超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》   作:SEALs

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お待たせしました。
いよいよ今回で最後の海戦に終止符を打ちます。
風邪と戦いつつ、今回は9000文字以上になりました。

灰田「なお、私も少しだけ登場します。田中光二先生作品愛読の方々ならば、私の力が分かります回でもあります」

それでは……

作者・灰田『それでは本編であります。どうぞ!!』


第百四十六話:対決の時 後編

「左舷中央に被弾しました!」

 

「ダメコン班、左舷中央に急げ!」

 

古鷹の報告に対し、秀真は電話の用いて、消化活動指揮を行った。

受話器越しからでも、応急処理要員や複製乗組員たち率いるダメコン班の張り上げた声や駆け足の音などが聞こえた。

 

『提督に報告!左舷中央・第4甲板に火災発生!』

 

『弾薬庫に火災発生!弾薬庫に火災発生!』

 

彼女たちの報告。そのなかで一番最悪な状況報告、弾薬庫に火災発生という言葉を耳にした。

 

「弾薬庫に注水!急げ!」

 

秀真の号令一下、すぐさま誘爆を防ぐため、弾薬庫に注水された。

史実上では数多くの海戦でもありふれたものであり、また前者だけでなく、人災による爆発事故でもしばしば起きていたほど恐ろしいものでもある。

 

「提督、左舷シャフトがダウンしました!左舷動きません!」

 

「シャフト区画閉鎖!針路290!回避行動継続!同時に隔壁閉鎖、72から124!」

 

「隔壁閉鎖!72から124。甲板第4・5・6!」

 

秀真の命を古鷹たちは、迅速に対応する。

艦内ではサイレンが鳴り響き、全員が閉鎖区画から退避する。

彼の迅速かつ的確な命令により、古鷹たちの命が救われたのは不幸中の幸いだった。しかし―――

 

「注水完了しましたが、搭載武器のほとんどが使用不可能です」

 

「使える水上火器は?」

 

「20.3cm連装砲が辛うじて使えます」

 

「残弾数は?」

 

「徹甲弾4発だけです。提督」

 

彼女の報告を聞き、秀真は命令を下した。

幸い予備の操舵装置は生きている。上甲板などを覆った炎は、無事に鎮火して火災は収束し、応急修理も完了した。

攻撃力の大半は失われたが、予備機関も舵も作動している。何よりもまだ自分たちは生きている。

 

「……針路295。浅瀬に向かう。次で終わらせる。最後まで戦うぞ、古鷹!」

 

「はい。提督!」

 

深刻な状況と化した秀真たちは、最後の瞬間まで諦めず、最後の戦いにケリをつけるべく浅瀬に向かうのであった。

 

 

 

「見たか!所詮貴様らにバリアなぞという自惚れた未来技術を持つアジアの侵略者など豚に真珠に過ぎんわ!」

 

中岡は狂気の満ちた笑みを浮かべながら、秀真たちに打撃を与えたことに嬉々した。彼に続き、連邦乗組員たちも同じく歓喜した。

自爆兵による特別攻撃を成功させて、一旦は離脱し、距離を置きながら移動する《ミドガルドシュランゲ》も無事ではなかった。

自爆兵射出用カタパルトは全て喪失、近接攻撃による銃創などの傷を負ったものの、中岡たちにとって小さな損傷は寧ろ気にすることもなければ、男の勲章でもあった。損傷は被ったものの、敵艦にダメージを与えたことを考えれば安いものであった。

そして誰もが中岡大統領がいる限り、こちらに勝算がある。負けという二文字はないと活気付いたのだった。

しかし、実際には偶然観ただけの某スターゲイトで敵が張り巡らせた個人用シールドにより、主人公たちが携えるエネルギーガンや銃などを通さないほど強靭なシールドに苦戦したが、主人公が投げナイフなどスピードの遅いもので無効にした場面を思い出し、それを単に自爆兵部隊に置き換えて実行しただけであるが。

 

「こ~んな良い考えがあるとは、お釈迦様でもご存知あるめぇ!う~ん、自分で言ってもこの美顔と頭の良さにクラックラ来るぜ!」

 

