この男、只今修行中   作:misuta

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第八話「この男、只今人里へ」

『………』

 

闇に蠢く影。

それは自らの存在を覆い隠し、全てを闇に変える。

残すは祟り、呪い、災い。

古くから恐れられし神は祟りを持つ。

今、罪無き者へ牙を向けるは神の気まぐれかそれとも…。

 

 

 

「健さん、着きましたよ」

 

「ここが人里か…かなり広いな」

 

今日は早苗さんから買い物を頼まれて人里へ案内された。

初めて見る光景に目を奪われてしまう。

今まで山篭りに近い生活というか修行だからな。

とりあえず左手は袖の中に隠している。

異形はあまり好まれないらしいからな。

 

「では私は布教活動してきますのでお買い物をお願いします」

 

「はい、終わったら俺はここで待っていますよ」

 

一旦早苗さんと別れ、俺は買い物をしに行く。

早苗さんは先ほども言っていたが信仰を集めるために活動するらしい。

信仰ねぇ…無宗教な俺には関係ないしな。

人に資料を渡すとかの手伝いならできるが早苗さんから断られた。

何でだろうか? やっぱり資料の配布にも信仰心に関わりが―

 

「お母さん、あの人目付きが怖いよー」

 

「見てはいけません…!」

 

「…ん?」

 

すれ違った親子の会話に疑問を持ってしまい、

ふと周りを見ると人々は俺の顔を見ないように避けている。

なるほど、この目付きで配っても【布教】じゃなくて【脅迫】だよな。

早苗さん、その優しさを最大限に活かした断り方に涙が出てくるぜ。

…とりあえず味噌から買いに行くか、こん畜生。

背中に巨大な籠を背負っているから大荷物も大丈夫だよ、こん畜生。

 

その後買い物行く先々で店主たちに恐れられ、

お代は結構ですから命だけは…と命乞いまでされた。

何で買い物する客が店主に気を使わないといけないんだ?

みんな、俺は泣いていいですか?

 

「八百屋はどこだ…お?」

 

「きゃっ…!」

 

「す、すまない! 大丈夫か?」

 

八百屋を探して辺りを見回しながら歩いていると、前方にいる人とぶつかってしまった。

しまったと思い、俺は声を掛けて右手を差し出した。

その人は俺よりも小柄な小さい女の子で紫色の髪に花の飾りが特徴の女の子だった。

見た目は幼いのだが、不思議とただの子供じゃないような雰囲気だ。

 

「大丈夫です。こちらも不注意でした」

 

「いやいや、前向いて歩かないこちらに落ち度がある。怪我はないか?」

 

「ふふっ…大丈夫です。見た目とは裏腹に親切ですね」

 

少女は俺の手を取って起き上がると着物の汚れを払っていた。

俺は怪我はないか心配しているとその様子が可笑しかったのか少女は笑った。

見た目…まぁ、こんな目つきだから仕方ないよなぁ。

 

「見かけないお顔ですが、外来人ですか?」

 

「…まぁそんなところだな。俺の名はガンケンだ」

 

「稗田 阿求と申します。お買い物の途中ですか?」

 

「あ、そうだ。八百屋を探しているんだけど知らないか?」

 

「勿論知っていますよ。ではご案内します」

 

「それはありがたい…!」

 

俺からぶつかったというのに阿求は快く案内をしてくれた。

阿求の後ろに着いていくとさっきから周囲の視線が強く刺さる。

何だその犯罪者を見るような目は?

