口調など違和感があるとは思いますがご了承ください。
祟り…神仏、怨霊などが人間などに降り掛ける災いの一つ。
そんなのはただの作り話だ、神仏を信仰させる為の脅しに過ぎない。
今まで生きてきた中で、目に見えるものしか信じなかった。
だが俺は…この現実を信じていいのだろうか?
「…ぅ」
「おはよう、目が覚めた?」
「…え?」
うっすらと目を開けると見たことの無い部屋にいた。
そして聞き覚えの無い幼い声で朧げだった意識がはっきりとした。
確か俺は川原まで歩いて、途中で頭痛に耐えられなくなって…?
「大丈夫かな? 自分の名前とか言える?」
「は、はい…俺は岩上 健(いわがみ けん)です…」
起き上がって呆然としている俺は声をかけてくれた者の方へ向く。
そこには金色の髪をした声から想像できる程の幼い少女がいた。
紫と白の服はあまり見ないデザインだが、今はこういうのが流行りなのだろうか?
目玉の着いた変わった帽子を被っているが…そういう趣味なんだろうか、あまり気にしないでおこう。
しかし、少女のただならぬ雰囲気に俺は何故か敬語で答えてしまう。
「私は洩矢 諏訪子、この守矢神社の神様だよ」
「か、神様?」
…こいつは一体何を言っているんだ?
こんな小さい女の子が神だというのか!?…いや、神社に住んでいるのならごっこ遊びなんだろう。
いくら神仏嫌いでもムキになって子供に突っ掛かるほど俺も馬鹿じゃない。
神仏嫌いの感情は置いといて、まずは現状の把握もしないといけない。
俺はこの洩矢…さんに色々と質問をしてみる。
「ここは…何処なんですか?」
「ここは守矢神社、私(と神奈子)の神社だよ」
「えーと、確か俺は川原で気絶して…」
「そう、近くを散歩してた私が倒れていた君を見つけてここまで運んだの」
川原からはここまで運んだ?
俺、身長もあるし筋肉質でもあるから体重は75㎏位はある筈だが…。
考えると不可解な事ばかりだが、とりあえず…今すべき事は。
「見知らぬ俺を、助けて頂きありがとうございます」
俺は座り直して洩矢さんの正面に向いて頭を下げて礼を言う。
【例え何者でも恩を受けたら礼を尽くせ】
それが俺の持論・その2だ。
「大丈夫だよ、外からの人間を見るなんて久しぶりだったしね」
「外からの人間…?」
外からのとはどういう事か? 詳しく訊こうとしたその瞬間、襖が開いた。
今度は白と青の巫女装束みたいな服を着た緑色の髪の少女。
しかし腋が空いている巫女装束なんて今まで見たことが無い。
少女は洩矢さんに一礼してから入ると俺の近くまで来て正座した。
「初めまして、私は守矢神社で風祝をやっています。東風谷 早苗と申します」
「岩上 健です…助けて頂いてありがとうございます」
東風谷さんが名乗ると俺も名乗って頭を下げる。
とりあえず洩矢さんも東風谷さんも優しそうな人たちでよかった。
俺は二人にここがどういった場所なのかを詳しく訊いてみると、どうやらここは俺がいた世界ではないらしい。
幻想郷…結界で覆われた世界で辺りには主に妖怪やらがいて、人間は人里くらいにしかいない。
だがたまに俺のような外からの人間…外来人が来るらしい。
大体はとある妖怪の仕業だとか…迷惑な奴だ。
運が悪ければ妖怪に襲われて食われてしまう事も珍しくないらしい。
熊とか野犬どころではなかった様だ、あの時に洞窟から動いた判断は下手すれば死んでいたな…。
因みに元の世界へ帰る方法は、ここではない神社…博麗神社という処へ行けばあるらしい。
「説明は大丈夫かな?」
「う~ん…突拍子もない話しではありますが、大体は把握しました」
「とりあえず今日はここで泊まって下さい。明日、私が博麗神社までご案内しますので」
「何から何まで…ありがとうございます」
お二人の優しさに感謝の気持ちで心がいっぱいになる。
