超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》 作:SEALs
第二章は予告どおり、最初は連邦視点から始まります。
なお前回は付けていなかった第一章のタイトルと、第二章のタイトルの追加しましたのでよろしくお願いします。
連邦の対日作戦会議ともいえ、国内情勢がよく分かるような話しでありますので、ややダーク的なお話でありますので……お楽しみを。
では長話はさて置き、本編であります。
どうぞ!
第三十三話:火種を消すには……
中南海の軍事委員会主席湯浅の邸宅には、連邦軍の幹部とたちが集まっていたが、沈痛な空気に包まれていた。
湯浅のほかには副主席の忠秀、総参謀長のヨウコウレツ、政治部主任のコウシャクリュウ、そして第二砲兵を含む各軍のトップである。
このうち海軍司令員のチョウキョウエンは、青島基地にいたときに日本軍の謎の重爆の爆撃を受けて戦死したので、ロウハン上将が後を継いだ。
連邦空軍司令員と陸軍司令員、第二砲兵司令員は変わらずに、それぞれキョウシンチン、カクハクユウ、セイシェン上将である。
そのほかに主だった政治委員たちが顔を見せており、なお今回の会議には深海側には期待の新人として新たに戦力として加わった水母棲姫、防空棲姫、駆逐水鬼に、そして新人である三人の補佐として空母棲鬼、戦艦棲姫、軽巡棲姫が付き添っている。
このうちもっとも強力なのは、総兵力およそ160万人(また約200万人とも言われている)を統べる陸軍司令員のカクとかれの補佐をしている港湾棲姫、港湾水鬼、北方棲姫、飛行場姫、泊地水鬼たちもいるが、対日戦争が始まって二ヶ月が経過したいまでも出番はなかった。あったとしても治安維持活動だけだが。
しかし、次の作戦で恐らく要請されるだろうと思われた。
「日本との戦いに手間取っているおかげで、予想していたとおりのまずい事態が起きた」
忠秀副主席が苦りきった顔つきで、口を切った。
「諸君も知らされているだろうが、チベットとウイグルで反乱が起きた。この目障りなゴミ当然の奴らだけでなく、我が同胞とお前たち深海側にも一部だが、我が親愛なる大統領閣下様が築き上げた連邦共和国に刃向かう愚か者、敗北主義者たちが出始めたことだ。
しかも公安には反乱分子をあらかじめ弾圧せよと命じてあったにもかかわらずだ。
やつらの主だった幹部たちはとらえたが、しかし潜伏していた反乱分子が多数いただけでなく、しかも協力し合い、大量の武器も隠匿してあったようだ。
日本と艦娘どもと決戦するまえに、まず国内の火を消さんことにはどうにもならん。
これが燎原の火のごとく、拡がるまえに消さなければならない」
忠秀がそういったのは、連邦国内にはいたるところに暴動が起き、組織内ではクーデター未遂が頻発していたのである。
むろん中岡もこれを危惧しており、裏切り者は見つけ次第に公開処刑した。
また党中央は、日本軍にたたかれたことは報道しなかった。
日本のシーレーンを断ち切り、日本と艦娘たちを日干しつつであるとさかんに宣伝した。
そのほかの小競り合いでも、すべて勝利を収めたと報道した。
党中央は、徹底的に情報締め付けを強化していった。
しかし、昔ならば国民をいとも簡単に騙すことはできたが、いまはインターネットやTwitterにYouTubeなどの時代である。いつの間にか真実がもれてしまう。
貧困層はともかく、都市部内の住民たちは日本軍のおそるべき爆撃機によって、青島、広州、湛江などの海軍基地や内陸部の空軍基地が壊滅したことは知っていた。
日本軍と艦娘たちは不気味なほど強い。その噂が国内から組織内に流れ、国民から党員、そして深海棲艦たちの間でも厭戦気分が急速に広がりつつあった。
騒動を治めるためにはかつての特アのように国民を欺き、すべて日本が仕掛けた陰謀論にしてすり替えるか、または軍を騒動させて武力行使をして国民を黙らせることが一番だが、中岡は独裁者としては後者を選びたいが、血に飢えた男は珍しく前者を選択した。
おそらくは秘書艦である戦艦水鬼、側近、慎重派の者たちの意見だろうと思われるが……中岡は党中央のテレビをつうじて、国民を安心させるために演説を湯浅主席に任せた。
本人も自ら望んでいるとのことだが、大統領命令もだが、なお忠秀副主席が監視しているのだから、無理やりやらされているといったほうが正しいが。
そして湯浅主席はテレビやネット動画をつうじて、国民に語りかけた……
