この男、只今修行中   作:misuta

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第六話「この男、只今弾幕ごっこ中」

「ふぅ、ふぅ…」

 

早朝、俺は一人で走り込みをしていた。

しかし修行の日々に疲れが溜まっているのか?

いつも担いでいる御柱が少し重く感じる。

ふぅ…まだまだ修行が足りないな。

走り込みを終えて石段を上がりながら呟く。

朝飯を何にするかを考えながら空を見上げる。

この時俺は御柱が50kgに増加していたに全く気づいてなかった。

 

「健、今日の修行は私が見るわよ」

 

「えっ? 神奈子さんが見てくれるんですか?」

 

朝飯を終えて片づけをしていると神奈子さんからそう言われ、突然の事に思わず俺は返す。

どうやら諏訪子さんは湖で会議があるらしく、朝食を終えたらすぐに出掛けていった。

ふと思ったが…湖で誰と何について会議するんだろうか?

あそこ、走り込みでいつも通るけど蛙しかいなかったと思うけどな。

 

「そろそろあんたにもアレを教えておかないと」

 

「アレ…?」

 

「弾幕ごっこと言って幻想郷ならではの勝負ですね」

 

俺と一緒に片づけをしている早苗さんが説明してくれた。

弾幕ごっこ…?

外の世界ではそんな物見たことも聞いたこともない。

マシンガンとか銃器でも出てきたらそれは戦争だしな。

 

「百聞は一見に如かず、実際に体験したほうが早いわ」

 

「神奈子様、健さんはまだ飛べないのですから加減してあげて下さいね?」

 

「大丈夫よ、その辺はわかっているわ。

 

 それに手加減が出来ない程は馬鹿じゃないよ。

 

 じゃあ健、修行の用意をしたら境内で待っていなさい」

 

それだけを言い残して外へと出て行ってしまった。

何か色々と疑問だが修行なら早く行かなければ…!

片づけと日課である掃除を終えると、俺は修行用の道着に着替える。

空手の道着みたいに袖は無く、軽くて丈夫な素材で出来ているから動きやすい。

最後に白帯を締め、修行用の服装に着替え終えると俺は外へ出ていく。

境内でしっかり準備体操をしていると、いつの間にいたのか神奈子さんが屋根から飛び降りてきた。

背中にはあの注連縄をしている…あれが八坂 神奈子、本来の姿であると早苗さんが言っていたな。

 

「じゃあ行くわよ、準備運動代わりに走っていきなさい」

 

「あれ、御柱はいいんですか?」

 

「今日はいいわ、その代わりあたしの修行は厳しいわよ?」

 

「大丈夫です、伊達に諏訪子さんの修行をやっていませんから」

 

俺はそう言うとジョギング程度で走ろうとした瞬間、いつもよりすごい身体が軽く感じた。

御柱を担いでいないからか自分の体ではないような感覚だった。

神奈子さんは宙に浮いて俺が走るのを見ていた。

しかし今日は寒気がする…季節のせいか。

 

辿り着いたのは儀式を行ったあの場所だった。

走れる所まで走って、後は神奈子さんに連れて行ってもらった。

相変わらずいい風景だ…絶景を見て楽しむと顔つきまで穏やかになる。

 

「健、何やっているの?」

 

「あ、すいません」

 

「そんな凄まじい目をしなくてもいいじゃない」

 

「…これでも穏やかな目ですよ」

 

諏訪子さんに弄られるのは慣れたが神奈子さんにまで言われた…。

この目つきのせいで外の世界では一体何人に喧嘩を売られたか?

思いっきり睨みつけたら全員逃げてしまったけどな。

逃げるくらいなら喧嘩を売らなければいいのにと思うが不良たちの思考はわからん。

 

「まぁ、いいわ。早速始めるけどいいかしら?」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

頭を下げて言った次の瞬間、何かが俺の横を通り過ぎた。

前にいる神奈子さんを見ると片手を俺に向けて何かを撃ち始めた。

咄嗟に俺は左側に転がって避ける。

それは光の球…いや、弾丸か?

どうやら俺は弾幕と言うのを勘違いしていたようだ。

 

「諏訪子の修行のおかげね、よく避けたわ」

 

「あれが弾幕ですか?」

 

「そうよ、まずは避ける事に専念なさい」

 

神奈子さんがそれだけを言うと次々と弾幕を放つ。

俺は神奈子さんの言う通りとにかく避けるしかない。

足元を狙う弾幕はジャンプして、頭を狙う弾幕は屈んで避ける。

右に来る弾幕は体を捻らせ、左から来る弾幕は転がり込んで避ける。

速さはバラバラで見極めるのが大変だけど避けられない程ではない!

