超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》 作:SEALs
秀真たちは次の作戦を立てていた時、連邦に続き、アメリカが警戒しているのではないかという仮説を呟いたとき、未来人・灰田から驚愕の事実を聞かされる。
秀真の推測は当たり、さらに連邦が秘かに用意した空母《天安》と、非人道的生物兵器こと人造棲艦《ギガントス》を知ることとなった……
これらに対抗するため、灰田は横須賀基地に《マザー》に支配されたハイテク空母《飛鳥》を、秀真たちには艦載機を200機または四発爆撃機《連山改》を4機搭載可能な超空母娘《土佐》《紀伊》に、対人造棲艦《ギガントス》用兵器、レーザー砲と特殊魚雷がもたらされた。新たな装備に超兵器が出そろった秀真・古鷹たちは訓練に明け暮れていた頃、とある大国の某所では新たな動きがあることも知らずに……
クローンウォーズのような前回のあらすじを簡単にナレーションしているような始まりではありますが、楽しめていただければ幸いであります。
それでは、本編であります。
どうぞ!
2月26日。
海自は中型空母《飛鳥》の運用訓練に、秀真・古鷹たちは超空母《紀伊》《土佐》とともに訓練に明け暮れていた頃だ。
ペンタゴンでは、ヨーク参謀総長のところに衛星監視センターから報告が上がってきた。
「連邦の通化基地が慌ただしくなりました。燃料運搬車両が運び込まれています。
数時間以内にはミサイルの燃料注入が始まるでしょう。それともうひとつ、不思議なことがあります」
報告を直接もってきたセンター主任のネルソン中佐がいった。
ネルソンはヨーク大将の前の執務デスクの上に、衛星写真を何枚か並べた。
ヨークは覗き込んだ。アングルドデッキをもつ空母の姿、中型空母らしい。
埠頭に横付けされた姿。外洋を航行する姿。また艦載機を発進している姿もある。
「ふむ。空母か。ロシアの持つ《アドミラル・クズネツォフ》のようだが、これのどこがおかしいのかね?」
「この写真はロシアで撮影されたものではありません。日本横須賀基地、または相模湾で撮影されたものです」
「なんだと!?」
ヨーク大将は愕然とした。日本にいた第七艦隊は史実上壊滅なのは知っていた。
日本が空母を持っていることなんぞ知らなかった、いや、持たないのが今までの常識だった。
しかも前に撮影した写真でもどこからか我が軍の最新鋭であり、開発中の次期駆逐艦《ズムウォルト》級駆逐艦や、見たこともない聞いたこともない特型戦艦四姉妹たちも同じくだが。
「JMSDFは空母なぞもっとらんはずだぞ。彼らが所持しているのはそれに似たヘリ搭載型護衛艦《ひゅうが》《いずも》型と旧日本海軍の空母娘たちしかいないはずだ!」
「本職も最初はそう思いましたが、しかしこれはどう見てもヘリ搭載型護衛艦ではなく、空母ではありませんか。しかも、この埠頭に横付けされた写真は一週間前に撮影されたものですが、部下が数年前に退役した我が空母《キティホーク》の古い写真と勘違いしましたが、今日そうでないことに気がついたのです。
そのため急いで衛星を動かして横須賀近海を撮影させました。その結果がこれです。それと……」
「それとなんだ?言ってみろ」
ネルソンはもう一枚の写真を、ヨークに渡した。
「これは空母とは別の場所、とある鎮守府を写したのですが、この空母と同様に訓練をしている写真もところどころ確認されています」
とある鎮守府とは秀真の鎮守府である。アメリカは彼のほかに郡司や各提督たちが所属している鎮守府を監視している。偶然にも超空母娘《土佐》《紀伊》の姿も衛星により撮影されたらしい。
幸いにもレーザー砲と、特殊魚雷こと分子破壊魚雷に関しては撮られていないのが救いである。
仮に撮影したとしても艦娘たちの新型主砲と、酸素魚雷として処理されるのがオチだが。
「うーむ」
中型空母《飛鳥》に続き、あらたな艦娘《土佐》《紀伊》を見たヨークは唸った。
「日本はまた魔法を使ったのか。艦娘はどうでも良いが、問題の空母はいったいどこから、ひねり出したのか」
中佐はかぶりを振った。
「本職は皆目分かりません……」
