超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》 作:SEALs
前回は挫折しましたが、皆さんのあたたかい応援があったからこそこうして戻ってきたことに感謝しております。
では予告どおり、オペレーション一〇九の計画内容が明らかになります。
いつも通りですが、今回もまた一部変更している部分や台詞もありますがお楽しみを。
長話はさて置き、本編であります。
どうぞ!
連邦が誕生して十日が経った。
いうまでもなく、いきなり巨額の賠償金の支払いと無条件降伏を突きつけられた日本政府は驚愕した。
しかも要求を受け入れないときには、ミサイル攻撃に踏み切れるということである。
敵である深海棲艦、中岡率いるブラック提督たちの甘い言葉に釣られ、多くの国賊と売国者たちとともに建国しているため、もはや犯罪国家と言ってもいい。
要求額は300億ドル。日本円に直せば2兆4300億。
日本の国家予算は230兆なので10分の2たらずだが、借金に悩む日本にとっては、しかし巨額な金である。
なによりも根拠のない不条理な要求である。首相官邸では緊急閣議が行なわれていたが、安藤首相の許可により、元帥とともに秀真、郡司も出席することになった。
「わたしは連邦、いや実質的にはブラック提督と深海棲艦たちでしょうが、とんでもない額を突きつけてきたわけですが、まぁ払えない金額ではありませんから、わたしは支払い、無条件降伏を呑むべきかと……」
「貴方は本気でそれで済むと考えているのですか。かつての特アのように証拠もない戦争犯罪を突きつけて多額の補償金を支払わせた方法と同じです。彼らは無条件降伏などどうでも良いことです。我々がいとも簡単に賠償金を支払えば、これに味をしめて一文がなくなるまで、ゆすりたかられるのが落ちです!」
「それに過去に起きたハイジャック事件を起こしたテロリストに屈した挙げ句、世界中に恥を晒した無能総理、福山総理となにも変わりません。
それに一度このような要求を呑んだら、相手は今回以上の要件を突きつけてくる可能性があります!」
「元帥と秀真提督の言うとおり、かれらは敵対する者たち、深海棲艦らに寝返った裏切り者であります。
そんな国賊たち、いえ反逆者と化した彼らは、もはや敵以外、何者でもあり得ません。
しかも到底わが国に受け入れがたい要求を立てつけ、敵性国家の恫喝に屈するということは決してあってはならない事です!」
口火を切った鮫島財務相に対し、元帥と秀真と郡司の三人は反論した。
「しかし……これは国民を戦火に巻き込まない代償と考えれば、安いものと思って……」
「きみは元帥たちの話を聞いていなかったのかね?我々がイエスといえば、連邦は額を吊りあげてくるに決まっておる。それが彼らの常套手段なのだ」
秋葉法務相が太い声でいう。彼は大臣歴五回というベテランで、鮫島よりふた周りも年上だ。
「この、払わなければミサイル攻撃するという恫喝が……」
榊原国交相がためらいがちにいった。
「これは恫喝ではなく、宣戦布告です。かれらが強気なのは深海棲艦がいることです」
元帥がはっきりといった。
「外務大臣。元帥の言う見解はいかがですか?」
如月官房長官は尋ねた。ここにいるだれもが外務省の能力を疑っているのだが、口に出さないわけにはいかない。
「確かに言われるとおり、彼らが強気なのは深海棲艦がいるからです」
大州外相は珍しくきっぱりといった。
「北東アジア課の分析では、これはハッタリではないと考えています。むしろ我々に圧力をかけ、精神的に追い込むのが狙いだと思います」
外務省にしては珍しく正解だなと、未席に控えている矢島防衛省長官は思った。むろん元帥たちも同じだが。
彼らは日本を叩きたくて、いや、滅ぼしたくて仕方ないほうが正しい。
アメリカの支援、シーレーンが断たれたいまが、絶好の機会であることは子供が考えても分かる。