テクノロジーに自惚れ堕落した日本海軍に一矢報いたことは、日米のくだらないテレビ番組よりも遥かに面白い眺めだったから、自重することなど忘れるぐらい気分が高まっていた。

 

「このまま敵艦を、ミサイルの射程距離に誘う!真正面に移動するように努力しろ!」

 

中岡もまた同じ方向に向かいつ、最後の勝負に挑もうとした。

もう一度だけ、フェアを装い、最後は挟み撃ちで仕留めるという作戦を成功させるために正面から挑むのがミソである。

成功したら、撃沈には最高の日だと思うと歓喜な気持ちを隠せなかったのだった。

 

 

 

刻々と報復の刻が近づく。

見晴らしの良い場所から忠秀率いる精鋭連邦親衛赤軍が、地上発射型ハープーン発射機の準備を完了しつつあった。

敵艦が有効射程距離内に入り、中岡たちの操る《ミドガルドシュランゲ》が攻撃体勢を取ったら、4発の対艦ミサイルを全でお見舞いする方針である。成功した際は憎き敵提督や艦娘を含め、全ての乗組員639名の命を奪うことが出来る。

例え生き残ったとしても、この世界一深い海溝と言われるマリアナ海溝で誰にも知らず冷たい海底で寂しく死ぬか、また生きて浮上しても中岡たちは敵を捕虜とはせず、生存者は全て機銃掃射で殺害し、その後は海に捨ててサメたちの餌にしてやるまでだ、と捕虜に恩情に必要ないと呟いた。

 

「もう少しだ。この瞬間を待っていた」

 

双眼鏡越しには遥々と遠くから、こちらに向かってくる秀真たちを凝視した忠秀が呟いた。むろん彼だけでなく、提督死亡と艦娘轟沈と言う名の最高のショーと、元帥たち率いる連合艦隊が絶望に陥る姿を見れるのではないかと、親衛赤軍隊員たちも、ニヤニヤと嫌味な笑みを浮かべながらその瞬間を楽しみに待っていた。

この場所まで来た道には自分たちの足跡などを残しているが、仮に敵が見つけたとしても、こちらはすでに敵艦を屠り、そして自分たちは地下洞窟まで逃げ込み、そこに用意している脱出用の潜水艦で逃げている最中だ。

 

「日本の希望を壊すのが、我々の使命だ。大人しく中国や韓国、北朝鮮様という偉大な国家の奴隷はおろか、中岡大統領様や我ら連邦共和国に楯突いたことを後悔しながら、この海に彷徨う侵略者たちの魂と鉄屑とともに死ぬが良い!」

 

忠秀直々に近づきつつある目標に照準を合わせようと、調整していた際に、ふと幻影とともに威厳のある声が脳内に響いた。

 

―――彼らを攻撃してはならない。反航戦になるまで何もしてはいけない。

 

その不思議な幻影は灰色服の男の姿をしており、まぶたの裏を過るとともに、その声は抵抗し難い説得力に満ちていた。

もしかして、この幻影たる人物が日本を助けた未来人、果ては異星人なのかと推測した。敵艦を葬るまでは堪えなければと内心ではその声と必死に抗っていたが、ついには灰田の声に負けてしまい彼の言うとおりになった。強力な暗示と言ってもいい。

 

「ハープーンの有効射程距離まであと少しだ。各員周囲警戒を」

 

『ラジャー!!!(了解!!!)』

 

誰ひとりも忠秀の不審な行動に違和感を感じることはなかった。

部活たちは中岡たちからの与えられた命令を実行しているだけなのだと、暗示に掛かっていることすら気づかないか。またはこの場にいた者たちも暗示に掛かってもいたが。

 

その頃、双方の海戦は―――

 

「提督。まもなく浅瀬に入ります」

 

「もう少しだ。あと少しで終わる」

 

浅瀬ならば、中岡たちは隠れることすらも出来ないが、こちらも下手をすれば浅瀬に座礁するという最悪な状況になり兼ねない。

だが、秀真たちは最後まで諦めずに闘志を燃やしながら移動していると―――

 

「敵艦。方位290。もう少しで我々の勝利は目前だ!前進一杯!速射砲及びドリル用意!」

 

