超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》 作:SEALs
予告どおり今回もまた連邦視点からでありますが、今回は戦艦水鬼さんが主役の話しです。
ついに彼女の前にも、あの人と対面し、そして彼女にとって懐かしい人物との再会でもあります。それは誰なのかは本編を見ての、お楽しみであります。
長話はさて置き、それでは本編であります。
どうぞ!
戦艦水鬼は深いため息をついた。
顔色が優れないのは、このところ脳筋ゴリラこと中岡や哀れな連邦幹部たちによる愚痴や、さらに裏切り者の同胞たちなど数多くの不本意な報告が続いているからだ。
とくに謎のステルス重爆と言うものに空爆があった後日には、荒れるから困る。
連邦軍の、むろん自分に好意を持つ者から聞いたが、火病と言う名の精神疾患だと聞いた。
しかもこの病気は朝鮮人特有の病気であり、アメリカの医学でも存在する病気だと言う。
すぐにキレるか、または子供のように駄々をこねるようだから尚更困るものである。
それゆえに胃薬や栄養ドリンクが手放せない状態になり、そして仮眠が必要な日々が続く。
しかし同胞たちと、いや、それでも人間と艦娘たちと同じく彼女も食事をしなければならないが、食事も摂れる日と摂れない日も続いた。
しかし、今日は運よく食事が摂れた。
因みに本日の夕食は、ローストビーフとサラダ、スープ、ライス、苺のレアチーズケーキという豪華なものだった。大好物のものばかりだったのにも関わらず、ほとんど食べ物の味が分からなかった。
なお苺のレアチーズケーキに関しては、ひとつだけ残った瞬間、平和な戦い、穏やかな戦いともいえるジャンケン大会が繰り広げた。なお食堂にいた者たち全員参加である。
むろん勝ったのは戦艦水鬼だが、彼女は食べる気も失せたため、他の者にあげた。
「ホント、嫌ニナルワネ……」
青息吐息をしながら、戦艦水鬼は私室に上がった。
同胞たちはいるものの、基本的には一人暮らしをしているようなものである。
身の回りを世話するのは従兵の宮本伍長、連邦軍兵士であるが珍しく反戦思想を持ち、この戦争は続けても無意味だと言う心優しい伍長である。また彼も彼女の同胞たちに気に入られており、最近では誰かと付き合っているのではないかと言われているが本人は否定している。なお基本的に戦艦水鬼派、組織内の恋愛は認めている。
ある意味、敵である元帥たちのようにしているとは思うが、さほど気にせず、むしろ普通だと思えるようになってきた。ただし脳筋ゴリラこと中岡たちは艦娘同様に、男をたぶらかす売春婦であると、もはや女性を敵に回す失言を言ったが、抗議するほど暇はないので無視した。
あれこれ考えても仕方ないと戦艦水鬼は、まず時間をかけて、ゆっくりと温かいシャワーを浴びた。
寝不足のために身体中に汗と脂が浮いて、気持ち悪い。
指先から始め、烏の濡れ羽色のように黒く艷やかな黒髪ロングヘアーを靡かせるように、そして全身を隅々まで優しく撫でるように、身体を洗い流した。
気分をすっきりさせたあとは、バスローブをはおって出てくると、宮本が置いていったと思われる紅茶セットが、センターテーブルに置いてあった。
宮本伍長はよく気が利く。痒いところに手が届く理想的な従兵である。
戦艦水鬼は、鼻腔をくすぐる香りのよい淹れたての紅茶に、たっぷりのブランデーと少量の砂糖を入れて啜ったとき、それで人心地をついた。
しかし次の瞬間、冷水を浴びせられたかのように感じた。
広い寝室はむろん無人である。明かりはついているが、壁際がほの暗い。
その暗い壁際に、誰かが立っている。
「誰ダ!」
叫ぶなり身構えた。艤装は装備しておらず、将官のことだから拳銃は手元に置いていない。
この司令部に置けるセキュリティーは行き届いている。自分を襲おうと言うもの者がいるとは考えられない。
しかし、確かに誰かがそこにいた。黒いシルエットがゆっくりと明かりの下に進み出てきた。
グレイのスーツを着た男だった。同じ色のネクタイ、同じくグレイの靴と、グレイづくめの服装だ。
顔立ちは同じ日本人だが、そうでもないとも言え、どこか人種を超越したようにも見えた。
「何者ダ、貴様ハ!」
