超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》   作:SEALs

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お待たせしました。
予告通り、前回の続きです。

灰田「青葉さんと衣笠さんたちが活躍する海戦であります」

古鷹・加古の活躍に伴い、青葉・衣笠の活躍もお楽しみに!
それでは改めて……

作者・灰田『本編であります。どうぞ!!』


第百十五話:奮闘!第六戦隊! 後編

「ギエェェェェェェ!」

 

荒々しい気性を、狂人の如く奇声を上げながら青葉たち率いる第3小隊に襲い掛かったのは、戦艦ル級改flagship率いる打撃艦隊だった。

この部隊は運よく《アカギ》の無人ステルス艦載機部隊の攻撃から逃れ、今まさに復讐しようと連合艦隊に勝るとも劣らない機敏な動きを見せつけて突撃した。

彼女に続くのは、重巡ネ級eliteや軽巡ト級eliteに、そして駆逐ニ級後期型eliteたちと言った上級の深海棲艦たちだ。

夜戦による進撃攻撃ですらも自分たちに敵う者はいないと、豪語できるほどの連邦艦隊のなかでもエリート艦隊でもある。

だからこそ、手短に済ませて連合艦隊を葬らんと、同じように闘志を燃やしている。

 

「敵艦隊変針! 取舵90度、同航戦を挑んで来るようですね!」

 

青葉が報告したが、矢矧と白雪は驚いた様子は見せない。

 

「もしもT字を描かれたら堪りませんが…… 望むところです!」

 

「受けて立ちましょう!」

 

「そうですね…… では、付いてきてくださいね!」

 

『はい!』

 

同じくル級たちは嘲笑うように吠えた。

 

「馬鹿メ、戦力ト射程距離デハ此方ガ有利ダ!」

 

ル級は両手に携えた艤装を、猛獣が威嚇するかのように海面上に叩きつけた。

彼女と同じく短期決戦を望み、先ほどよりも闘志を燃やしていた重巡ネ級eliteや軽巡ト級eliteに、そして駆逐ニ級後期型eliteたちも猛獣のように吠えた。

しかも連邦としては珍しくレーダー射撃装置を組み込まれた連装砲であり、自動装填装置もアメリカと協力して開発して出来たことだから負けやしないと確信した。

相手が進む方向に徹甲弾の嵐を降り注がせれば、撃沈することは間違いなしと読んだ。

しかし、今からこれらが全て無駄なことになることはまだ知らなかった。

 

「今から青葉から距離を保ちつつ、離れないで下さいね!」

 

青葉の言葉を聞いて、ふたりは頷いた。

決意を籠めた青葉たちの戦意が乗り移ったように、最大戦速を振り絞り、波を踏み砕いて突進する。

青葉は同航戦に持ち込むかと思ったが、相手も全艦を砲戦に参加させるべく、浅い角度ながら交差する針路を進んでいると見抜いた。

しかも自分たちが進む方向に、徹甲弾の豪雨でも降らそうかとも見透かされた。

ならばと思い、青葉たちはとある装置を起動させた。

 

「今です、例の装置を起動させてください!」

 

「了解、それ!」

 

「分かりました、起動させます!」

 

青葉が命じると、矢矧と白雪はその装置を起動させた。

 

「コレデオワリダ、哀レナ艦娘ドモ!」

 

青葉たちを誘い込んだル級たちが、今かと制圧射撃をしようとした瞬間だった。

 

「キ……消エタダト!」

 

青葉たちの各艤装から水蒸気が凝結して無数の小さな水滴が散布し、やがて霧のような煙が発生して、彼女たちを包み込むと暗闇と一体化して姿を消した。

それは米軍が実際に開発段階に進んでいるステルス迷彩服と伴い、日本の切り札であるステルス重爆Z機と、そして米空軍が所有する世界最強ステルス戦闘機ことF-22《ラプター》のように敵が放つレーダー波を全て吸収し、なおかつ敵レーダーおよび、それらを応用して自動追尾できるレーダー射撃装置は、ステルス化した青葉たちを探知できなくなった。

 

「全員ソノ場カラ動クナ!」

 

ル級が吠えるように号令を、実際には冷静になることが出来なかったと言った方が良い。

慌ただしい号令を聞いた一同は、その場を動かずに周囲警戒することしか出来なかった。

アメリカ製のレーダーで、青葉たちを探知しようにも反応は一切なかった。

各艤装に取り付けられたレーダー射撃装置で探知しようとしても、前者と同じ結果だった。

まさに完璧とも言えるステルス迷彩服と言ってもよく、ル級たちの自慢とも言える両兵器は瞬く間に、役に立たなくなったのである。

またいくら夜目が良くても、熟練見張員たちのような超人的な視力には敵わない。

 

