超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》   作:SEALs

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お待たせしました。
今回は新たに近代化改装されたZ機の空爆により、またしても重苦しい連邦会議の始まりであります。
前回予告したようにとある『いい考え』を提案し、それを実行しようとします。
その作戦とはいったい、何かは本編を読んでのお楽しみであります。

それでは気を取り直して、本編であります。

どうぞ!


第四十二話:危険な賭け

中南海の湯浅の主席邸宅では、重苦しいムードが漂っていた。

たったいま、通化基地とその周辺のミサイル基地、また福建省の《東風15号》ないし《鬼角弾》の両移動基地までも、ほぼ完膚なきまで破壊されたという最悪の報告が届いたばかりである。

これを平然とやってのけるのは、むろん日本の謎のステルス重爆だ。

空軍は必死になって反撃したが、しかし結局のところは無駄骨に終わり、空爆を阻止することはできず、かえって最新鋭機である《クラーケン》《ヘルキャット》と虎の子のJ-21、31に続き、Mig-19、21などと言った使い捨ての旧式戦闘機などを失うと言う惨憺たる結果となった。

なお、彼らはZ機が近代改装(未来改装)されていることは全く知らない。

 

「……ふむ。やはり駄目だったか。わたしはそうではないかと予感はしていたが」

 

湯浅は呟いた。

その言葉はある意味、忠秀の当てつけでもあったといった方が良い。

前回の十勝へのミサイル攻撃が全く効かなかったこと、無駄に終わったことから、六大都市への攻撃も同じ結果になるのではないかと危惧していたのだが、忠秀が強硬に作戦を推進したのである。

 

「このままでは、洛陽の第四師団まで失いかねないぞ。そうなると我が連邦共和国の米帝に対する切り札が無くなるぞ」

 

第四師団とはICBMを持つ部隊である。

その主力は1万3000キロメートルの東風5号であり、ほかには改良して1万2000キロメートルの東風41号に、8000キロメートルの東風31号を持っている。

東風5号はアメリカの西海岸まで届き、41号は現在、復興作業中のハワイやグアム・サイパンまで届く。

これらまでも破壊されれば、米本土に攻撃する術を失うだけでなく、連邦にとっての抑止力も失ってしまう。

 

「……いいえ、それはないと本職は思います」

 

第二砲兵司令員のセイシェンが言った。

 

「いまのところ日本軍は、自国に影響のない無駄な攻撃は控えておりますので、戦略ミサイルまで破壊する意思はないかと考えます」

 

「うむ。それなら良いが……」

 

湯浅は呟いた。

この切り札を失った時点で、連邦の敗北は決定的となる。

敗戦になったら連邦共和国は、ドイツ第3帝国や大日本帝国のような結末になりかねない。

ただ中岡たちはそうなる前に脱出計画、つまり某国に亡命するとの計画を立てているとも噂もある。

むろん有能な部下や幹部クラス、中岡派の深海棲艦に限られ、残りの国民は見捨てるが。

 

「それで、このような事態となっても征球作戦を実行するのかね?」

 

秀忠に尋ねると、軍事委員会副主席は頷いた。

 

「むろんだ。ミサイル基地を叩いて、日本はひとまず安心してほっとしているところだろう。そこに奇襲をかける」

 

「うむ。君の考えるとおり奇襲となればいいが、しかし日本はアメリカから衛星情報をもらっているのだぞ。

我が国が空母《天安》と人造棲艦《ギガントス》を運用し始めたことなど、とっくに掴んでいるだろう」

 

「それが、これはアメリカのCIA(アメリカ中央情報部)に近い我々の情報筋なのからの報告ですが、アメリカ国防総省はミサイルに関しての情報以外は、日本に伝えない方針に切り替えたようなのです」

 

コウ政治部主任がいった。

 

「どうやら日本があまりに軍事的に強大過ぎたので警戒していると思われます」

 

「ふむ」

 

湯浅は顎を撫でた。

 

「それはあり得るな。あの大統領は小心者で有名だからな」

 

「いえ、大統領の意志ではなく、国防総省の意向のようですな」

 

「とすると、ケリー国務長官だな」

 

湯浅は顔を渋った。

 

「あの男は、何度も情報部から聞いたが食えない男であり、第一にアメリカの国益を考える男だ。あの男なら、大統領抜きに対日政策を変換してでも不思議ではないな……

ところで征球作戦の詳細は整ったのかね?」

 

「はあ、おおむね整いました。作戦発起は3月1日として、X日、つまり沖縄への上陸は7日に予定しております。この日は大潮で、満潮時には揚陸艦や揚陸艇が接近しやすくなりますので。

