超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》   作:SEALs

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お待たせしました。
前回に引き続き、最終決戦・中編です。

灰田「今回もまた迫力ある海戦をお楽しみくださいませ」

本来ならば今回を含め、次で最終回を迎える予定でしたが、あと二話ぐらい続きますが、楽しめて頂ければ幸いです。それでは……

作者・灰田『それでは本編であります。どうぞ!!』


第百四十五話:対決の時 中編

中岡たちの罠に飛び込んだことも知らずに、秀真・古鷹は《ミドガルドシュランゲ》を追い掛けつつ、切り離された連結車輌からさながら超機械生命体のように変形した特殊ミサイル艇部隊と戦っていた。

 

「中岡様の勝利を収めるためにも、我々が大いなる勝利に導くためにも!」

 

特殊ミサイル艇部隊は自慢の機動力を活かし、艦体両脇を挟み撃ちにして機関砲や機銃による嫌がらせ攻撃を行いつつ、敵が油断した隙に《シースクア》ミサイルをお見舞いすると言うのが方針だ。

SSMの搭載量が限られているため、撃ち切ったときは衝角戦をしてでも敵と刺し違える覚悟である。だが、自分たちは貴族のように崇高なハンターたち。その名に相応しく上質な水平二連散弾銃を携えた狩人たちの瞳に映った鳥獣たちを追い詰め、最後には必ず狩り取るのが任務である。なお最後に『連邦よ。我らは永遠に貴方様の忠臣になろう』や『連邦万歳!』とのメッセージを含んだ電波が発信した。

最後の遺言を返信後、全艦1発ずつSSMを撃ち放ち、そして時間差を利用し、もう1発撃ち放った。

 

「敵、ミサイル撃ちました!」

 

「古鷹、シースパロー発射用意。また装備妖精たちは、敵のミサイル艇による嫌がらせ攻撃に備え、高角砲や各機銃銃架などはいつでも対処出来るようにしろ!」

 

「了解しました。提督!」

 

通信妖精が言った。

秀真・古鷹は敵ミサイル及び側面攻撃に対応出来るように、RIM-7《シースパロー》、前後部にはCIWS(近接防御火器システム)、側面防御用に備え付けられた12cm単装高角砲、ボフォース 40mm四連装機関砲やM2重機関銃、M134《ミニガン》銃架などを含め、対空及び、対人機銃銃座を大幅に増強して置いたのだ。

これらは各装備妖精たちが、敵の嫌がらせ攻撃及び、もう1発撃ち放たれた敵対艦ミサイルの時間差攻撃を防ぐためである。

 

「シースパロー撃ちます!てぇーーー!」

 

古鷹の言葉に従い、後部甲板から撃ち放たれた《シースパロー》は、勢いよく白煙の尾を引きながら急上昇した。

加速度を上げ音速を超えて飛翔する数発の鋼鉄の矢は、ギリシャ神話に登場する神、あらゆる東西南北の各方角を司り、全ての風を自由に意のままに操る神『アネモイ』のように垂直方向から、ふんわりと風を靡かせるように方向を変えて、敵SSMに向かって突入した。

地獄の急降下を始めた敵SSMの群れは回避する暇もなく、彼女が撃ち放ち上昇して来た《シースパロー》により、空中で迎撃された。

運良く切り抜けたものも、CIWSなどの迎撃により全て撃墜されたのだった。だが、僅かな隙を見て、ミサイルを撃ち切った特殊ミサイル艇部隊は散開、突入態勢に移っていた。

 

「敵艦艇、衝角戦に移っています!」

 

「各高角砲及び、機銃銃座で迎撃!接近戦闘にも対応出来るよう超人部隊や陸戦妖精たちを待機せよ!」

 

『了解しました。提督!!!』

 

秀真の号令一下、古鷹たちは動いた。

接近攻撃などはまるでトラファルガー海戦時代の戦闘だが、もしも連邦軍乗組員たちが甲板に上がり、時間稼ぎの攻撃及び、古鷹を拿捕する場合に備え、灰田が手配した超人部隊と陸戦部隊を展開させた。

これで衝角戦対策は出来たが、いかに上手く攻撃を躱しつつ、全ての敵ミサイル艇部隊を撃沈していくのが鍵である。

 

「撃ち方始め!」

 