「……一体、奴ラハ何処ニイルンダ……」

 

単縦陣を解き、輪形陣になったル級たちは周囲をもう一度くまなく探した。

暗闇の中をじっとするだけでも、微かな呼吸ですら恐怖を覚える。

すると、どこからともなく唸りを上げて旋回した各砲身が上下する音が微かに聞こえた。

気のせいだろうと思ったが、もう一度周囲を警戒して見るが――― 自分たち以外には誰も存在せず、それ以外は姿形どころか人影もない……

あの艦娘どもは一体、どこにいるのかと再度警戒しようとしたときだった。

後ろにいた1隻の駆逐ニ級後期型eliteが、一瞬のうちに砲撃されて抵抗することなく撃沈された。

 

「ソコカーーーーーー!」

 

ル級たち全員が後ろを振り返ると、すぐさま辺り構わずに目の前にいるであろうと思われる青葉たちに向かって、砲撃を開始した。

全連装砲が遠雷の轟きにも似た空気中の酸素と摩擦して白熱しつつ、自分たちの前に落下していく。

 

「撃ッテ、撃ッテ、撃チマクレ!」

 

自分たちが睨んだ通りに、姿を現した青葉たちに憎悪を込めた砲撃、各自の叫び声、そして大音響と伴い、あらゆる大きさの水柱が奔騰した。

煮え滾った海水が数百十メートルの高さまでに、まるで大槌で叩き潰されたかのように大きくくぼみ、その中央から吹き上がる水柱を中心に、放射状に衝撃波が吹き伸びる。

ル級たちは数十メートルも放たれた着弾だったが、凄まじい衝撃は身体中でも伝わる。

 

「ヤッタカ……」

 

そう思うとニヤリとあざ笑う表情を浮かべたが―――

しかし自分たちがあれほど集中攻撃したのにも関わらず、青葉たちは全くの無傷であると同時に、本来ならばあり得ない現象が起きた。

 

「……カ、影ガ揺ライデイルダト!?」

 

本来ならばあり得ない現象で、またしても我が目を疑った。

ル級たちが見た青葉たちは、偽者であり、しかも本人たちそっくりな分身でもあるホログラムでもあった。

やがて時間が切れたかのように、投影されたホログラムの青葉たちが消滅した。

呆気に取られていると、またしても後ろにいた重巡ネ級eliteや軽巡ト級eliteに、そして駆逐ニ級後期型eliteたちが次々と撃沈されていき、気が付けばル級しかいなかったことに気が付いた。

 

「残ルハ私ダケカ……」

 

唇を噛み締め、怒りを露わにさせながら周囲を探すと青葉がいた。

ル級は今度もまた幻想ともいえるホログラムだと見抜いたのか、自身が両手に携えていた両艤装を再び海面上に突き立てて、危機的状況になったル級は先ほどとは比べられないほど凶暴化し、最大戦速で突撃した。

この際に砲撃をすると凄まじい衝撃のあまり、転覆しかねないために砲撃は控えた。

しかしホログラム相手ならば、徹甲弾など不要且つ、体当たり攻撃で対処可能と考えた。

この両艤装による打撃と伴い、体当たりすれば大破、上手くいけば撃沈できると確信したル級は北米神話最強の雷神(戦神)と言われたトールが持つ鎚《ミョルニム》を、トールハンマーという名でも知られた神器は、同神話に登場する毒蛇の怪物・ヨルムンガンドを打ち斃そうとするシーン思わせるようだった。

 

「ホログラムニ、ビビルル級様ト思ウナーーーーーー!」

 

しかし、彼女が振り下ろそうとした瞬間だった。

 

「ホログラムかと思いましたか、残念!本物です!」

 

「……シマッ」

 

青葉の装備していた20.3cm連装砲は全て最大仰角を取り、ル級の顔に目掛けて斉射した。

接射とも言える砲撃。例えイヤマフをしていても鼓膜の奥まで叩きつけるような砲声に、双方の身体中から振動が伝わる。

蹴り上げるように飛沫を貫いて放たれた砲弾は、ケリを付ける意思に燃えて飛翔した。

空気中を摩擦して白熱を放った数発の砲弾を喰らったル級は、よろめきながら後退りした。

青葉は依然として、何事もなかったように砲撃を繰り返した。

 

