超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》 作:SEALs
それでは予告どおり最初は超兵器のひとつ、空母《飛鳥》の視察から始まります。
こちらは矢島長官たちが視察します。
果たして未来の《バイオ・コンピューター》こと《マザー》によって稼働されている空母《飛鳥》の性能、そして実力はいかに……
では長話はさて置き、本編であります。
どうぞ!
灰田が告げた三日後……2月23日の夜明け前がきた。
矢島防衛省長官、杉浦統幕長はじめ海自の幹部たち、情報本部とそのスタッフたちが秘かに第十二バースに集まっていた。これは巨大なバースで、米海軍の8万トン級の空母が横付けできる。
灰田の言うとおり、周囲は人払いしている。
二月の夜明けは遅い。
6時過ぎになって、ようやく薄明るくなり始めたが、埠頭にとその先の海面は濃い霧に包まれた。
あの新富嶽ことZ機が出現してきたときのように、矢島は驚かなかった。
次元の壁を巨大な質量をもつ物質がくぐり抜けてくるとき、この霧は一種の緩衝剤となるらしい。
時刻は6時30分になった……
空気がイオン臭くなった。また急激に気温が下がったが、これもタイムスリップの兆候である。
矢島はその瞬間に、異様な圧迫感を感じた。なにか巨大なものが埠頭に現れ、その質量が発散する圧力だった。
霧がゆっくり晴れ始め、見上げるような物質が姿を現した。それは巨大な艦の姿となった。
「現れました!!」
矢島は秘書を通して、近くのヘリポートで待機している安藤首相と補佐官に連絡させた。
連絡を受けたまわると、すぐにヘリのローター音が聞こえた。
安藤は200メートルの高度で第十二号バースに接近しながら、そこに展開する信じがたいものを眺めていた。
まさにそこには空母が出現している。灰田が言ったとおり、艦首にスキージャンプ台を持ち、右舷にはアングルド・デッキが突き出している。艦橋は左舷にそびえ、無数のアンテナを林立させている。
レーダーポストも兼ね備えている。飛行甲板には繋止されている艦載機が見え、4機の対潜ヘリ……海自や米軍などが運用しているSH-60K《シーホーク》である。
安藤は海自の大型輸送艦《おおすみ》と、ヘリ搭載型護衛艦《ひゅうが》《いせ》につづき、同艦《いずも》に、新たに進水した《かが》も見たことがあり、その大きさに驚いたのだが、いま感じている驚異はそれどころではなかった。
おおすみ型は8900トン、ひゅうが型は1万3500トン、いずも型も同じく1万3500トンだが、飛鳥は6万5000トンであり、前者らとは桁違いである。
まるで《ロナルド・レーガン》を眺めているのではないかと錯覚にとらわれたが、むろん《ロナルド・レーガン》のほうがさらに大きいが。空母が出現したことを確認すると、安藤はヘリポートに引き返した。
あとは矢島と海自の幹部たちの仕事である。
スルスルと自動的にタラップが降りてきたので、矢島と杉浦、黒川海幕長、それに情報本部のスタッフたちはそれを上がって行った。
この空母の名前は、すでに《飛鳥》と決定されていた。
閣僚たちのなかには昔懐かしい《赤城》や《加賀》にしたいと主張する者たちがいたが、当の本人たちは複雑な気持ちになるかもないと思い、安藤はしりぞいた。
灰田はこの三日間のうちにもう一度現われ、個人確認のためのチェックを済ませていった。
むろん今回は別の場所で、自身の鎮守府で待機している元帥と秀真たちも済ませている。
飛鳥には、いたるところに監視テレビカメラが取り付けられており、それは個人の発する赤外線熱量をチェックするようになっている。
また飛鳥の艦内部に立ち入るには、声紋と掌紋双方をパスしなければならない。
とくにマザー(ハイパー人工脳)の鎮座するCIC(戦闘情報中枢室)には三重防御システム……レーザー、瞬間麻酔ガス、電撃発振システムなどで守られており、パスしない者が立ち入ろうとすれば、たちまちこれをお見舞いされる。