中岡は声を上げながら、連邦乗組員たちが行動に再び移る。

損傷してもなお堪えて動く《ミドガルドシュランゲ》は、反転しながら真正面で身構える容姿は槍を構える騎士のようだった。

槍の代わりに、速射砲とドリルを構えるという二刀流を兼ね備えているが。

 

「6時方向に敵。距離2100メートル、針路295です!増速しています!」

 

熟練見張員の報告が響き渡る。次いでCICから直通の電話が切迫した音声を吹き出した。秀真は、敵は速射砲や魚雷などが搭載されている武装車輌を利用し、こちらにある程度ダメージを与えた直後、再び衝角戦を挑むと推測したと同時に―――

 

「300メートル、真っ直ぐに向かってきます!」

 

「古鷹!面舵一杯だ!」

 

レーダー員からも新たな報告を受け、こちらに接近して来る鋼鉄の世界蛇を操り、背中に跨ぐ哀れな世界皇帝を睨んだ彼は素早く命じた。

 

「はい!」

 

面舵一杯。古鷹も秀真の命に応え、操艦する。

また彼女に応えてフル稼働する予備機関と操舵装置は、巨艦を震わせて中岡がいる真正面に向こうと動かした。

檣頭には大日本帝国海軍の戦闘旗、燦然と輝く旭日旗を翻し、中将座乗を示す中将旗をはためかせて、距離を詰めるべく猛進する古鷹。

そそり立つマストに、無数の電子装備を施して新たに生まれ変わった彼女の姿は、逞しき黒騎士を護るため、白銀の完全鎧に身を固め、大剣を振りかざして戦場を疾駆する華麗な戦乙女とも見えた。

 

「主砲、右砲戦。一番、二番主砲塔、砲撃用意!」

 

秀真は逸る心を落ち着けつつ、緩やかに旋回する砲塔を見つめて、発砲のときを待ち、必勝の意志を刻み込むために叫ぶ。

 

「右砲戦!徹甲弾装填!」

 

秀真の檄に応えるかのように、古鷹も叫んだ。

主砲塔内、艦底近くの弾薬庫から給弾室を経て、艦内から遥々と長い旅を続けた旅人のように、最上部の換装筒に至った徹甲弾が、漸く目的地たる装填機へと移される。

主砲の砲尾が開き、装填機が前進して、砲弾とともに、炸薬が装填される。そして尾栓が音を立てて閉じ、2基4門の主砲が緩やかに旋回した瞬間、中岡たちの《ミドガルドシュランゲ》もこちらに照準を合わせて捕捉する独特のロックオン音が鳴り響いた。

 

「提督!ロックオンされました!」

 

通信員の上擦った叫びが、秀真たちの鼓膜を直撃した。

 

「解析終了。敵艦にいつでも攻撃出来ます!」

 

秀真たちに挑む中岡たち。張り上げた声を出した連邦砲術長の叫びは、中岡の鼓膜まで響いた。

報告を聞き、世界皇帝の口元が、微かな笑みを浮かべている。

―――もう少しだ。敵との殴り合いはおろか、所詮は戦争。勝てば官軍となり、負けたら賊軍と言うことを思い知らせた後は、溺れる犬は棒で叩けというように下手をすれば、後々、面倒になり兼ねないからせめてこの冷たいマリアナ海溝に沈めて、人喰いサメたちの餌にしてやるのが武士の情けだ。

 

「博愛主義の戦犯と時代遅れのボロ艦は、今こそ未来永劫の侵略戦争の贖罪を果たすこの瞬間のために死ぬのだ!針路そのまま!砲撃用意!」

 

中岡は唇の内に呟いた言葉を発し、勝利を確信したとき―――傲慢な世界皇帝の予想を裏切る展開が襲い掛かった。

岬から白煙の尾を引いて、音速を超えた大剣が鋼鉄の世界蛇の背後に突き刺さった。直後、轟音と衝撃が交じった爆発音が鳴り響く。

 

「なんだ!敵の卑劣なる攻撃か!?」

 

「いえ、あれは我が軍の、忠秀主席率いる精鋭親衛赤軍部隊です!」

 

中岡の言葉を、掻き消すように連邦通信員が張り叫んだ。

 

「何故だ!1発だけでも誤射では済まないぞ!繋げろ!」

 

