『何で乗り移れないのよー!!!』
あるダンジョン内の隠し部屋で女性が叫んでいた。
『あぁもう!なんでよ!何でこんな強力な結界張ってあるの!?リッチーの私でも解けないなんてどんな奴が張ったのよ!?』
自称リッチーの女性は地団太を踏みながら叫び、
『もういい!今日は寝る!』
白骨化した遺体の横に寝転がり、骸骨に頬ずりをしながら眠りについた・・・
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冒険者ギルドには既に冒険者が集まりだしていた。
その中にはガーズや魔剣の自称勇者のミツルギの姿もある、皆重装備なので動きやすさ重視の俺は少し浮いて見える。
俺の装備はラドお手製の軽い布の防具にポーチとホルスターを隠す腰巻、そして低い防御力を補うための特殊な鉱石を使用した、魔力タンクにもなる特注の篭手だ。
「コテツとめぐみん!先に来てたのか!」
「おう、カズマ来ると思ってたよ」
「当たり前だろ、この街には世話になっているんだからな」
「だよな!・・・っと来た見たいだぞ」
冒険者が集まったところでギルド職員が大声で言った。
「お集まりの皆さん!本日は、緊急の呼び出しに応えて下さり大変ありがとうございます!只今より、対起動要塞デストロイヤー討伐緊急クエストを行います。このクエストはレベルも職業も関係なく、全員参加でお願いします。無理と判断された場合はこの街を捨て、全員で逃げる事になります。皆さんがこの街の最後の砦です。どうか、よろしくお願いします!」
それから職員がテーブルをギルド中央に集め、会議場のようなものを作った。
「それでは作戦会議を始めます。まずは現在の状況を説明させてもらいます!放送でもお伝えした通り、この街には現在起動要塞デストロイヤーが接近してます、街バリケードを作ってもらっている人以外の街の住人は、元冒険者で聖騎士だったラドさんを筆頭に元冒険者の方が護衛をし、安全な場所に避難してもらっています・・・さて皆さんの中にデストロイヤーの説明が必要な方はいますか?」
俺を含め何人かの冒険者が手を上げる。
職員は軽く頷き、デストロイヤーについて説明し始めた。
「起動要塞デストロイヤーは、対魔王軍兵器として魔道技術大国ノイズで建造された、超大型ゴーレムです。蜘蛛のような外見で、特筆すべきは小さな城ほどの巨体でありながら八本の足で馬を越える速度をだすことで、八本の足で踏まれでもしたら大型モンスターでも挽肉にされます。体には常に強力な魔力結界が張られており、まず魔法攻撃は意味をなしません」
無謀、ここまでの説明を聞いただけでそう思ってしまう。
この世界で一番強力な攻撃方法は魔法による攻撃だ、その魔法が効かないデストロイヤーは魔王軍ですら気安く手を出せないみたいだ。
物理攻撃をするにしても下手に近づけば挽肉にされる・・・
「デストロイヤーに攻撃するには、弓や投石によるものになるわけですが・・・魔法金属製のゴーレムな為、弓はまず弾かれ、攻城用の投石器も、起動要塞の速度からして、運用が難しい思われます。それと、空からのモンスターの攻撃に備える為、中型のゴーレムが備え付けの小型バリスタで飛来する物を打ち落とし、なおかつ戦闘用ゴーレムが胴体部分の上に配備されています。あと、なぜデストロイヤーが暴れているのか、ですが・・・。研究開発を担った責任者が、この起動要塞を乗っ取ったと言われています。そして、現在も起動要塞の中枢にその研究員がいて、ゴーレムに指示を出していると言われています」
魔法は効かない、近づき過ぎたら挽肉になり、弓矢は弾かれ、移動速度も速く、空からの攻撃にも万全の対策がされている・・・
「現在、起動要塞デストロイヤーは街の北西方向からこの街に向けて進行中です・・・それではご意見をどうぞ!」
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会議は難航した、直ぐに思いつくような作戦は既に試されており、全てが悉く失敗に終わっているらしい。
「コテツ、お前の武器ででどうにかできないのか?」
