デジモンアドベンチャー02 〜導きの灯火〜   作:すなぎも

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再び時間が掛かってしまいました・・・
本当に申し訳ありません・・・m(_ _)m


第3話『破壊の八頭龍』

「やっぱりデジタルワールドは変わらないね。」

タケルは自身の帽子を取って青く晴れ渡った空を眺める

時刻はおよそ15時過ぎ学校は既に放課となり華音、タケル、ヒカリの3人はデジタルワールドを訪れていた

そんな彼らの元に慌しく羽を動かしテントウムシのやうなデジモン、テントモンが飛んでくる

 

「タケルはんもデジタルワールドに来なさったんやな!

いや、今はそれどころじゃあらへんな。

華音はん、あんさん昨日は夕方頃、どこにいはった?」

 

ものすごい剣幕でテントモンが尋ねてくる

その様子に華音は一歩退いてからその時自身が人間界にいたことを答える

するとテントモンは1つの画像ファイルを取り出し中に保存されている画像を広げる

 

「これは・・・!?」

 

痛々しく地面が抉られた映像と先端部分を除いてドロドロに溶け固まったダークタワーの映像だった

 

「昨日、デジモンカイザーの拠点を誰かが単身突撃したんや。

みんなはレジスタンス軍の有力な究極体や言うてたんやけど・・・」

 

「破壊力の関係で私を疑ったわけね。」

華音が苦笑い気味に呟く

しかし、いくら華音が本気で攻撃をしたとしても地面ならまだしもダークタワーを『溶かす』というのは不可能に近かった

 

「ねえ、みんな、この画像の端見てみて?」

そういってタケルは地面の抉られた画像を指差す

示された場所を見てみるとなにやら抉った傷痕の根元に楕円形のような跡が2つ、そしてその後ろに杭を突き刺したような穴が付いていた

 

「これは、足跡じゃないかな?

だとすればこの後ろのは自身を固定するためのストッパーを立てた跡なんじゃない?」

 

確かに一理ある

レーザーか、砲撃かは分からないが使ったのは相当な威力の、それも巨大な兵器であることが見て取れた。

ならばそれ相応の反動も付くはずである

 

体を固定しなければ後ろに移動してしまうほどの反作用の力が。

 

「テントモン、この時、近くに衝撃波の報告はあった?」

華音が尋ねるとテントモンは少し思案する

その数秒後に彼は首を縦に振った

 

「・・・これをやったのは多分人間だよ。

しかも私と同じ、デジモンと融合するタイプだと思う。」

「華音ちゃん、どうしてそう思うの?」

 

ヒカリが尋ねると華音は1つ1つ、疑問点をあげていく

 

「まず1つに体を固定する必要があるほどの兵器。

それを移動させるには何が必要だと思う?」

その言葉にテントモンは大声を出して答える

 

「そうや!そんなトンデモ兵器なら移動した跡すら無いんはおかしいで!」

華音はその言葉に頷く

そして再び続ける

「ヘリコプターみたいな空中を移動できる兵器も考えたけど杭の跡、足跡が風にかき消されていない事から少なくとも砲撃が終わるその瞬間まではここに何かがいたと言う事になる」

 

するとタケルが後の言葉を代弁していく

「だけどこんな威力の兵器は普通の人間では跡を残さず運ぶこともほぼゼロ距離の位置での反動にはどうやっても耐えられない

つまり、これを撃った何かは人間サイズの言うなれば化け物

だけど、この辺りにこんな威力の攻撃を行える強力な究極体はいない」

 

それに繋げて華音は補足を加える

「そう、だからこれを起こしたのは

間違いなく人でない人間、要するに私みたいなデジモンと融合するタイプ

もしかしたら常に融合してるのかもね。」

 

そう言った直後に華音の頬を黒いリングが掠めていく

そのままリングは近くを歩いていたモノクロモンの脚にガチャリと音を立ててはまる

 

その次にはモノクロモンが狂い暴れ出す

 

「まずい、逃げよう!」

タケルはそう言ってヒカリと華音の手首を掴み自身が通ってきたテレビ型のゲートの中へ投げ込む

そしてそのすぐ後に自分も連なって飛び込んでいく

小脇にリュウダモンを抱えながらだが。

 

すると飛び込んだテレビの画面が人間界行きのゲートを残し砂嵐模様を出して消失してしまう

恐らくモノクロモンに破壊されてしまったのだろう

 

「あらら、このエリアには行けなくなっちゃったね〜・・・」

華音は呑気にそう呟く

そして現実世界側のゲートを潜りパソコンの画面から元の世界へと飛び出す

偶然目の前にいた大輔が華音によって顔を蹴られてしまったのだがその話はとりあえず無視しておく

 

 

「さて、それじゃあそろそろデジタルワールドに戻ろうか。」

タケルはそう言うとゲートの開門準備を始める

そこに目の色を変えた大輔が割り込むと一言

 

「俺も行けるんだろ?」

 

確かにデジヴァイスさえあればこの世界に行くことは可能だ。

大輔の物に関しては形が違うが間違いは無いだろう。

 

