超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》 作:SEALs
では予告どおり、またまたお久しぶりのアメリカ視点と共に、日本の視点に移り替わります。
そしてまたしても灰田さんが、ある物をもたらしてくれますのでお楽しみを。
では長話はさて置き、本編であります。
どうぞ!
ペンタゴンではやや体調を崩したハドソン大統領のかわりにコンドン副大統領が出席し、国防、国務長官、四軍トップたちとともに、極東状況についての検討会が行なわれた。
ハドソン大統領は日本に派遣した第七艦隊が史実上の壊滅、日本との連携が断たれたうえに、グアムにある陸海空三軍基地、さらにハワイの空軍基地のジョイントベースのパールハーバー・ヒッカム基地だけでなく、停泊していた太平洋主力艦隊などに続き、軍人や民間人を含む多数の死傷者を出してしまったことにより、ショックを受け、体調を崩したらしい。彼だけでなく、多くの者たちにとっては“第二の真珠湾攻撃”ともいわれ、これ以上にない屈辱な出来事といったほうが良い。
話しを戻そう。
ペンタゴンには衛星情報をはじめ、つねに最新鋭の情報が入ってくる。
最新の軍事衛星の解像度はすばらしく、センチ単位で地表を見分けられるから、世界各国での戦闘もまるでテレビの生中継、映画の名場面を見ているようなものだ。
ただし衛星がその上空にとどまっている時間に限りがあるのは、たまにキズだが。
「衛星データの分析では、どうやら連邦が一方的に叩かれたようですな」
ヨーク参謀総長が口火を切った。
「日本は例の北海道に現れた重爆を使って、まずはかつての北朝鮮が使用したノドン基地をたたき、次に深海棲艦と連邦海軍の合同海軍基地と空軍基地を激しくたたきました。
両海軍の80パーセントは壊滅した模様です……連邦の防空システムはまったく役に立ちませんでした。
このことから考えると、この重爆はステルス機だった可能性があります。しかもその破壊力からして少なくとも爆弾搭載量50トン。これを200機所有している可能性があります。
我々はこいつのコードネームを『ミラクル・ジョージ』と名づけましたが……」
「まさに謎だな」
コンドン副大統領がいった。
「日本は重爆など持たなかったはずだ。なぜそれが突然、しかも大量に出現したのだ?……しかもステルス機だと?我が軍の専売特許のはずだが」
ほかの者たちは顔を見合わせが、その問いに答えられるものは誰ひとりとしていなかった。
ただひとり、グレイ首席補佐官は咳払いすると口をひらいた。
「確かに現実的には考えられないことでありますので、これは非現実的な現象ではないでしょうか」
コンドンは顔をしかめた。あまり切れない人物として知られている。
「それは英語かね、もっと分かりやすく言ってくれないか?」
「つまり、超自然的ななにかの出来事が日本において起こったと考えざるを得ません。
日本はわれわれの支援が途絶え、さらに国内にいたブラック提督たちの裏切りなどと数々の窮地に追い込まれました。つまりアパッチの大軍に包囲された騎兵隊のような立場になってしまったわけですな。そこに援軍が現われたのです。これは我ながら大胆な推測ですが、未来の日本人またはエイリアンが日本救援のために現れたのではないでしょうか……かれらはもともと神がかった民族ですから」
「なるほど。未来から来た日本人か……」
ケリー国防長官がいった。
「いわゆるタイム・トンネルを通って現われたというのかね?」
「その方法が分かりません。ただしアインシュタインの学説によると未来へのタイムトラベルは不可能ですが、過去へのトラベルであれば可能だそうです。
しかし過去に介入するといわれるタイム・パラドックスが生じて、今この瞬間にも我々の現在は変わっているはずですので、この日本人はいわゆる多次元世界の別な日本からきたのかもしれません。だとすれば辻褄が合います」
「なるほど、キミは若い頃に熱心にSF小説でも読みふけていたようだな」
コンドンは皮肉をこめていった。この男は自分に理解できないことは無視するタイプ人物であるとも知られている。
「いや、副大統領、グレイ補佐官の言っていることは確かに突飛ですが、理屈にはかなっています」
マーカス国務長官が助け船を出した。
「未来から日本を助けにやって来た日本人であれば、超越的な科学力を持っているはずですからステルス重爆を多数つくりだすことは簡単でしょうし、多次元世界からやって来たとすれば、タイム・パラドックスが起きないことも理解できます。
かの有名な探偵シャーロック・ホームズの言葉に、いかにあり得ないことでも、ほかの可能性をすべて取り除くとそれが真実だということがありますが、今回の出来事も、これに当てはまるのではないでしょうか」
うむ、とコンドンは生返事をした。
「確かにそれでいちおう説明がつくな。この件で大統領が納得するかどうかは不明だが」