「コノ重巡風情ガーーーーーー!」

 

流石はバルジの誇る戦艦でも接射によるダメージは尋常ではなかった。

しかし、怒り狂ったル級はもう一度体当たりしようとした。

その時、ル級の両脇から眩い炎が迸った噴流を上げたロケットらしき飛翔物体が彼女の両艤装に直撃した。

戦艦と言っても全てが鉄壁ではない、両脇は精々機銃を防ぐ程度の防弾能力しかない。

全てを重装甲で覆ってしまうと、戦艦といえども最大速力も落ちてしまいかねない。

しかし、いくら頑丈な構造で製造された艤装でも大量のロケット弾が続けざまに突き刺さるとバルジが耐えることは難しかった。

無数の爆焔が吹き上がり、ほとんど一瞬に全ての16inch三連装砲が砕け散り、破片を浴びた40mmと20mmの各機銃座も叩き落されて戦力が大幅に削られた。

また先ほど青葉の砲撃により、顔半分を灼熱の劫火によって焼かれた部分に激痛が走った。

辛うじてル級の右目が生きていたとき、またしても衝撃的なことが起きたがもはや意識が朦朧としていた。

 

「全弾命中ね!」

 

「それでも、これだけの弾幕でもしぶといですね……」

 

ようやくステルス迷彩を解除した矢矧と白雪が姿を現した。

先ほどのロケットの正体は言わずとも、矢矧たちが装備していた《ハープーン》である。

合計8本の《ハープーン》も受けたのにも関わらず、未だにル級が健在している。

否や、地獄の門をふらふらと彷徨っている亡者になっていた。

 

「青葉が止めを刺します!」

 

青葉は魚雷発射管に音響ホーミング魚雷を装填。

惰性に前進する屍と化したル級改flagshipに止めを刺すべき、必殺の意気を込めた音響ホーミング魚雷を撃ち放つ。

ほとんど雷跡を残さずに、ただ海中を突進している影は鮫に似ていた。

その鋼鉄の鮫は、苦悶するル級に、続けざまに突き刺さった。

血を流すように生きる屍となりかけたル級は、音響ホーミング魚雷を数発受けてもなお炎上しながら微速でよろめき進んだ。

だが、猛火に包まれたまま、力尽きた彼女はそのまま沈没した。

双眸を落とした青葉は深呼吸を一度行い、矢矧と白雪に伝えた。

 

「敵打撃艦隊、無事殲滅しました」

 

青葉の状況報告を聞いたふたりは安堵の笑みを浮かべた。

しかし、未だに戦いは続いていることに変わりない。

 

「青葉たちも古鷹と加古、そして司令官たちに合流しますよ。大丈夫ですか?」

 

『はい!!』

 

波を蹴り飛ばして回頭する青葉たちは、最終決戦に挑むべく前進した。

 

 

 

そして最後に残っていた衣笠率いる第4小隊は―――

 

「コレ以上、奴ラヲ近ヅケサセルナ!」

 

衣笠たち第4小隊を迎撃しようと、巨大魚雷《トマホーク》を搭載した多数の重巡リ級改flagshipと連邦護衛艦群ともに、禍々しい左目からは探照灯を思わせるかのように蒼き炎が迸っている戦艦タ級改flagshipと言う名の最新鋭深海戦艦が混じっていた。

新たな戦力として連邦軍が生み出した…… 正確的には空母護衛用の高速戦艦を主力にしていた米海軍の艦隊運用を見倣っている。

以前ならばル級よりも堅牢な装甲を持つ反面、火力は控え目だったが、主砲を16inch三連装砲に換装し、さらに電探射撃装置も組み込まれている。

対空兵装に関してもアイオワと同じように試験的だが、CIWSを装備しており、従来の連邦軍ではあり得ない完璧な深海棲艦と言っても良い。

ただしあくまでも連邦亡命政府軍は、自分たちの科学力の方が世界一に優れていると言うプライドもあり、少数しか建造されていない。

新造艦といえども、この海戦で期待以上に活躍すると誰もが思った。

 

「突撃艦隊、連携デ行クゾ!」

 

『了解!!!』

 

タ級の号令に、リ級たち護衛艦群は勇ましく返答した同時に―――

 

「あと、もう少しね……」

 