東風15号と鬼角弾は使えなくなりましたが、その代わりに我が爆撃機全機を繰り出して絨毯爆撃を行ない、そののちに空母戦闘群と人造棲艦《ギガントス》によって、日本の予知しない地点から空爆および艦砲射撃を行ない、敵を攪乱します。

さらに我が軍と深海棲艦による艦砲射撃、ミサイル攻撃を行なったあと、揚陸という段階ですが」

 

連邦には中国が残した旧ソ連製の双発戦略爆撃機Tu-16を、ツポレフ16を国産化した大型戦略爆撃機《轟炸6型》を120機保有している。

この機体は航空爆弾を9トンが搭載可能であり、戦術核爆弾はもちろん、翼下にはDH-10巡航ミサイルも積める。

改良されて、いまは従来のエンジンから、双発ターボファン・エンジンに切り替えており、さらに速力はマッハ1である。これが全機繰り出せば、確かに日本軍にとって最大の脅威となる。

ただし問題はこれを護衛する戦闘機で、《クラーケン》《ヘルキャット》はZ機の空爆により生産が追い付かず、ステルス戦闘機のJ-21、31も消えようとしている今は……遥かに劣る二線級の戦闘機を使わなければならず、とても空自のF-15やF-3もだが、米軍を始めとする多国籍戦闘機群に太刀打ちできない。

 

しかし、ヨウ総参謀長は天安部隊と人造棲艦《ギガントス》に、双方の活躍に期待を賭けていた。

前者はJ-31とSu-33を両機合わせて31機搭載しており、後者は深海棲艦よりも強力でなおかつ忠実な存在ともいえるからだ。

 

「君の言うことを聞いていると、まるで演習のように聞こえるな」

 

またしても湯浅が皮肉ったとき、会議室のドアが開いて、衛星監視処司令員のチンカイ少将が姿を現した。

写真を入れている模様の大型封筒を携えているが、彼の顔は真っ青だった。

 

「チン少将、どうかしたのかね?」

 

秀忠が尋ねる。

 

「はあ、急遽ご報告したい事態がありまして、じつは我々としては大失態なのですが……」

 

「なんだい。言ってみろ」

 

「じつは我が監視処の担当員がミスを犯したのであります。日本の相模湾で訓練している空母および新型の艦娘を発見したのですが……アメリカの空母と勘違いし、ようやくそうでないと気付き、本職に報告したいのでありますが……」

 

チンの顔色が悪いのも無理はない。

一党独裁国家である中国、北朝鮮、軍事国家でもある韓国に、そしてかの有名なカルタゴ(現在のチュニジア共和国の首都チュニスに程近い湖であるチュニス湖東岸にあった古代都市国家)の全てを足して割った独裁国家であり、悪夢の国家でもある連邦国は、しごく簡単に粛清が行なわれている。

どちらもまた伝統的に人命を軽視し、手柄を上げた有能者でも危険人物として粛清する。

それでも毛沢東の名高い長征・大躍進政策、また文革を通して7000万人の自国民を平然と殺したことに関しては敵わない。なにしろ連邦国もまた、汚職だけで死刑になる国である。

重大な軍事的ミスを犯せば……死刑は免れない。

 

「衛星監視が発見した艦娘はどうでも良いが、空母に関しては、アメリカのものではないというものだな。それではどこの国なのだ?」

 

忠秀は尋ねた。

 

「これをご覧ください」

 

チン少将は封筒の入った数枚の写真をテーブルの上に広げた。

 

軍事委員会の幹部たちはそれを覗き込んだ。

確かに空母と、あの忌々しい艦娘たちの写真だ。

まず空母は港に横付けになっているもの。外海を航行しているもの。艦載機を発進しているもあれば、艦娘は見たことのない艦娘たちとともに、空母同様の訓練を行なっているもの。これらもまた発着艦している訓練をしている場面などだ。

 

「なんだ、これは?」

 

ロウハン海軍司令員が声を荒げた。

 

「これは我が連邦の最新鋭空母《天安》と、瓜二つではないか!?

