超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》 作:SEALs
それでは予告どおり、後編であります。
いつも通りですが、台詞なども一部変更している部分がありますが、最後まで読んでいただければ幸いであります。
それでは、本編であります。
どうぞ!
次の瞬間、現実が動き出した。
一同は興奮した面持ちでバスから降りると、新富嶽に群がった。
胴体のハッチも開いていたので、ラッタルを下ろして、入ることもできる。
興奮しきった子供のように機体を調べまわる専門家たちに次ぎ、古鷹や他の艦娘たちを、安藤、元帥、秀真、郡司は……前者は苦笑し、後者は微笑みながら見守っていた。
閣僚たちは明らかに興奮していた。まだこんなことが起こったのが、信じられなかった。
「ふむ。その未来から来た日本人・灰田というのは、これを200機もこっちに送るという約束をしたのか?」
ふたたび演技をする元帥に、秀真はそれに合わせるように語り始めた。
「その通りです。これがもしB-52と同様の性能で、200機という大規模な兵力に、それだけの攻撃力があれば……深海棲艦と連邦軍の合同基地を壊滅することが可能でしょう」
「うむ。これが200機も用意され、敵の重要拠点に大打撃を与えることができるとは、なんとも心強いな。
まさにそのために彼は……灰田という名の人物はこれを送ってくれたのか……しかもステルス機能を持っている。
それについてはレーダーを使ってテストしてみなければならないが……」
「どうかしましたか、元帥?」
「これだけあると頼もしいが、肝心のパイロットが少ないのが痛いな。空自の少数精鋭主義が仇となったな……
しかも、一部の陸海空三軍などのパイロットたちが甘い勧誘に惑わされて、連邦軍側に寝返った者たちもいる。
ただでさえこの巨大爆撃機を操縦するほどの人数に余裕はないのに……」
「うーむ、困りましたな……」
ふたりが見事な演技をしていたとき、古鷹はある人物たちに気づいた。
「あれ?いつの間にパイロットさんたちが……」
彼女の言う通り、6名の兵士たち、爆撃機クルーたちがその場で待機していた。
これに気づいた一同はいつの間にと驚いたが、元帥と秀真はかれらに驚かず微笑した。
そう、灰田が時間を止めている間、先ほど教えてくれたクローン兵を用意しておいたのだ。
彼らが現われると、元帥は「あとは頼んだよ」と秀真の肩を軽くたたき、秀真はそれに応えるように説明をはじめた。
「彼らは灰田が用意しておいたパイロットたちです。全員が同じ顔、つまりクローン兵であります。
灰田がパイロット不足を補うため、われわれのために用意しておいたのです。なお左胸に佩用している金色の勲章がついた彼が、マツダ少佐であります」
秀真が言うと、マツダ少佐以下、複製兵士たちは敬礼した。
灰田が言うには全員がマツダのクローンであり、全員が超能力をテレパシー、つまり思念を交換する能力を持っており、無線機などは必要ないと言われる。ただし灰田は、今はややこしくなるから話さなくてよいと言われた。
ただでさえ新富嶽にも言えることだが、これ以上に混乱させてはいけないと気遣ってくれたのだろうと思われる。
「ふむ、なるほど。まさに至れ尽くせりだな…では早速」
安藤はラッタル・カーを呼んで、新富嶽のコックピットに横付けさせた。
各専門家たちのチェックが済み、そしてマツダ少佐たちに北海道の日本防空圏沿いに飛行するよう命じた。
この命令を聞いたマツダ少佐以下、複製兵士たちは了解するなり、すぐに新富嶽に搭乗した。
安藤と元帥と秀真たちは管制塔に上がり、新富嶽に乗り込んだマツダ少佐に交信した。
「飛行は大丈夫なのか?」
『問題ありません。では、これからエンジンを始動させます』
ターボファン・エンジンが点火し、その轟然たる音が管制塔のなかまで響いてきた。
『これより離陸します』
灰田が言うには最大離陸速度はB-52同様で、時速500キロだということだ。
「よろしい。高度8000メートルまで上がり、レーダーサイトの外にいったん出て、その外側に沿って飛んでくれたまえ」
『了解しました』
マツダ少佐が答え、かれが操縦する新富嶽の巨体はゆっくりと動き出した。
いったん滑走路の端まで行き、そこまで旋回してから滑走に移り始めた。次第にスピードを上げ、耳を聾する轟音とともに機体はふんわりと浮かび、巨体に似合わぬスピードで上昇すると雲間に消えていった。
日本沿岸には24基の防空レーダーがあり、そのうち6基には北海道に集中してある。
稚内の第18防空管制群、根室の第26管制群、網走第28管制群、奥尻の第29管制群、襟裳の第36管制群、当別の第45管制群がある。北海道が重視されているのは、かつてソ連空軍(現:ロシア空軍)を警戒していたころの名残りである。いまは日本海側と太平洋側、南方にもシフトしている。