確かに外の世界では警察が来るかもしれない事案だわな。

気にしないでおこう…精神的にはキツイが。

 

そういえば早苗さんから疲れたらお茶屋で休憩してて下さいって少し小遣い貰っていたな。

阿求に詫びとお礼に団子とか買ってもいいだろう。

八百屋の買い物を終えたらお茶屋に行くか。

おい、八百屋の店主…ロリコンとか言いたげな目つきで見るな。

睨んだら必要以上に怯えるなよ…全く。

 

 

 

その頃人里近くの森にそれはいた。

黒い人型の影…呪影である。

何やら意味不明な呪文を呟き、辺りは影が漂う。

周りには人間や動物などの骨が散らばっている。

 

『目覚めよ…我が異形の配下、愚かな人間に恐怖を与えし影よ…』

 

散らばっていた骨が影に飲み込まれ、徐々に形は出来上がっていく。

明らかにこの世のものとは思えないそれは妖怪ではなく魔物に近い。

完成された魔物は呪影に跪くと崇め始めた。

 

『カミサマ…ゴメイレイヲ…』

 

『適当に暴れるがいい…その力を我に見せてみろ』

 

『ギョイ…』

 

呪影の命令に魔物はゆっくりと歩き、どこかへ向かう。

だがその気配は影のように隠され、その姿は影と共に消える。

 

『我が信仰は…恐怖…愚かな人間よ、我を恐れよ』

 

最後に低く笑うと呪影は自らの影の中へ消えていく。

己の信仰を集め、神力を得るがために…。

 

 

 

「すいません、お茶と団子を頂いて」

 

「気にするな、さっきの詫びとお礼を兼ねているからな」

 

「ガンケンさんは律儀な方ですね」

 

「恩を受けたら礼を尽くすもんだろ?」

 

買い物を全て終えた俺は阿求と一緒にお茶屋で休憩している。

しっかりお礼を言えるなんて本当にこの子はすごいな。

親の教育がしっかりされているんだろうなって考えながら団子を食べる。

うん、なかなか美味い…今度守矢神社でも作ってみるか?

 

外の世界の話をしていたら少し日が落ちていて、時間が経っていた事を思い出した。

そろそろ早苗さんの布教活動も終えた頃だろう。

待たせてしまっては申し訳ないだろうから待ち合わせ場所へ向かおう。

 

「さて、そろそろ帰るか。じゃあな阿求」

 

「はい、また今度お会いしたらまたお話聞かせて下さいね」

 

俺はそう言って阿求と別れて里の入口へと向かう。

帰ったら走り込みと筋トレ、能力磨きとやる事が多いからな。

早苗さんも布教活動で大変だろうか今日の夕飯は早苗さんの好みに合せよう。

喜んでくれるだろうな…今の俺はこれくらいしか恩が返せないからな。

 

「…まさか、いるのか?」

 

もう少しで里の入り口が見えてくるなと思った瞬間、何やら嫌な予感がした。

まるで呪影の奴がいるような、全身から出てくる嫌な感覚が…!

そう思った瞬間、入口の方に3mぐらいはあるようなデカい影が立っていた。

 

『ニンゲン…ワガカミヲオソレヨ!』

 

低くて聞き取りづらいような声で言うとそれは門を巨大な腕で破壊した。

近くにいた里の人達は急いで逃げようとしている。

早苗さんは!? どうやらまだ来ていないようだが逃げ遅れた人がいる!

 

『スコシ、ギセイニナッテモラオウカ?』

 

「た、助けて…」

 

『…シネ!』

 

そいつは逃げ遅れた人に向かって拳を振り下ろした。

咄嗟に俺は荷物を捨てて走ると岩の拳でそいつの腕を叩き込んで攻撃を止める。

くっ…硬いなこいつ!? 人間の体とは違う感覚に俺は少し戸惑うも拳を構えながらそいつを見る。

どうやら俺が注意を引いた隙に逃げ遅れた人は逃げて行ったみたいだ。

辺りに怪我している人はいないようだが門は粉々になっている…怪力だな。

 

『キサマ…ジャマスルナラコロス!』

 

俺に邪魔されたのが癇に障ったのか、唸るような声で言ってくる。

どうやら狙いを俺に定めたようだ。これで周囲の被害は抑えられるな。

修行の成果、ここで試してみるか!

 




今回から人里での騒動となります。
弾幕ごっこ?その内にやります←

また次回もよろしくお願いします。
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