『今こそ、多年にわたり地上の楽園と言われた我が第二の故郷である特アを滅ぼしただけでなく、そして不死鳥のように復活し、あらゆる努力をし、その結晶ともいえる我が連邦共和国をお築き上げた中岡大統領さまを苦しめるだけでなく、ふたたびアジアの侵略者と化している日本軍とそのかれらと結託し、以前として我が連邦共和国だけに飽き足らず、世界中のあらゆる海域において非人道的な行為に、この場ではとても言い切れないほどの極悪非道な行為を平然と繰り返す艦娘どもを膺懲するときである。
貴方たちも我々と同様に、日本に対する報復する機会を狙っているのは承知しています。
親愛なる我が盟友たる深海棲艦たちとともに戦い、我が連邦軍がアジアのリーダーとして、先の大戦だけでなく、現代においてもこの侵略行為を正当化し、一向に反省も謝罪しない愚かな日本軍と艦娘たちの鼻柱をへし折ってやろうではありませんか』
この呼びかけには、大勢の国民がたしかに反応し熱狂した。
しかしそれはいっときのことで、苦戦が伝えられるとともに、その熱狂もたちまち萎んでしまったのである。
各司令員たちは顔を見合わせた。
ふたたび植民地にしたチベットと新疆ウイグルに、国内が最大の火種となるだろうということは、かねてから予測されていたことだった。
かつてこの地域はカザフスタンには、イスラム原理主義テロリストたちが潜伏していた。
中国も警戒はしていたのだが、しかし広い国境線に、峨々たる山岳地帯を完全に警戒することは不可能だ。
原理主義者たちは次第に浸透し、1997年には連続バス爆破事件が起こった。
これは明らかにテロリストが得意とする手口である。
また国境近くに伊寧(イーニン)でも、多数死者が出す衝突があった。
これらはタリバンでなく、他国からのレジスタンスの訓練を受けているらしい。
しかも最悪なことに、チベットでも同様なことが起こっている。
連邦国になった今でもチベットとの関係は複雑な関係である。
もともとチベットは独立国家だが、清朝時代に中国に併合され、ダライ・ラマ13世は清朝の崩壊とともに独立を指向した。
しかし、清朝に代わり政権を握った中国・共産党はそれを許さず、チベットの領有を宣言。
ダライ・ラマ14世に呼びかけて地域自治を行なわせようとしたが、チベットでは宗教弾圧を恐れて、これを拒否した。
中国はこれを待っていたのだ。ただちに人民解放軍を送り、チベット全体を征服した。
このとき犠牲になったチベット国民は300万人から500万人とも言われる。
不幸なことにチベットには自国の軍隊がいなかった。
日頃から日本にいる理想主義者たちは、これらを見て見ぬふりをして、ならず者の特アがやることはすべてが正しく、逆に抗議を言っている良識な知識人には差別主義者といい、領海侵犯を繰り返していることについては島ごと差し上げろと言い、彼らの暴走を押さえるために活動していた艦娘と自衛隊と米軍に対しては、いつも文句ばかりを零している。こういう連中はいちど紛争地に投下させ、非武装でテロリストたちと話し合いをしろといいたい。
さすれば彼らが普段から異常というまで崇拝している憲法9条というものが、自動小銃を持っている者たちのまえで、どれだけ無力なのか、あらためて知るいい機会となる。
そんな哀れなことに双方の甘い言葉に騙されたこのような連中は、いまでは連邦軍と深海棲艦らの良くて陽動部隊、悪くて使い捨ての兵士とされているのが気の毒だが。
話しは逸脱したので戻る。
中国はチベットを占領すると徹底的に宗教弾圧を強め、同化対策を推し進めた。
1965年に自治区となったが、これは名目上のことで、中国は漢民族を大量に送り込み中国化させた。
すでに57年にはラサで暴動が起こり、ダライ・ラマ14世はインドに亡命し、亡命政府を樹立し、世界中に真実を伝えながら、仏の道を貫いた。
しかし20XX年の際に、彼は故郷に帰ることなく、インドで多くの人たちに看取られながら、静かに息を引き取った。
死後、かれの遺体はインド政府とチベット亡命政府たちにより、手厚く埋葬された。
なお、後継者は必要ないと遺言は残したのだが、ダライ・ラマ14世と同じくインドに亡命していたチベット仏教の一つでもあるカギュー派の生き仏カルマパ17世が、ダライ・ラマ14世の意志を受け継ぐこととなった。
普段は温厚なチベット仏教徒だが、荒れる時は荒れる。
中国が滅び、二人の生き仏が返ってくると思いきや、連邦国により踏みにじられた。
この国に生き仏をふたりまで失った国民は荒れ始め、ラサを始めとする各地で暴動およびテロ行為が相次いで起きているとの報告が届いた。
「カク司令員。チベットとウイグルに送った兵力の現在の状況を説明してくれたまえ」
忠秀副主席が尋ねた。
「はあ、ここはいずれも蘭州軍区でありますので、ウイグルには兵力二個師団、チベットには一個師団を送り制圧に務めています。戦車・装甲車・野砲も多数送り込みましたので、空軍の支援もあり、なお深海側は港湾棲姫たちもいますが、あの役立たずよりも我々に任せればまもなく治安が回復されるはずと思います。なお彼女たちは後ほど速攻に更迭しますので、ご安心ください」