こちらに向かっているタ級たちの姿はくっきりと、水平線上に浮いている。

衣笠が睨む方位盤のレンズでは、デジタル式観距儀が捉えた深海棲艦たちが、上下に微妙なずれを見せていた。

その像が手元のダイヤル微調整によって重なり、やがて完全に一致した。

そのデータが、衣笠たちに送られた。

また各兵装を担当している艤装妖精たちの統括の元――― このデータに従って調整を行ない、砲塔側の指針が射撃指揮場のそれとピッタリと重なった。

 

「酒匂ちゃんは《ハープーン》の支援攻撃。目標、巨大魚雷を搭載した重巡リ級たちを。初雪ちゃんは連邦護衛艦群を狙って。私は連邦護衛艦と、あの禍々しい戦艦タ級を叩くから!」

 

「ぴゃあ♪」

 

「…分かった」

 

衣笠は矢継ぎ早に指示を下すと、酒匂と初雪は頷いた。

 

「来たね……!」

 

敵影確認。衣笠が裂帛の気合いを発した。

 

「撃ち方、始め!」

 

『てぇーー!!』

 

衣笠の号令が命じると、酒匂と初雪は同時に満を持って引き金を引いた。

全てのデータが送られ、標的となる敵艦隊を捕捉した。

正確無比な各兵装は敵艦隊に指向し、対艦ミサイルAGM-84《ハープーン》を装填。

そして神の矢とも言える《サジタリウスの矢》が、超音速で叩き出す。

一瞬の鳴動、そしてあらゆる海戦でも、この全身に堪える発射音。

1発ずつの斉射だが、この《ハープーン》の雄叫び声が飛翔した姿は勇ましいものだ。

 

そして、衣笠が携える20.3cm連装砲も同時に咆えた。

目にも止まらぬ早撃ちにより放たれた合計12発の砲弾が、周囲を波打たせる勢いと大気を揉み込みつつ飛翔して、標的に向かって駆け巡る。

 

「次はこの攻撃で攪乱ね!」

 

衣笠は乾いた唇をペロッと短く舐めて、次の攻撃で敵艦隊の支援艦でもある連邦護衛艦に標準を合わせた。

 

 

 

同じように敵艦隊も衣笠たちを捕捉したのか、発砲の閃光が煌めいた。

最新鋭艦戦艦タ級改flagshipとは言え、初陣のために手探り状態で砲撃した。

同じように重巡リ級改flagshipとともに、連邦護衛艦こと《タイコンデロガ》級ミサイル巡洋艦《ヴィンセンスⅡ》と言う名の護衛艦である。

指揮官は連邦軍では珍しく誰もが見返るような美女――― クインシー艦長と言う名の女性である。

また偶然なのか、彼女の副艦長として乗艦しているのは、アストリアである。

史実では彼女たちの名前は、三川艦隊に葬られた重巡洋艦の名前である。

まるで彼女たちに復讐すると言う気持ちで蘇えったようなものと言った方が良い。

彼女たちも日本に憎し且つ、合衆国の正義を踏みにじった日本に懲罰行為を与えるべしと戦意を燃やしていた。

 

「攻撃―――」

 

しかし、この号令を下す直前に、クインシーたちがいた艦橋は瞬時に吹き飛んだ。

城郭と思わせる連邦護衛艦《ヴィンセンスⅡ》の艦橋構造物が大きく形を変わり、戦闘指揮場と情報処理室は跡形もなく吹き飛ばされ、CICを納まっている巨大な艦橋は、倒産寸前まで抉れていた。

クインシーたちは気がついた頃には、あの世で死者たちの列に並んでいるだろう。

先の海戦『第一次ソロモン海戦』の如く、悲運にも反撃に移る前に第八艦隊の夜襲攻撃により、撃沈された3隻の同型艦と同じようになすすべなく、復讐も果たせないまま戦火に散ったのだった。

止めを刺そうと炎上しながら航行している大破した《ヴィンセンスⅡ》に、形容しがたい轟然と鳴る砲声を上げて、暗闇をかき消すひと筋の光の矢が襲い掛かった。

艦首から鋭利な日本刀のように切り裂かれた彼女は、名手の殺陣を喰らわされたように、全長172メートルを誇る艦体は、綺麗に艦首から艦尾まで、真っ二つに両断されてしまう。

後ろを振り返ったタ級たちとともに、連邦護衛艦《ヴィンセンスⅡ》の船内にいた連邦乗組員たちは何が起こったのか唖然とするばかりだった。

謎の攻撃に切断された部分から濃密な蒸気が吹き出したと見る間に、左右に分かれた艦体が海面に倒れて、真っ白い飛沫を空中に舞い上がらせた。

次の瞬間、大爆発がタ級たちの全身を震わせた。

各弾薬庫に火がはいったのだろう。哀れにも《ヴィンセンスⅡ》は自らの各兵器で壮絶な自決を遂げたのだ。

 

