超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》   作:SEALs

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お待たせしました。
予告通り、灰田さんの最後の支援が明らかになります。
それは我々提督たちが貰う物であり、艦娘たちにとってもかけがえのない大切なことでもあります。

灰田「最後くらいは私なりに締めくくれたら良いかなと思います」

それでは……

作者・灰田『それでは本編であります。どうぞ!!』


最終回:暁の水平線に。

終戦から数ヶ月が過ぎた。

日本政府は、戦艦水鬼たちと連絡を取り、停戦協定を結んだ。

中岡たちの死により、呆気ない形で終戦を迎えたのだ。

無事に終戦を迎えたと同時に、中岡たちが建国した連邦共和国及び、マリアナ諸島に構えた連邦亡命政府も、事実上解体されて消滅した。だが、生き残った彼らには過酷な運命が待っていた。

解放されたマリアナ諸島を舞台に、英国から曳航した豪華客船『クイーン・エリザベスⅡ》で、戦争犯罪を断罪する軍事裁判が開延され、湯浅たち幹部からアメリカなど他国の協力者たちが裁かれた。

日本を含め、アメリカなど各国の判事や検事たちなども協力し合い、湯浅たちなどを裁いた。連邦軍の戦犯たちは禁固20年以上の者から死刑判決を下される者たちが多数を占めており、閉延後には本国へ帰国、禁固刑以上の者は刑務所内特別棟・特別病棟に収容された。

死刑囚らは全員決められた日付で、一日を掛けて処刑されたが、誰も同情することもなかった。因果応報。当然の報いだった。

マリアナ軍事裁判が終わり、連邦国が大量に隠し持っていた貴金属やダイヤモンドなどの宝石類を含む軍需物資などの押収資産は、戦後日本の復興・賠償に費やし、国内のインフラ整備と言った復興支援などに役立つことになるが、やる事はまだたくさんある。

しかし、不思議なことに、どの国も日本が重爆や空母戦闘群などを持ったことについて、どの国も不審を唱えることはおろか、艦娘排除宣言などなかったということである。

もしかしたら、灰田が暗示を掛けていたのかもしれないが。

 

 

 

 

 

秀真鎮守府

日付 X-Day

時刻 1700

 

「どうやら、あなたたちの仕事も大団円となりつつありますね」

 

灰田が穏やかな口調で言った。

以前の緊急会議に、秀真のみに対し脳内で『最後の支援がある』と言い残し、それっきり姿を現さなかったが終戦から数ヶ月ぶりにいつもの執務室で姿を現した。

 

「ああ。そうだな」

 

秀真が言った。

春の陽気に誘われるとともに、ありふれた爽やか日和というものがあるが、終戦までには味わうことを知らなかった一日でもあった。

古鷹も一緒に呼ぼうとしたが、灰田は『ふたりっきりで話したい』と言い出したのである。未来人の考えは分からないが、秀真は彼の言うとおりにした。

 

「それで灰田、今日は最後の支援のために来たのは良いが、いったい何なんだ?」

 

秀真が訊ねた。

 

「それはあなた方のために、御用意した特別なものです」

 

灰田が微笑しながら言った。

その彼が秀真に差し出したのは小さな箱、リングケースだ。

秀真はそれを受け取り、リングケースを開けた。その中にはキラッと煌めく純銀製の小さなリング、指輪があった。

 

「これは指輪……」

 

「はい。あなた方の絆をより深く、いつまでもどこまでも末永く築き上げるあなたたちの未来のために特別に御用意した代物です。この指輪はどんなときでも助け、必ず良き未来へと導き、そしてあなた方を護ることでしょう」

 

「俺たちのために用意するなんて、最後までありがとう」

 

秀真は嬉々した。

これが灰田による最後の支援、自分たちが今後の未来を、未来への道標を築かなければならない。

 

「いいえ。私として、あなた方の善意と正義を信じ、その信念を楽しませてくれた細やかなお礼だと思って受け取ってください。では、私は次なる多次元世界に存在する日本へ介入するために行きますね。