「わしもそうだ、全くわからん」
ヨークはいった。
「しかし拡大して検討しますと、この空母が載せている艦載機は明らかに我が軍が全機退役したF-14《トムキャット》と主力艦載機F/A-18《スーパーホーネット》に瓜ふたつであります。完全なるコピーといってもいいでしょう。それを20機ずつ載せ、ほかにもプラウラー戦術電子機、E-2C早期警戒機も乗せております。
進水した二隻の艦娘、空母娘は大戦中の名機と言われるジークこと零戦と新型艦上爆撃機と攻撃機は分かりますが、奇妙なことに四発爆撃機までも飛ばすことが可能なように改装されています」
「ふうむ、前者はけしからんな。旧式機であろうと、我が国の傑作飛行機を盗むとは。
しかし、四発爆撃機までも搭載できる空母娘は今後とも監視しなければならないな。
ともかく、この双方は最高機密扱いにしてくれ。これらを見た者全員に緘口令を敷き……この写真はわたしが貰っておくが、ネガは処分しろ」
「分かりました」
ネルソンは立ちあがると、ヨークはすぐに国防長官に電話した。
「連邦の通化基地で、ミサイルの発射準備が始まりました。日本との約束にのっとり、太平洋軍経由で通告します」
「うむ、それはやむを得ないだろう」
ケリーは渋い声で答えた。本来ならば、日本に知らせたくないのが本心だが。
「それともうひとつ、耳寄りなお知らせがあります。正しくは奇怪なお知らせですが」
「なんだ?また日本が何かをやらかしたのか?」
今度はうんざりした声を出した。
「実はそのとおりでございます。日本の横須賀基地、かつて我が第七艦隊の母港として使用していた泊地に空母が出現しました」
「まさか《ロナルド・レーガン》の幽霊でも出たとでも報告したいのかね?」
「いいえ、それが違うのです。正真正銘の空母、我が海軍が保有する大型空母ではなく、ロシアの《アドミラル・クズネツォフ》よりひと回り大きい中型空母でありますが。
しかし、けしからんことにスーパーホーネットに、旧式機のトムキャット、そのほか電子戦術機や早期警戒機まで載せております。どうやら完全にコピーしたようですな。
さらに別の鎮守府では日本があらたに進水したと思しき、ふたりの艦娘は空母娘ですが、しかもゼロだけでなく、ジェット艦載機や四発爆撃機までも搭載できる大型、超空母娘と言ってもいいでしょうか。
それらを使い、前者は相模湾と呼ばれる海域で訓練航海を、後者はその鎮守府だけでなく、ほかの海域に、この空母と共に演習までもしているところをキャッチしました」
「そんな馬鹿な」
ケリーは失笑した。
「いくらなんでも日本でも空母だけでなく、大型爆撃機を飛ばす空母娘を手に入るとは信じがたい。いったいどうやってやった?」
「衛星カメラが嘘を付くことはありません。確かに日本沿岸に空母が航行しており、謎の空母娘はその鎮守府で演習とこの空母と共に航行しています……どうやって手に入れたかは本職には分かりません」
「謎のステルス重爆を手に入れたのと同じ方法だな、おそらく。あの学者がいった、いまの日本は未来の日本と繋がっているという説は本当なのかもしれない。
未来の日本人からいわゆるタイムトンネルを使って手に入れたとすれば、辻褄が合う。
連中はそれで連邦の空母《ヴァリャーグ》とあの新型深海棲艦に対抗するつもりか?」
「おそらくそうでしょう。……しかし本職が不思議なのは、たとえ中型空母でもその運用には数千人を要します。我が国の通常空母ですら乗員5000名が必要ですから、少なくともこの空母には3000名から4000名が必要とするでしょう。
ふたりの新型空母は自分で判断するので指揮官だけがいればいいのですが、空母の場合は、特に要員の少ないJMSDFが、多国籍軍でも小規模で無理でしょう。しかし、いかにしてそれだけの要員を手に入れたのか、とても見当がつきません」
「うむ、おそらく高度に自動化された艦なのだろう。それで要員は最低限にとどめられる。
謎の艦娘に関してはわたしも分からないがね」
さすがに国防長官を務めるだけあって、ケリーは鋭い。飛鳥の特徴を見抜いてしまった。
しかし、超空母の二人だけは見抜けなかったが。