「多分いけるよ。

君が来たいなら来ればいい。」

華音はそう言って少し目を細めて笑う

 

するとタケルがゲートを開けたらしく彼の体が画面の中に飲み込まれていく

それに続いて華音、ヒカリと飛び込んでいく

 

 

目を開ければ既にデジタルワールドへと到着し、辺りには先程と似た光景が広がっていた

 

直後、近くで何が起こったのかは分からないが強烈な地鳴りと強風が吹き荒れる

 

「まさか・・・あれがいるの?」

風が弱まると華音がぼそりと呟く

 

「かもしれない。

その時は俺が出る。」

そう言ってリュウダモンは風の元を睨みつける

 

「それにしても驚いたな。

こんな威力だとは思いもしていなかった・・・」

タケルは自身の帽子を右手で押さえながら傍観を始める

ここまでの威力なら仕方ないのだが・・・

 

「お、おい?

あれってなんだよ・・・?」

大輔が消え入りそうなか細い声で呟く

しかし3人はそれを無視する

 

「とりあえず行くよ、リュウダモン!」

「応!」

 

デジヴァイスを使いリュウダモンを進化させようとする

 

リュウダモンが一時的にデータの塊となりその形を変えようとする

しかしそれは叶わず何故か元の姿に戻ってしまう

 

「あ、あれ・・・?」

華音は少し困ったような表情を浮かべる

リュウダモンは珍しく額に汗を浮かべ

若干苦笑い気味に華音を見つめ出す

 

その直後に森を薙ぎながら何かが近くの岸壁に吹っ飛んでくる

轟音が響き土埃が巻き上がる

刹那、機械音と気持ちの悪くなる不快音が響き岸壁に砲台が現れる

 

「みんな!伏せて!」

華音はそれを見た瞬間にはそう叫んでタケル、ヒカリ、大輔の3人にラリアットを掛けたような形で無理やり地面に押し倒す

 

その直後にジュっと鉄板に肉でも押し付けたような音を立て砲台の前方にあった森が撃ち出されたレーザーの形に消滅する

 

「竜剣【八岐】」

先程の砲台が形を変え8つの龍の頭へと形を変えレーザーを撃った方向へとものすごい速度で伸びていく

地面が揺れ、岸壁が崩れ始める

 

「一旦ここから離れよう!」

タケルはそう言って全員に声を掛ける

しかし華音は退かずに寧ろ突撃していく

 

「リュウダモン‼︎」

彼女がパートナーの名を叫ぶと彼もそれに応え先程とは違い、今度は銀色の塊に変化する

 

『リュウダモン!ワープ進化ッ‼︎

 

オウリュウモン‼︎』

今度は進化に成功する

理由は分からないがともかくこの戦いを止めるべき

華音はそう考えるとすぐさまオウリュウモンの背中に飛び乗る

 

 

オウリュウモンは先程の八岐の龍が突撃を行った方向へと移動を開始する

移動を始めて数秒でその惨状は目に入ってきた

 

これはデジモンカイザーとの戦争だ。

彼女はそう思った

 

辺りの木々は根こそぎ薙ぎ倒され

所々で火の手が上がっている

 

戦場の中央では先程の龍がとぐろを巻いており周囲の砲台やらの兵器から大量の弾をその身に受けていた

 

「オウリュウモン、武装進化!」

彼女はそう叫びその身に龍の鎧を纏っていく

しかし今回は普段の1本の巨大な斧ではない

それなりに重量のある2本の青龍刀のような刀だった

 

「永世竜王刃」

華音は近くにあった兵器の真後ろに降り立つと右手の刀でその砲台を地面ごと粉砕する

その直後に両手の刀をブーメランのように斜め前方それぞれ二方向に向けカーブさせつつ投げつける

 

その軌道上にはカイザーの用意したであろう兵器。

 

青龍刀は鉄製の砲台だろうとバリスタだろうと関係なく粉砕し最後にはデジモンカイザーにまで迫る

しかしそれよりも先にデジモンカイザーの姿が消えてしまう

龍の咆哮がデジモンカイザーのいた場所諸共抉り消し去ったのである

 

・・ーヴォォォォォォォ‼︎

龍が天に吼えその直後にとぐろの痕を残し何処かへと森を爆進していく

そのとぐろの痕の中心には幼年期、成長期のデジモン達が身を寄せ合い震えていた

 

「なるほど、護ってた・・・のかな?」

華音はそんな様子を考えくすりと笑う

よくよく見てみれば近くにダークタワーらしき黒い破片が散乱していた

恐らくは先程華音が来る前にあれが破壊したのだろう

 

「お疲れ様、オウリュウモン」

華音はそう言うとオウリュウモンと分離する

 

「この塔、我々の進化を邪魔する力があるとみても?」

そう言ってオウリュウモンはリュウダモンへと退化する

「だと思うよ・・・」

その時リュウダモンは彼女の返答に違和感を覚える

元気というか、核エネルギーの塊のような華音にしてはやけにおとなしい返事だった

 