装備妖精たちが12cm単装高角砲や40mm機関砲、CIWS、M2重機関銃からM134銃架などを猛然に撃ちまくった。

艦艇による機銃掃射は対不審船及び、ソマリアの海賊船などで日米など多国籍海軍が行なった戦術及び、経験が活かされている。

また熟練射撃指揮官たちなどが取り付いて、各兵装を巧みに操りながら迎撃する。

 

しかし、連邦軍も馬鹿ではない。

回避行動し、雷撃機が行なった二手に分かれて挟み撃ち攻撃が出来るように迂回しつつ散開した。

自分たちの楽園、地上の楽園とも言える場所を日本軍に奪われた復讐心に伴い、秀真たちに屈することなく、全員が中岡のために一矢を報いたいと言う闘志を兼ね備えていた。

敵艦を横切る最中、魂を狩る死神たちから逃れられない恐怖にも躊躇うことなく、全て突撃一択の思いで、搭載していた機関砲や機銃などで攻撃した。しかし、紙同然の装甲しかない巡視船ならば蜂の巣、乗組員ならば人体を破壊し尽くし原型を留めないほどの火力を誇るものの、相手は巨艦であるため通じることはなかった。

ならば、と連邦乗組員たちは、かつて九州南西海域工作船事件に、北朝鮮の工作船が海上保安庁の巡視船に2発のRPG-7を発射したが、幸いにも揺れる海上からの射撃であったため、2発とも巡視船には命中していない。不運にも彼らの失態を繰り返したように撃ち放った対戦車弾頭は閃光を発し、白煙を噴きながら、駆け回る秀真たちから通り過ぎていく。

 

「次で終わりだ!ジャァァァップ!」

 

一番槍をお見舞いしようと、指揮艇がスピードを上げた。

罵声とともに、速度を上げた瞬間、不運にも40mmと20mm機関砲弾、12.7mm、7.62mm機銃弾が集束した太い火線が、1隻のミサイル艇の艦体を、火線が包み込み操縦席ぐるみ粉砕した。

海上に爆煙に交じった一輪の花が咲き、指揮艇は砕け散った。

仲間が死のうと、連邦乗組員たちは決して臆病ではない。

血走った眼で行く手を見据え、必殺の執念を、憎悪の滾る叫びを張り上げた。

 

「1発でも……せめて1発でも!貴様ら卑劣なジャップに喰らわせてやる!」

 

難攻不落の城を模倣させる美しさと逞しさを併せ持ち、熾烈な一斉射撃を繰り返しつつ、あらん限りの速度を振り絞り続ける重巡洋艦に向かって、怒りも露わにしながら挟み撃ち、十字架を切るようにして突入する。前方と右側による衝角戦を躱そうとしたらどちらかにも当たる確率は高い。だからこそ二手に分かれた。

その後は敵艦の甲板に上陸し、自分たちの艦内にある小銃や散弾銃、銃剣、釘バットなどの武器を携えて、命の限りを尽くし乗組員たちをひとりでも多く道連れにすれば報われるだろうと言い聞かせ、見えてきた標的に対して突入態勢に移ったが―――

 

「今だ。取り舵一杯!」

 

「取り舵一杯!」

 

秀真の命令を受け、古鷹は操艦した。

取り舵に当て舵を当てると、巨艦もふたりの命に応え、スルスルと艦首から左に振り旋回し始めた。

衝角戦を覚悟し二手に分かれたミサイル艇部隊は、なにっ、と驚くのも束の間、艦体ごと向かい、接触してもおかしくない擦れ擦れの距離で躱したのだから無理もなかった。が、同時に。

 

『なにっ!?』

 

連邦乗組員たちがすれ違う最中、鋼鉄の要塞に似た砲塔が睨んでおり、隊列を解除せよと命じようとしたときには遅すぎた。

前方突入部隊には後部砲塔、右翼突入部隊には前部砲塔に聳える中口径の連装砲は旋回済みであり、双方とも2隻同時に重なりあった瞬間―――

 

「撃てぇぇぇーーー!!!」

 

