ソリダオン   作:真将

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31.人の代表者たち

 「『魔軍殲滅師団(レジェンディア)』の召集は……二代目【魔王】による世界の損傷を修復中である為、未だ発令はしておりません」

 

 初代【勇者】の所属国であり『勇者協会』の本部を持つ、『人の大陸』の中でも筆頭国『スタリス』。その大国の国王である、クラングル・コクマは……その場の代表達に改めて言い直した。

 

 「え!?」

 

 他国の代表達は、驚いたように一言だけ声を発する。

 だが言葉とは裏腹に、この円卓に座る者達は知っていた。『スタリス』の現状と、これからの世界の方向性が、どうなるかと言う事を。

 

 『スタリス』は二代目【魔王】が『人の大陸』につけた爪痕を、他国と連携しながら少しずつ修繕している最中である。

 被災地の援助で自国の兵を派遣し、『勇者協会』の協力も得て、村や都市の修繕と食料や物資の提供。その支援先は『魔族』にも隔てなく行われていた。

 そんな『スタリス』の状況を、この場の代表達は当然のように把握している。各国、表面上は協力を惜しまなかった事と、今回の『世界会議』の椅子に座る上で必然と知る事になった情報だからであった。

 

 「…………」

 

 その場の者達は皆、様子を探る様に数秒の沈黙の間に様々な思考を巡らせる。

 初代【勇者】の所属国として、『人の大陸』を先頭で引っ張っていた(スタリス)は世界の修復で疲弊していた。『魔族』を含んだ技術と人材を持ち、高い国力と民度も持つが、今は世界中へ多くの資産と兵を裂いている。

 

 「と言う事は……三代目【魔王】の存在を公にし、自主的な志願者達に募るしかありませんな」

 「え、ええ……」

 

 『ラクリアール』の総帥――フランシスは、神妙な面持ちで今後の最良となる動きを告げる。クラングルは苦笑いをしながら同意するしかなかった。

 そして、その場の『スタリス』以外の全ての者達が高速で思考を巡らせる。後は、どうやって【魔王】討伐へ自国の貢献度を世界に知らしめるか、なのだ。

 

 初代【勇者】を祭り上げ、世界の先頭に立っていた『スタリス』は、今回の【魔王】に対しては直接的な指揮は取る事は不可能である。ならば、今こそ自国が世界の主導権を握り、今後の指針となる事を宣言する為に各国は、この場に来ている。

 

 そのタイミングは、今この時――

 

 短期間で三代目【魔王】が現れ、筆頭国(スタリス)がまともに指揮をとれないと公表している今――

 

 「元より、【魔王】に対しての危機管理が、いささか足りていませんでしたな……」

 

 その場で、口を開こうとした『ジパング』の頭目――十六夜空(いざよいそら)は口を閉じた。そして、声の主であるフランシスへ視線を向ける。

 

 「【勇者】は世界を救った。しかし……私達は彼らを救ったのでしょうか?」

 

 その言葉に『アウローラ』の女王――アリエースも静かに視線を動かす。

 

 「我々は【勇者】を“世界を救ってくれる者”として認識し、彼らを【魔王】に対して送り出した。各国が、己の国と民を護るために、【勇者】という一個人を頼ったのです」

 

 フランシスの言葉は、その場に響いている。響いているのだが……それ以上の違和感を、語り出した(フランシス)以外の全員が感じ取っていた。

 

 

 

 

 「『六刃のキシマ』。『爆手のサザ』。『三合師範のキラル』。知ってるだけでもヤバい奴ら。“魔狩人”のオンパレードだねぇ……グランのおっさん、あれ相手にするとしたら勝てる?」

 

 ハザードとグランファスは、興味本位で『オベリスク』内部を歩いていた。人の姿はまるで見当たらず、物を食べる場所なども、どこにも見当たらない。そんな中で、人を見つけたと思ったが自分たちと同じ護衛人だったらしい。

 

 「一対一なら互角。素手なら厳しいな」

 

 ちなみにハザードは『スタリス』側の護衛としてこの場に召集されている。無論、グランファスも同様だった。

 

 「やっぱし結構強いんだ。触らぬ神に祟りなし。南無~」

 

 昔、ジパングで教わった魔よけの呪文を呟く。そして、遠目に居る世界有数の実力者から距離を取りつつ、近くの壁に背中を預けて天井を見上げた。

 

 「単于、元気かなぁ?」

 

 今、巨塔にて始まっている『世界会議』の中には『匈奴』を国内に持つ『アウローラ』の女王――アリエース・サンタリアンが来ている。会議が終わったら彼女に単于の安否を尋ねるつもりだった。

 

 「長くは無いらしいからねぇ。サプライズで、会いに行こうか」

 

 グランファスも単于の症状については知る限りの情報を集めている。しかし、解決出来そうなモノは見つからなかった。

 

 「あいつ、顔に出さないから、喜んでるのか本気で解らないんだよね」

 「その方が単于ちゃんらしいと思うよ」

 

 腕を組んで呆れる。あまりに暇だったので、例の護衛たちと単于が戦った場合を想定してみた。

 単于が7年前から実力が変わっていない事と『伝説の武器』を使わない事を想定して……どう考えても瞬殺であると結果が出た。三体一でも同様である。

 

 「やっぱり、単于って世界最強じゃない?」

 「さぁ、『匈奴』の人間がどれほど強いかは、今ではわからないからね」

 

 『匈奴』が【魔王】の呪いで住めなくなる前に暮らしていた10万近い民達は新天地へ移住したと言われ、今も同行は掴めていない。かつての旅の中で、数人だけ『匈奴』の人間と出会った事はあったが、彼らは旅商人であったため、詳しい情報は得られなかった。

 

 「こんにちは、グランファス殿。ハザードさん――」

 

 と、話し込んでいた二人は接近して来る人物が、声を発するまで気が付かなかった。

 金髪に長い髪を後ろで一つに縛った青年である。端整な顔立ちに、魅了するような雰囲気は、無論異性からも高い人気があり、今世界で最も注目されている人物である。

 

 「……あー、どうもねー」

 「どうも、【勇者】殿」

 

 ハザードうんざりする様に彼から目を逸らし、グランファスは彼女の分まで丁寧な挨拶を交わした。

 

 「ハザードさん。仲間の件は考えてくれましたか?」

 

 敵意の無い笑顔でそう言い寄ってきたのは、三代目【勇者】――リオル・カナイ。

 彼は『伝説の武器』の一つである『槍』に選ばれた存在であった。

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