「ひゅー、さすがレーザー砲での一刀両断は威力抜群ね!」

 

ウインクをした衣笠とは裏腹に―――

 

「オノレェェェェェェ!」

 

タ級の表情が、般若を思わせるものに変わった。

 

「攻撃開始、殲滅サセロ!」

 

凄まじい叫び声と伴い、突如として酒匂と初雪が発射した《ハープーン》の嵐が襲来してきた。

タ級は装備されているCIWSを起動させて、音速を超えて襲い掛かる対艦ミサイルに標準を合わせ、自動追尾機能システムの対空機銃が次々と撃ち落した。

しかし、リ級たちは対空砲火を開始する前に、両者の《ハープーン》の方が早かった。

形容しがたい轟音が着弾すると、膨大な火柱が奔騰した。

胴体を貫かれたひとりのリ級は、その大穴から鮮血を噴き出した直後、大爆発を起こした。

圧倒的な破壊力を見せつけられ、なすすべのないリ級たちはパニックに陥った。

タ級は苛立ちのあまり、傍にいたリ級を見て、その自慢の全主砲を咆哮させた。

轟いた砲声は直下の海面を大きく窪ませ、吹き千切れた波頭が、細かなオレンジ色の火矢に染め上げられる。

傍にいたリ級は上半身を失っても、数秒の間は動き、そして身悶えするように転倒した。

 

「戦闘中ニ目障リダ」

 

冷酷さを見せたタ級は何事もなかったように、砲撃を開始した。

生き残った2隻のリ級たちは恐怖心に駆られながらも、タ級と同じように砲撃態勢を取る。

砲塔を旋回しつつ、衣笠がいる方向へと狙いを定めた。

 

「撃テェ!」

 

吹き上がった砲炎が黒い発射煙に覆い被さり、空気を切り裂いて飛翔した徹甲弾が、叫喚を上げて殺到した。

 

「面舵一杯、最大戦速!」

 

衣笠の号令一下、猛然と速度を上げて回避した。

彼女たちの傍には特大の特急列車が通過するような轟音と伴い、衝撃波が叩きつけられる。

海水を被り、全員びしょ濡れになったものの、誰ひとりも負傷することはなかった。

 

「みんな、大丈夫!?」

 

「大丈夫、びしょ濡れだけど大丈夫だよ」

 

「…びしょ濡れだけど、大丈夫」

 

「私もびしょ濡れだけど頑張ろう!」

 

『ぴゃあ!(…うん)』

 

「あるだけ《ハープーン》を撃ち続けて! 私が援護するから!」

 

戦意高揚状態。衣笠たちの闘志に答える気持ち、彼女たちの気持ちがひと塊の魂魄と化したかのように、攻撃をしつつ進撃した。

凄まじい姿を見たタ級は、馬鹿にしたように鼻を鳴らした。

 

「重巡ノ分際デ、力ノ差ガアルト知リナガラモ突撃シテ来ルトハ蛮勇ニ過ギナイコトヲ教エテヤル!」

 

再び襲来して来る《ハープーン》の前に対しては、自慢のCIWSが再び銃身を回転させて、熾烈な火線を吹き伸ばして、精一杯旋回して咆哮した。

圧倒的な対空射撃の前でも、酒匂と初雪が放ったサジタリウスの矢とも言える《ハープーン》を撃ち落としていく。

 

3隻のリ級たちはCIWSのような防衛追尾火器は一切しておらず、ただひたすら躱そうとするも、上空から襲来する《ハープーン》の前では無意味だった。

爆発音とともに、破片と爆煙の混じった水柱が吹き上がる。

右艤装をやられたリ級は、その一撃で大きく速度を落としていた。

同じように2隻目のリ級は撃沈寸前までの全身やけどと言う致命傷を負い、3隻目は不運にも頭部が破壊されてしまい、気が付かない間に一撃で撃沈された。

みるみる落伍するふたりのリ級たちには、上空から降り注ぐ猛禽を、撃退する力は無きに等しかった。

数秒後――― 弱った豹のように襲い掛かる禿鷹のように《ハープーン》が殺到した。

この間に《ハープーン》を、合計7本も叩きつけられたふたりのリ級は、ほとんど瞬時に炎上して、波間に姿を消した。

そして抵抗をし続けてきたタ級にもまた、命運が尽きてきた。

ついにCIWSの回転が止まってしまった、つまり弾切れになってしまったのだ。

残弾数など気にせず、敵対艦ミサイル迎撃に集中するあまり、見落としてしまったのだ。

残っていた《ハープーン》が殺到して、一斉にタ級に襲来した。

轟音と伴い、大きな水柱に混じった破片が舞い上がった。

数発の《ハープーン》がタ級の艤装を破壊した。この証拠に被弾した砲塔からはひしゃげるように歪み、吹き飛んだ。

残された砲塔で反撃するものの、先ほどの攻撃でレーダー射撃装置も故障してしまい、目視射撃に徹するしかなかった。

 