秀真の命で、古鷹は撃ち放った。

細かく螺旋状に刻まれた砲口から、視界を遮るほど眩い閃光が走り、紅く炸裂したレーザーが発射された。

貫通能力を誇る紅き熱線は、1隻目のミサイル艇の艦体を溶解から貫通して一点に集束し装甲を焼き切って、もう1隻の敵艦に続き、そして左舷にいた全ての敵艦も熱線の洗礼が見舞った。

地震にも及ばないものの、それに似た振動に伴い、地獄の業火が連邦乗組員たちの頭を割らせ、手足を折って苦鳴や悲鳴を上げることも、堪え難い苦痛を味わう間もなく生きながら蒸し焼きにされていく。

燃え上がるミサイル艇は、艦内に蓄積した弾薬が爆発し、燃料に引火して、燃え盛る炎がさらに華麗な死の舞踏を披露した。

 

「敵ミサイル艇部隊、全て殲滅しました!」

 

「ああ、見事だ。古鷹」

 

「提督の咄嗟の判断がなければ、危なかったです」

 

「なに……兄部艦長の『伝説の取り舵一杯』に、砲撃を命じただけだ」

 

秀真が言った『伝説の取り舵一杯』とは、史実のレイテ沖海戦で戦艦《長門》の艦長を務めていた兄部勇次艦長が、《長門》に襲来して来た米軍機部隊の攻撃を巧みな回避行動命令を下し、全ての爆弾や魚雷を躱したほど、この武勇伝が今日も生き続けているのである。

この回避行動が出来た理由は、兄部艦長は第三水雷戦隊司令官を務め、さらに巡洋艦艦長出身だったため、あらゆる魚雷のいろは及び躱し方なども熟知していたからである。これにより日本だけでなく、米海軍からも称賛されたほどの逸話としても有名である。

 

「提督。潜航中の敵発見しました!」

 

ソナーで潜航中の《ミドガルドシュランゲ》を見つけたソナー員が言った。

 

「よし。古鷹、対潜音響ホーミング魚雷3発同時、遅れて1発撃て!」

 

「はい!」

 

報告を聞いた秀真は、すぐさま命じた。

古鷹は右舷甲板に設置された61cm四連装魚雷発射管から圧搾空気が解放される噴出音が響き、管内に積まれた対潜音響ホーミング魚雷が一斉に海中に投げ込まれた。

海中に潜む巨鯨を仕留めようと、鋼鉄の鯱たちが動き出した。

先端部分に装着している音響ホーミング装置が作動し、目標を探知して海水を掻き分けて潜行し始めた―――

 

「撃ってきたな!こっちも魚雷発射!」

 

中岡も命じた。

推進エンジン全開、水深100メートルに潜航中の《ミドガルドシュランゲ》も、無事な連結車輌に備えられた魚雷発射管の扉が開き、2本の魚雷が発射された。後部連結車輌から発射され、海面にいる獲物を、憎き白鯨に喰らい付かんと勢いを増した鋼鉄の鮫たちが、水面を目指すように上昇していく。

 

「聴音探知!魚雷3本……いや、4本接近!」

 

連邦聴音員が張り上げた声を聞き、中岡は命じた。

 

「急速潜行!前進一杯、潜れ!」

 

言い聞かせるように深海に潜る鯨を模倣する鋼鉄の世界蛇は、回避行動を取る。

 

「我々の魚雷の状況は!?」

 

秀真が声を上げた。

 

「敵を探知しています!命中まで1分30秒!」

 

「敵も撃ち返しているはずだ!古鷹は面舵一杯!同時に各員はマスカー起動と音響デコイ発射!」

 

『了解しました!!!』

 

ソナー員の言葉に、秀真は素早く命じた。

古鷹も回避行動をし、装備妖精たちも敵が撃ち放った魚雷のピンガーを吸収及び撹乱させるため、艦体の周りには気泡が立たせつつ、もうひとつの隠れ蓑として音響デコイを展開させた。直後、2本の雷跡が獲物を仕留めようとする人喰い鮫の如く、推進音を桁ましく咆哮させながら突入しようと襲い掛かって来た。

が、双方による撹乱に惑わされた敵魚雷は、エンジン音やスクリュー音を捉えることなく、目標を見失なったまま、鋼鉄の人喰い鮫たちは明後日の方向へと迷走して行った。

 

回避成功と同時に、眼下では古鷹が撃ち放った音響魚雷は、目の前にいた標的―――急速潜行で回避する鋼鉄の世界蛇を捕捉し、推進エンジンを蹴り上げてスピードを増して突き進んだ。