「は、はい!」

 

部下たちは緊急回線を通して、忠秀たちに無線で呼び続けていたが、彼らは沈黙を守っていた。やはり無線を傍受されることを恐れて切っているか、本当に切っているかのどちらかだ。

しかし、そうとも知らずに中岡たちに対し、ミサイル攻撃をした忠秀たちは灰田の暗示に掛かっていたため、知る由もなかった。が、突如として、彼の暗示は消えていく。

灰田による暗示から、漸く忠秀率いる連邦親衛赤軍部隊は、いま起きている光景を見て、唖然としていた。

 

「誰だ!中岡様に刃を向けた!」

 

張り叫ぶ忠秀主席に、この場にいた隊員たちは互いの顔を見合わせたが沈黙していた。沈黙を破るように彼は叫んだ。

 

「ミサイル整備班責任者の田渕大佐がこの革命的な聖戦を汚したんだ!だからこそ我々は今の彼に対し、総括要求の限界を打破しなければならなくなった。その指導のために殴る蹴るという方法を取る!」

 

『異議なし!!!』

 

忠秀の命を受けた親衛赤軍隊員たちは、恐怖に怯えていた田渕大佐の両脇を抱えて拘束した。

 

「田渕大佐!中岡様の革命的な勝利を台無しに伴い、我が共和国に対する国家反逆行為を自己批判し、中岡様の要求されている総括に応えろ!総括は全員で行なう!」

 

総括行為を宣言した忠秀主席は己の拳を握り締め、躊躇うことなく、思いっきり田渕の頬を殴った。彼に続き、この場にいる人間が交代で殴り、最後は全員が殴る、蹴るをひたすら繰り返すという壮絶なる集団リンチを行なった。この行為により田渕の両頬は赤黒く膨れ上がり、口からは突き出した前歯、それでも自己批判が足りないと判断され、全員が銃剣を両腕や両脚に突き刺し、挙げ句は喉や胸をめった刺しにされ続けられた。が、それでも人間という生き物の生命力は中々のものであり、生命力もたまげたものだ。まだ生きていた田渕を、忠秀たちは今度は抱え上げて崖から突き落として殺害した。

 

「これぐらい簡単なことも自己批判すらも出来ない敗北主義者めっ!」

 

彼ら連邦国家からして見たら、総括は『真の連邦市民や戦士となるために反省を促す』と称して行なわれたが、実際にはただの凄惨な集団殺人に過ぎなかったのだ。密告や敵前逃亡はおろか、戦闘による銃やナイフを傷つけた、連邦軍幹部になりたいという訳の分からぬ理由から、挙げ句はキスをした、男女交際をした、妊婦だったからなど幼稚な理由ばかりで総括対象となった。

しかし、この行為が貴重な時間はおろか、失われた勝利という事態を自分たちで作ってしまったのだった。

 

「この汚名を挽回し、今度こそ革命的勝利を収めれば、中岡様もきっとお許しになさると同時に、我ら連邦共和国が世界に輝くときだ!」

 

臥薪嘗胆。漸く恨みを晴らせると思ったとき、入り口を警戒していたふたりの歩哨兵が、グワッ、と短い悲鳴を上げて倒れた。

むろん倒したのは、日本軍の特殊部隊だ。

しかも日本刀を携えた指揮官とともに、見たこともない日本軍の特殊部隊、恐らく不死身の部隊と、開戦時にサイパン諸島を襲撃したあの空挺部隊という情報は嫌と言うほど聞かされたから、忠秀たちはすぐに理解した。

 

 

「こんなときに敵襲だと!どいつもこいつも邪魔ばかりしよって!我らの革命的平和の邪魔をするな!」

 

忠秀主席は、直ちに排除しろと命じた。

連邦軍、特に中岡たちの私兵部隊とも言える精鋭親衛赤軍部隊は実力は本物であり、選りすぐれの精鋭隊員たちを中心に集結された特殊部隊でもある。AK-12やM27 IARなど最新鋭の装備に伴い、韓国の大韓民国海軍特殊作戦旅団や特殊戦司令部、北朝鮮の軽歩兵教導指導局、ロシアや中国、親中国家のパキスタンなど各国の特殊部隊が行なう戦術及び、ナイフやスコップなどを利用した格闘術を心得ている。