久しぶりに人の優しさというのを感じた。
これから飯らしいので、せめてもの恩返しとして俺も手伝うことにした。
台所は何というか、昭和の台所みたいな感じだったが料理するには十分な場所だった。
煮物用の野菜を洗ってから切っていると東風谷さんが話をしてくれた。
洩矢さんは見た目は子供だけど本当に神で、しかも祟り神・ミシャグジ…諏訪の国の王だとか。
そしてもう一人、神がいるらしい…本当だったのか。
神仏は嫌いだけど、それとこれは関係ない。ただ恩人に礼儀を尽くすだけだ。
…ただそれだけを考えていた俺は幸せだっただろうな。
「ごちそうさまでした」
「健といったか、なかなか料理が上手いじゃないか」
「ほんとだよ、早苗といい勝負だよ」
「ありがとうございます。普段から作っているだけですので大した事はないですよ」
俺の作った煮物と卵焼きは皆さんの口に合ったようで安心した。
普段から作っていた甲斐があった。親父くらいしか食わせる相手がいなかったからな。
親父…俺がいなくてもちゃんと飯食っているのか? すぐにカップラーメン食おうとするから心配になる。
とりあえず、明日はちゃんと野菜食わせないとな。
「ほら健、折角だから飲みなさい」
青い髪の女性…八坂 神奈子さんから杯を頂くと徳利の酒を注がれる。
どうやら神は酒豪らしい…だが俺は―。
「どうしたの?」
「いや、何でもないです…頂きます」
諏訪子さん(洩矢さんと呼んだら堅苦しいから名前でいいと言われた)から言われ、
一気に杯の酒を飲み干す。
どうやら外の世界で奉納された御神酒らしい…酒が好きな奴には美味いと言える逸品だろうな。
しかし、俺は…。
「うぷっ…」
飲んだ瞬間に顔面蒼白になって、体が異常に拒否反応を起こす。
一気に立ち上がると口を押さえてトイレへ向かう。
それを三人は唖然として見ていた。
すいません、俺は…極度の下戸なんです…匂いは平気ですが飲んだらアウトです。
夜も遅くなり、俺は寝かされていた部屋に戻り寝ようとする。
不思議な体験をしたがとりあえず帰ったら親父には正直に祠の事は話そう。
そう思って布団へ入ろうとした瞬間、
『●●●●●●●●●●』
「っ!…また…てめぇか?」
頭から響くあの声が聞こえると俺は怒りを露にする。
頭痛は無い、これは神社の力なんだろうか?
どうやら向こうもここでは効かないのがわかったのか、外へ来いと俺に言う。
襖を開けて、裸足のまま外へ出ると辺りは月の光が降り注いでいるのに黒い人影が立っていた。
俺は拳を握ると腰を落として構えると人影相手を正面に捉える。
すると影はニヤリと微笑むと、また意味不明な言葉を唱えだす。
『●●●●●●●●●●』
「不快だから止めろ! この野郎!!」
未だに止めようとしない人影に俺は堪忍袋の緒が切れた。
一気に距離を詰めて得意の左ストレートを顔面に目掛けて繰り出そうとした瞬間、
俺は次の光景に目を疑った。
その現実を受け止めることを拒んでしまった。
「…あ、あぁぁぁぁぁ!!?」
殴ろうとした左の拳がまるで卵の殻のようにひびが入り、一気に砂のように崩れ去った。
血は出ていないのに神経が直接焼けるかのような尋常じゃない痛みが俺の左手に襲い掛かる。
地面に倒れて叫びながら悶える俺を奴は奇妙に笑ったまま屈むと俺の耳元で囁いた。
『祟りは…まだまだ終わらない』
それだけが聞こえ俺は奴が消えていく様子を見ていられなかった。
守矢神社のみんなが来てくれた時には既に俺の意識は途絶えていた。
ボロボロに崩れた砂細工のような左手を抱えながら…。
「どうしたの、健!」
「健さん!! 大丈夫ですか!?」
「これは…祟り?」
閲覧ありがとうございます。
グロテスクな表現は控えていますがもし不快だと思う方がいれば訂正します。
次回もよろしくお願いします!