灰田はそれらの登録のために小さなブラックボックスを持ってきて、とりあえず艦内を調べる者たちの登録を調べておいた。
一日後には、300人の要員が立ち入れることになるが、灰田は登録のために特殊なバッジを置いて行った。
とりあえずはマザーがそのバッジさえ走査すれば……マザーが操るテレビカメラがということだが……チェックがすむということになっている。
そのバッジは、今は厳重に保管されていることはいうまでもない。
もし連邦またはアメリカなどのスパイが手に入れでもしようとしたら、大変である。
その後、艦の運用訓練が始まる先立ち、正式な登録が行われるようになっているというと、灰田は告げた。
矢島たちは慎重に甲板に上がった。
マザーのいる第二CICに入る者、人間の使う第一CICを調べる者、各艦載機を調べる者、ほかの兵装を調べる者と、手分けして行なうことになっている。
矢島たちはすでに灰田から艦内の構造図、さまざまな機能の配置図、艦載機の性能データなどを渡されている。
とくに軍オタである秀真・郡司が見たら歓声を上げて、喜ぶ姿が脳裏に浮かんだ。
話しは戻る。
それらも可能な限りコピーされて、厳重に保管されていた。
コンピューターの配線図とそのソフトウェアの内容については、できる限りやさしく書いてはあったが、海自が動員できた最高のコンピューター・プログラマーといえども容易く解読はできなかった。
しかし、マザーことHBが全て見張っている限り、それでいいのである。
矢島は杉浦と二人の情報本部のスタッフの四人で、艦橋の付け根にある入口からタラップを降りた。
艦内は暗かったが、彼らが進むにつれて自動的に照明がついた。
灰田から貰った配置図によると、第二CICは艦橋の真下、つまり艦の中央部にある。
言い換えると敵の攻撃からもっとも安全な部分である。
なにしろ人間の要員は300名で済むので、いわゆる居住区画は少なくて良い。
配置図によると……矢島たちには見当もつかない未来のテクノロジーの詰まった機械室でいっぱいだった。
基本的に艦載機は甲板に繋止されたままだが、いざという時には格納庫もある。
そのための舷側エレベーターが三基もあった。
仕様書によると、艦載機の繋止も自動的に行なわれるというのだから驚いた。
ラッタルを二層下ると、目の前に冷たい光を放つ廊下が見え、30メートル先には赤く塗られた扉が見えた。
そして人工的な声が聞こえた。
『あなたがたがいま見ているのが、マザーのいる区画です。第一CIC、つまり、あなたがたの部屋はうしろにあります』
矢島たちは振り向くと、やはり30メートル先に黄色に塗られた扉が見えた。
『これからマザーと対面してもらいますが、ゆっくりおひとりずつお進みください』
矢島を先頭に進み始めると、廊下は赤外線が包まれた。
まず始めに、個人の赤外線熱量をチェックしているらしい、
もし敵だとマザーが判断した時は、例の三重防御システム、恐るべき武器が襲ってくると考えると……矢島は背中がむずむずした。
しかしそれらはどこに隠されているのか、見た限りでは分からなかった。
矢島がその前に立つと、音もなく扉が開いた。
柔らかい金色の光に包まれた円形の部屋が出現した。
さしわたし15メートル程の部屋で、その真ん中に球体が浮かんでいた。
何かに吊り下げられて様子もなく、宙に浮かんでいた。
しかしそこから周囲の壁に無数のワイヤー、それは光ケーブルに似たワイヤーが伸びて吸い込まれていた。
球体の直径は、おそらく5メートルはありそうだ。
表面はたえず七色にかがやき、緩やかに回転している。
『わたしがマザーです。わたしの部屋にようこそ』
その“球体”が柔らかな声で言った。
矢島は驚きを通り越して呆然としていた。これが未来のバイオ・コンピューターだと言うのか!?