 

また中世ヨーロッパの甲冑を纏った重装甲兵士を模倣したアーマーを着用したブルートには、右腕にRID ストライカー12という回転式弾倉を持つ散弾銃を拳銃代わりにし、さらに左腕にはライフル弾の貫通にも耐える高い防弾レベルを誇る大型のバリスティックシールド(防弾盾)を構えて前進した。いざという時にはこの盾で殴るなどによって、接近戦も出来るように改造されている。

 

忠秀は勝ち誇った笑みを浮かべ、発射台を調整した。

双方が一団となれば、さすがの日本軍が誇る不死身の部隊や精鋭部隊なぞ赤子同然、我らの精鋭親衛赤軍部隊には敵うまいと思っていたのだが―――想定内はおろか、期待は大いに裏切られた。

 

悲痛な悲鳴がまた聞こえ、ふと後ろを振り返った。

最初の銃撃戦では互角に戦えたものの、徐々に我が精鋭部隊が日本軍の特殊部隊に押されているではないか、と、我が目を疑った。

日本軍の迅速的確な連携に伴い、一斉射撃。彼らの一方的な火線が抵抗を続ける親衛赤軍隊員たちに向けて、凄まじい連射速度を誇る短機関銃や軽機関銃から放たれる銃弾の雨及び、日本刀による一刀両断を受けて、精鋭親衛赤軍隊員たちは次々と倒れていった。

 

さらに弾切れとなったストライカー12散弾銃を捨てた2体のブルートは、日本刀を携えた指揮官らしき男を挟み討ちにして襲い掛かり、盾を思っ切り振り落とした瞬間。ヒュンと鳴った風切り音。その人物に向かって振り落とされる前に、両者の左腕を眼にも見えぬ速さで斬り落とされ、腕から真っ赤な鮮血が噴き出した。

2体の強化兵はガラガラの濁声で、お世辞にも聞きとりやすいとは言えないが、耳をつんざくような苦痛の叫び声であることは確かだ。

 

「よくも中岡様の大事な子どもたちを!殺してやる!」

 

忠秀は堪え切れなくなり、懐ろからタウルス レイジングブルを取り出し発砲した。同時に戦闘意欲と殺意の眼を見せ、己の拳で撲殺しようとしたが、再びヒュンと空気が鳴り響いた。

だが、勝負は一気に着いた。

彼らはその時、何が起こったか理解出来なかったが、すぐに理解した。ボトッ、と球体らしきものが足元に落ちていく。

彼と、2体の強化兵の瞳に映るのは膝をついた自分自身の身体、やがて力尽きうつ伏せに倒れたという光景だった。

 

「他愛もない」

 

敵の首を刎ねるという華麗なる殺陣を決め、伊吹は日本刀を収めた。

周囲を見渡すと、ツルタ少佐の超人部隊と福本たち第六歩兵中隊の合同部隊も連邦軍兵士たち全員を殲滅していた。

 

「伊吹首相、御時間がありません。彼らに止めを」

 

ツルタ少佐は変わらず、落ち着き払った口調で答えた。

灰田の暗示と、彼の教えがなければ、秀真たちは危なかった。

それを阻止してくれたことに感謝した。

 

「分かった。私が直々に秀真提督を援護する」

 

 

 

「忠秀主席!答えろ!どうしたんだ!」

 

通信機器に向かって怒鳴る中岡の声が《ミドガルドシュランゲ》指令室内に響いた。

しかし、彼とは打って違い車内にいた生き残りの連邦乗組員たちは悲痛の声で満ちていた。もう持たない、早く逃げないと。

ミサイル発射台が日本軍に占領され、袋の鼠にされたのは自分たち。

ならば、ここから逃げなければと、パニック状態に陥っていた。

 

「持ち場に戻れ!命令だ!我々は今こそ限界を超えるときだ!我らは選ばれし神々なのだ!」

 

中岡は、金ピカ仕様のデザート・イーグル自動拳銃を向けて、全員を脅したが、誰も言うことなぞ聞かなかった。

中岡たちは自分たちの最期が来たと認めなかった、自分たちは神になるまで死にたくないという願望を叶うまでは、と。

 

