超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》   作:SEALs

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お待たせしました。

では予告どおり、あの人がついに秀真の前に登場します。
いつも通りですが、今回もまた一部変更している部分や台詞もありますがお楽しみを。

長話はさて置き、本編であります。

どうぞ!


第十七話:未来から来た男

「提督。少し落ち着いた方が……」

 

「すまない古鷹。だが、こればかりは……」

 

秀真は自身の鎮守府、古鷹に心配されながらも深刻な表情を浮かべて執務室を歩き回っていた。

 

三日前、ふたたび意気阻喪させるメッセージが届いた。

もし日本が深海棲艦の基地をふたたび攻撃すれば、核ミサイルで報復するというのである。

これは駄目押しのようなものだったが、しかし連邦は本気であることはあきらかだった。

連邦の戦略はまず深海棲艦と戦わせ、日本がいいかげん消耗したときに、強大な連邦軍が出て行って、侵攻にかかるという筋書きだろう。

 

少なくとも沖縄を占領すれば、日清・日中戦争以来の日本への報復になると考えている。

中南海もそう考えていると推測する。

 

国内では騒動が起こり、反戦デモが吹き荒れた。

戦前でもアメリカとの戦争を反対していたのにも関わらず、某新聞記者らは一団となって、戦争をしない東条英機氏や軍部たちを徹底的に叩き、自国民ですらも嘲笑うかのように巧みに騙して、彼らを扇動した。それを知らずに扇動された国民は操り人形といってもいいほど、まさに手のひらを踊るピエロでもあった。しかし終戦後は多くの者たちは手のひらを返して、連合国側に寝返り、そして首相や軍部たちなどに強制されたという始末だった。

その多くの扇動者の子孫に、かれらを模倣した若者たちは、いまの日本を懲らしめたい思いか、国外から脱出し、我が身の可愛さがゆえに連邦の兵士に志願した。自分たちが使い捨ての兵士になっているとも知らずに……

 

これがきっかけに安藤内閣の支持率は、30パーセントまで急落した。

しかし少しでも理性のある国民は、このような事態が到来することは分かっていたはずだ。

安藤首相はテレビに出て演説し、かの有名なウィストン・チャーチルのような演説と、ジョークを混じり、国民を勇気立てた。これのおかげなのか浮き足立っていた国民を落ち着かせることができ、支持率も上昇に転じた。

だが問題は、すでに連邦共和国からの要求をはねのけてから三日の時が経っている。

連邦国ミサイル基地が、ノドンやテポドンに燃料を注入し始めれば、アメリカからの警告は入ることになっており……これは本土に撤退した太平洋軍司令部から座間キャンプに通じている光ファイバーでもたらせることになっていた。いまのアメリカが支援できるのはこれぐらいだった。

 

連邦の沈黙がかえって不気味である。猫がネズミを焦らすように日本に恐怖を与えて楽しんでいるのかもしれない。

 

三日前に行なわれた緊急閣議に出席した秀真は、ふたたび採用されたネオ・オペレーション一〇九のことも考えていた。

 

日本に戦略爆撃機があれば、敵の重要拠点をたたくのはたやすいのだが……

 

しかし、あいにく日本は米軍やロシア軍が保有する戦略爆撃機を1機も持っていない。

また爆撃機の代わりに虎の子であるF-15やF-3『心神』を戦闘爆撃機として使用することも可能なのだが、敵基地に対する打撃力不足なのは明らかである。ゆえに実行しようとするならば妨害され、作戦自体失敗に終わる可能性が非常に高いからだ。

 

ひとりで追い詰められたように悩んでいた時に、彼の傍にいた古鷹は名案を立てた。

 

「提督、何か甘いものでも食べましょう。甘いものを食べれば頭も冴えるとかよく言いますし」

 

古鷹の意見に賛成だと、秀真はうなずく。

 

「ありがとう。じゃあタピオカプリンと小腹が空いたからサンドイッチと、あと飲み物は温かいコーヒーを頼む。

古鷹も何か好きなものを頼んでも良いから。それから……」

 

「それから……?」

 

「……後ろで隠れている青葉たちにも伝えといてくれ、俺の奢りだからと」

 

「ふふふ。はい、分かりました」

 