秀真提督からお話があると、古鷹さんにはお伝えしております。

おそらく数分後に来ますので、御武運を。……それでは、いつの日かまたお会いしましょう」

 

遠まわしな別れの言葉。

灰田はその言葉とともに、姿をすうっと消えていった。

秀真には知覚出来ない次元の谷間に溶け込み、消えてしまった。

白昼夢でも見たほど不思議な体験、彼が消えてから数分後、その言葉どおり、執務室の扉をノックする音が微かに聞こえた。

 

「提督、古鷹です」

 

「どうぞ」

 

古鷹の声が聞こえた。

秀真は入室許可を言い、彼女を執務室に入れた。

 

「提督、お話と言うのは……」

 

「ああ。話というのはな……」

 

ふたりは見つめ合い、緊張感のせいか上手く喋ることもままならなかったが、最初に口を開いたのは秀真だった。

 

「……古鷹、これを受け取って欲しい」

 

彼はさっと、リングケースを出した。

ぱかっと開き、指輪を古鷹に見せた。

 

「て、提督。これ……!」

 

彼女は驚いた。

秀真からのプレゼント。藪から棒ということわざのように驚いた。が、同時に嬉しさを隠し切れなかったのだ

 

「古鷹……俺はキミのことが好きだ。大切なお前を護れた今日までのことを嬉しかった事はない。今日まで俺と一緒に戦い、そして共に歩んだことをこの上なく幸せだった。そしてこれ以上の幸せを望まずにはいられない。だから、俺と結婚してくれ」

 

精いっぱいの告白を言った秀真。

彼の告白を聞いた古鷹は、にこっと微笑して答えた。

 

「はい。提督……私、嬉しいです。古鷹も……提督のこと……出逢ったときから……ずっと、ずっと……お慕わしていました」

 

「古鷹……」

 

「不束者ですが……よろしくお願い致します……っ」

 

「ああ、よろしくな。古鷹」

 

古鷹は嬉し涙を流し、秀真のプロポーズを受け取った。

たくさん言いたいことはあるが、ありふれた言葉で返した。

上手く伝わらないが、確かなもの、愛しているという言葉を伝えた。

彼女の返事と想いを聞き、ふたりは嬉しさを隠せず、そっとお互いに抱き締め合ったのだった……

 

 

 

「これで良かったんですよね……司令官と、古鷹が、幸せならば……青葉は……」

 

ふたりの未来を執務室前で聞いた青葉は、その場に座り、自身の顔を両手で覆い、声を殺しながら涙を流していた。

これで良い、ふたりが幸せならば自分はそれで良いと。

自分がまだ艦時代、生前は自分のせいで第六戦隊は解体、罪を償うことすら出来なかったあの海戦、あの日以来、仲間を失いながら数多くの激戦を潜り抜け、最後は動くことはおろか、呉市の江田島で古鷹山を護ることしか出来ず、最期まで生き残ってしまった罪を、重い十字架を背負って来たが、今日でその贖罪を漸く果たせたのだから良いと。だけど、自分は幸せになってはいけないと責めた。

泣いている青葉に、何処からともなく吹いたそよ風が彼女の頬を優しく撫でるように、あの人物の声が聞こえた。

 

―――青葉さん、大丈夫ですよ。秀真提督は、あなたたち第六戦隊を決して不幸せにさせることなどありません。

 

灰田の声だ。

どうしてと彼に問い掛けようと顔を見上げたら、秀真と古鷹が側に、今迄物陰に隠れ、ひょいっと顔を覗かせた加古と衣笠も出てきた。

 

「司令官、古鷹、加古、衣笠……?」

 

涙ぐみながら声を出した青葉。

彼女を見た秀真たちは、穏やかな笑みを浮かべて口を開いた。

 

「青葉、大丈夫だ。俺はお前も加古も衣笠も家族として迎える。お前はもう独りじゃないんだ。いつの日も、どこまでも俺たちと一緒だ」と秀真。

 