戦艦水鬼は呻いた。伍長を呼ぶベッドサイドの呼び鈴を押したいと思うが、身体が動かない。
壁には連邦艦から移したクロノメーターが掛かっている。その針もおかしなことに止まっているようなのである。
「突然のところすみません。私のことはミスター・グレイとでも呼んで貰いましょうか」
灰色服の男は綺麗な日本語でいうと、ゆっくりとベッドに腰掛けた。
「ではリラックスして、私の話しでも聞いてください。あなたは深海棲艦司令長官の戦艦水鬼ですな。
あの無能な連邦大統領と彼らの幹部たちよりも、今後の戦争の行方を左右する力がある。
あなた方は連邦軍とともに、沖縄侵攻作戦《征球作戦》を行なおうとしているわけですな。
しかし、それは必ずしも上手くいかないかもしれません。
日本は猛烈な反撃に出て、あなたがた深海棲艦と、連邦軍は思っても見なかった大損害を与えるかもしれません。いいえ、今でも大被害を被ってはいますが。しかし、この戦争においてもう悲劇は充分に起きました。
日本は、ここにきて大きな反撃力を手に入れたのです。実はいうと、それを与えたのはわたしですが……」
ミスター・グレイと名乗った男は、そこでニヤリとした。
さすがの戦艦水鬼でも、背筋が凍るような笑みであったのは言うまでもない。
「ここ数日、あなた方が痛い目に遭っているのはそのためなのです」
「貴方ガ日本ト艦娘タチヲ、両方ヲ助ケテイルノ?」
戦艦水鬼は喘いだ。
「はい、その通りです。そんなところを解釈してもらってよろしい。
それはともかく、わたしが日本と艦娘たちに肩入れする決心をしたのです。
なぜかと言えば、あなたがた深海棲艦はえげつなさ過ぎる戦争をしていると思うからです。しばらく高みの見物をさせて貰いましたが。
例えば無差別攻撃。あれはいけませんね。非戦闘員を一晩に何千、いや何万人とも殺すなんてもってのほかです。倫理もくそもあったものでもありません。つまり、あなた方は勝ち誇り過ぎている。
そもそも連邦国同様、決して負けることのない戦争に日本を引きずり込んだのです。
しかも戦後の日本人は徐々に愛国心は芽生えてきましたが、それでも不器用なのは仕方ないことです。
それを連邦同様に良いことにあなた方は利害が一致したことという単純な理由で、日本と平和を愛する元帥と提督たち、そして艦娘たちの心を踏みにじろうとしています。
しかも、それも完膚なきまでに叩こうとしています。鬼角弾という大量破壊兵器までも使いました。
幸いわたしが張り巡らせたバリアにより、阻止、失敗に終わりましたが。
そして秘かに人造棲艦までも製造したことなんて、非人道的以外なにものでもありません。
ただしあなた方は破棄するようにと連邦を恫喝したのは称賛いたしますが。
残念ながら残された二体の《ギガントス》は、次の作戦で使われるのはご存じないと思いますのでその事だけはお伝えいたします。
それでもひとつの不正だとわたしは考えるのです。だから歴史の流れを少し修正したと言うわけですな」
「コノ戦争ノ趨勢ヲ変エヨウト言ウノカ……?ソンナコトハ不可能ダ」
「歴史の流れと言うものは絶対不可能だと考えているとしたら、それは誤りです。
歴史と言うものは可能性に富んだもので、いくらでも変える事ができますし、しかも未来と言うものも同じく不確かなものでもあります。ただし変える力のある者にとってですが」
灰田は冷たい口調になった。
「だからわたしは警告しに来ました。無駄な抵抗をやめるようにと。もしあなた方が日本を壊滅し、さらに艦娘、提督たちに連邦同様に危害を加え続けることに拘るようならば……あなたがたにとって大きな悲劇が出現するだろう。悪いことは言いません。
今のうちに連邦軍と手を切り、あなた方は手を引いたほうが良いでしょう」
「ソレハデキナイ。コレハ戦争ナノヨ。ドチラカガ降伏スルマデヤメルコトナンテデキナイワ」
本当は講和を結びたいと言いたいが、見ず知らずの人物の前には本音は言えない。
「ふむ、たぶんそう言うとだろうと思いました。見知らぬ者だから耳を傾けることができないのなら、あなたに縁のある人物でもここに呼びましょう。
彼の言葉なら耳を傾けるのではないかと思い、お呼びしました。