秀真の頼みに古鷹は了解と敬礼し、執務室を出ることにした。

外からは青葉たちも嬉しそうに、はしゃいでいる声が聞こえた。

気分が悪いときは、みんなでなにか甘いものでも食べれば、不機嫌さも吹き飛び、思考も落ち着く。

 

「うーむ。ネオ・オペレーション一〇九が駄目なら他の作戦を考えなければ……」

 

秀真がうめいていた時だ。

すると部屋の温度が急激に下がり、靄のようなものが部屋の一隅に湧き出たかと思うと、だんだんとそれは人の形になったのである。やがてその姿を現した。グレイのスーツ、グレイのシャツ、グレイのネクタイ、グレイの靴という灰色づくめの男、顔立ちは同じ日本人だが、そうでもないとも言え、どこか人種を超越したようにも見えた。

 

秀真は思わず幻覚だと思い、目を擦ったが、現実である。その男は確かに存在していた。

次に妙な事に気づいた。机に置いているデジタル時計の秒針が止まっている。

秀真は手首のGW-7900も確認する。先ほどと同じように秒針も止まっている。

 

「突然現われて、失礼します」

 

驚くべきことに灰色づくめの男は、秀真の正面に立つと口を開いた。

流暢な日本語――だが、まるでコンピューターのように合成された音声にも聞こえた。

もしかしてこの男は精妙に作られた人間型ロボット、つまりアンドロイドではないか、と言う唐突な疑問を提督は応じた。秀真は架空戦記とSF小説に読みふけていたため、この連想を浮かんだ。

 

「……キミは何者だ。それにどこから現れた?」

 

秀真はごく当たり前の質問を発した。

 

「信じがたいでしょうが、わたしは未来の日本人なのです。とは言ってもあなた方のいる、この日本の延長上のある未来からではなく、別な次元にある日本からですが……それはこの世界とそっくりですが、微妙に異なった世界です」

 

「つまり、多次元世界の別の日本だと言うのか……」

 

彼の答えに、灰色服の男はニッコリした。

 

「その通りです。あなたは科学的要素がおありのようですね、アインシュタイン博士の学説も御存じのようですね」

 

「いや架空戦記とSF小説によく出ていたから、知っているだけだ」

 

秀真が言った。

 

「ふむ。そうですか。しかしこれはフィクションなんかではなく事実なのです。

その証拠にこの私も次元の壁を通り抜けて、ここに現れました。時計が止まっている事にお気づきですか……

未来の科学力を示すために、わたしが時間を止めたのです。それに邪魔が入るとまずいと思いまして」

 

「ふむ。どうしてだ?」

 

「なぜならば、わたしが話すことは突拍子的もないものだからですよ。まずあの方とあなたの耳に入れた方がいいと思いましてね…… まず、わたしのことは灰田と呼んでもらいましょうか」

 

灰色づくめだから灰田か、理屈は合っていると頷き、納得した。

 

「その話しと言うのは……?」

 

灰色づくめの男、灰田は語り始めた。

 

「あなたがたの日本が窮地に陥っていることは重々承知しています。我々はほかの日本の歴史を全てモニターしておりますのでね。こちらの世界の日本は極めて不安定ですな。

その状態は増加したブラック鎮守府の提督たちが引き起こした挙げ句、彼らは秘かに謀反を企て、深海棲艦と手を結び、さらに用が済み次第は彼女たちを処理し、彼女たちから貸与された軍事技術を利用し、世界を制覇しようと目論んでいます。かれらは元帥との間で、長年交わされていた契りを踏みにじり、一方的に反旗をしたのです」

 

「やはり、そうだったのか!」

 

秀真は愕然した。

これに新たな疑問が解消したとの爽快さを覚えた反面、次の瞬間、怒りも覚えた。

元帥と艦娘たちとの約束、暁の水平線に勝利を刻むことを平然と忘れた挙げ句、世界制覇のために敵側に寝返ったとは、それほど頼りにならない身勝手なブラック提督たちは、かつて存在していた特アとなにも変わらない。

 

「その情報に偽りはないか?」

 

灰田はうなずいた。

 

「われわれは常に世界中の情勢をモニターしており、全ての政治的変化も把握しています。……だからわたしの言うことはお信じなったほうがよろしい」

 