 

突然のミサイル攻撃、中岡たちが無防備になっていることに戸惑いを隠せなかったものの、やはり隠し玉を持っていたか、と悟り、そして秀真は最後の砲撃を命じた。

 

「古鷹、砲撃で沈めるぞ」

 

「はい、提督!」

 

古鷹が放つ、最後の砲撃。活火山の噴火と見紛う火焔とともに撃ち放たれた徹甲弾は、大気を揉み込むように飛翔して、浮遊する《ミドガルドシュランゲ》に目掛けて突入する。

爆発的な轟音を上げて、2発の徹甲弾は前檣楼構造部に命中。前檣楼を囲む装甲を突き破り、凄まじい運動エネルギーで分厚い装甲を歪ませ、車体を浮き上がらせた。

続いて、伊吹たちが放った1発のミサイルが後部連結車輌に命中し、2発目のミサイルは速射砲を備えた武装車輌を瞬く間に沈黙させた。

3発目は推進スクリュー車輌に命中、もはや逃げ場を失った。

 

半身不随に陥った哀れな世界皇帝と鋼鉄の世界蛇に最期を、止めを刺そうと秀真が、古鷹の意思を確かめる。

こくりと頷いた彼女が、彼に視線を向けた。

 

「撃てぇぇぇ!」

 

秀真の号令一下、連装砲は轟然と咆哮する。

主砲塔に猛打を加え、白熱する砲弾が飛翔し、宙を飛び渡る徹甲弾の唸りが聞こえた。次の瞬間、耳を聾する爆発音、車輌が裂ける独特の異音、数発の攻撃を浴びて炎上し、破滅の音を上げて《ミドガルドシュランゲ》は横転し、ゆっくりと深い海に沈んでいった。

 

「やりました、提督」

 

「ああ。そうだな……」

 

長い戦いを終えた安堵の笑みを浮かべ、弾んだ声で言う古鷹。

スカルフェイスマスクを脱ぎ、こちらも笑みを含んだ秀真。

 

「早くみんなに知らせましょう、提督」

 

「ああ。さっそく知らせないとな。我々の勝利に伴い、終戦の知らせもな」

 

それから少しして、艦内や遠くから聞こえる歓声を感じた。

またミサイル攻撃による援護射撃をしてくれた伊吹たちにも、感謝の信号を送った。なお本人たちは『最高の眺めだ』と送り返して来た。

 

「……帰投後は、サイパン諸島で傷の手当てが先だな」

 

「はい!」

 

緩やかに艦を反転させ、ふたりを待っていたのは、勝利の報告を聞き駆けつけ尽きた青葉や元帥たち、戦艦水鬼たちが迎えてくれた姿に、ふたりは見つめながら微笑したのだった。

 

 

 

 

秀真・古鷹に破れ、鋼鉄の世界蛇こと《ミドガルドシュランゲ》の車内には火花が散り鳴らし、ソナーや通信機器などは点滅を繰り返しながら作動していた中、頭部を負傷した中岡が朦朧とした意識を保ちながら起きた。傍にいたアンミョンペク参謀長たちの死体を見た瞬間―――

 

「うわああああああああ!」

 

しかし、絶叫を上げるも無駄に終わった。

深海技術に加えて重量感を誇る《ミドガルドシュランゲ》は、世界一深い海溝として有名なマリアナ海溝に沈んでしまった挙げ句、車内にある酸素ボンベも壊れてしまい、あと数分後には酸欠状態に陥ってしまう恐怖が彼に襲い掛かる。が、酸欠で死んだ方が幸せだったことを知るという恐るべきものが刻々と近づいていた。

 

「あ、あれはもしかして、助けてくれ!俺はここだ!」

 

ふたつの怪しい妖光を見て、もしかしたら生き残りの深海潜水艦部隊かもしれないと、窓を叩きながら必死に助けを求める中岡。

しかし、それは彼女たちではなく、自分の両眼を疑うほど巨大な海洋生物が姿を現し、周りを遊泳しながら彼を睨みつけていた。

猛禽類よりも鋭く獰猛な双眸に伴い、肉食獣よりも鋭利なノコギリ状の歯、巨大な背鰭や胸鰭、腹鰭、臀鰭、尾鰭を備えていた。

 

