この男、只今修行中   作:misuta

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第五話「この男、只今修行に着手」

 

「ほら、健! 修行はまだまだ終わらないよ~!」

 

「ぜぇ…ぜぇ…し、死ぬ…!」

 

「ほら、立ち上がって!」

 

 

日差しの良い天候の下、守矢神社の境内で俺は仰向けで倒れている。

 

あの影…呪影を追い払ってから一週間は経ったか。

 

翌日から俺は諏訪子さんに修行をつけて貰っている。

 

朝起きてから朝食の用意、神社の掃除などの家事を行ってから修行を行っている。

 

さて、問題はここからだ。

 

これが先程まで行っていた修行の内容の一部だ。

 

 

・石段蛙飛び(十往復)

 

最初は石段を走って昇り降りかと思っていたら諏訪子さんの提案でこれになった。

 

蛙飛びは全身の筋肉を使うからキツイ…腰や膝がぶっ壊れるかと思った。

 

諏訪子さん曰く「そう簡単に壊れやしないから平気♪」との事。

 

 

・御柱を担いで走りこみ(二十キロ)

 

神社の周辺の走りこみはまだいい…諏訪子さんは飛んで見ている。

 

問題は神奈子さんが用意してくれた柱…重さ30kgはキツイ。

 

神奈子さん曰く「これは初歩の初歩だから慣れるまでは気張れ」との事。

 

 

・片手腕立て(百回・五セット)

 

こういうシンプルな筋トレは得意だから良かったと思ったがそれは甘かった。

 

ずっと諏訪子さんが背中に座っているからキツイ…羨ましいと思った奴、やってみるか?

 

因みにダウンしたり諏訪子さんが落ちたらまた最初からだぞ? 

 

あとはマンガに出てくるような修行がetc…厳しいってレベルじゃねぇよな?

 

 

「全くしょうがないなぁ…少しだけ休憩だよ?」

 

「ありがとう…ございます…」

 

 

立ち上がろうにも動きが遅い俺を見て呆れた顔をした諏訪子さんがそう言うと、

 

俺は息絶え絶えに礼を言って呼吸を整えようとする…酸素がとにかく欲しい!

 

しかし、何で肉体強化ばかりの修行をやっているのか?

 

答えは簡単、新しい左手はかなり重いからだ。

 

【岩の拳】

 

現人神になる為に、諏訪子さんと神奈子さんの力を岩に宿して俺の左手に着けた。

 

全部あの凝縮された岩で出来ている為、重量としてはかなり重すぎる。

 

だが、諏訪子さんから頂いた鉄の腕輪には諏訪子さんの神力が宿っているらしい。

 

そのおかげで日常生活には支障が無いが油断すると重さに体が傾く事がある。

 

例えそれがあっても腕輪に頼りっぱなしではいけない。

 

今の俺は無理矢理ではあるが能力を宿した人外らしい…現人神の見習いという事か。

 

まずはこの拳を独自に扱えるようにしなければならない。

 

 

「格闘をやっていた時よりも辛いな…」

 

 

早苗さんが用意してくれた筒の水を全部飲み干して呟く。

 

筋肉痛とかどうしよう…とは思ったが、不思議と未だに筋肉痛は起きていない。

 

そう簡単に壊れないという諏訪子さんの言葉を思い出したけどこれがそうなのだろうか?

 

もしくは修行が足りていないからなのだろうか…だとしたら情けないな。

 

 

「健は格闘戦が得意なんだっけ? あの影の顎を叩き込もうとしていたけど」

 

「はい、外の世界で格闘技をやっていました…人並みくらいなものですけど」

 

「面白そう!…じゃあ次は組み手にしようかな~」

 

 

…神に人間が作った格闘技は通用するのだろうか?