彼の言う事ももっともだ。なにせ次元の壁を越える科学力もあれば、この世界の情勢すら把握することは容易いことだ。

 

「分かった、灰田。キミの言う事を信じよう。だがキミは何をしてくれるのかね?」

 

「わたしはあなたがたを助けるために、ここに参ったのです。この苦境に陥った原因は、つまり理由の一つは軍事力の欠如ですな。艦娘だけでなく通常兵器の生産も抑えられ、さらに彼らの謀反のため戦力は割られたために対抗すべきもない。これは事実ですな」

 

図星。痛いところを突かれた秀真はうなずいた。

 

「……黙っても仕方がないが事実だ。情けないことに……」

 

「いや、ご自分を責めることはありません。これはいわばこの国がそのような選択肢を選んだことですから、どうしようもないのです」

 

まあ、そうなるなと言った表情をする秀真に、灰田は続けた。

 

「しかし、われわれの援助でいまの状況を一転させられます。わたしが私の世界から、強大な軍事力を持ってきて差し上げましょう。それは一度に逆転させられる秘密兵器です……」

 

「秘密兵器?それはなんだ……?」

 

秀真は興味を抱き、灰田にその秘密兵器を尋ねた。

 

「あなたは、かつて太平洋戦争当時に『富嶽』という巨人爆撃機が計画されたことをご存じですか?」

 

秀真はうなずいた。少年の頃からそして今でも“軍事オタク”ともいわれており、富嶽のスペックも諳んじている。

 

「もちろん知っている。中島飛行機の創設者である中島知久平が立案した『Z飛行機計画』に書かれていたターボチャージャー過給器付5000馬力エンジンを6発搭載した大型長距離戦略爆撃機。与圧され1万2000メートル、成層圏を飛行して直接米本土を攻撃可能な飛行機として計画されていた。全長45メートル、全幅65メートル、爆弾搭載量20トンまたは対艦攻撃用の航空魚雷20本を搭載、最大速度は780キロと言った、当時の米軍が使用した戦略爆撃機B-29をも上回るほどの巨人機。

しかも驚くべきことに中島知久平はこの富嶽を三種類ものバージョンを計画していた。

爆撃機の他にから200人の完全武装した兵員を空輸できる輸送機型に、7.7mm機銃多数を胴体下に装備、または200門もの20mm機関砲を下向きに並べた掃射機型、今でいうガンシップの走りを考えていた。しかし実現までに解決せねばならない諸問題が山積し、軍需省および陸海軍が採用された時点では遅すぎたため、富嶽計画は中止となった」

 

「そのとおりです。もしこれが実用していればアメリカ本土は大打撃を被り、戦争の行方はどうなっていたか分かりません」

 

「……確かに、だがこれは夢物語に過ぎない。当時の日本にはそんな巨人機を造れるはずはない。大鳳たちが装備する零戦の後継機『烈風』に、『震電』や『天弓』などですらも苦労していたのに……」

 

「おっしゃるとおりです。しかし、われわれは歴史を逆転させられます。

この富嶽をジェット化し、なおかつステルス化する。それも中途半端なものではなく、完全にステルス化し、敵のレーダーに全く引っかからないようするのです。それを200機、こちらの日本に持ってきて差し上げます。

われわれとしてはこちらの日本が、一方的に深海棲艦とブラック提督たちに叩かれるのは忍びないので」

 

秀真はこの突拍子のない話しに呆然とした。無理もない。

ステルス技術と言えば、アメリカが突出している。いわばアメリカの特許でもある。

世界初のステルス攻撃機F-117ナイトホーク、世界最強の戦闘機F-22ラプターにF-35ライトニングⅡを思い出す……これらはRAMと電波吸収剤を機体に張り巡らせているのだが、しかし100パーセントがステルスではなく、レーダーの性能と気象条件によっては探知される場合もある。また爆撃機B-1の後継機、B-2爆撃機も同じくステルス化されている。巨大な鏃をしたような異形さ持ち、未来的な機体をした爆撃機だ。ラジコン襲撃事件に襲い掛かってきたB-2の元祖ともいえるホルテン兄弟が開発した全翼戦闘攻撃機『Ho229』をモチーフにしている。