迫り来る鋼鉄の鯱たちが獲物に喰らい付きいた瞬間、海底火山を連想させる凄まじい爆発音に混じった水柱が立ち上がった。

距離が離れても自分たちの双眸から耳を聾する爆発音、そして身体中から独特の振動も全て伝わって来た。

 

「目視で確認!敵は誤魔化している可能性もある充分に注意せよ」

 

敵が完全に沈黙したかを確かめるべく、秀真は命じた。

彼の命を聞き、熟練見張員たちが双眼鏡を携えて確認した。

撃沈していれば中岡たち乗組員の死体が浮かぶはずだが、WWⅡ時代のようにゴミや油などを放出して欺くこともあるからだ。

駆逐艦や軽巡洋艦、海防艦による爆雷、軽空母の艦載機部隊による対潜爆弾攻撃ならば誤魔化せるが、現在の各国海軍が保有する対潜魚雷《アスロック》などの音響探知方式搭載の対潜魚雷には、デコイなどと言った対策を取らない限り、逃れることは出来ない。

 

『こちら見張員!水柱が見えた場所には少数の死体及び、ゴミや油などが散乱しています!』

 

「……少数だと?」

 

CICに響き渡るほどの大声を出した見張員の報告に対し、秀真は違和感を感じた。いや、寧ろ不吉な予感に襲われたのだ。

敵はまだ多いはずなのに、少数の死体などしか浮遊していないとなれば中岡たちはまだ生きている証しを伝えたも同然だ。

 

「……もしも生きているならば、奴は何処かにいるはずだ」

 

秀真が呟いたとき、左舷から突如として巨大な水柱が現れ、その中から水面に投げ出された獲物を丸呑みにしようと襲い掛かってくる肉食獣の如く、高速で回転するドリルの先端が姿を現した。

 

「勝負はまだ1回の表だ!あの程度で死ぬ世界皇帝ではないわぁ!」

 

やはり、中岡たちが操る《ミドガルドシュランゲ》は生きていた。

先頭車と後部車輌には至るところに雷撃を喰らった損傷が、癒えない傷跡が残っていた。だが―――秀真・古鷹は浮上して来た鋼鉄の世界蛇は、先頭車と後部車輌には各々と雷撃による損傷はしているものの、3輌のうち1輌の後部車輌がなかったのに気づいた。

恐らく自分が生き残るため、中岡は仲間がいた後部車輌を切り離して囮として利用したが、不運にも残りの魚雷が命中したため水没を逃れるために浮上し、今の水上戦に挑んだのだろうと、ふたりは推測したが、今は緊急回避に徹した。

 

「古鷹!緊急回避!面舵一杯!急げ!」

 

「面舵一杯!いそーげ!」

 

秀真の命に、古鷹は復唱しつつ緊急回避に移る。

彼の迅速な対応に伴い、緊急回避のおかげで螺旋状に回るドリルを回避することが出来た。艦船による衝角戦は最大戦速を行なうと転覆し兼ねないため、どうしても速度を調整しなければならない。今の相手の速度は約7ノットに見えたが、襲い掛かってきた《ミドガルドシュランゲ》の衝角による攻撃で破壊しようという強烈な意思を見せつけた姿は、まるで異形の怪物でもあった。

 

また、古鷹は究極の個艦防衛システムとも言える《クライン・フィールド》の多用は控えている。念入りに今も展開はしているが、敵の攻撃を喰らう度に低下及び、膨大な量のエネルギーを消費し兼ねないのが最大の弱点でもあるからこそ短期決戦で挑まねばならない。

だが、相手もドリルによる衝角戦及び、1基しかない貴重なボフォース 57mm Mk 3速射砲や連邦乗組員たちによる攻撃しか出来ないため、同じく不利な状況に、中岡たちも短期決戦を望んでいるはずだ。

 

秀真たちは史実のアルマダの海戦(1588年)で、衝角戦を仕掛けようとするスペイン海軍艦隊に対し、英国海軍艦隊のように回避しつつ、両舷にいた艤装妖精や超人部隊たちなども高角砲や対空機銃、各機銃銃架などを精いっぱい力を振り絞り、獅子奮迅の勢いで戦っていく。

