「朝から酷い目にあったな…」
「…同感だ。しかも女子の前でヒスるとは…」
朝の、惨劇と言っても差し支えないレベルの出来事から開放され、緊張の糸が切れた俺とキンジは自分のクラスである2-Aの教室でうなだれていた。俺は体力的な面でしかダメージを受けてないが、キンジは女子の前でヒスっちまったせいで、精神的ダメージまでプラスだから、余計キツいのだろう。
ちなみにキンジのヒスるっていうのは、正式にはヒステリア・サヴァン・シンドロームという体質のことだ。キンジ自身はヒステリアモードと呼んでいる。
効果は一言で表すなら、超人になる、だ。と言っても急に肉体が強化されてムキムキになったり、なにか超常的な力が発揮出来るようになるわけでは無い。上昇するのは判断力や思考力といった感覚的な物、つまり脳や神経系の活動が劇的に活発になるのである。
常人からすれば羨ましいことこの上ない体質なのかもしれないが、発動条件が性的興奮で有ることと、そのモードの時は女子に異様なまでに優しい、キザったらしい性格になってしまうため、キンジ自身はこの能力を嫌っている。
中学時代に色々あってトラウマになっているのだそうだ。
…初めてキンジとあった時にその原因の一端に出くわしているから、ある程度は事情を知ってるんだけどな。
「お、なんだなんだ。2人揃って朝から元気ねえなあ」
む、この声は…
「武藤か」
「おうよ、キンジと夜一も同じクラスだとは驚いたぜ」
こいつは武藤剛気、車輌科のAランク武偵で高校の時からの友人だ。無類の乗り物好きで、乗り物の運転は三輪車から原潜までなんでもできるらしい。何回か武藤の運転は経験したが、非常にスリリングだったので俺はお気に入りだ。
「で、どうしたんだよ2人とも。とくにキンジの暗さがいつも以上だが…あ、もしや星伽さんと同じクラスになれなくて、ショックを受けてるんだな!?」
「武藤…今の俺に女の話は振るな…」
「お、おう」
さっきの出来事が尾を引いているらしく、マジギレのキンジに対して武藤が一歩引いた。この武藤だが、実はキンジの幼馴染の星伽さんのことが好きだったりする。クラスが一緒じゃなくてショックを受けてるのは武藤なんじゃないだろうか。ちなみに今の所100%脈は無い、星伽さんはキンジ一筋だ。…あ、そういえばさっき吐いたの星伽さんの手作りの朝食だったな。武藤にバレたら何されるか分からんし、朝のことは黙っとくか。
「はーい、みんな席についてくださいね。朝のHRを始めますよ」
チャイムが鳴ると、担任の高天原ゆとり先生が入ってきてHRが始まった。
「今日はなんと、このクラスに転校生が来ま〜す」
先生がそう言うと、クラス全体がワッ、と湧き立つ。ここ武偵高で、転校生は珍しい。みんなの反応がいいのもそのためだ。……しかし、嫌な予感がするな、このタイミングで転校生となると、もしかしてさっきの…
「それでは神崎さん、入ってください」
ふむ、神崎さんと言うのか、どうやら俺の思い過ごしーー
「初めまして、神崎・H・アリアです」
……って苗字が神崎かよ⁉︎外人かと思ってたから油断した。ま、待て落ちつけ俺は彼女に対してやましいことは何も無い。堂々としていればいいんだ、堂々と。
…後ろのキンジの席からガタガタと震える音が聞こえるのは多分気のせいだな、うん。震えるほど怯えるってお前あの子に何したんだ一体。
自己紹介を終えたアリアさんは、キンジの方をビシッと指差して
「先生、私あいつの隣に座りたい」
と、言った途端、クラスからは黄色い悲鳴があがる。指差された本人はといえば…
「な、なんでだよ…」
「諦めろキンジ、きっとお前が悪い」
「………」
…え、キンジさん言い返さないってことは、本当にあの子に何かしたのか?