「こいつ、とうの昔に絶滅したメガロドンじゃないか」

 

中岡の言うとおり、いま周囲を泳いでいるのはメガロドンだった。

都市伝説では『生きた化石』として有名なシーラカンスと同じく、今でも僅かな生き残りが、マリアナ海溝にいるのではないかと言われていると噂が囁かれている。

本当に実在したこともだが、驚くべきことに最大では全長20メートルはあるが、こいつは遥かに超え、30メートル以上はあるのではないかと推測した。

恐怖のあまり、中岡は腰を抜かしてしまった挙げ句、決してしてはいけないことをやってしまった。

 

突如として、メガロドンが壊れかけた鋼鉄の世界蛇に噛み付いた。

 

「なぜだ!俺は怪我はしているが、血の匂いなんて外に漏らしてなんかないのに!?」

 

サメと言う生き物は嗅覚よりも、実は、聴覚の方がもっとも優れていると言われており、その発達した聴覚によって、非常に遠いところにいる動物を発見でき、サメは40ヘルツ以下の低周波で不規則な音を、約2キロも先から感知することが出来る。

その中岡が助けを求める際に、大声を出し、窓を叩いたことは獲物のもがく時にでる、不規則なパルス状の音に似ていたため、餌であることを知らせたようなものだった。

 

ミシミシと車内や屋根から亀裂が生じる音が鳴り響いた。

次第に酸素が外に漏れ、装甲も堪え切れず、玉子を纏う殻のように壊れていく恐怖心が加速されていく。

 

「た、助けてくれ!お願いだ!これまでの罪を償う!日本は良い国だと世界中に言う。だから、今までの争いを、ローデシア内戦のようになかったことにしてくれ!」

 

それが哀れな世界皇帝の最期の姿と、最期の言葉でもあった。

巨大ザメの嚙みつきに堪えきれず、強靭な顎で押し潰された車内から浸水、さらに水圧による影響で内部から《ミドガルドシュランゲ》は破壊され、内部から吐き出された中岡は水圧に堪え切れず、身体は腫れながら、原形を留まることさえしなかった。

漸く餌にありつけることに嬉々したメガロドンは、車内から吐き出され、肉塊となった中岡に喰らい付き自分の胃袋の中に納めた。

食事にありつけ、空腹も満たされたメガロドンは、また自由気ままにマリアナ海溝を遊泳し、姿を消していったのだった。

 




最後は秀真・古鷹の勝利、約束された勝利で終わりました。
哀れな世界皇帝がメガロドンに喰われるという。
後者の元ネタは、田中光二先生作品の『異獣艦隊』です。
某笑顔動画で、ゆっくりが語る架空戦記紹介動画で知りました。
マリアナ沖海戦でこの大きさを誇るメガロドンが登場し、のちに日本海軍の味方となって、イルカたちとともに米艦隊を撃沈する手助けをしています。その前は漂流した米海軍人など食べていますが。

灰田「因みに私はダイオウイカを操るように、その世界ではイルカを超能力で操る女性が主人公と結婚して超能力が今より強くなり、イルカたちが連れて来たメガロドンを操るという描写がありますように、摩訶不思議な架空戦記ですね」

灰田さんも超空シリーズなどでは、時間を止めたり巻き戻したりするだけでなく、超能力を使って原爆搭載機を鹵獲したり、果てはオーストラリアに投下させたりなどもしています。
またNATO艦隊を操り、米海軍を翻弄させるなどと色々と。

灰田「あれでも抑えている方ですが、やり過ぎも反省していますよ」

やり過ぎたら、別の未来人が来ますからね。
同連載作品に出るかもしれませんが。

灰田「出たら出たでやり返すだけでもありますが」

ともあれ、漸く次回で最終回を迎えることが出来ます。
次回は、灰田さんの最後の支援が分かります。
それは我々提督たちが貰うある物であり、彼女たちにとってもかけがえのない大切なことでもあります。

灰田「それでは次回で最終回になりますが、最後までお楽しみくださいませ。それでは最終回までダスビダーニャ(さよならだ)」

ダスビダーニャ!最終回もお楽しみに
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