「大統領には私がお話しします」
マーカスがいった。
「よろしい。ともかく未来人の助けで、日本はステルス重爆200機を手にすることができたとしよう。それでどういう事になるのかね?」
コンドンはいった。
「南シナ海でも海戦があり、深海棲艦と連邦艦艇が数隻沈められという情報が入っています。なおかつ原潜の一隻と深海棲艦の潜水艦クラスが数隻行方不明になっているそうです。これだけのダメージを受けたことから考えると、連邦は当然、核ミサイルで反撃すると考えられます」
ヨーク参謀総長がいった。
「彼らはとりあえずミラクル・ジョージの基地を狙うでしょう。かつての中国が複数打ち上げた偵察衛星を利用しており、当然その場所も掴んでいるでしょうから」
コンドンはうなずいた。
「当然の論理的帰結だな。しかし日本のMDはその場合役に立つのかね?」
「阻止できる確率としては、50パーセントを下回るでしょう。MRBM、つまり中距離弾道ミサイルであれば中間飛行時のスピードはマッハ2から3、最終落下速度はマッハ5以上に達するでしょうから、JGSDF(陸上自衛隊)がPAC-3とMIM-23を、つまり我が軍同様のパトリオット・ミサイルとホークミサイルをずらりと並べたとしても、すべて撃墜するのは無理でしょう。なお戦艦や巡洋艦クラスの艦娘たちが装備している三式弾や高角砲を使用したとしても結果は同じでしょう。
しかも連邦軍が使うのは新型も液体燃料ではありますが、基地も移動基地でありますから、反撃も困難でしょう」
「うむ。すると日本はまたもや核の洗礼を受けることになるか。まあ我々には対処できないから仕方ないが」
コンドン副大統領は瞑目した。
「ミサイル落下地点にいる日本人と艦娘、我が軍および多国籍支援軍たちに、神が恩寵を垂れんことを」
ただ日本が無事なのを祈るだけしかできなかったのだ。
ペンタゴンで検討会をしていた頃、日本はどうしていたか視点を移す。
東京・霞ヶ関の首相官邸のオペレーション・ルームでも、今回の戦いの、いわば戦訓研究会が開かれていた。次回作戦の詰めが含まれていた。
この戦訓研究会というものは、大きな戦闘のあとには必ずやらなければならないものであり、先の大戦でも日本軍も必ずやった。
海軍も運命の分け目であったミッドウェイ海戦の敗戦のあともこれをやったが、人事的にはなにも変わらなかった。
海軍はむかしから家族主義で互いに庇い合う体質があり、驚くべきことに赤城・加賀・蒼龍・飛龍の四隻の空母を失って完敗した司令官と幹部たちを更迭しなかったのである。
南雲忠一中将とその幹部たちはそのまま残り、南太平洋で一矢を報いるが、英米海軍では考えられないことである。
両軍は信賞神罰、ヘマをすればただちに更迭されるのが当たり前だった。
真珠湾攻撃を受けた太平洋艦隊司令官のハズバンド・キンメル大将は、ただちに予備役に編入され二度と浮かび上がることはできなかった。情報を故意に隠されて、適切な防衛措置ができなかったにもかかわらずである。なおキンメルは、ルーズベルト大統領の敵に先手を打ったせる戦略をスケープゴートにされたのだ。
またサンゴ沖海戦では善戦した『海賊のジャック』ことフランク・J・フレッチャー中将も、ガ島ではおよび腰だったと批判されて更迭されてしまった。
日本軍の身内に甘い体質は陸軍でもそうであり、ノモンハン事件においても主役を演じた服部卓四郎大佐と辻政信も一個師団を失うという敗戦だったのにもかかわらず、たいしてお咎めは受けなかった。戦後は辻と共に「昭和の愚将の筆頭」として挙げている。
なお最近の研究では辛勝ではあるが、ソ連軍に大打撃を与えたという資料も見つかっている。また史上最悪の作戦と言われるインパール攻略作戦において、陸軍史上初めての師団長による抗命をおこなった佐藤幸徳中将も軍法会議にはかけられていない。乱心の疑いもありとして、予備役に入れられただけである。
無能と言われる牟田口廉也中将も同じく無謀な作戦を下し、多くの部下を無駄死にさせたのにもかかわらず、予備役に入れただけの軽い処罰しかされなかった。
話しは戻そう。
オペ・ルームは、首相以下、国家安全保障委員会のメンバーが集結していた。
むろん統幕長、情報本部に続き、灰田が用意してくれたワープゲートを利用して帰投したばかりの元帥・秀真・郡司もいる。なお、三人の秘書艦は長門・鳥海・大鯨である。
ちなみに戦闘に参加した古鷹たちは入渠中であり、南シナ海の戦いの疲れを癒している。
「…今回の戦闘は予想外の勝利、我が軍の圧倒的な勝利となりました。すべてあのZ機のおかげです。あれがなければ、南シナ海に展開した我が連合艦隊は、空襲を受けて無事ではすまなかったでしょうし、ノドンもまた日本本土に命中していたでしょう」
「元帥の言う通り、灰田が私たちのために用意してくれた未来装備のおかげで多くの深海棲艦や連邦海軍の艦艇も葬ることができました」