不思議に思って華音の顔を見上げてみれば全体的に顔を赤く染め息が荒くなった彼女が目に入る

 

「か、華音?」

「え?どうしたの・・・?」

彼女は何事もないかのようにふらふらと歩き始める

 

「おいおいおい!!華音、大丈夫か!?」

今にも倒れそうな彼女に彼はそうたずねる

しかしとうとう返事すら返ってこなくなり何処かへと歩こうとするだけだった

 

「ちょっ!!だ、誰か来てくれ!!」

リュウダモンはそう叫び進もうとする彼女の足をつかみ無理やり引き止めていた

 

 

彼がこの苦行から解放されたのは

およそ5分後のことだった

 

 

 

「なんで・・・急に熱なんか・・・」

「デジモンと融合なんかするからじゃないの?」

タケルはぐったりと項垂れる華音を背負いながらゲートのテレビへと大輔、ヒカリとともに歩いていく

 

「でも、結局あの龍って・・・?」

「そうだぞ、アレのこと、ずっと気になってたんだよ」

ヒカリの言葉に大輔が後押しをしつつ賛同する

 

「ああ・・・あれなら、害はないと思うよ。

ところでタケル君・・・そろそろ降ろして。」

華音はそう言いつつタケルの頭を鷲掴みにして後半の言葉を囁く

タケルは背負っている生物の危険性を理解したのか昔のように逆らわずにすぐに彼女を地面に降ろす

 

降りるなり彼女はすぐさま両耳を隠している髪を上げゴムで留める

恐らくは熱がこもる要因となる髪が鬱陶しかったのだろう

 

しかしその時、彼女の左耳付近に浮き出たアザが露わになる

まるで炎のような形の紅い、正体不明のアザ

おまけにそのアザは爛々と鈍く紅に光っていた

 

「か、華音ちゃん?なにそれ?」

ヒカリが口元を押さえながらアザを凝視する

 

「そんなの知るわけないでしょ。」

そう言いながら華音はぷにぷにとそれをつつき始める

特に顔色を変えることもなくつついていることから痛みは無いのだろう

 

「にしてもそのアザ気持ち悪いなぁ。

なんつーかさぁ、さっきの蛇みたいでさ」

よくよく見てみれば確かに大輔のその言葉には一理あった

見方を変えてみればアザは一箇所から8つに分かれ先程の竜に見えなくもなかった

 

そんなことを言っているうちにアザが溶けるように薄くなり消えていく

「・・・もう大丈夫みたいだね。

帰ろっか」

顔からは火照りが消えていた

熱も下がったらしい

 

「うん、そうだね」

ヒカリはそう呟いて微笑む

 

それから帰る間はずっと大輔からの質問攻めだった

デジモンとは、デジタルワールドとは、進化とは

 

華音の、武装進化とは

 

分かるとは思うが、華音は彼女自身のことに関しては全て流した。

 

 

 

------------カイザー------------

「あ゛ぁぁあ゛あ゛あぁぁ!!」

怒りに身を任せ思いっきり壁を叩き耳障りな声を出す

「ふざけるな・・・あのトカゲに女・・・

何度僕の邪魔をするつもりだ!!!」

 

頭を掻き毟りメガネを鷲掴みにし握りつぶす

 

「トカゲに関してはこれで何度目だと思ってる!

今月だけでも23回!

あんな規模でこれ以上邪魔されたらどうしようも無いだろうが!!」

 

「け、賢ちゃん・・・落ち着いて・・・」

ワームモンが僕を宥めてくる

正直賢ちゃん呼ばわりはいらつく。

ぶん殴りたい

「これが落ち着いて・・・待てよ」

 

恐らくトカゲの方は僕の居場所を常に察知しているのだろう・・・

ならばあの女をトカゲにぶつけてやればいい

人質を取ればそれも簡単だろう。

 

「あいつらがどこに現れるか、それまでどれだけ襲撃されるか・・・だな。」

笑いが込み上げてくる

これで邪魔な物は掃除できる

 

「賢ちゃん・・・それは無理だよ。」

「うるさい!口答えをするな!」

鞭を叩きつけ大声で怒鳴りつける

しかしワームモンは反抗的な目でこちらを睨んでくる

 

「あいつは理性があるはずだ。

今日のあいつを見たの!?

成長期のデジモン達を守りながら平然と兵器の攻撃を受け続けていたんだよ!?」

 

「あの女から攻撃したなら関係無い。

あのトカゲは目的を邪魔する物なら全て等しく無に帰す」

僕はそう言ってワームモンの頭の悪さに右側の額を抑える

そしてワームモンを睨む

 

しかし、ワームモンがこちらに向けていたのは畏怖や尊敬、反抗といった期待していた眼ではない。

むしろ、哀れむとか、蔑むとか、そんな嫌な眼だった

 

「・・・・・・ッチ!」

小さく舌打ちをして移動の準備を始める

餌は己、武器は敵

なかなか起こることのない組み合わせだ。

だがあの女は味方のためなら何でもする

そう確信できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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