原作沿いだから早いだけで、オリジナルの話になったら途端に筆が進まなくなったりするんだろうなあ…
俺は今日、少し早めに家を出て遅刻しないように、歩きながら学校へと向かっていたはずだった。雲一つない快晴で気持ちがいいな、とかみんなバスに乗っていくやつばっかりだから、通学路は静かでいいな、とか考えながら。
ーーそれが今、なぜ俺は後から自転車に乗って出てきたキンジと、徒歩で並走しながら学校へと向かっているのだろうか?
「どうなってんだキンジィィィ⁉︎」
「俺が知るか!なんか自転車に乗ってしばらくしたら、後ろからアレが追いかけて来たんだよ!」
怒鳴りあう俺たちはお互い自転車と徒歩だが、ほぼ全力疾走だ。後ろからはUZIの取り付けられたセグウェイが10台ほど追って来ていた。そんなセグウェイ集団の先頭の1台に取り付けられたスピーカーから、こんな声が聞こえてくる。
『それ以上、減速すると、爆発し、やがりマス』
そう、セグウェイの言うとおり、キンジの自転車にはプラスチック爆弾が仕掛けられていた。自転車を吹っ飛ばすには過剰すぎる大きさ、それがなんのひねりも無くサドルの下に取り付けられていたのである。
「なんでそんな分かりやすいのに気づかねえんだよ、バカキンジ!」
「仕方ないだろ!元々バスで行くつもりだったんだ、家を出ようとした時に靴紐が切れなきゃ、こんなことには…!」
キンジの主張に、なんて間が悪いんだと心の中で毒づいて、疲れてきた足を懸命に動かす作業に戻る。
ちなみに最初俺は1人離脱して、応援でも呼ぼうかと考えていたんだが、いざ行動に移そうとした時スピーカーから、
『対象が、1人でも、失速した、場合、無条件で、爆発し、やがりマス』
などと言われてしまい、やむなく並走しているといった次第だ。まさかキンジを見捨てるわけにはいかないからな。
現在俺とキンジは、万が一爆発しても被害が少ないように人気の無い場所へと移動しながら、なんとか打開策を模索している最中だった。
「キンジ!お前どっかで自転車の乗り捨てしろ、そうすりゃ万事解決だろ⁉︎」
「どっか、ってどこだよ⁉︎いくら人気が無くても安全な場所に着地出来ないと、UZIで蜂の巣だぞ⁉︎」
「…やっぱセグウェイが邪魔だよなあ。どうにかならないもんかね」
どうにも2人でいくら考えても妙案が浮かんで来ない。お前らそれでも探偵科の生徒かよ、と思うかもしれないが、俺はCランクで、キンジに至ってはEランクである。これに全力疾走による極限状態であることを考慮に入れれば、考えが浮かんで来ないのもそうおかしいことではない、って俺は誰に言い訳をしてるんだ。…しかしそろそろキツくなってきたな。
「キンジ……俺、お前と友達になれてよかったよ」
「は?何を急に……おい待てまさかお前、今更1人だけ逃げようってんじゃないだろうな⁉︎」
さすがキンジ、大☆正☆解。いやだってね、キンジは自転車だからまだいいかもしれないけど、俺徒歩なわけですよ。さっきからもう足が釣りそうなんだよ、限界寸前なんだ分かってくれ。このままだと俺は転んだところを10台のセグウェイに引かれて死ぬという、なんとも言えない死に方をしてしまうことになるんだ。そんなことになったら、ご先祖様に申し訳ない。
「無理して2人とも死ぬよりいいと思わないか、キンジ」
「それは正論ではあるだろうが、ここまで付き合っといてそれは無いだろ⁉︎」
「じゃあどうするんだよ、通常状態の俺たちの頭じゃ、とてもじゃないが、妙案なんて思いつかないぞ」
「それはそうだが……ん、なんだあれ」
キンジに言われて斜め前を向くと、武偵高女子寮の屋上から、女子生徒がパラグライダーを展開しながらこちらに向かって来るのが見えた。おいおいなんだありゃ、もしかして救援か?キンジの方は救援だなどと希望的観測はしていないようで、その女子生徒に向かって
「ば、馬鹿こっちにくるな!この自転車には爆弾が…」
そんなキンジの言葉を聞いていないのか、女子生徒は左右のホルスターから黒と銀の拳銃を取り出した。
「ほら、そこの馬鹿ども!さっさと頭を下げなさいよ」
2丁拳銃の水平打ち。連続で放たれた弾丸が、俺とキンジの後ろを追っていたセグウェイのうち、先頭の1台とその後ろにつけていた2台をバラバラにぶっ壊した。その破片に足を取られたのか、他のセグウェイたちも次々と倒れていった。凄い腕だと感心していると、その女子生徒は拳銃をホルスターにしまい、こちらへと向かってくる。よかったやっぱり救援だったか。俺はその少女に
「キンジを頼む!」
と、言い、少女が頷いたのを確認して、キンジから離れるように走り出す。チラリと後ろを確認すると、少女は逆さ吊りの状態になってちょうどキンジを受け止めているところだった。恐らくは自転車だけ進ませて爆発させるつもりなのだろう。
