする事が可能か」
“必要だった……からだ。産まれながらに、『全知全能』……ソレが我である”
「便利なモノだ。魔法でも、骨震動でも無い。貴様から見れば“器官”を持たなければ会話さえもできないオレ達は、さぞ滑稽だろうな」
“そう思えるのは、我が身を恐れているからか? それとも、自らが不完全であると自覚しているからか?”
「お前の言葉など、オレ達には意味が無い事だ。ただ、オレの眼には【
“予想できる。故に全知。そして、貴様……貴様ら程度では決して殺す事が出来ぬ。故に全能”
「言ってくれるじゃん」
「やって見なければわかりませんよ?」
“知恵の王――【賢者】。神の聖者――【神官】。貴様らでは届かぬ。我が命、絶つ事が出来るのは――”
「御託はいい」
“ほう……それが、その
「冥土の土産に持っていくがいい。貴様を冥府に送る者の名を、その全知全能の魂に刻み込め」
その名は――
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
満月の夜。
自室の窓から室内に差し込むモノは、月の光と、ささやかなそよ風。それを遮る……一影だけだった――
「ウィオラ様? ウィオラ王女? いや、やっぱり『ウィオラ姫』が一番しっくりくる」
『匈奴』より戻って一週間後の月夜の晩。
一日の業務を終えて、自室に戻ったウィオラは窓辺に座る侵入者の姿を見て、剣を手に取った。
ここは、王宮の最上階。暗殺者でも入り込めない様に、外壁は特殊な外壁で覆われている。一体どうやって、ここに辿り着いたのか?
得体の知れない侵入者に油断なく構える。
「だけど……誰かに敬意を払うのは苦手なんだよね。特に、『人間』に敬意を払うのは生涯でも“四人”だけ。だから……オイラは、アンタに敬意を払わないよ。」
いつもなら、月の光が綺麗に室内へ入り込んでくる。だが今は、窓辺で腰を下ろしている侵入者は月の光を遮り、ウィオラに対して背を向けていた。
並みならぬ存在感と漆黒の装い。背を向けているにも関わらず、その人物に対して攻撃にする事が出来なかった。まるで、生物としての最大級の危機的警告が訴えかけている。嫌な汗が止まらない。
「……アナタは……誰ですか?」
ようやく搾り出した言葉は、確実な答えを望んだモノではない。何か言わなければ、この緊張によって硬直し、事が起これば素早く動く事が出来ないと考えたからである。
「【黒龍王】。そっちが考えているよりも、こちらは何手も先を読んでる。さらわせてもらうよ」
若い雰囲気を持つ――黒き鱗の龍族を束ねる『王』は、静かにそう言い放った。