「よく狙って、撃てぇ!」

 

がむしゃらに斉射していたうちに、衣笠たちの各連装砲が咆えた。

叩きつけるような砲声は、蹴り上げる飛沫を貫く勢いを出して放たれた。

空気摩擦によって弾頭自体が白熱し、緩やかな弧を描いて飛んだ砲弾は、必死の抗戦を続けるタ級の周囲に、爆炎の混じりの水柱を噴き上げた。

休み暇もなく斉射し続けると、偶然にも最後の砲塔に徹甲弾が命中した。

しかも不運にも引火爆発を起こし、ひと際大きい爆発とともに最後の砲塔が吹き飛ばした。

 

 

「ギャアアアアアアア!」

 

身悶えし、悲痛な悲鳴を上げつつも、全速力でこの場から離脱しようとスピードを出している、タ級に災厄はまだ終わらない。

 

「よし、止めを刺すよ!」

 

先ほどの徹甲弾から、再びレーザー砲に切り替えた。

やがてデジタル微調整により、微妙なずれを生じていた標的がぴったり重なった―――

 

「これで終わりよ!」

 

衣笠は躊躇うことなく、連装砲の引き金を引いた。

その瞬間、轟然と鳴り響かせながた砲声と咆哮が重なり、一筋の紅色の閃光が駆け巡った。

衝撃波を放ちながら紅く輝くレーザー砲は、タ級の背中から胸元まで貫いた。

何が起こったのかとゆっくり後ろを振り返ると、衣笠の姿はまるで中世の美しい銃士を思わせるようだったのかと思い、ついにゆっくりと前のめりで倒れた。

送り火とも言える轟々と炎を巻き上げながら、戦いに満足した笑みを浮かべたタ級は沈んで行った。

現われに連合艦隊に辿り着くどころか、必殺巨大魚雷《トマホーク》を発射できない艦隊が多く、第六戦隊の前に敗れたのだった。

 

「ふぅ… これで敵遊撃艦隊は殲滅出来たね……」

 

敵艦隊殲滅。衣笠は安堵の息を漏らした。

だが、最後の敵本隊を叩かなければ意味がない。

 

「酒匂ちゃん、初雪ちゃん…… まだ辛いけど行ける!?」

 

「酒匂は大丈夫だよ!」

 

「私だって、まだやれる……」

 

衣笠の言葉に、ふたりは頷いた。

再度、波間を蹴り飛ばして回頭する衣笠たちも最後の艦隊決戦に望むべく前進した。




今回は前回より、また久々に9000文字近くになりました。
こう見返すと久々にこれくらい執筆しましたから時間が掛かりました同時に、同連載『第六戦隊と!』で執筆時間の双方をしていましたので遅れました。

灰田「また某有事の影響なのか、PCの具合も微妙でもありましたからね」

それ故に、第六戦隊ニウム補給が出来ない私は萎れかけた花になることもしばしばでもありますから、仕方ないねぇ(兄貴ふうに)
ともあれ、無事最新話を投稿することが出来ましたから何よりです。

青葉「青葉たちの活躍でき、お役に立てて嬉しいです!」

衣笠「私は某『奴さ!』のような活躍したから凄いけどね」

某イラストサイトでは、ネタにされていますけど好きです。
ともあれ長くなりかねないから、そろそろ次回予告と行きましょう。

青葉「はい、次回は艦隊決戦に終止符が打たれますが……」

衣笠「しかし、この戦い後に衝撃的な真実を知ることに!」

内容は変更と伴い、同時連載『第六戦隊と!』の更新で遅れることもありますがご了承ください。
最終回まで自分のペースで執筆していきますので、お楽しみください。

灰田「それでは切りの良いところになりましたので、次回もまた、第百十六話までダスビダーニャ(さよならだ)」

青葉・衣笠『ダスビダーニャ!』

ダスビダーニャ!次回もお楽しみに
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