超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》 作:SEALs
予告どおり会議の続きと伴い、連邦の隠し玉と言えるこの空母《天安》と、もうひとつ第一章にて口にしていた”例の生物兵器”の正体も明らかになります。
では長話はさて置き、本編であります。
どうぞ!
これを聞かれたロウは頷いた。
「はあ、訓練についてはまだまだ未熟でありますが、御命令とあれば出撃します」
実は連邦海軍には隠し玉と言う……秘密兵器がふたつ秘匿されていた。
ひとつが、かつて中国がロシアから空母、元の名前は《ヴァリャーグ》で、現在ロシア海軍の唯一の正規空母《アドミラール・クズニツォーフ》の2番艦を買い取ったものを改造した連邦海軍初の空母《天安》である。
先に買って、結局は使い物にならずテーマパークにしてしまった《キエフ》や《ミンスク》とは違い、これは立派に実用するものだ。
なにしろ排水量4万5000トン、満載排水量5万5000トンという巨艦である。
これはスキージャンプ台を持ちCTOL(水平離着陸機)の滑走路の距離を短くしながら、着陸のため、アングルドデッキを使うという変則的な艦型で、ロシア海軍はこれに、自国のスホーイ社が製造する戦闘機Su-27《フランカー》を、これを艦上戦闘機型に改装したSu-33《シーフランカー》を31機を載せて運用している。
ただし対潜哨戒機は持たず、同じく自国のカモフ設計局で開発された艦載対潜ヘリコプターであるKa-27ヘリで代用している。また攻撃力を補うために、P-700《グラニート》対艦巡航ミサイル24基、3K95個艦防御システム《キンジャール》8連装回転式発射機24基、近接戦闘システム《コルサッチ》8基、CIWS6門、対潜ロケット発射機などを持ち、また必要とならば軽巡洋艦クラスの主砲も搭載できるように改造している。
もはや航空巡洋艦並みの攻撃力を誇ると言ってもいい。
このような奇怪な中型空母は、むろん米軍の正規空母の圧倒的な戦力には及ばなくもない。
しかし、同型の中型空母しかもたないヨーロッパ海軍のあいだでは立派な抑止力となる。
天安と名づけられたヴァリャーグは、渤海湾の奥にある秘密ドック奉皇島で秘かに改造が進められている。
なお艦載機に関しては、艦上戦闘機はJ-31《殲撃31》を艦載機型に改装した《海狼11号》に、かつて中国が存在していた頃に、ロシアから秘かに買い付けたSu-33《シーフランカー》は《海狼10号》と名づけた。
両機合わせて31機搭載可能である。
やはり対潜哨戒機はもたず、深海棲艦の技術援助により、有人化に改良した深海艦載機ことたこ焼き型艦載機――TBF艦上攻撃機アベンジャーか対潜ヘリKa-27で代用することにした。
しかし《海狼11号》ことJ-31と、《海狼10号》ことSu-33は、Su-27《フランカー》同様の高性能機であり、前者は日本のF-3《心神》と、後者はF-15主力戦闘機と十分にタメを張れる。
ほんの少しだけだがヴァリャーグより、わずかに攻撃力が増えたのである。
もうひとつは空母棲姫たちには話してはいないが、連邦側は人造棲艦と言う名の兵器を開発した。
いかにも中岡大統領らしいセンスがあるのか、ないのかという生物兵器を、ひそかに人工的に生み出した、正確的には非人道的実験で生み出し製造された記念すべき初の人造棲艦がある。
なお、読者諸君にはかの有名なホラーゲーム『バイオハザード』に登場する架空の組織――アンブレラ社のような行為をしていると思ってほしい。
名称は《ギガントス》と名づけられた。異界の帝王と言う名を意味しており、中岡大統領が後ほど世界を治まるべき世界帝王(皇帝)になるので、それに相応しいと名称され、連邦国にとっては深海棲艦よりも忠実であり、栄光ともいえる大統領のためにと思い、丹精を込めて製造した。
だが、驚くべきことに《ギガントス》の素体となっているのは、なんと人間の女性である。
連邦がこうした理由は単純である。それは艦娘たちが憎いというだけでなく、女性特有の妬み、つまり彼女たちの美しさに嫉妬する女性たちを結束させ、その巧妙な手口でだまし、利用して誕生したのがギガントスである。
生産は簡単であるが、その方法はとても残酷極まりないものである。