安藤首相は例によって腕組みをして、沈黙を守ったままである。
そのようなとき、彼の頭は超高速で回転しており、誰かが声を掛けたときは発言するのではないかと秀真は思った。
「首相、外務省はこのような見解ですが、いちおう特使を派遣して、賠償金で和解する方策をはかったらいかがでしょうか?」
塩島経産相がいった。
秀真の読みどおり、そのとき安藤の目はかっと見開いた。オールバックした頭が、そのとき逆立ったかに見えた。
「わが国はそのような要求には応じない……理不尽な金の支払いと条件などしない」
きっぱりと言う。
「しかし総理、彼らは本気だと思います。支払いを拒否すれば、やつらは本気でミサイルを撃ち込んでくるでしょう」
「うむ。それは分かっているが、ここが正念場だ。元帥たちが懸命に戦っているのに我々が弱音を吐いてどうする。我々も元帥たちの期待に応えなければならないときだ。
いちど譲歩すれば際限なく譲歩しなければならん……榊原君。都市住民の避難の見通しはすこし立ったかね?」
安藤が聞いたのは、国交省が主管となって、いざとミサイル攻撃があったときの避難計画を練っているからである。
「はあ、基本的には地震被災者の対応プランをたたき台にしておりますが、地震と異なるのは、地下が使えるということです。警報が鳴った場合は東京・横浜の場合は極力ちかくの地下鉄構内、名古屋・大阪・博多の場合は地下街に逃げ込むように指導したいと考えております。
とくに東京の大江戸線はきわめて深く掘られていますので、シェルターとしては有効だと考えております。
また化学弾頭に備えて、ガスマスクは大量にこれらシェルターに備蓄する予定です」
余談だが地下鉄がシェルターとして使われるのは、今に始まったことではない。
冷戦のさなか、ソ連のモスクワでもきわめて深い地下鉄が掘られ、核シェルターとして使えるよう様々な物資も備蓄された。現在では一部の核シェルターが公開されているが、未だに未知数であり、一説では1000ヶ所以上ともいわれている。北京でも広大なシェルターが構築された。
いっぽうアメリカでは、公共のシェルターはあまり考慮されなかった。家族単位に入れるシェルターは大いに売れた。
「うむ……それぐらいしか手立てはないということか」
「はい、これは地震の際も同じことでして、新幹線や高速道路を移動中の車については手の打ちようもありません。とくに海抜ゼロメートル地帯は浸水がひどく、数年前に起きた東日本大震災がこれを証明しております。この場合は地下鉄が使えませんので、今回は地下鉄が使えるだけでもマシだと思います」
大都会は自然災害には無力である。マグニチュード8クラスの地震に襲われた場合、東京では数百万単位の死傷者が出るといわれている。あまりに過密化しているので、手の打ちようがない。
「……すると、我々は深海棲艦だけでなく、連邦共和国との戦争に備えなければならんということですか?」
鮫島は震えた声で尋ねた。安藤はきっぱりうなずいた。
「そのとおりだ。理不尽な恫喝には屈せぬ。その原則は今までもの閣議になんども確認したはずだ。……矢島君」
安藤は防衛省長官に向いた。
「秀真くんがかつて考案した作戦『オペレーション一〇九』ことネオ・オペレーション一〇九の準備は進んでいるかね?」
本来は対朝鮮半島紛争のコードネームであったオペレーション一〇九を改めたものであり、ふたたび採用されたのでネオが付くのはそのためである。なお当初は新人提督でもあった秀真が考案した計画である。
その驚くべき計画内容とは、米軍やロシア軍のような長距離大型戦略爆撃機をなおかつ大量に持ち、来るべき日に備え、当時は仮想敵国だった特アと戦うためであり、日本の戦力として、相手を黙らせるための抑止力として立案していた。
しかしこの反日三ヶ国は消滅し、いまは深海棲艦たちの重要拠点と最前線基地などを空爆するための計画に変更になったが、さほど問題はなかった。