それにこの艦娘は、我々が提督時代に存在しなかった特型戦艦とは違う、あの役立たずの赤城たちと同じ空母級、いやかつてのアメリカ海軍の空母、レキシトン級だ!」

 

全員が頷いた。

 

「確かにその通りではありますが、いくつかの違う点があります」

 

チン少将は答えた。

 

「まず艦載機ですが、我が連邦のJ-31ではなく、かつて米海軍が制式採用した長距離艦隊防空戦闘機のF-14《トムキャット》と、現代の主力艦載機F/A-18E《スーパーホーネット》が搭載されております。そのほかEA-6電子戦機《プラウラー》に、E-2D早期警戒機の姿が見られます。

また、この埠頭は日本の横須賀基地にあるかつて我が潜水艦隊と深海棲艦の合同艦隊により、壊滅した第七艦隊の空母が亡霊として現れたのかなと思いましたが……この空母は我が連邦の天安よりもひと回り大きく、満載排水量は6万トンを超えると思われます。

そして新型の艦娘、空母ですが、あの役立たずの空母水鬼たちから聞いたジェット艦載機だけでなく、四発爆撃機を搭載可能と見ます。

しかもロウハン海軍司令員の言う通り、この艦娘はレキシントン級と見えますが、本職の予感では、あの自称『紳士国』イギリスの考案した氷山空母《ハバクック》を模倣したのではないかと思われます」

 

氷山空母《ハバクック》とは、かつてイギリスが考案した計画のみに終わった兵器である。

この空母は全長約600メートル、全幅100メートル、満載排水量200万トンと巨大空母であり、さらに40基の4.5インチ動力対空砲などで武装し、150機の双発爆撃機や戦闘機を搭載する予定であったのだから驚きである。

もしこの氷山空母《ハバクック》が完成していたら、世界最大の空母となっていただろう。

しかし開発に必要な資材と研究が困難に伴い、あらゆるコスト面を理由に計画は中止された。

 

「何ということだ。これほど重要な情報が1週間以上も棚ざらしになっていたというのか!?」

 

ロウハンは怒声を張り上げた。

 

「けしからん。その分析担当員を死刑にすべきだ!」

 

「まあ、待ちたまえ」

 

湯浅主席は抑えた口調で答えた。

 

「そんなことよりも、なぜ日本にこんな空母と、奇想天外な艦娘たちが出没したか考えるのが先だ」

 

「日本はまたしても例の魔法を使ったのでしょうか?」

 

ヨウ総参謀長が忌々しげに言った。

 

「ステルス重爆などを出現させた同じ手口です。現代人を超えた何者かが、日本と艦娘たちを手助けしているのです」

 

「うむ」

 

湯浅は唸った。

 

「しかし、そいつはいったい全体、何者なのだ……?」

 

「それを知るには、馬鹿な日本政府の要人か提督のどちらかをひとり捕虜にしてきて尋問するしかありませんが、それはちと難しいと思われますが……」

 

コウ政治部主任が言った。

 

「待て、我々には偉大なる中岡大統領閣下が創設した拉致専門部隊がいるではないか」

 

チンへイトク南京区司令員が言った。

 

「かつて偉大なる北朝鮮の指導者たちは、1970年代に日本をはじめとする各国の人間を、何十人も拉致した。

我が子同然ともいえる特殊工作員たちを出動させたらどうでしょう?」

 

湯浅はニッコリとした。

 

「確かに北朝鮮の工作部隊を模倣し、偉大なる中岡大統領閣下様が直々にお認めになったのだから間違いない。

ただし一般人ではなく、政治高官などではないぞ。

それに今は平和ボケの日本と違って厳戒しているから、我が子ともいえる特殊工作員たちが日本に潜り込むこと自体が難しい。ましてや高官か提督に近づくことなど不可能だろう」

 

「しかしその作戦はやらせるべきです。ダメで元々です。大胆な作戦ほど成功するという軍事的セオリーもあります。ことによると成功するかもしれません」

 

「うむ。それでは大統領閣下様に直々お頼みしよう」

 

湯浅は唸った。

 

「君の言う通り、ダメもとで試してみようではないか。それよりも日本に空母と新型艦娘がいるとなると、征球作戦は根本から練り直さなければならないだろう。

まずそちらを優先にする」

 

「分かりました」

 

「それからその報告を怠った分析担当員のことだが、処罰することには及ばない。日本が空母と新型艦娘を持っているなど信じる方が無理だからな」

 

湯浅は念を押した。彼は人が無意味に死ぬのを好まない人間だったのである。




某コンボイのように失敗しかしないような作戦と、もはや失敗フラグを立てているようでもあります。
もはや連邦国事態が自分の首を自分で締めているような気もしますが。
連邦国も戦略爆撃機はありますが、もはや旧式爆撃機なので空爆自体も怪しいですが。

長話はさて置き、次回も連邦視点であります。
またしてもはお久しぶりと言ってもいいでしょうか、あの悪党大統領が現われます。
また戦艦水鬼さんも現れますので彼女の内心に、彼女の苦労も分かりますので、こちらも注目するといいかもしれません。
そして連邦国の特殊工作員の実態も少しですが、分かりますのでお楽しみを。

それでは第四十三話まで、ダスビダーニャ(さよならだ)。
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