『わたしの姿はあなたがたの世界のコンピューターとはだいぶ違うでしょう。しかし、電子頭脳であることは変わりないのです。チップには人間の脳とおなじ有機素子バイオチップを使っていますが。
この艦の保全機能はすべてわたしが受け待ち、また戦闘モードに入ったときは自動的に交戦しますが、状況判断については第一CICで切り替えられるようになっていますから、ご安心ください。この艦はあくまで人間の意志優先に作られており、わたしはその足りないところを補うため、ミスをカバーするためです」
「……ええと、あんたの愛称は《マザー》だな?」
矢島は問いかけた。戦前は合同訓練時のときに米軍兵士はネット電話を使用して、自分の家族や友人、恋人などと会話するのは幾度か見たあり、それに関しては矢島も使用したことあるが、いま自分が話し掛けているのは人間ではなく、コンピューターと会話するなんて妙な気分がした。
「あんたがもしコンピューターだとすると、それを破壊するEMP攻撃を受けた際にはどうなるのかね?」
EMPとは高高度核爆発や雷などによって発生するパルス状の電磁波のことである。
強烈なガンマ線が高層大気と相互作用し、広域にわたってコンプトン効果を発現させ、地磁気の影響で地球の中心に向かう電磁波の流れを発生させる。
低高度の核爆発では電磁パルスの発生が限定されるが、核兵器による高高度核爆発であれば、広範囲に電磁パルスが発生し、すべての電子機器やライフラインを破壊する。
それを対策しているものは政府や自衛隊のごく一部である。
さらに米軍は目標地点に展開中の敵部隊・軍事拠点の無力化するためにEMP爆弾も保有している。
『ご心配にはおよびません』
マザーは相変わらず優しく優しい声でいった。まさに母親を思わせるような穏やかな声だ。
また矢島たちは秀真の鎮守府に訪問したときに、軽空母《鳳翔》のことをふと思い出した。
彼女は至って温和で控えめ、常に一歩引いて男性を立てる古式ゆかしい日本的女性美を持つ艦娘であった。
秀真いわく「鳳翔さんは、本当の母親みたい」だと言っており、郡司も同じことを言い、また赤城をはじめとする全空母娘たちは「鳳翔さんは全ての空母の母です」と言う言葉も思い出した。
また鳳翔さんが怒ったときは秀真、郡司、赤城たちは震えが止まれず、しばらくは忘れないとも言っていたが。
もっとも世の中で怒った母親が恐ろしいものはない。
インド神話の女神《カーリー》は『黒き者』を意味し、血と殺戮を好む戦いの女神である。
シヴァの妻の一柱であり、カーリー・マー(黒い母)とも呼ばれ、シヴァの神妃《パールヴァティー》の憤怒相とされる。
しかし、インドではカーリーの姿はあくまで怒れる女神として描かれている。
『EMP効果が及ばないよう二重セキュリティー・システムを張り巡らせていますから。
それでは第一CICのほうにどうぞ」
そう言われて矢島たちは廊下に戻り、第一CICのほうに向かったが、その部屋は自衛艦で見慣れた光景であった。
つまり操艦指揮区画、ソナー区画、通信区画、兵装区画などに分かれている。
操艦区画には、マニュアル切り替えというボタンがコンソールの真ん中に目立って置かれており、それを押すと全艦マニュアル操艦という赤いランプが伴った。
しかし兵器はすべてオートマチックなので、レーダーが自動的に敵を発見、そのデータを伝えれば、それを撃退するに相応しい兵装……無人ステルス艦載機を含むが自動的に選択され、応戦するようになっているらしい。
こればかりは人間がやるより速い。なにしろ対艦ミサイルは、マッハ2を超えるスピードで飛んでくるから、一瞬でもたつくと間に合わない。
もっとも対潜ヘリや早期警戒機など、急を要さないものの発進は人間がコントロールできるようだ。
要するに中型空母《飛鳥》の運用は、コンピューターと人間との各々の長所を取り揃えた、いわばミックスしたコラボレーションなのだが、状況に応じればそれを切り替えるのには
かなりの習熟を要すると言われている。
「これから忙しくなるぞ。要員を乗せてさっそく訓練だ。なにしろ敵は待ってくれないからな」
矢島が言うと、杉浦は頷いた。