 

 

同じく中岡たち連邦軍も《ミドガルドシュランゲ》が装備しているボフォース 57mm Mk 3速射砲を撃ちつつ、隙を見ては幾度もドリルを使って衝角戦によるダメージを与えようと試みているが、全ての攻撃が虚しく回避されてしまうなど苛立ちを覚えた。

こちらの操縦も自他を認めるほど上手いが、敵の操艦技量や戦術なども見事なものであることは認めざるを得ない。が、時代遅れな精神とも言える武士道や騎士道、そして文武両道があろうとも所詮は陳腐な精神主義に毒された独裁者に過ぎないものだ。

日本はやれ神の国だ、精神の絆で歩んで来た国だと思うばかりだから国内はおろか、アジア諸国、そして世界平和すらも遠のく。

そういう馬鹿げた思想や教育勅語などを大切にするよりも、チュチェ思想を崇め、自己優先しなければどんな戦でも勝利出来ないものだ、と内心に呟いた。

 

「どうにか敵のバリアだけでも無効にしなければ、ミサイル攻撃をしても無駄に終わる」

 

中岡は対策案を考えるあまり苛立ちを抑えようと、無意識のうちに、ガリガリと親指の爪を噛んでいた最中、ふと脳裏にアメリカ亡命時に暇つぶしに観たとある海外ドラマで、主人公が敵のバリアをすり抜ける攻撃方法を思いつき、実戦で功を奏したことを思い出した。

 

―――これならば、奴の絶対防壁を破ることが出来るぞ!

 

中岡は呟くと、すぐさま車内にいた殴り込み部隊に連絡した。

兵は詭道なり、自分の理論が正しいことを信じて、今度は衝角戦ではなく、接舷して殴り込み部隊で攻撃するように言い聞かせた。

 

「今度は接舷を行なう!同時に殴り込み部隊を射出する!」

 

《ミドガルドシュランゲ》は、瞬時に脇腹に喰らいつく体勢を構え、真正面から前進していくのだった。

 

 

 

「今度は騎士の馬上槍試合のように、真正面から突撃か」

 

秀真は、少し皮肉を込めながら言った。

中岡たちが槍を構えて正面きって一騎打ちというのが、まさに豚に真珠でもあったからだ。

当時のトーナメントでは槍(ランス)に限らず、スピア、ナイフや剣などのあらゆる武器の使用が許可された。

敵対心を持たない相手が正々堂々と槍を構えて、己の実技の練習と勇敢さの披露のために行われる軍事演習するのに対し、中岡たちの場合は敵対心や嫉妬心などを常に持ち続け、槍と同時に懐や脇などに隠し持っていた拳銃を取り出し、美徳を投げ捨ててでも相手騎士を殺害するほど卑劣な戦法をやってのけるからだ。

彼がそう考えている内に、前方から睨んだ蛙を喰らわんとする大蛇のように《ミドガルドシュランゲ》が刻々と近づいて来た。

 

「奴が来るぞ。面舵15度」

 

「はい。提督!」

 

秀真たちは再び回避行動に移りつつ、近接戦闘で損傷を与える戦法を取り、行動不能になったところで、距離を置いてから主砲による集中砲火を浴びさせて止めを刺す方針である。

戦争というものは常に時の運であり、神のぞ知る世界で神同士が行なうチェスの駒のように動かされていくものでもある。

同じ戦法が二度も通じるとは考えないが、運よく効く場合もあるから戦争と言うものは分からないものだ。

 

回避行動最中に艦全体に、ドォンと独特な鈍い音がした。

幸い《クライン・フィールド》が、ドリル攻撃を防いでくれた。

今にでも接舷しそうな距離を、互いの巨体をすれ違うように重なり合った瞬間、中岡の真の目的は達成されたも同然だった。

 

「今だ!」

 

中岡が声を上げた瞬間、後部車輌の屋根から収容式発射台が現れた。

姿を見せた3台のカタパルトは、地対空と地対地ミサイル運用に用いられる輸送起立発射機を模倣しており、人間ひとりが搭乗出来るほどの大きさ、さらに素早く収納及び、高さを自在に伸縮出来るように小型化にカスタマイズされている。