「わたしはこの事を大統領に報告する。むろんこのことは機密扱いにしたろうな」
「はあ、もちろんです」
「よろしい。衛星監視を続けてくれたまえ」
その一時間後、ケリーはホワイトハウスのオーバー・ルームで、ハドソン大統領と向かい合っていた。マーカス国務長官、グレイ首脳補佐官、フォーク海軍作戦部長も呼ばれていた。
全員がケリーから驚くべきニュースを聞いて、二の句が継げないでいるところだった。
「わたしはもう日本に関していかなるニュースは飛び込んできたとしても驚かないつもりだったが、いささか早まったようだな」
ハドソンがようやく言った。
「いきなり6万トン級の空母と、四発爆撃機を飛ばせる艦娘たちを手に入れるとは、あの国はどうなっとるだ!?そのうち核兵器も持ち兼ねんぞ!」
「実は、それをわたしは恐れているのです」
ケリーがいった。
「B-2《スピリット》に匹敵するステルス重爆や空母、謎の艦娘たちを手に入れられるのならば、核兵器を入手できても少しも不思議ではありません。
何者かによって、その国は急速に重武装化しています。すでに連邦を凌ぎ、アジア最強となるでしょう……いままでもそれに近かったのですが。
我が国は、彼らの矛先がこちらに向いていることを警戒する必要があります。彼らには動機があるわけですから」
「日本を仮想敵国として、連邦と深海棲艦のように対日作戦を練っておけというのかね?」
ハドソンはうんざりした声を出した。
「その話は前にも聞いたが、わたしはそんなつもりはない。日米安保を突然停止する行為を働かない限り、日本がそれを理由にするだけで攻めてくるとは思えない」
「太平洋戦争のときもルーズベルト大統領やチャーチル首相は、日本がそこまでは踏み切るまいと読んでいました。英米相手に戦争をするほど愚かではないと。日本海軍は防衛用で、侵攻作戦用にはつくられてはいなかったからです。
しかし、我々が対日禁輸などで追い詰めたため、日本はついに我々に宣戦布告をしました。ドイツと戦いたかったルーズベルト大統領にとってはありがたかったのですが」
「いまは歴史の講釈などは聞きたくないね」
ハドソンはにべなく言った。
「いったい、キミはなにを言いたいのかね?」
「わたしが言いたいのは、日本人はもちろん、艦娘たちも独特の思考回路をもっており、
我々はしばしば読み誤るということです。仮に悪い方に読み取った場合に備えて……つまり、ファイル・セーフの思想にのっとり、保険をかけておくことが妥当ではないでしょうか?」
「その保険が、対日作戦計画と言うのかね?」
ハドソンは素っ気なく言った。
「いや、わたしは日本と戦争するつもりはない。いまは互いに協力して連邦国と深海棲艦たちを倒さねばならないのだ。むろん日本だけでなく、何処の国とでもだ。
対日作戦計画を立てるのは制式的に却下する。国防総省としてもそう承知しておいてくれたまえ」
「……分かりました」
ケリーはそう答えたが舌打ちと共に、肚のうちは煮えくり返っていた。
我がアメリカは危機管理のできない大統領を抱いてしまった。
しかも前回の民主党政権時でも同じようにレームダックの大統領のときもそうだった。
アメリカの危険管理ができないほど素人同然だった。
今度もまたアメリカの危機だ。
しかし、大統領は突然死ぬこともあり得る。
あとを継ぐはずのコンドン副大統領は、これまたでくのぼうで閣僚たちの言いなりの人物である。
ケリーは腹心の部下たちを集め、秘かに対日計画、コードネーム《チェリー・プラン》を立てておく決心を新たにした。
いよいよアメリカの動きが、きな臭いところで終了であります。
これだけの超兵器と共に、各鎮守府を監視している国ですから。
そしてこの先、ケリーたちが立てようとする対日計画こと《チェリー・プラン》の作戦はどうなるかは、しばしお待ちを。
では長話はさて置き、次回予告であります。
アメリカ視点から、再び日本視点に戻ります。
アメリカからの情報を得た日本は再びZ機部隊を出撃、連邦ミサイル基地を空爆するために任務を行ないます。果たしてどういう結果になるかは次回のお楽しみに。
それでは第四十一話まで、ダスビダーニャ(さよならだ)。