「青葉もさ、生前はあたしらの分を、今はみんなと一緒に、今日まで最後まで戦い抜いて……」と加古。

 

「色々あってこうしてみんなが出逢い、思い出ある呉や江田島の街を護ったようにみんなを護り続けた」と衣笠。

 

「だから、今度は私だけでなく、みんなで一緒に幸せな未来と明日を築いて行こう!」と古鷹。

 

みんなの言葉を聞いた青葉は、涙を拭い、笑いながら言った。

 

「司令官、みんな。青葉、嬉しいです!」

 

彼女もまた救われ、より絆を深め、明日という未来の道標を築いたのであった。

 

 

 

日付 X-Day

時刻 1230

 

4月の末。

秀真と古鷹は、青葉たちを連れて、広島県・江田島市に新しく出来た海軍ホテルのプライベートビーチを散歩していた。

なお青葉たちもふたりを気遣い、今は部屋でのんびりし、あとでみんなで食事をするために合流する予定だ。

 

ふたりにとっては、初めての小旅行というべきだろう。

これは政府や元帥たちなどからのささやかな贈り物であり、休暇でもある。因みに広島旅行は古鷹たちのアイデアである。

一週間後は通常通り、結婚して妻となった古鷹、家族として迎えた青葉たちとともに艦隊指揮、元帥に書類などを提出しなければならない鎮守府生活が待っている。また同時に新しい未来、戦艦水鬼たち率いる深海棲艦たちと手を結び合い、この和の国の明日を造るという未来を叶えるために共に歩んでいく。

なお、戦艦水鬼たちも元帥や舞鶴たちの秘書及び、助手を務めたり、ケイシー社長たちのTJS社に所属した者などもおり、それぞれ新しい人生を送っているとのことだ。

 

「綺麗だな。いつもは戦いばかりの海だったが、初めて見た静かな海がこんなに綺麗だということを俺は忘れていたようだ」

 

紺碧の海を眼にした秀真は、感心したように独語した。

幾つかの戦いを、生涯を戦いに明け暮れた先人や今の自分たちも、本当の未来を誰よりも願い、信じ続けて来たのだ、と。

英霊たちの意思を受け継ぎ、護り信じたその結果として、誇りを取り戻した日本は、彼女たちと歩む未来を築き上げた。

その営みを余すことなく見守ってきた海が、秀真や古鷹たちの未来を祝福するように、蒼く輝き、静かな波音を響かせた。

 

「はい。私もこの静かな海を取り戻すまで、提督と一緒にこうして見るまで待っていました。だけど、今日で願いが叶いましたから嬉しいです」

 

彼の傍らに立つ古鷹は、はにかみながら微笑した。

秀真も嬉しくなり、古鷹の肩に手を置き、抱き寄せた。

肩に置かれた彼の手に、古鷹はそっと自分の手を載せた。

お互いの手のひらを通じて通い合う温もりが、ふたりはむろん、そして青葉たちとの家族愛や絆を深め合っていく。

そしてふたりの未来、いつか生まれてくるふたりの愛の結晶、自分たちの子どもと過ごしながら一緒にこの静かな海を眺める未来が待ち遠しくて堪らない。

 

「提督、私、とても幸せです」

 

「ああ。俺もだ。古鷹」

 

灰田が用意してくれたこの特別な指輪がくれた確かなこと、ともに歩む幸せの未来を感じたとき、ふたりの瞳に、ふと彼が遠くで見守るかのように微笑している姿が浮かんでいた。

 

「ありがとう、灰田」

 

「ありがとうございます、灰田さん」

 

灰田の幻影を見た秀真と古鷹は、感謝の言葉を述べた。

これからは自分たちが日本を、大東亜戦争で日本を護るために戦い抜いた英霊たちの意思を、彼らの意思を背負い、今でも生き続ける記憶を受け継いだ自分たちとともに歩んで行く姿を見守るように、幻影を見せたのかもしれない。