ある程度慣れてくると神奈子さんはカードを手に取り、

 

「スペルカード…」

 

「?」

 

「神祭【エクスパンデッド・オンバシラ】」

 

カードを俺に向けて宣言するとさっきと同じ弾幕がくる。

これも予め避ければ…と思った俺は甘かった。

弾幕は完全に俺を狙ってやってくる。

しかし精度が甘い為、引きつけてから避けようとした…が読みが甘かった

 

「っ!?」

 

俺はいつの間にか地面に倒れていた。

腹に重い一撃…どうやら弾幕に当たって吹き飛ばされたみたいだ。

神奈子さんが言っていた加減をしてこの威力か。

 

「大丈夫かい?」

 

「はい、しかし今のは一体?」

 

「弾幕ごっこにはスペルカードルールというのが存在しているのよ」

 

倒れている俺に神奈子さんは手を差し伸べてくれた。

その手を取って起き上がるとスペルカードの事を尋ねる。

弾幕ごっこの中での武器と考えればいいか。

まぁいい、避けきるのが俺に課せられた修行なんだ。

 

「神奈子さん、もう一度お願いします!」

 

「当たり前よ、その根性を見せて貰うわよ?」

 

数時間は経ったのか、辺りが暗くなってきた頃には俺は疲労しきっていた。

だがその方が集中できる、雑念も消えていい感じだ。

これで今日は最後だと神奈子さんはスペルカードを宣言する。

 

「神祭【エクスパンデッド・オンバシラ】」

 

放たれる弾幕、迫り来る何か…いや、御柱の数は凄まじい。

恐れ…そんなのを感じる暇が集中している俺には無い。

追尾型の弾幕は左右に誘導しながら中央へ走る。

ここまでは予想通り、だが問題はこれだ。

いくつもの御柱が一斉に俺へ降り注ぐ。

これが今まで避け切れなかった。

走って逃げようにも、転がり込んで避けようにも、

時間差で振る御柱に囲まれてしまう。

 

「俺も空を飛べれば…とぶ?」

 

小さく俺は呟いて諏訪子さんの修行を思い出す。

石段蛙飛びに当然慣れていなかった俺は何度も石段から転げ落ちた。

その時諏訪子さんが言った言葉…。

 

『手は大地を支えて足は天に向けて大地を蹴り飛ばすんだよ~』

 

軽い体、蛙飛び、天に向けて…なるほど!

俺は腰を落として両手を地面に着け、蛙のポーズをする。

訝しそうに神奈子さんが見るが何も言わなかった。

御柱が俺の周囲を囲む、どうせ逃げ道は無い。

天を見上げて時が来るのを待つ。

一本の御柱が地面に刺さった次の瞬間、

 

「ハァッ!」

 

「!?」

 

蛙の姿勢のまま足に溜めた力を一気に爆発させながら、

両手で地面を思いっきり押し上げると空へと跳ぶ。

神奈子さんは予想外の行動に驚きの表情を隠せていなかった。

 

俺は空を飛ぶことはできない。

だが【空を飛べない】なら【空へ跳ぶ】までだ!

降り注ぐ御柱の合間を潜り抜け、

既に刺さっている御柱の上へと着地する。

 

「よっしゃあぁぁぁっ!」

 

込み上げて来た達成感に空へ咆哮する。

無論、まだまだ未熟なのは自覚しているが、

この喜びだけは噛み締めたかった。

 

「あれ…?」

 

集中力が途切れた瞬間、俺は立ち眩みしてしまい

バランスを崩して御柱から落ち…ることはなかった。

神奈子さんが咄嗟に俺の右手を掴んでくれたからだ。

 

「最後まで油断しないの、まだまだ修行が足りないわね」

 

「す、すいません。神奈子さ…ん…」

 

(神奈子視点)

 

そう謝ると健はすぐに気を失ってしまう。

全く、気絶しやすい子ね。

あんなに精神力を費やせば当然だけど。

あたしの弾幕に途中で投げ出すかと思っていたのに最後までやりきった、

その根性と精神力は諏訪子が認めるだけあるわ。

 

「さて、そろそろ帰らないと早苗がうるさいわね」

 

気絶した健を抱え上げて私は神社へと向かう。

信仰心が無い現人神…世話が焼けるけど、これはこれで面白いかもしれない。

ふとそう考えながら、私は健の右腕にある物を付けた。

私の弟子である証と今日の修行を達成したご褒美を授けないとね。




閲覧ありがとうございました。

少し改行方法を変えてみましたが、いかがでしょうか?
もし読みにくいとか意見がありましたら遠慮なく言ってください。

また次回もよろしくお願いします。
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