素体となる女性に脳下垂体から分泌される、また極度の恐怖と緊張状態に置かれたほうがより多く分泌するため、生きたまま麻酔をかけずに脳を摘出して採取して、そのベースとなるものにT4ウィルスを投与し、変貌した肉体を、さらに様々な肉体強化を施して製造しただけである。
これを知った戦艦水鬼と彼女の同胞たちは「非人道的にも甚だしい、もし廃棄しなければ同盟を決裂する」と恫喝を突きつけた。
連邦側もそれは困るので要求通り、全て破棄した……と言うのは表向きで、裏では《ギガントス》を3体ほど残していたのである。運が悪いことにその1体が、Z機の空爆によって失われたのは痛かったが、残りの2体を、今回の実戦に投入すれば、また生産可能になると思い、安心していた。
これを知っているのは最高指揮官たる中岡大統領と湯浅主席、忠秀副主席に、彼らを支持する幹部や深海棲艦たちだけである。
このギガントスは、とある問題があるのを除いては、運用に問題なかったので秘かに採用した。
これを歓喜とし、承知した中岡はつぎのような命令を下した。
2体のギガントスを1体目は空母に、2体目は戦艦にしろという改装命令である。
前者の主力艦載機は上体位である姫・鬼・水鬼たちが運用している、たこ焼き型艦載機で、基本的には変わらず艦戦、艦爆、艦攻だが、空母としては珍しく駆逐艦クラスが使用している5inch砲をいくつか装備している。
後者は戦艦ル級とタ級に、レ級が装備する16inch連装砲か、南方棲戦鬼または南方棲戦姫が装備している16inch三連装砲にしようとしたが……中岡の口癖である「限界を超えろ」とこの時代に似合わない精神論と、根性論を突きつけられた。
本人曰く「あの忌々しい元帥の秘書艦となった大和や武蔵と同じような装備、それ以上の装備よりも強力な主砲と副砲と対空機銃に、22inch魚雷後期型などを搭載しろ」と無茶苦茶な要求を突き付けた。
さすがの開発者たちもこれ以上搭載すると、あの有名な《友鶴事件》と《第四艦隊事件》の二の舞になりかねないという訴えで却下させることができたのが幸いだった。
主砲は18inch三連装砲にし、副砲は12.5inch連装副砲に、5inch連装両用莢砲を搭載した。
これ以上は重量オーバーのため動けなくなるので、電探を装備しようとしたが……これまた中岡の余計な助言というべきか、根性論を突きつけられたため、この装備は見送られ、18inch三連装砲にした。
これまた、先の大戦でも日本軍がレーダーを軽視したのと同じである。
自国で開発した八木アンテナを保有しながらも、多くの軍部は「卑怯者が使う兵器」として運用しなかった。
これがのちに仇となってしまったのは言うまでもない。
なお、これを保有していた捕虜になったイギリス軍の一人に、とある将校が「これはなんだ?」と質問したら……「貴方たちは自国で八木アンテナをご存じないのですか!?」と皮肉を込めたジョークも言われ、呆れさせた話も残っている。
また米海軍のニミッツ提督も回顧録の一文として、日本海軍はなぜかレーダーを軽視するのを不思議がっていたほどである。
話しは戻る。中岡たちはこれらを次期作戦に使うつもりだった。
次期作戦とは、つまり沖縄攻略作戦である。これを《征琉作戦》と名づけた。
球とは、むろん沖縄の旧名「琉球」のことである。
「さて、次の作戦についてだが……」
忠秀は続けた。
このかん湯浅主席はまったく口を利かなかったのだが、その無表情な顔つきが全てを物語っていた。湯浅はもともとこの戦争を始めるべきでなかったと考えていた。
中岡大統領と忠秀以下の軍部たちは日本軍と艦娘たちを過小評価していると考えていた……
アメリカとのシーレーンが断たれているのにもかかわらずに。
はたして結果はそのとおりになりつつある。日本軍と艦娘たちが魔法のような手を使っていることまでは湯浅も思い浮かばなかったが、いやな不安は的中した。
しかし軍事委員会主席である以上は、それをここで述懐するわけにはいかなかった。
「鬼角弾ミサイルで日本の主要都市を攻撃したあとは、我々の同胞に相応しいものの、今もなお日本軍と艦娘たちに虐げられている沖縄人民らを解放するための作戦でもある。ヨウ参謀総長、作戦概略を説明してくれたまえ」
「はい、承知しました」