そして、日本人が過去に置き忘れた誇り、アイデンティティを取り戻したことに感謝したかのように。

 

「提督。そろそろホテルに戻りませんか?約束の時間ですし、その後は私たちの時間をたくさん過ごしましょう」

 

「ああ、もちろんだ」

 

ふたりは手を繋ぐと、白い砂浜を歩き、ホテルへと戻って行った。

 

 

 

 

 

超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 完




初めての長編作品・架空戦記でもあり、艦これ二次創作物として、四年間連載した本作品も無事に完結しました。
皆さまの応援や励ましなどのおかげで、今日で本作品を最終回まで迎えたことに感謝です(翔鶴ふうに)

最終回の元ネタは『真珠湾軍事裁判開延ス』と『超空の決戦』です。
前者は戦勝国となった日本が英国豪華客船、その船内ホールで史上初の軍事裁判を行います。元はハワイでしたが、マリアナ諸島で終戦を迎えましたから、この場所にしました。
後者は、左文字一尉が恋人のかすみを連れて政府からの贈り物、つまり休暇を利用して沖縄に小旅行とする場面で物語を終えるシーンが好きなのでオマージュしました。漫画版では左文字がミスター・グレイの正体を知り、別れ、最後に礼を言う場面で終わっています。
基本的に灰田さんしか今後の日本の道のり、意味深な言葉で終わることが多いですが。

秀真と古鷹、青葉たちみんなで小旅行は、やはり呉と江田島にしたのは言わずとも古鷹と関わりある古鷹山があり、ここに呉鎮守府に配備された記録などがありますから、最後はこの場所で決めました。
今日の最終回も、古鷹の竣工日に合わせたのも然り。
なお、ケッコンカリボイスでは、古鷹は恥ずかしがり屋だから『重巡洋艦の良いところ』と誤魔化しているのではないかと思いますね。
本作品では素直な気持ちを伝えて、結ばれるという形も私なりの理想を描いたものですね。
本作品で古鷹はもちろん、第六戦隊好きが増えたら嬉しいです。

灰田「もちろん田中光二先生の架空戦記シリーズなども興味を持つ方々も然りですね」

秀真「いろいろと長話はしたいが、無事に連邦国も倒し、深海棲艦たちとの講話も無事になったな」

古鷹「提督も灰田さんも作者さんもお疲れ様でした」

加古・青葉・衣笠『お疲れ様!(です!)』

神通「提督の方々も大変お疲れ様でした」

ありがとう。
最初は不安だらけでしたが、投稿日の度にお気に入り数及び、感想欄が徐々に増えていき嬉しくて書き続ける力にもなりました。
本当はまだ後書きには収まりきれないほど、たくさん話したかったですが、キリが無くなるから仕方ないねぇ♂(兄貴ふうに)

秀真「俺たちの物語は終わるが、また別作品で受け継がれる意思もあるから楽しみにな」

古鷹「別世界の私、同連載中『第六戦隊と!』の私たちの活躍もお楽しみに!」

加古・衣笠『また架空戦記展開もあるからよろしくね!!』

灰田「前にも宣言した通り、私も介入します所以、新たな展開もありますので応援宜しくお願いいたします」

青葉「なお、予告ですが……作者であるSEALsさん、また新作を出しますのでこちらもお楽しみを!」

神通「その点に関しましては、また活動報告で発表します。また助手として腕をかけますね!」

活動報告は、予定では来週ぐらいになりますね。
新作予告なので短めに纏まる時間が掛かりますが、それまで気長に待っていてくださいね。では……

最終回は嬉しくもあり、寂しくもなりますが、無事に最終回まで完走出来たことに達成感を覚えます。

最後に本作品に御協力いただいた同志たち、応援してくれた読者の皆さんに心からお礼を申し上げます。

次の新作まで、ダスビダーニャ(さよならだ)

一同『ダスビダーニャ(さよならだ)!!!』

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