それに搭乗する3人の連邦軍兵士。しかもあの強化兵のブルートだ。

しかし、彼らはいくら強化兵でも小銃や短機関銃などの最低限必要な小火器はおろか、手榴弾、対物ライフルやRPGと言った重火器すら持っておらず、それらの代わりに両手に携えていたのは―――

 

「不味い!古鷹は回避、左舷にいる乗組員たちなどは素早くカタパルトごと自爆兵を排除せよ!決して射出させるな!」

 

携えているものを見て、気づいた秀真が古鷹たちに伝えたとき―――

 

「発射ーーー!!!」

 

中岡の号令が響き渡り、カタパルトからブルートたちが射出された。勢いよく飛び立つブルートたちは、手に持っていた代物、本来ならば速射砲が使用する榴弾砲弾。事前に弾頭部を緩め、信管を作動状態にさせたものを、まるで仇討ちを取る武士が抜刀した刀のように掲げるように飛んでいく。

しかし、彼らの射出後、カタパルトは全て敵に破壊されたが、中岡にとっては痛くも痒くもないものだった。

 

「いっけーーー!栄光ある我が精鋭戦士よ!必ず軍神として奉るからな!」

 

 

 

「対空戦闘開始!奴らを海に叩き出せ!」

 

蒼空を背景に、降下するブルートを眼にした乗組員たちは対空射撃を再び開始した。各自に就く装備妖精や乗組員たちの双眸を落としてでも分かるほどのマズルフラッシュに伴い、叫び声を遮り、紅蓮に染まり、今にでも暴発しかねない銃口から撃ち放たれた銃弾の嵐に捉えられた哀れにも2体のブルートの肉体を引き裂いた。

絶命した2体が携えた砲弾が水面に叩きつけられた瞬間、艦橋まで覆い尽くさんという勢いを見せた水柱が立ち上がった。

装備妖精たちなどは、冷たい海水を浴びたものの、機関銃の銃身を冷やすための恵みの雨だと感謝した瞬間。

 

「うわああああああ!」

 

安堵するも束の間。仕留め損ねた1体のブルートが雄叫びを上げながら降下する。しかも《クライン・フィールド》をすり抜けて。

大至急、左舷にいた超人部隊や陸戦妖精たちが短機関銃や軽機などで仕留めようとしたが―――

 

「中岡大統領閣下万歳!」

 

着地と同時に、砲弾の信管が作動した。

眩い閃光に包まれたブルートは高らかに笑みを浮かべた直後、ドカンッという激突音に伴い、衝撃がマリアナの海に轟いた。




今回もまた良いところで、終了となりました。
なお今回もまた悩んで時間が掛かり、海戦に力を注ぎまくりました。
兄部艦長の伝説の取り舵一杯は、某ライブ配信の報道番組のレギュラーコーナー『昭和の英雄が語る 大東亜戦争偉大なる記憶』で元長門の乗組員の話を聞いて知りました。

灰田「他にも有名な偵察機の搭乗員や瑞鶴の暗号解読員などと貴重な話は涙無くしては聞けない昭和の英雄たちがこうして語り、我々が受け継ぐことを忘れてはいけませんね」

真実と記憶は生き続けることは出来ますからね。
なお、今回の《クライン・フィールド》をすり抜けるという元ネタは、某海外ドラマ『スターゲイト SG-1』を元にしています。
オニール大佐が、バリアーを張ったアポフィスに対し、投げナイフで打ち破るという場面がありましたから参考にしました。
あのシーン、いつ見てもカッコ良く印象に残ります。

灰田「実際に米軍が今、バリアーを開発しているようですし、本当に私の世界やHALOシリーズなどSF世界になりつつありますね」

レールガンやステルス迷彩なども開発中ですからね。
次の新作でも出して良いかな(ボソッ)

灰田「今のは冗談だと聞き流してくださいね」

あぁん、ひどぅい! (兄貴ふうに)
時間は掛かりますが、また上げようかなと思いますので楽しみに待ってくださいませ。あくまで今の段階ではですが。
本作品もあと2話で終了ですが、最終回でも本作品を最後までお楽しみくださいませ。

灰田「では、次回の最終決戦の結末を迎える最後の海戦を、お楽しみくださいませ。それでは第百四十六話までダスビダーニャ(さよならだ)」

ダスビダーニャ!次回もお楽しみに
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