ヨウは東南アジアの地図をテーブルの上に広げた。
「見れば分かるとおり、寧波基地から沖縄までは700キロほどしかありません。
その南の南西諸島となるとさらに近くにわけです。しかしこれらの島はさして軍事価値はなく、占領しても日本人にさしたるショックを与えることはないでしょう。やはり沖縄本島を攻略すべきです。
まず、我が爆撃機とミサイルをもって予備攻撃を行ない、その後、我が空母《天安》を主力とする空母戦闘群を前進します」
なおギガントスに関しては、この場で黙秘することにした。悟られると不味いからだ。
特にこの期待の新人である水母棲姫、防空棲姫、駆逐水鬼には、特殊任務として知らせ、三人を補佐する空母棲姫、戦艦棲姫、軽巡棲姫には知らせないようにする。
もしも戦艦水鬼に知らされると、仲間割れの可能性が高いからだ。
「日本軍と艦娘たちなどは、むろん九州と沖縄に空軍主力を集めていますが、我が空母《天安》の搭載する《海狼11号》と《海狼10号》艦上戦闘機は、これに十分対応できる能力をもっています。
我が海軍はユィティン型の大型揚陸艦8隻に、ユィカン級7隻をもっており、これらで150輌の新型戦車、各種野砲、また兵員3400名を運びます。
これらを尖兵として、さらに戦術輸送機によって1個軍団……3個旅団を送り込む予定です。
主ある揚陸点は、かつての米軍とおなじ嘉手納地区ですが、陽動地点として、名護湾にも一部は我が精鋭たる屈折部隊である空挺部隊を向かわせる予定です。
橋頭堡が確保次第には、輸送機によって迅速に後続部隊を送り込み、敵の主要基地である嘉手納基地を占領する予定でありますが、これを成功すれば、作戦は成功したもおなじでありましょう」
連邦空軍は50トンのペイロードをもつイリューシンIl-76輸送機を5機、ウクライナ製の輸送機アントノフAn-70 やロシアのIl-76に似たY‐20戦術輸送機を50機持っている。その多くが中国空軍基地にあったものを全て修理して、飛ばせるようにしたものばかりだ。これにより3個旅団ほどの兵力は楽に運べる。
しかしことは、そう簡単ではないだろうと、ロウハン海軍司令員と戦艦棲姫たちは思ったが、黙っていた。
このような重要会議では、消極的主義が命取りとなり、よくてただちに更迭か、悪ければ射殺になりかねない。
しかし海軍も深海棲艦たちも、両者ともすでに痛手をこうむっている。
まず中岡からの大胆である特殊任務……ロナルド・レーガン率いる第七艦隊攻撃のためにキロ級潜水艦4隻と、深海水雷戦隊も多数を失い、日本海軍との海戦ではハン級原潜一隻とベテランともいえる潜水カ級たちも失った。
さらにルーター級駆逐艦3隻、チャンウェイ級フリゲート5隻に、装甲空母姫ひきいる空母機動部隊、そして日本の生命線、シーレーンを妨害した仮装巡洋艦率いる水上打撃艦隊などが多数撃沈された。
いざ海戦になると、日本海軍と艦娘たちは強い。
前者は装備において優れているうえに、米軍や多国籍海軍などとの共同訓練でも、つねに米軍と同じようにトップを誇っている。なお後者は熟知しているが、先の海戦では今まで装備すらできなかった海自とおなじ主砲や対艦ミサイルに、対潜魚雷とCIWSだけでなく高性能な主砲から、もはや未来装備であるレールガンまで装備していた。
これらの損害は痛かった。しかし、まだこちらには新たに配備されたドグウと、カメが合わせて4隻、主力の旅洋Ⅲ型ないし改ソブレメンヌイ級駆逐艦各2隻、ランチョウ級駆逐艦2隻、コワンチョウ級駆逐艦1隻、マーアンシャン級フリゲート1隻とともに……深海側には戦艦水鬼たちなども温存されているが出るかどうかは彼女次第であり、中岡も彼女を信頼していない。逆に彼女もおなじことがいえる。
温存されている我が精鋭艦を主力に、空母護衛部隊を組むか、中岡派の深海棲艦を主力に、多少不安はあるが、試作艦である人造棲艦のギガントスと組ませるほかないだろう。
なおクローン技術により、いまでも戦力を増強させるために増やしてはいるが、しかし、eliteやflagship級になるまでは時間を費やさなければならないのが痛い。
平時ではたっぷりと訓練に費やすことができるが、いざ有事なれば鍛える時間が少ないのが現状だった。
