龍の転生者と魔物達の転生記・龍龍(とう)   作:龍牙

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第一話2

「…オレは小動物を飼うのは嫌いなんだ…。特に白い小動物はな」

 

その時の総麻の言葉はそれが全てだったりする。実際なのは達と一緒に動物病院に運ばされたフェレット…ユーノ。

少なくとも、全面的に原作主人公(なのは)に全面的に任せてジュエルシードから始まる一件には様子を見る程度に留めておこうとしている総麻としては、此処で余計な厄介事を大量に持ってきてくれるユーノを抱え込みたくは無い。

 

総麻にとってユーノは、“礼をする所か管理局等と言う厄介事の頼みもしない追加と言う仇で返してくれる存在”と言う認識でしかない。何より前世の経験から『他人は必ず裏切る』と言うのが持論な総麻としてはユーノをこれ以上助ける理由など無い。

少なくとも平和に第二の人生を平和に過ごす為にジュエルシードを排除する必要は有るが、それはなのはに任せればそれで良い。そもそも、この世界が“原作”と言う未来予知通りの未来に進んでくれれば自分と言う余計な異物が関わらない限り全ては上手く行くはずだ。

 

「何でよ!」

 

そんな未来設計をしているとアリサが彼の言葉に噛み付いてくる。

 

「…白い猫は好きだけどこう言うナマモノは嫌いなんだ」

 

「でも、こんなに可愛いよ」

 

「…嫌いな物は嫌いだ。嫌っている人間が預かった所で不幸せになるだけだろ、どっちも」

 

そう言って手を振って総麻は足早に動物病院を後にする。

 

(…全ては今夜からだな…)

 

それは、高町なのはと言う少女の人生を変える始まりの夜(ビギンズ・ナイト)。此処でなのはがユーノを助け、彼女の長年の相棒(パートナー)となるデバイスと出会う事から始まるのだ。

だからこそ、此処でジュエルシードの思念体にユーノが襲われる事は有っても、それ以上は何としてでも避けて貰わなければならない。

 

(…下手に放置して死なれたら後味悪いしなぁ…)

 

打算的な事を考える一方でそんな事まで考えてしまう辺り、総麻は人が良いと言える。問題点としては一つだけ…。

 

(…未熟な暗殺者と忍者のスキルで両親の目を誤魔化せるか…?)

 

妙に名前も見た目も含めて魔人学園の二人に似ているだけにそんな所で不安になってしまう。最低でも今夜はユーノの安全確認だけはしなければならない。ユーノが襲われなかったとしてもそれはそれ、多少の誤差で収まる範囲だろうが。それをする為にも今夜は両親の目を盗んで家を抜け出す必要が有る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜……

 

 

「…………はい…………?」

 

細心の注意を払いつつ両親が寝静まったのを確認して急いで忍者のスキルを最大限に活用して家を抜け出し、昼間の動物病院の近くまで来た時はまだ何も破壊されていない現状に安堵しつつ、安全圏……主に近くの民家の屋根の上に移動して暗殺者のスキルで気配を消す。

そして、其処で暫く様子を見ていると彼の知っている知識の通りにユーノがジュエルシードの思念体に襲われて、なのはが助けを聞いて駆けつけた。

 

其処までは良い。予定通りに運命が進むならば、此処でなのはが始めて魔法と関わるので、それも別に良い。だが、最大級の問題点に対して総麻は唖然としている。

 

「…………ナンデ、《鬼》ナンデショウカ…………」

 

驚きの余り目が点になって片言になっていた。そう、黒いスライムモドキだった記憶がある思念体は…巨大な体躯と真紅の体、腰に有るのは虎島の腰巻では無く内側から破れた衣服、頭からは角を生やした異形の大男…金棒こそ持ってないが昔話に出てくる文字通りの《鬼》が其処に居た。

しかも、ゲームの魔人学園剣風帳で人が鬼に《変生》した姿とよく似てはいるが、人の気は感じないのでそれがジュエルシードの思念体である事は間違いないだろう。

 