深海棲艦ももちろんだが、新たな脅威として連邦共和国も脅威になるので、これらを忘れないためである。
それらの管制・警戒群については、これから行なわれることを連絡している。
マツダ少佐の操縦する新富嶽は一旦、南下して根室に出て、ぐるりと北海道を一周することになっている。
レーダーサイトの外部に出るから、当然チェックに引っかかる。
それらのレーダーサイトの間の通信は、空軍の用いる周波数で、管制塔と臨時に繋がっている。
―――その結果、驚くべきことが分かった。
各レーダーサイトの鼻面をかすめるように飛行していたのにもかかわらず、レーダーはまったく新富嶽を探知しなかった。
灰田の言う通り、新富嶽のステルス機能が100パーセント働いていることが証明できた。
「こいつは驚いた……」
最後のレーダーサイトからの報告を聞いて、杉浦統幕長が慨嘆するように言った。
「こいつは本物のステルスです。米軍の切り札ともいえるB-2爆撃機『スピリット』といえども、これほど完璧なステルス爆撃機は見たことありません……」
全員が驚愕した。
つまりテスト飛行は成功、完璧な結果で終わったことを知った秀真は微笑し、元帥はうなずいた。
「これならば戦闘機の護衛を付けなくても、敵の奥深くまで浸透できる。両軍が気づいたときには絨毯爆撃を喰らっているでしょう」
「うむ。しかし……この200機を受け入れるためには、まだまだクリアしなければならない問題がたくさんある。
今夜は、それについて話し合わなくてはならない」
灰田もクローン兵たちを配置した後、また今夜現れると約束していたからな。
では次の課題、これらの問題点を解決していこうか。
場所は移り、首相官邸。
テスト飛行を終えた新富嶽は、新千歳空港にある民間格納庫のひとつに収めて秘匿し――厳重な警備を付けてあと、安藤や各閣僚に、元帥と秀真たちはいったん東京に戻り、官邸で必要な会議を行なった。
「まず新富嶽200機と伴い、これを運用する飛行場を急速造成する必要がある。北海道にするのは確定だが、榊原国交相、どれぐらい時間で作れると思う?」
安藤は榊原国交相にたずねた。
「はあ、建築局の専門家とつめて見なければなりませんが、最低一ヶ月は必要でしょう。新富嶽の燃料タンクや整備施設も必要ですし………」
まあ、そういうことになるな……と秀真はうなずいたときだ。
「ふむ、なるほど。そう言う事になるか…… 秀真くん。問題の整備施設について、灰色服の男、灰田は何か言ったのかね?」
安藤が秀真に尋ねたときだ。
「……ご安心ください」
不意に耳になじんだ声が聞こえたので、秀真は振り返ると、後ろに灰色服の男……灰田がたたずんでいた。
「必要な整備部品や航空燃料はすべて特殊なものなので、これらのものは全てこちらが送ります。またパイロットや新富嶽に搭載する航空爆弾なども用意しましょう。そちらは飛行場だけを建造してくだされば結構です」
「うむ。分かった」
この会議の間の時間は、例によって止まっている。
もちろん元帥と秀真以外の人物、ほかの者たちにとっては失われた時間だ。
「ご安心ください。富嶽に必要な整備部品と航空燃料、航空爆弾、パイロットも彼がすべて用意いたしますので、我々は飛行場を建設すれば良いとの伝言が来ました」
秀真が安藤総理達に灰田の伝言を伝えると、矢島防衛大臣はいった。
「それと、富嶽というネーミングなのだが……」
「何か問題でもあるのですか、矢島防衛大臣?」
元帥の問いに、短く頷いた。
「確かに懐かしい名前だが、どうもレトロすぎてピンと来ない。何かもっと相応しい名前があるような名前があるようなのだが……」
矢島の言葉に、他の者たちは頷いた。
秀真も首を捻った。
確かに平成の今日この頃、70年以上の名前は馴染めない。かといって新富嶽という名前もイマイチである。
「諸君は、何かいい代案はあるかね?」
安藤の言葉に多くの者たちが沈黙して、数秒後のことだ。
「……あの安藤首相、よろしいでしょうか?」
この沈黙を破ったのは、古鷹たちだった。
「キミたちは、何かいい代案があるのかね?」
安藤は尋ねた。
「はい、みんなで話し合ったのですが……」
古鷹たちは顔を見合わせ、うなずいた。
「「「「Z機という名は、いかがでしょうか?」」」」
「ほう、どうしてかね?」
「青葉、出番よ」
衣笠は、青葉の肩をポンッと軽く叩いた。
「青葉の情報では、当初『富嶽』はZ機と名づけられた機体から発展したので……つまり最終兵器という意味です。
これこそ新富嶽に相応しいと考えています。これをZ機と命名したらいかがでしょうか?」
青葉の言う通り、当初中島飛行機がまず陸海軍に提出した富嶽の原型、この名称が付けられる前はZ機と呼ばれていた。そこから細かいところが修正されて、最終的には『富嶽』と命名されたのだ。
「うーむ。Z機か」
安藤が唸った。
「確かにこれは最終兵器ではあります。簡潔で覚えやすいし、これで良いでしょうか、安藤首相、元帥?」
秀真が言うと、ふたりは頷いた。