例の謎のステルス重爆の爆撃で、虎の子のJ-20こと殲20とJ-31こと殲31ステルス戦闘機は残存60機となり、最新鋭戦闘機には熟練パイロットたちが多数失ってしまったことだ
あと頼りにすべきは新たに追加・改装したクラーケンおよびヘルキャット戦闘機に、これらに搭乗する補充されたパイロットと、その予備パイロットたちに託された。
なお過去に中国とイスラエルが共同開発した戦闘機J-10、その前の国産機J-8Ⅱがあるが、いずれも日本の空自や多国籍支援空軍に比べると互角とは言いがたい。
さらに残っているのはMiG-19フォーマーとMiG-21フィッシュベッドなどを改良した旧式戦闘機で、保有数だけはやたらと多いが、沿岸防衛用であり、とても日本と多国籍戦闘機ならまだしも大戦初期には艦娘たちに、ちょっかい、自国の領土でもないのに威嚇射撃をしようとした哀れな戦闘機パイロットが撃ち落されるほど、これらは役に立たず、とても太刀打ちできない。
しかも、沿岸近い内陸部の空軍基地そのものも爆撃を受けている。
不幸中の幸いだったのが、奥地にある基地、今後に必要な爆撃機基地は無事だったので、まずこれらを整備する必要がある。
「沖縄へのミサイル攻撃は、台湾向けに配備した東風11と15ミサイルを福建省北部までに移動させば十分届くはずです」
第二砲兵司令員セイシェン上将は、自信たっぷりに言った。
台湾もミサイル攻撃に備えてミサイルを配備しているので、この攻撃を防ぐため台湾攻撃用ミサイルはすべて車輌に乗せた移動式である。
「うむ」
忠秀は頷いた。
「いま我々に必要なのは、その戦意だ。戦うまえから挫けてはならない……ロウ司令員。
今回の戦いの成否は、空母《天安》の働きに、深海の同胞たちは期待の新人である水母棲姫、防空棲姫、駆逐水鬼の三人にかかっておる。しっかり頼んだぞ」
「分かりました!」
「「「ワ、ワカリマシタ!!!」」」
ロウ上将は答えたが、その胸は波立っていた。なにしろ、連邦海軍は空母を運用するのは初めてである。
あちらにいた時は空母娘なんて自分の判断でできるから良いが、本物の空母になると運用が違ってくる。
どこの国でも空母を運用するのには、長い経験を必要とする。
それをろくな訓練をせずに、いきなり実戦投入しようというのだから軍事常識を照らせば、無謀である。
三人も同じような気持ちだった。
戦艦水鬼、空母棲姫、戦艦棲鬼、軽巡棲姫たちに倣い、訓練を積み重ねてきたが、実戦は初めてである。
いきなり大規模な重要作戦に出られるのは嬉しさもあった。だが、その気持ちとは裏腹に、不安でもあったのが正直な気持ちでもあった。
しかし連邦の決定は絶対だ。たとえどんな無謀な作戦だろうと、決してノーとは言えない。
あとは参謀長レベルでの具体的作戦打ち合わせが残っているだけだった。
しかし忠秀は戦艦棲姫たちに、退場するように指示をした。
言われるがまま戦艦棲姫たちは、了解した。しかし本心では「この作戦が失敗すれば良いのに」と呟いた。
戦艦棲姫たちが出て行った合図を知らせるドアの音が聞こえたと伴い、忠秀は例の作戦、特殊作戦の内容を話した。
今回登場した生物兵器こと《ギガントス》の元ネタは、同じく田中光二先生作品のひとつ『夜襲機動部隊出撃』に登場する異世界の怪物であります。
その作品に出るギガントスとは少し設定を変えています。
またT4ウイルスは『超海底戦車出撃』に灰田さんのライバルともいえる、ミスターブラックが対超人部隊用にと、このゾンビウイルスを選抜された米軍兵士に投与しています。この世界では連邦国が開発したウイルスとして登場しています。
ただし人間や艦娘たちに感染しないのが、不幸中の幸いですが。
もはやナチス・ドイツのマッドな兵器みたいなのであります。
なおコイツを倒すために、また灰田さんがとある兵器を供与しますので、お楽しみを。
神通「提督…そろそろ次回予告を…」
おっと、では切りが良いところで次回予告であります。
次回は連邦は終了しましたから、次はアメリカ視点になります。
日本がZ機を手に入れてから、警戒し始めているアメリカがとてつもない行動をしますので注目するとともに、次回もお楽しみを。
それでは第三十五話まで、ダスビダーニャ(さよならだ)。
神通「ダ、ダスビダーニャです…では提督、ご一緒に昼食を作りましょう」
こちらも楽しみながら、次話を考えなくてはいけませんね。