それを見た俺はなけなしの足の力を振り絞って、道路から街路樹がある土手の方へと身を投げ出した。それと同時に後ろの方で爆発が起こる。爆風に背を押された俺は、どうにか受け身を取ることは出来た物の何度も転がり、大きな街路樹の下でようやく止まることが出来た。ちなみにそんなことになったら胃はシェイクされるわけで……おろろろろ、とせっかくの朝食を吐くハメになってしまった。
「うっぷ……朝から踏んだり蹴ったりだな本当に」
幸いなことに目立った怪我は無かったので、吐いた所から少し離れて息を整えると、キンジと少女がいそうな場所に当たりをつけ、胃を刺激しないようゆっくりとした足取りで、2人を探しに向かった。
ここ、武偵高こと武偵高校はレインボーブリッジ南に浮かぶ南北およそ2キロ・東西500メートルの長方形をした人口島である。
通称、学園島と言われているこの島は武偵の総合教育機関が置かれている場所だ。
この学校で教育されている武偵、正式名称“武装探偵”は凶悪化する犯罪に対抗するために新設された国家資格のことである。武偵免許を持つ者は武装を許可され、逮捕権を有するなど警察に準ずる活動が可能になる――と言うと聞こえはいいが、警察のような国家機関と違ってそこまで綺麗なものではない。
警察と明確に違う点は、あくまで武偵は金で動く、という点にある。つまり金さえ貰えれば武偵法の許す限りどんな仕事でも請け負う<何でも屋>というわけだ。
ちなみに武偵の心得として、武偵憲章というものがある。1~10まであり、その第1条がこれだ。
《仲間を信じ、仲間を助けよ》
あの少女はこれに従って、俺たちの救援に来てくれたんだろう。
……余談だが、第10条は《諦めるな、武偵は決して諦めるな》というものだ。……数分前の自分を反省したい。
で、だ。俺はキンジと少女が落ちたであろうと当たりをつけた場所――体育館倉庫付近へと到着した、…のだが
「うわー…なんだこのセグウェイの残骸は」
そこにはついさっきまで俺とキンジの後ろを追っていたものと同じ、UZIの取り付けられたセグウェイの残骸が並んでいた。まだ残ってたのか、とその用意周到さに逆に感心する。
「ここにこんなものがあるってことは、当たりか。さーてキンジはどこに…」
恐らくはこのあたりで迎撃したのだろうから、移動していたとしても遠くには行っていないはずだ。そう考えたとき、すぐ近くの体育館倉庫から2人の人物が飛び出してきた。片方はキンジでもう1人は
「待て、
ほう、どうやらあの救援に駆けつけてくれた少女はアリアという名前らしい。……しかしなぜキンジはそのアリアさんとやらに小太刀の二刀流で襲われているのでしょうか?それとキンジ、その手に持った大量の薬莢は何に使うつもりだ。
「強猥男は神妙に――わきゃお!?」
斬りかかろうとした少女―アリアは何かに足を取られてステーン、と転ぶ。…ああ、なるほど、薬莢はそれに使ったのね。何故かは分からないが、怒りに我を忘れているアリアさんは、足元が疎かになっているらしく、キンジが転がした薬莢に気づいていないようで、
「こ、このみゃおきゃ!?」
と、さらにステーンと転んだ。お、パンツ見えたな今。キンジの方は大丈夫か、と目を向けると、いつものキンジらしく無く、アリアさんに向かって、
「はは、可愛い子猫ちゃんだ」
などとのたまっていた。…うわ、こいつヒスってやがるな。アリアさんが怒ってる理由も分かった気がする。ジトりとキンジに視線を向けてやると、少しだけ罰の悪そうな顔をした後、こちらに向かってきた。
「夜一急げ、遅刻するぞ」
「ちょ、待て待て。あの子、強猥男とか言ってたけどお前まさか…」
「ちょっとした不幸が重なっただけさ。断じて、こちらからは何もしていないよ」
「…それはよかった、安心したよロリコン」
「おい、それは聞き捨てならんぞ」
軽口を叩き合いながら、倉庫を離れる。チラリと後ろを確認するとアリアさんは大層お怒りの様子で、頭上に発砲しながら、おそらくキンジに対してであろうアニメ声の怒声が響き渡った。
「このひきょう者!でっかい風穴あけてやるんだからぁ!」
これが神崎・H・アリアと遠山キンジの運命の出会いとなる。この出会いが、これから訪れる様々な事件の引き金になったということを、このときの俺たちは知る由もなかった。
如何だったでしょうか2話。楽しんで読んで頂けたなら幸いです。
章タイトルつけました。原作沿いではありますが、章単位で見ると、Episode1が恐らく1番長くなるかもしれません。原作1巻の内容と小説版AA3巻中盤迄を混ぜて書く予定なので。
次の話の後書きからキャラ紹介をちょくちょく入れていくつもりです。緋弾原作キャラとFateキャラは、原作との違いだけ載せるつもりです。詳しいことはWiki参照ということで。
早速、お気に入りしてくれている人がいて、とても嬉しいです。続きも頑張って書いていきたいと思います。
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