そうカズマから訊かれ、周りの冒険者から注目を浴びる。
「そうか、アイツの使っている武器なら・・・」
「魔王の幹部にも効果があったんだ!アイツならなんとか・・・」
そんな呟きが聞こえる。
「それで、どうなんだ?」
「・・・難しいな、まず銃弾は弾かれると考えたら、やっぱり爆発系の武器になるけど、爆裂魔法並みの火力はまず出ないし、決定打にはかける・・・まぁ、無茶すれば弾丸系にはなるけど貫通力が高いのできるけど・・・」
「無茶ってどのくらいだ?」
「今の俺だと何も無いとこから創るのに最低でも爆裂魔法3発分の魔力がいる」
「・・・おいおい爆裂魔法3発分ってどんだけだよ」
「めぐみんが3人いるって考えればいいだろ」
「・・・それ嫌だな」
「コテツ、カズマ、聞こえてますよ」
めぐみんに杖を突きつけられカズマが慌てて話をそらす。
「そ、そうだ、アクアお前ならその魔力結界ってのなんとかできないか?」
「やってみないとわかんないわよ?結界を破れる確約はできないわ」
「破れるんですか!?デストロイヤーの結界を!?」
話を聞いていたギルド職員が大声を上げた。
「い、いや、もしかしたらって事で。確約はできないそうです」
カズマの言った言葉にギルド内がざわつく。
「一応やるだけやって貰えまっせんか?それができれば魔法による攻撃が・・・!い、いや、駆け出しの多いこの街の魔法使いでは、火力が足りないでしょうか・・・」
職員が再び悩みだし、場が静まり返る中。
ふと、ある冒険者が呟いた。
「火力もちならいるじゃないか、頭のおかしいのが」
「そうか!おかしいのがいたな!」
「おい待て、それが私のことを言っているなら、その略し方は止めてもらおう。さもなくば私の頭がいかにおかしいかをここで証明することになる」
勢いで立ってしまったが、皆からの期待の眼差しを受けためぐみんは、顔を赤くし、
「わ、我が爆裂魔法でも、流石に一撃では仕留めきれないと・・・お、おもわれ・・・」
そうぼそぼそ言い座った。
せめてあと一人、強力な魔法使いがいれば・・・
この場にいる皆がそう思っているだろう、そんな時だった。
突然、入り口が開けられた。
全員の視線を受けたその人はフッと笑い、こう言った。
「我が名はちょいざぶろー!紅魔族随一の冒険者にして雷魔法を愛するもの・・・!」
・・・誰だこのおかしいの
「ハハハ!道具屋の貧乏店主かと思った!?残念!ちょいざぶろーでした!!」
う、うぜぇ・・・何だこの男は・・・
紅魔族って言ってたが・・・
「お困りのようですな!火力が必要ならこの俺が助太刀しよう!なに、爆裂魔法なんてネタ魔法は使えないが、そこそこの火力ならだせるさ!」
「お、お願いします!」
「フフフ・・・我に任せておけ。・・・それにしても・・・さっきの我ながらカッコよかったなぁ・・・」
冒険者が「こいつ大丈夫か?」っと思っているだろう、俺も思ったし隣にいるカズマもまた変なのが来たっと呟いている。
「ん?」
ちょいざぶろーと名乗った男がこちらを・・・正確に言えばめぐみんを見て言った。
「めぐみん!めぐみんじゃないか!久しぶりだな!」
「ちょいざぶろー久しぶりですね」
「めぐみん、こいつのこと知ってるのか?」
「えぇ、ちょいざぶろーは私の・・・幼馴染ですから」
「マジかよ!?」
こいつが・・・めぐみんの幼馴染か・・・
「どうした?俺の顔に何かついてるか?」
ちょいざぶろーは深く被った帽子を少し上げ、紅魔族特有の紅い目でこちらを見てくる。
「い、いや、なんでもない・・・」
「そうか?まぁいい。火力の方は問題ないだろう、さっきウィズさんがこっちに向かってるの見たし・・・それよりも破壊しそこなった時の事を話そうじゃないか」
いきなり来て、仕切りだすちょいざぶろーだが、言っていることは正しい。
こうして、遅れてきた紅魔族のちょいざぶろーと、このあと直ぐにやって来た道具屋の店主でリッチーのウィズを加えて、『起動要塞デストロイヤー』討伐作戦の内容が決まった。
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