「いい代案だ。諸君も彼女たちの意見はどうかね?」
「ほかに、いい名案があるものはいないかね?」
郡司と木曾、ほかの提督たちにも尋ねたが、意を唱えるものはいなかった。
「ともかく、我々には一ヶ月の余裕が必要だ。その間は深海棲艦と連邦軍による双方の攻撃に万全の対策に努めなければならない。諸君も覚悟するように!」
真剣な眼差しで語る元帥の言葉に、秀真たちは頷いた。
「秀真くんが言った助言、彼の対策案はわれわれに任せたまえ。この責務は、大洲くん、キミたち外務省にかかっているぞ。よろしく頼む」
「ありがとうございます、安藤首相!」
秀真は返答する一方、大洲は顔を青ざめさせてうなずいた。
秀真ではなく、正確には灰田が教えてくれた対策案なのだが。
なにしろ300億ドルはあまりにも大金なので、国債を発行して海外から調達したのでは間に合わず、世界銀行から借りる必要がある。そのための時間が必要だという言い訳を用意してある。
なお、無条件降伏については賠償金が揃いつつ、貴国との調整するとの方針であると伝えることにしてある。
むろん、連邦国に一円たりとも支払う気はないが。
「それと連邦も馬鹿ではない。かれらの衛星は北海道で建設している巨大飛行場に気づくだろう。
またZ機が全機そろえば、当然これらに気づくでしょう。数機ならともかく、全機格納庫に隠しおおせるものではない。不審に思ったかれらが、どう出るかが心配だ」
「我が同盟国である米軍も当然気づくでしょう。彼らの衛星は優秀ですから」
矢島がいった。
「そのときの言い訳も考えておかなくてはなりません」
「いずれ、アメリカには正直に打ち明けねばならないことだろうが、その件に関してはわたしに任せてくれ」
安藤は答えた。
かくして道庁の交渉の末、十勝平野に広大な土地を借りる事となった。
帯平南部に広がる広野であり、畑や牧場となっているが、賠償金を支払って立ち退かせた。
釧路港に広大な貨物船が集結、全国から必要な資材がが運び込まれた。北海道中の土建会社も快く協力してくれた。
灰色服の男……灰田は、元帥または秀真が一人の時にたびたび現れては、必要な打ち合わせをしていった。
帰宅時。
ふたりの憲兵が操縦するUH-60JA--通称『ブラックホーク』の機内では、先ほどの緊張感から解放された秀真は、気分展開に缶コーヒーを古鷹たちと一緒に飲みながら堪能していた。
なお加古はいつも通り、気持ちよく熟睡しており、古鷹は彼女を起こさないように気遣っていた。
「今日はありがとう、みんな。おかげで助かったよ。しかもZ機と名付けるとはさすがだな」
「いえいえ、お礼をいうなら加古に言ってください」
どうしてだと、秀真は尋ねた。
「加古が今日は寝ちゃいけないって言ってたものだから、漫画本を一冊ほど隠し持ってきたんですよ」
古鷹は、いったんコーヒーを飲むのをやめて告げた。
「どんな漫画本だ?」
「これよ、提督」
尋ねた矢先に、衣笠は眠っている加古を起こさないよう、一冊の本を受け取った青葉はその本を秀真に手渡し、それを受け取った秀真はそのヒントになった漫画を見た。
加古が持ってきた漫画は、そのタイトルが『天空の富嶽』だった。
これは確か、むかしネット通販で買ったものだなと秀真はすぐに分かった。
秀真はたまに時間があるときはむかし愛読していた小説や漫画などを読み返し、またそれを古鷹たちと貸し合ったりする。まれに返し忘れたりするときもあるが。
「そうか、今回はみんなのおかげだな。よし、帰ったら俺が何か作るか楽しみにしてな」
機内にいた一同は賛成と一択、秀真の作るご飯を楽しみにしていたのだった。
余談だが帰宅と同時に起きた加古は、秀真から借りた漫画を返し忘れていたためのがバレたため、彼に叱られると思ったが……逆にほめられて、秀真に頭を撫でられたのは別の話である。
今回は新富嶽ことZ機の名称を付けたのは原作の『天空の富嶽』では、権田原危機管理監が名付けましたが、本作では古鷹たちのおかげで新富嶽はめでたく『Z機』と名付けられました。
そして無事何事もなく、灰田さんが用意してくれた現代によみがえった富嶽こと、日本の切り札となるZ機のデモンストレーションが終了しました。
今回はZ機のみだけでしたが、もう少し先ですが、また新しい超兵器も出ますのでしばしお待ちを。
神通「提督、次回予告を…」
おっと、ではそろそろ切りが良いところで次回予告であります。
では次回はお久しぶりと言ってもいいでしょうか、あの悪党大統領が現われます。
また戦艦水鬼さんも現れますので、彼女の内心も注目するといいかもしれません。
次回は今回イベントに出た新しい深海棲艦の子が、ちょっとだけですが現れるかもしれませんので、こちらもお楽しみを。
それでは第十九話まで、ダスビダーニャ(さよならだ)。
神通「ダ、ダスビダーニャです…提督、お疲れ様です。何か美味しいものでも作りしますね?」
ある意味、飯テロかな?これはいい意味ですが……