 

『ガァァァァァァァァァァァァァァァァァアア!!!』

 

 

空気を振動させる咆哮を挙げる鬼の拳が破壊した動物病院の壁からユーノを抱えてなのはが慌てて逃げる。

 

「…………ハッ!? 拙い!」

 

明らかに魔法初心者所か戦闘初心者にしては手に余るであろう《鬼》と言う存在となったジュエルシードの思念体。『何故鬼になったのか?』と言う疑問で思考停止していた総麻は再起動すると慌ててなのは達を追う。

 

自分のせいかとも思ったが、それを考えるのは後だ。…魔人学園伝奇に於いて『鬼』と言うのは非常に縁のある敵だ。特に魔人学園伝奇の主人公《緋勇龍麻》が前日談の『零話』の最後に戦った、言わば一番最初に戦った相手だが、なのはが同じ様に行き成り戦ったとして後衛型の魔導師の才しかないなのはでは間違いなく勝ち目の無い相手だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体なんなの!? 何が起きてるの!?」

 

鬼に追いかけられていると言う自分が巻き込まれている状況に対してなのはが叫ぶ。………総麻が聞いたら『オレも聞きたい』と答えるところだろう……色んな意味で。

 

「君には資質がある。お願い、僕に少しだけ力を貸して」

 

なのはの腕に抱かれているユーノがそう言った。

 

「資質!?」

 

「僕は、ある探し物の為に…うわぁ!!!」

 

「きゃあ!!!」

 

上空から鬼が彼女達の行く手を遮る様に落下してくる。道路の真ん中に立って咆哮すると、鬼は腕を振るうと、月の光に照らされて何かが煌く。

 

幸いにもなのはとユーノは落下の衝撃に煽られた事でそれを避ける事が出来た。彼女達の後方に有った電柱が突然切り裂かれ、何かに操られる様に上空に浮かび上がる。

 

「これって魔法なのか…?」

 

「魔法って…?」

 

「君っ! 話は後だ、僕達が助かる為には僕の言うとおりに!」

 

ユーノが戸惑うなのはに向かって叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…見えない糸で電柱を切ってそれを操るって…)

 

鬼の攻撃パターンに何か引っかかる物を感じる。どうも危険性は高いが、概ねは総麻の知っている通りに進んでいると思って黙って観察していた。

少なくとも、総麻としては時空管理局とは関わりたくは無いので出来る事なら自分は何もせずになのはに全て任せたいと思っている。

 

 

『レイジングハートが無い!』

 

 

だが、ユーノの叫び声に思わず目を見開く。彼女達の足元に赤い宝石が落ちているので問題ないだろうが、拙いのは拾ってから起動パスワードを唱えている暇が有るのかと言う点だ。

 

「っ!?」

 

迷う暇も無く総麻は立っていた屋根を蹴ってなのは達の元へと飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

ユーノに言われて赤い宝石を拾った瞬間、鬼が両腕を操って空中に浮かぶ電柱の破片を一斉になのは達に叩きつけようとする。迫り来る凶器への恐怖に目を閉じるなのはだが、

 

「え?」

 

突然の浮遊感、誰かに抱きかかえられる感覚と共に遠くに運ばれる感覚を覚える。

 

総麻は着地すると同時に震脚と共になのは達の元へと移動。ユーノと赤い宝石を持っているので問題ない。急いで彼女を運び安全圏まで避難させる。

 

「え?」

 

なのはを降ろすと再び電柱の破片を鬼が操る前に懐まで飛び込み、

 

「破ァァァァァァァァァァアアアアア!!!」

 

気合を込めた叫びと共に鬼の体を蹴り上げと、そのまま鬼の体は後方へと吹飛ばされ塀へと激突する。

 

「…徒手空拳技《陽》、《龍星脚》」

 

「総麻くん?」

 

なのははゆっくりと己の使った流派の業の名を呟く鬼を蹴り飛ばした少年の名前を呼んだ。

 

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