ちなみに彼女のご希望通り、席はキンジの隣になった。というのも本来右隣の席だった武藤が、
「よかったなキンジ、なんか知らんがお前らにも春がきたみたいだぞ。先生!俺、喜んで席かわりますよ」
などと言って席を移動してしまったからである。…武藤のやついらない気を効かせやがって…震えてるキンジの顔色が青を通り越して白になったぞ。
黄色い悲鳴が続く中、こちらへと歩いてきたアリアさんは、キンジに向かってベルトを投げた。
「キンジ、これ、さっきのベルト」
…本当に何もしてないんだよな、キンジ?親友の身の潔白が俺の中で怪しくなっていく中、キンジの左隣からガタッと音がした。
「理子分かった、分かっちゃった!これフラグばっきばっきに立ってるよ!」
立ち上がって声を上げたのは、探偵科No.1のおばかさんと言われている峰理子である。何着も武偵高の制服を持っていて、全てロリータ風に改造してあるという問題児だ。
「キー君してない!そして、ベルトをツインテールさんが持ってた!これ謎でしょ、謎でしょ!でも理子には推理で来た!分かっちゃった!」
体のとある一部以外、アリアと同じくらい小柄な理子は目をキラキラとさせながら、むふー、と鼻息を荒くして得意げに推理を語り始めた。
ちなみにキー君というのは理子が命名したキンジのあだ名だ。
「キー君は彼女の前でベルトを取る何らかの行為をした!そして、彼女のところにベルトを忘れてきた。つ、ま、り!2人はCまで終わらせた彼氏、彼女同士なんだよ!」
理子が推理を語り終えると、男女問わずクラスの連中が騒ぎ出す。
「う、嘘だろ、あの根暗のキンジがあんな可愛い子と⁉︎」
「そうか、彼女が出来ちまったんなら、もうあいつをたらし、とは呼べねえなあ…」
「神崎さんって、確か少し前にこっちに来たばかりだったよね」
「そうそう!さすがはたらし、手が早いのね…」
「しかしどうりで星伽さんになびかないわけだよなー、ああいうタイプが好みだったんだな」
「女嫌いだって、言うからてっきり夜一くんの事が好きだと思ってたのに……!」
「お、お前らなあ……!」
クラスの面々の様々な反応に、頭を抱えるキンジ。
「なあ、キンジ……」
「よ、夜一、お前は…」
俺が声をかけると、キンジは希望を得たかのように、こちらへと視線を向ける。安心しろ、大丈夫だぜキンジ、俺はあいつらみたいに勘違いなんかしちゃいない。
「照れなくてもいいんだぞ、キンジ」
「………は?」
む、なんだその反応は。…まさかこの後に及んでまだ隠し通すつもりなのか?俺は後ろを向きキンジの肩を掴むと、言葉を続けた。
「キンジはむやみやたらに注目されるの好きじゃないのは知ってる。何せ相手が相手だ、親友の俺にまで隠してたのは少し傷ついたが……」
「待て、お前は何か勘違いしてるぞ夜一!」
「大丈夫、俺は親友として、お前のこと応援するよ」
「だから違うってーーー」
キンジがそう言おうとした瞬間、
ずぎゅん!ずぎゅん!
鳴り響いた銃声に、クラスがシンとなる。真っ赤になったアリアが銃を撃ったのだ。
「れ、恋愛なんてくだらない!」
ちなみに弾丸は俺の足元と理子のすぐ脇の壁に着弾した。
……どうやらキンジとの件は俺の勘違いだったらしい。だからと言って撃たなくてもいいと思うんだが。
武偵高とはいえ、おそらく転校初日のクラスで銃をぶっぱなしたのは彼女が初めてだろう。
「ここにいる全員覚えておきなさい!そんな馬鹿なこと言うやつには…」
顔を真っ赤にしたままのアリアさんは、おそらくこれから俺たちが聞き飽きるほど聞く言葉を言い放つ。
「風穴あけるわよ!」
如何だったでしょうか3話。ここまではほぼ原作と同じ流れですね。
次から少しづつ原作とは変わっていきます、と言っても原作沿い、とタグをつけてるからにはおおまかな流れは変わらなかったりするんですけどね。
文章の間が詰まりすぎてた気がしたので、すこし間を開けてみました。1、2話の方もその辺を修正してみたので読みやすくなってるかと思います。
キンジのHSSの説明については、ぶっちゃけ脳医学の知識とかそのまま載せても意味わかんないだろってことで、それっぽく説明変えました。
実はオリジナルキャラにも特殊な体質持ちがいるのですが、たぶん今回のような説明になるかと思います。作者に詳細な医学知識求めないでください、調べるのも限界があるんです…
さて今回から前回の後書きで予告していたキャラ紹介を入れていきます。オリキャラが原作のあるキャラより長くなるのはご愛嬌ということで。
今回は主役の2人、冬月夜一と遠山キンジの紹介です。
名前:冬月夜一(ふゆつき よいち)
名前の漢字は全て型月関係から取ってます。
冬木市の冬に、月姫の月、七夜の夜に、アルクの原初の一からの一です。
年齢:17
誕生日:4/4
髪型:短めの黒髪
体質:???
所属科:探偵科
身長:174
体重:65
武器:ベレッタPx4Storm、サバイバルナイフ、投げナイフ、秋雨
性格:マイペースで少し思い込みが激しい
補足
四人兄弟の三番目で両親は既に故人。また、現在兄と姉が行方不明。
神戸の出身で、Fateの冬木組(衛宮家、遠坂家、間桐家)といったメンツと幼馴染。
他にも幼馴染はいるがそれについては話が進んでから。
幼い頃虐待を受けていたことがある。
キンジと会ったのは中学2年の頃。
名前:遠山キンジ
基本プロフィールは原作と一緒なのでWiki参照。
原作との相違点
中学2年の頃、夜一たちに出会い、紆余曲折あって原作よりもHSSによる女性被害は軽減されている。
基礎の戦闘力が変わっている、(原作初期のHSS無しのキンジを強襲科基準でCの下位程度とするなら、Bの中位ぐらいまで上がっている)また原作初期よりHSSを使いこなせている。
金一が生きていることを知っているため、多少は武偵を続けるモチベーションが残っている。
なぜ、金一が生きていることを知っているのかは、次の次の話くらいで明かされる…かもしれない。
さて次はいよいよFateキャラたちが登場します。原作とだいぶ設定を変えてるキャラもいるので、頑張ってそのキャラらしさを表現出来たらと思います。
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