カク陸軍司令員は答えた。
その理由は、連邦国の多くは、穏健派の港湾棲姫や北方棲姫たちがウイグル、チベットの民族と仲良くしていたことに対して不満を持っている。
かつての中国様のように痛めつけていう事を聞かせろと厳命したが、争いを嫌う港湾棲姫たちは反対した。
彼女たちの理由は「みんな優しくていい人で、ホッポに饅頭をごちそうしてくれた」や「みんなを苛めるな」などとのことで、この無駄で無意味な弾圧行為に対して、強く反対した。
だが連邦の幹部たちは中国のように弾圧を選び、彼女たちの意見など聞く耳を持たなかった。
これは港湾棲姫たちの意見が正しい。交流というのは戦略上とても有効であることに気づいていない。
かつての日本軍も現地人との交流はしたが、トラブルを起こし、反発を買ったことがある。これに対して連合軍は現地民を上手く使い、日本軍の情報を探るなど数多くの功績を残した。
「本来はこんなことは関わらずはいられないのだ。あくまでも我々の敵は日本と艦娘だけなのだからな」
忠秀が苛ただしげに言ったのももちろんだが、両者を片づけ次第は、深海棲艦も始末しなければならないのだから。
「なんとしても日本をいち早く、艦娘どもを屈服させる作戦を考えなければならない」
「そこでお尋ねしたいのでありますが……」
海軍のロウハン上将がためらいがちに尋ねた。
「例の爆撃機がいると思われる北海道に鬼角弾ミサイルを四発撃ち込んだそうですが、まったく効果がなかったという噂は本当なのですか?」
このことはあまりにも重要な事柄だったので、第二砲兵と空軍の幹部に、一部の深海棲艦たち以外には、司令員といえども正確に知らされていなかったのである。
衛星によって明らかに爆発は確認されたのにもかかわらず、それが0コンマをはるかに下回る寸秒のことで、あとはまったく何も起こらなかった。
……つまり核爆発エネルギーは消えてしまったなどということは、誰にも簡単に説明できるものではない。
「……うむ。残念ながら事実だ。深海棲艦から貸与された技術で開発した戦術核ミサイル、鬼角弾ミサイル四発撃ち込んだが、日本に被害を与えるには至らなかった。
……我が連邦国のいかなる物理学者を総動員しても、これを解けないのは見えている。
一部の学者は、爆発エネルギーが何者かの手によって、別次元の世界に飛ばされたのではないかと主張する馬鹿たちもいるが、とうていそんな小説のような夢物語みたいなことは信じがたい」
ヨウコウレツ総参謀長が苦々しく言った。
なお空母棲姫たちはそれが一番の有力説ではないかという、ジト目で見ていたが。
「しかし、われわれはこれで諦めたわけではない。鬼角弾ミサイルはまだ10発以上残っている。これを日本の大都市に撃ち込んで、大統領閣下のお言葉どおり日本を再び焦土化し、先の大戦のように、いや、終戦の時の日本のように二度とよみがえらせないようにしてやるのが楽しみだ。その時は侵略者どもがどうなるかは見ものだな。
本土決戦をやるなら日本の象徴たる日王を捕らえ、侵略者や艦娘どものまえで処刑にしてやろう」
ヨウコウレツがニヤリとする一方、水母棲姫は意見を述べた。
「私ガ言ウノモナンデスガ……、返ッテ状況ガ悪クナルト思イマス。マシテヤ日本ノ象徴タルアノ方ヲ死刑ニシタラ、日本ダケデナク、親日国ヤ世界中ガ黙ッテハイナイノデスガ……」
彼女は物腰柔らかく説明したが、忠秀たちは嘲笑った。
「なに、奴らはお人好し過ぎるのだから、その前に降伏するだろう」
そんな楽観的でいいのかしらと問いかけようが、空母棲姫からはこれ以上は何をいっても無駄だと差し止められた。それぐらいかれらの慢心は彼女たちですらも止めても無駄だと分かり、もはやいつかは詰まるなと思っていたからだ。
そんな彼女たちを無視し、ヨウコウレツは、ロウハン海軍司令員に向き直った。
そして連邦軍にとっては隠し玉、これはかつて中国海軍がもっていた、とある兵器について尋ねた。
「ロウ上将。空母『天安(テイエンハン)』の出撃準備は終わったかね?」
今回は国内がもはや情勢が悪化し続けている連邦国は、これでも戦い続けます。
まるで崩壊寸前の独裁国家のごとしではありますが……
しかも港湾棲姫や水母棲姫さんたちの意見など、全く聞いていないほどですから……
次回はこの会議の続きと伴い、連邦の隠し玉と言えるこの空母《天安》と、もうひとつ第一章にて口にしていた”例の生物兵器”の正体も明らかになりますので、お楽しみを。
第二章に突入して緊張していますが、これからも楽しみにしてくれたら幸いであります。
それでは第三十四話まで、ダスビダーニャ(さよならだ)。