 

下手に剣とか槍を今更覚えるにも時間がかかるからな…格闘の方がしっくりくる。

 

っと思っていると、どこからか声が聞こえた。

 

 

「あやや、いつもながら精が出ますねぇ」

 

 

ふと、上を向くと声の主であろう何かがいた。

 

歯が高い赤い下駄に山伏のような帽子と装飾をした少女。

 

黒い翼がとても特徴的で、手にはカメラを握っていた。

 

 

「文だ~」

 

「どうも」

 

「こんにちは、修行には慣れてきましたか?」

 

 

少女…射命丸 文さんは俺が呪影を追い払った次の日に出会った。

 

朝起きて食事の用意しようとしたら、取材させろといきなり守矢神社に来たのには驚いた。

 

その後早苗さんに怒られていたけどな…普段は優しいんだけど怒らせると早苗さんは怖い。

 

とりあえずは後ほど取材するという事で帰ってもらったんだった。

 

 

「まだまだ修行が足りないって所かな、今日は取材か?」

 

「はい、早苗さんから間は空けるように言われたので」

 

「早苗は怒ると怖いからね~。健の顔以上に」

 

「俺は生まれつき目つきが悪いんですよ…」

 

 

修行は一旦やめにして取材をするという事で神社へ入った。

 

約束は違える訳にもいかないし、気を付けないとある事ない事を新聞に書くことがあるらしい。

 

悪い人では無さそうなんだけどなぁ…付き合いが長い早苗さんがそう言うのならそうなんだろう。

 

 

「お茶を淹れたので、どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

「ありがとう~」

 

 

文さんを居間へ通すと俺は早速お茶を三人分淹れた。

 

早苗さんと神奈子さんは人里へ出掛けているから今はいない。

 

いずれ、俺にも人里を案内してくれるらしい。

 

俺は文さんの相向かいに座って尋ねた。

 

 

「んで、何が聞きたいんだ?」

 

「そうですね~。まずはどのようにしてここ幻想郷へ来たかを…」

 

 

とりあえず俺自身の事、呪影の存在、祟りと儀式などを答え、

 

大した問題もなく取材は進み、雑談も楽しかった。

 

最後に俺はふと思いついて、

 

 

「文さん、ちょっといいか」

 

「はい、何でしょう?」

 

「新聞に書くのは構わないが…名前は伏せてくれ」

 

「別に構わないですが…どうしてです?」

 

「あまり目立ちたくないのが理由かな…修行に専念したいし何か事件に巻き込まれるのも嫌だし」

 

「あややや、そうですか。でしたら仮名とかどうです?」

 

 

人間を辞めたなら人間の名前を取っておくのもどうなんだろってふと思った。

 

いっその事思い切って改名して別の存在として生きるのもいいかとも思った。

 

でも何故か、この名前を捨ててはいけないような気がした。

 

仮名は別にいいと言おうとしたら突然諏訪子さんが、

 

 

「ガンケンなんてどうかな~?」

 

 

と言った…ガンケン?

 

岩の拳…岩拳(ガンケン)ということか、なるほど。

 

まぁ本名を隠せるなら構わないか。

 

 

「それでいいですよ」

 

「ガンケンですね…わかりました。私が呼びのもこっちで?」

 

「健でいいよ、同じ【ケン】だし」

 

 

ガンケンはこれから出会う人(?)に名乗るか。

 

特に本名に執着心があるわけじゃないが捨てられない。

 

それに名前というのは、自分が覚えていればいいんだ。

 

 

「ではこれで終わりですね。お二人共ご協力ありがとうございます」

 

「変な記事を書かないでよ~?」

 

「さて、俺は修行再開だ…組み手の前に走りこんできます」

 

「御柱をちゃんと背負うんだよ~」

 

 

 

(文視点)

 

健さんがそう言って立ち上がると修行の為に外へ出て行く。

 

あの人は意外に真面目なんですね、諏訪子さんの無茶な修行をちゃんとやるなんて。

 

さて、そろそろ訊こうかな…健さんには話せない内容です。

 

 

「諏訪子さん、本当は彼に肉体強化なんて必要ないんじゃないですか?」

 

「うん、肉体は精神を磨く事で何とでもなるしね。

 

 でも健の場合は瞑想とかよりも、こういう方のが集中できるみたい」

 

「なるほど、ここまで頑張れるならそろそろ神力の補助は不要になりそうですね」

 

「…? 昨日から鉄輪に力を入れてないよ?」

 

「えっ?」

 

 

予想外な答えに私はついペンを落としてしまう。

 

先程諏訪子さんが精神力が重要とは言ってましたけど、

 

あの人は自覚無く日に日に精神力を高めている…?

 

あややや、これは祟り神の話と同じくらいネタになりそうです。

 




閲覧ありがとうございます。

この話の修行は諏訪子が見ていますがちゃんと神奈子も修行を見ます。
早苗は修行は見ませんが幻想郷などの知識や幻想郷で生きる上で必要な事を優しく教えてくれます。

次回もよろしくお願いします。
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