 

彼らだけでなくナチス・ドイツも戦争末期に様々な異形、未来的な戦闘機を開発した。

ハウニブもそうだ。垂直ジェットと推進ジェットを持ち、試験的に飛行を成功している。

噂ではヒトラーとヒムラーが秘かに異星人と交信し、彼らからその技術を貰ったなどとオカルトめいた伝説も残っている。ヒトラーの死だって同じだ。ベルリン陥落時に自殺したのはあらかじめ用意した影武者であり、本人は側近とともにUボートに南極の秘密基地に脱出したなどと数多くのヒトラー伝説の一つに過ぎない。

またヒトラーが暮らしていた地下壕を占領したソ連軍は血眼になって、ヒトラーと妻のエヴァ・ブラウンの死体を捜していたが見つかるはずもない。

服毒自殺後、二人の死体は親衛隊員によって大量のガソリンを掛けられたのち、焼却処分をされており、何一つ証拠すら残らなかった。

しかし粛清をおそれたジューコフはそこらにあった適当な死体を引っ張りだし、これこそヒトラーの死体だとスターリンと連合軍に主張し、双方を納得させたのだ。

ただし現在では、ヒトラーの死体など最初から存在しなかったのだと唱える者もいた……

 

それはともかく、灰田はジェット化され、なおかつステルス化した富嶽をこちらに貸与してくれるのか……

 

「そのとおりです」

 

秀真の心を見透かしたように言った。灰田はひとの心を読み取る能力を持っているらしい。

そして再び富嶽について話した。

 

「これは爆弾50トンを積め、アメリカのB-52爆撃機と同等か、むしろこれを凌ぎます。

八発ターボファン・エンジンによりマッハ1を超えますので。しかも爆撃機だけでなく、中島知久平が考案した掃射機バージョンも付け加えましょう。これはまさにガンシップ。20mmバルカン砲を100基、機体の下面にびっしりと並べています。むろん、リモコンで撃てますし、自動ターゲット追尾装置を持たせます」

 

自分は夢でも見ているのかと思い、頬をつねった。

 

「むろん、わたしの言う事はすぐに信じられないのは当然です。

また他人に話しても信じてもらえないでしょう。ですから、現物を一機こちらに持って来て、まずデモンストレーションさせることにします。

今から12時間後に札幌の新千歳空港に着陸させますので、滑走路を開けておいてください。そこに安藤首相と政府関係者、航空専門家、元帥、他の提督たちなどを待機させておいて下さい。百聞一見にしかずと申しますな」

 

灰田は微笑した。

 

「どうして、新千歳空港なんだ?」

 

「横田あたりでもいいのですが、深海棲艦たちの監視からはなるべく遠い方がよろしいでしょう。

実物を見ればあなたがたはきっと納得し、わたしの言葉が嘘ではないことを信じるでしょう。そのとき、この国の未来は別の方向に走り出します。それともうひとつ、時間稼ぎのために連邦共和国には先ごろの返答を翻して、賠償金を払うことを考慮しつつ、無条件降伏を考えていると安藤首相にそうお伝えていた方がいいでしょう。

それでは手配をよろしく、明日またお会いしましょう。

ただし、わたしの姿はあなたとあの方以外には見えないようにしますので、その点よろしく。誰にもでも見えるようになると、むしろ困難しますのでね」

 

灰田はそういうと、後じさりしながら再び灰色の靄に包まれた。いつの間にか、その姿は消えていた。

 

秀真は夢から覚めた者のように目をしばたたいた。

しかし灰田が消えたことにより、嘘ではない証拠に、ふたたびデジタル時計も動きだし、腕時計の秒針も動き始めた。




漸くと言いますか、ついにあの人こと灰田(ミスターグレイ)が登場しました。
もはや連邦国と深海棲艦たちにとっては終わりの始まりでもあり、そして主人公たちの反撃準備が始まりでもあります。正しくはもう少しですが。

では切りが良いところで次回は、灰色服の男こと灰田が未来から持ってきた富嶽のデモンストレーションであります。
こちらも前作同様と同じく事情により前編・後編に分けますのでお楽しみを。

それでは第十八話まで、ダスビダーニャ(さよならだ)。
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