……紹介しましょう、山本五十六連合艦隊司令長官です」
灰田が頷くと、壁際の闇に別の人物が現われた。
オリーブ色の軍服に身を固め、軍刀を腰に吊るした小柄だが、立派な体格をした軍人だった。軍服の襟には大将であることを示す三ツ桜星が光っている。
軍帽を被ったその顔は精悍で、ぎょろりとした大きな目、通った鼻筋、そして分厚い唇の人物だった。
「ヤ、山本長官ダトイウノ?」
戦艦水鬼は仰け反りそうになった。自分が見ているのはあの山本長官の亡霊なのか。
「その通りです。かつてあなたとともに戦った長官であります。しかしご安心ください。
彼は復讐するためにここに出てきたのではありません。日本の行き先を心配するあまり、あなたにひと言を言いたくてやって来たのですから」
「歯車は逆転した……その意味をよく考えたまえ」
山本の“ゴースト”は、戦艦水鬼に囁きかけた。
「キミは自分の正義があると思っているかもしれんが、そんなものはないのだ。
戦争ということについては、我々はみんな有罪だ。傲慢、人道への反逆と言う名の罪を。
わたしは死後の世界にいて、それを考えている。キミも考えた方が良い、さもないと取り返しのつかないことになるぞ」
戦艦水鬼は反芻する暇もなかった。次の瞬間、山本のゴーストはすうっと消え失せたからである。
「良いですか、わたしたちは警告しました」
灰田が言った。
「この世には、あなたたちの理解できない事柄があります。それに立ち向かおうとすれば、山本長官が言ったようにあなたたちは遠からず自滅するかもしれません……
そのことをよくお考えください」
次の瞬間、灰田の姿もかき消された。
戦艦水鬼は瞬いた。
束の間の夢から覚めた心地がした。それとも幻覚を見ていたのか。
しかし幻覚にしては鮮明過ぎる。確かにミスター・グレイと名乗る人物と、山本長官のゴーストを自身の目で見た……
しかし未だに彼らの言葉が、耳元に木霊していた。
壁のクロノメーターは、何事もなかったかのように滑らかに秒針を動かし始めている。
自分は疲れすぎていて神経疲労症にかかっているのかもしれない。
全てを忘れるためには酒を、バーボン・ウイスキーをストレートであおり、ベッドに潜り込む。
「アノ男ト、山本長官ガ言ッテイルコトガ本当ナラバ、次ノ作戦時、アノ作戦ガ失敗シタトキニハ同胞タチトトモニ、彼ラニ停戦講和ヲシナクテハ……」
ついに戦艦水鬼さんも、灰田さんとのご対面をしました。
お気づきになった読者もいますが、これは『超空の決戦』を元にしています。
超空の決戦(漫画版)を読みましたが、当時の灰田さん、今とは全然違いますね。
最初は主人公に会っても最後まで招待を明かさないし、口調は今とは全然違います。
今は紳士的ですが、超空の決戦ではなんと言いますか……
落ち着いた口調ではありますが、どこか悪達者なミスター・グレイでした。
それに握手したときも指が六本もあるような気がしたと、左文字尚吾二尉と清水三尉が述べていましたし、不思議ですね。
なお戦艦水鬼さんは艦これwikiにて長門説がありますが、しかしアイオア級戦艦《ニュージャージ》と英東洋艦隊旗艦だった戦艦《ウォースパイト》という仮説もありますが、一体彼女は何者なのでしょうね……
今回は長門説ということで、山本長官と縁があるという事でこちらを採用しました。
あとシャワーシーンは、気にしないでください。はい……
神通「そろそろ、次回予告を…」
長めになりましたが、次回は連邦から打って変わり、日本視点であります。
連邦・深海棲艦たちが沖縄侵攻作戦《征球作戦》を立てている最中、これを阻止するための防衛会議から始まります。
果たして秀真たちはどう立ち向かうのかは次回のお楽しみに。
それでは第四十五話まで、ダスビダーニャ(さよならだ)。
神通「ダ、ダスビダーニャです…提督、お疲れ様です。良いお湯ですね」
温泉は良いですね……
???「イェイェーィ…… 女だ、悪かねぇぜ」
青葉「青葉、見ちゃいました!」
ちょっと、M202ロケットランチャーでお仕置きしてきます。
※説明書読んだから大丈夫です。
???「なっ、何だありゃぁ!? ……こっちを狙ってるぜ!」
青葉「ひえぇぇ……ワレアオバ、ワレアオバ!」
チュドーン!