「分かっています。今日からさっそく始めましょう」
海自から選抜された300人の要員を乗せると、とりあえず《飛鳥》はマニュアル操艦によって相模湾に移動した。
そこで様々な訓練が行われたが、灰田に渡された説明書(MD)によると、マザーによって戦闘シミュレーション訓練が艦載機を飛ばさずにできるようになっている。
マザーが様々な状況を設定し、戦闘状況スクリーンに敵の攻撃が映し出される。それを対して対応する兵器が反撃する。
マザーによるとこれは100パーセント、実戦と同じ内容である。
空母《飛鳥》の艦長には、第一護衛艦群の司令である湊海将補が抜擢された。
しかし湊海将補は、やはり艦載機を飛ばしてみないと不安だった。
なにしろ載せているのは無人機である。発進をマニュアルに切り替え、架空の座標に敵機を想定して発進させた。
F/A-18《スーパーホーネット》は戦闘攻撃機だから、神奈川の山奥……丹沢山塊に目標を仮設定した。
F-14《トムキャット》南方海上から迫ってくる敵機に向けて発進した。
いずれも発進はスムーズで、たちまち目標を捕捉、実際に兵器は使用しないが、兵装を発射したというデータが現われ、目標撃破という結果が報告された。
しかし、問題は着艦である。
中型空母《飛鳥》の場合は、大型空母に比べて飛行甲板が短いので、かなり急激にアレスティングしなくてはならない。
パイロットが搭乗していれば激しいGに耐えなければならないが、なにしろ無人機だから数Gのショックにも耐えられる。
無人機を操る電子脳は絶妙なタイミングでタッチすると、アスレスト・ワイヤーに引っかかり、急速に停止した。
飛鳥に搭載されている全ての艦載機は、この急停止に耐えられるよう頑丈に造られていることは言うまでもない。
これらを格納庫に収める訓練も行われたが、収納ボタンを押すだけで、あとはマザーがエレベーターを操作してやってくれた。
なお飛鳥の機関は、蒸気タービンで出力25万馬力、最大速力33ノットである。
この機関室にも機関員が就いていたが、こちらも全て全自動で、起動と停止のほかは、彼らのやることは機関の調子モニターをチェックすることだけである。
要員の大半は、無人艦載機のメンテナンスと補助という役割を負うということになった。
仮に損傷したとしたときには、格納庫内に《自動修理区画》がある。
そこもマザーに任せておけば、ロボット修理機が全自動で補修してくれるが、やはり人間の目も必要である。
むろんもっとも重要なのは、ROE(交戦法)をいつ発動するのかという人間の判断で、こればかりはマザーにはできない。艦長はじめ幹部たちの判断が必要不可欠だ。
彼らはそのために乗っているようなものだった。
マザーが要請よく助けてくれたので、飛鳥の運用訓練は1週間で、ほぼ完璧なレベルに達した。
むろん、湊艦長には一抹の不安があった。
これはあくまでも訓練なので、いざ実戦となればどうなるかは分からない。
原題のコンピューターは狂うことはある。同時にコンピューター・ウイルスによるサイバー攻撃にも弱い。
しかし、マザーはどうだか。湊はいまひとつマザーを信じ切れなかったのである。
いずれにしろ、飛鳥と秀真提督の艦娘たち、第一護衛艦群で空母戦闘群(機動部隊)を編成する。
連邦海軍の空母戦闘群および、深海棲艦・人造棲艦《ギガントス》による合同護衛艦隊群に対抗することが決まった。
今度はそのための共同訓練である。
もはや空母《飛鳥》は、完璧な空母ともいえますね。
もし灰田さんがこの世界に現れたら、この空母を供与してほしい兵器のひとつでもあります。むろん原作通りの性能と、無人艦載機もですが。
もし艦これで、艦娘として実装したら、空母のなかでもチートになりそうであります。あくまでも予想ですが……
次回は空母《飛鳥》を視察している矢島たちに打って変わり、秀真たちの視点に移ります。
灰田さんが用意したオリジナル艦娘《土佐》《紀伊》の超空母娘たちとともに、対人造棲艦《ギガントス》用兵器でもあるレーザー砲と、特殊魚雷こと分子破壊魚雷の登場でありますので、お楽しみを。
それでは第三十九話まで、ダスビダーニャ(さよならだ)。