「私の派遣した潜水艦の子たちも同じく、連邦の原潜と潜水艦クラスをイムヤたちが多数撃沈しました」
三人の報告を聞いたかれらの秘書艦と同じく、一同はうなずいた。
しかし唯一、杉浦統幕長だけは深刻な表情をしていた。
「……しかし問題はこれからです。思いがけない被害を受けた連邦は、必ずミサイルで報告して来るでしょう。
これは核ミサイルを使う可能性がありますが、今後の、もし戦勝国になったことを考えて、国際世論の出方をにらんで、最初から都市をたたくことはなく、まずZ機の十勝基地を攻撃してくるでしょう。基地の在り処は、衛星で掴んでいるでしょうから」
「しかし、Z機は作戦を終えて帰投したばかりで身動きはとれんだろう」
矢島防衛省長官はいった。
「補給さえ終えれば、空中退避という手もあるはずですが、なにしろ200機もの給油は簡単にはすみません」
「そのとおりです。我々には時間がありません」
矢島がいう。
「つまり、連邦はいますぐにも報復のために核ミサイルを十勝に向けて発射するというのかね?」
如月官房長官がたしかめるように聞く。
「そのとおりです。陸自と各友軍のMD部隊では……」
「如月官房長官、矢島防衛省長官。何も心配することはありませんよ」
秀真は平然と大丈夫だといった。
「秀真提督、いまは大事な時になにを呑気なことを!」
「秀真提督の言う通り、……その心配はご無用です」
聞き慣れない声が聞こえてきたので、全員が振り返った。
壁際に見慣れない男が出現した……灰色のスーツ、灰色のネクタイ、灰色の靴、すべて灰色づくめの男である。
壁を通り抜けてきたかのように、突然そこに出現したのである。
「わたしのことはすでに元帥たちからお聞きおよびと思いますが、灰田とお呼びください」
男が言う。灰色服の男、灰田がほかの人たちのまえに姿を現してのは初めてである。
最初はショックを与えないために元帥・秀真の前に出現した。
それから郡司・安藤・主席補佐官に、そして古鷹たちの前にも現れたが、もはや公然と姿を現してもいい具合だと判断したらしい。
「それできみが、秀真提督の言った……」
如月官房長官がそういうなり絶句した。
「そのとおりです。よろしく。ところでいまご検討中だった件ですが、秀真提督の言う通り、なにもご心配なさることはありません」
灰田は平然といった。
「このことあるを予期して、わたしは十勝基地の上空と周辺をすっぽりと覆うバリアをかけておきました。それが如何なるものであるかは説明してもお分かにならないでしょうから説明は省きますが、一種のエネルギー吸収転送システムのようなものだとお考えいただきたい。要するにこのバリアは核ミサイルの爆発エネルギーをすべて吸収し、別次元に送ってしまいます。むろん中にいる人間にはなんの害も及びません。
連邦と深海棲艦とことを構える以上、核ミサイルに対する必要があります。わたしは当然の準備をしたまでです」
その場にいた者たちは、唖然として顔を見合わせた。
未来人のテクノロジーからすれば、そんなことはなんでもないことなのだろう。
アーサー・C・クラークというSF作家が、中世の人間が現代のテクノロジーを見れば魔法のように見えるはずだと喝破したが、いまの日本人や艦娘たちにとっては灰田の言葉は、それと同じようなものである。
「……すると、敵に日本向けのミサイルを使い切らせた挙げ句、われわれは反撃すれば良いというわけだ」
矢島がそういったときには、すでに灰田の姿は消えていた。
アメリカは今後どう出るかは、第二章で明らかになりますので、しばしお待ちを。
なお秀真たちの秘書艦は好きな子であり、この会議に似合うかなという子たちを選びました。適当な理由でごめんなさい……
では気分を変えて前回も記した通り、灰田さんの魔法であり、もたらした兵器について説明します。
ご存知の方もいるとおり、灰田さんやミスターホワイトもエネルギー吸収転送システムことバリアを供与しています。
航空機がこれに近づくとエンジン不調が生じたり、航空機による機銃掃射や艦艇による艦砲射撃を無効にしたりと、あらゆる攻撃を無効にします。
潜水空母イ2000では人道的な兵器だとミスターホワイトも宣言しましたので……
次回は灰田さんが展開してくれたバリアの威力を知ることができますので、注目すると良いかもしれません。
神通「提督…そろそろ次回予告を…」
おっと、では切りが良いところで次回予告であります。
次回は灰田さんがもたらした奇跡の魔法ことバリアの威力と伴い、連邦視点から最後はアメリカ視点に移り替わり、第一章が終え、第二章に突入しますのでお楽しみを。
それでは第三十二話まで、ダスビダーニャ(さよならだ)。
神通「ダ、ダスビダーニャです…提督、お疲れ様です。では休憩にしましょう?」
やっぱり終わった後の、ロシアンティーは美味いのであります……