敵機が迎撃できない高高度を飛行し、敵重要拠点を精密爆撃、さらに敵の資材を枯渇させるだけでなく、敵の戦意を削ぎ、心理的に追い詰めるというものだ。
空母や核兵器同様に、これも戦略上必要不可欠な存在として抑止力として必要なのだが、言うまでもなく日本がもし戦略爆撃機だけでなく、前者も保有しようとするならば、当然多くの者たちがこれを反対していた。
その多くは中岡を含むブラック提督やかれらを味方する売国奴、自称平和主義者のプロ市民たちの仕業であった。
かれらの恫喝や妨害などにも負けず努めたが、秀真の懸命な努力も空しく辛うじて賛成してくれたのは安藤首相を含め、杉浦や元帥、郡司、古鷹たちといった少数のものたちしかおらず、かれの計画は頓挫してしまったが……
しかし今回は安藤や杉浦、元帥のおかげでふたたび採用されたのだ。
「はい、陸海空三軍、彼女たちと協力して、できるだけの準備はしました。MDについては米軍との合同訓練を積み重ねてきましたので大丈夫だと思いますが……ともかく実行しなければ分からりません」
「うむ。諸君の健闘を祈っているぞ」
「そのネオ・オペレーション一〇九だが……」
秋葉法務相が尋ねた。
「連邦のミサイル基地に対する戦線攻撃のプランはないのかね?」
矢島はかぶりを振った。
「残念ながら、我々は連邦に届くような爆撃機をもちません。連邦までは我が空自の空中給油機で距離を延ばせば届きますが、例え空爆に成功したとしても圧倒的な打撃力不足で基地を壊滅すると言うわけにはいきません」
「矢島長官の言うとおり、我が海軍と海自も同じく、海自潜水艦のハープーン、また彼女たちや護衛艦が連邦沿岸に接近して砲撃したとしても、深海棲艦と連邦海軍の妨害はべつにしても目標を壊滅させることは無理でしょう。
本来ならばトマホーク・ミサイルを使用すればいいのですが、それを搭載した我が護衛艦と米海軍筆頭とする多国籍巡洋艦も少数なゆえ、アメリカとの支援が断たれたいまは、本土防衛用として温存しています」
元帥がいった。
「そりゃ、困ったことじゃな」
秋葉はため息をついた。
「……まったくアメリカさんの支援が断たれたのは痛い」
誰も答える者はおらず、会議は終了した。
元帥や秀真たちも自身の鎮守府に帰ろうとしたとき、安藤総理は彼に話し掛けてきた。
「もし時間が取り戻せるなら、無理をしてでも秀真くん、キミの提案した計画を通すべきだった……
あの時は優柔不断なゆえ、オペレーション一〇九を台無しにしたのは、すべて私の責任であるのだから……」
酷く後悔していた安藤に対して、秀真は短く首を振った。
「いいえ。安藤首相のおかげでいちどは破棄されたオペレーション一〇九が復活したことに、私はとても感謝しております。私もできる限り連邦の好き勝手にさせぬよう全力を尽くし、必要とならば、私がこの身を犠牲にしてでも戦います」
「うむ。……だがキミたちは今後の日本を担う義務があるんだ。それに死に急いではならない。
また何か困ったことがあったら私にいつでも連絡しなさい。元帥ほど上手くはいかないかもしれないが、できる限りキミたちの力になろう」
「「「総理の支援に感謝いたします」」」
秀真たちは敬礼し、各鎮守府に帰投した。
秀真の戦略思想が『東の太陽 西の鷲』の登場人物『武部鷹雄』に似ている?
心配いらないわ、武部少佐のように狂気じみた戦略航空主兵主義者ではありませんので(加賀さんふうに)……
今回は前書きのようにこうしてリメイクにも関わらずに、楽しく読んでくれる同志たちに感謝しております。
では長話はさて置き、次回は皆さん大変長らくお待たせしました。
ついにあの人が秀真の前に出現します。
彼が現われた理由、それは日本の危機を救うためであった。
そして未来人が用意した超兵器は、かつて日本が計画していた巨人機『富嶽』だった!
アニメのような次回予告でしたが、次回もお楽しみを!
それでは第十七話まで、ダスビダーニャ(さよならだ)。