超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》 作:SEALs
今回は、前回よりもパワーアップしました。
毎度お馴染みですがそれと伴い、台詞なども一部変更している部分がありますが、楽しんでくれたら幸いであります。
それでは、本編であります。
どうぞ!
「落ち着いたか、青葉?」
「あ、そのー、えっとー、そのごめんなさい。司令官……」
落ち着きを取り戻した青葉が顔を上げた。
「落ち着いたのなら良い。ただ……」
「ただ?」
これ以上は恥ずかしいと言おうとしたとき、秀真は鳴り響く大きな爆音、レシプロエンジン音に気がついた。
上空を見上げると、辛うじて双方の攻撃から免れた一機のラジコン、よろよろとふら付きながらも逃げようとする重爆撃機、B-17《フライング・フォートレス》だ。
それに気づいた双方の憲兵、そして古鷹たちは撃ち落そうと狙いをつけたが―――
「全員、B-17を撃ち落すな!」
秀真は言った。
「しかし提督、このまま取り逃がすつもりですか!? また増援が来るかもしれません!」
古鷹はそう言うが、秀真は首を振った。
「いや、このまま泳がす。上手くいけば……」
もしや、と何かを察した郡司は呟いた。
「なるほど。足掛かりを潰したら元も子もない」
「その通りだ。上手くいけば、持ち主の居場所に導いてくれるかもしれない」
「そうとあれば、発信機を撃ち込まないとな……」
「秀真提督、これを使ってください」
傍にいた憲兵が持っていた狙撃銃、高い威力と精度を誇り、現代でも米特殊部隊が制式採用され、マークスマン・ライフルとして活躍しているスプリングフィールド造兵廠開発の自動小銃M14を近代化モデルにしたM14EBR秀真に渡した。秀真は、ありがとうと言い、通常弾から小型発信機付きの特殊弾をM14EBRに装填する。
よく狙いを定め、吸って吐いて、吸って、呼吸を止める。手ぶれが収まり、狙撃スコープのど真ん中に、映り込んだB-17に見事命中、発信機を取り付けたままB-17は鎮守府外へ飛び去って行く。
「ではこちらも準備をして、捜索隊とともに犯人探しに行きますか……」
時刻1800時。
夕暮れに染まった空、鎮守府近くの山を神秘にさせる。
観光客と思しき者は見ているものは、美しい夕陽ではなく、秀真の鎮守府である。
「クソッ……!」
双眼鏡で鎮守府の様子を眺めていた男は顔を真っ赤に染めて、苛立っていた。
何故ならばいま帰投したB-17重爆を除き、潤沢な資金を費やして制作した自慢のラジコンを全て壊されたことに対して男は、よくもよくもと憎悪を込めた言葉を吐き散らした。
「作戦は失敗だ。このままでは”あの方”に殺されてしまう」
彼が言う”あの方”とは提督でありながらも艦娘たちを消耗品としか見ず、過去には左翼勢力と結託し、各鎮守府の提督や艦娘たちに対して、嫌がらせをしてきた主犯格の一人でも有名である。なお、彼を支持する者たちからは『将軍様』と呼ばれ、崇められている。今回の作戦、将軍様の厳命とは、来るべき日に備え、同胞たちと協力し合い、数々のラジコン飛行機や無人機を使用し、ほかの鎮守府に資材が行き渡らないように資材を横取りするという極めて単純な策略だった。しかし、今回はあきらかな失敗である。
一時的とはいえ、数週間足らずで、この鎮守府は復帰可能なほどの損害が少なかったこと。
また重要目標である艦娘たちに甚大な損害を与えることができなかったためだ。
――もしおめおめと報告しに帰れば、死刑は免れないと呟いた。
それほど将軍様と崇められている人物は、完璧主義であり、時代遅れのように『限界はない』という根性論を好む精神主義者でもある。
史実のカルタゴのように「失敗者は死あるのみである」と簡単に切り捨てるのは当たり前、汚名返上のチャンスはないに等しい。また作戦が成功したとしても、昇進すると反逆を起こしかねないため、成功者はつねに切り捨てられる可能性もまた否定できないが。
話しは戻る。
ラジコン男は怒りを押さえる事ができなかった。
その苛立ちを表すように、我を忘れ、男はコントローラーを叩き壊した。
「こうなればあの鎮守府を襲撃して、博愛主義者たる提督と艦娘どもを殺さねば!」
無線機を手にし、かれの護衛兵とほかの仲間たちと交信をしたが、いっこうに繋がらなかった。
首をかしげながらも、もう一度つながるかどうか試したが、同じ結果となった。
またもや些細なことで苛立ったラジコン男は、地面にあった石ころをひと蹴りしようとしたときだ。
ふと、先ほど戻って来たB-17を凝視すると、怒りの顔から一変し、蒼顔へと変貌した。
「こ、これは……軍用の小型発信機! こいつは不味い!」
赤い光がときどき繰り返し、点滅する小さな機械を目にした。
これは先ほど、秀真が撃ち放って命中した小型発信機が埋め込まれているのに気が付いた。
いますぐこの場から早く逃げなければ、と泡を食った男は護衛兵たちとともに逃げようと試みたが……気がついた時には、手遅れだった。鳴り響く一発の銃声に次ぎ、タタタッとリズムよく響く銃声が聞こえた。
すぐ後ろを振り向くと、かれの護衛をしていた兵士たちが少なくなっていた。
各護衛兵たちはMP5K-PDW、カールグスタフM/45、TDIクリス・スーパーVなどといった特殊部隊や特殊工作員が好む短機関銃で応戦したが、圧倒的に不利に等しく、ひとり、またひとりと撃ち殺されていった。
そして、最後まで抵抗した護衛兵は何者かの狙撃を受けて、ゆっくりと前のめりで倒れた。
ラジコン男を守っていた護衛兵たちは、あっけなく全員死亡したのだった。
「………!」
これを視認したラジコン男は、ホルスターから一丁の機関拳銃―――ロシアの各法執行機関や警察、軍に採用され、ロシアのKBP社が開発した短機関銃《PP2000》を取出し、銃口を向けた。
自身に近づく足音が聞こえた方向を見た途端、男は見てはいけないものを見てしまったかのように発狂した。
「う、うわぁぁぁぁぁぁ! 来るな、こっちに来るな!」
男は気が狂ったように叫びながら、突然と現れたものに対し、PP2000を無我夢中になって撃ちまくった。
しかし相手は全弾を直撃しているのにもかかわらず、けろりとしていた。
「な、なんだ、こいつは!」
男が目にしたのは2体の重装甲兵だった。しかも手には軽機関銃を持っている。
この重装甲アーマーは《ジャガーノート》と呼ばれ、EODスーツを戦闘用に改良したボディアーマーである。
なお、ジャガノートというのは止めることのできない巨大な力、圧倒的破壊力の意味を持つ。名前の由来はヒンドゥー教の神であり、14世紀ごろにインドでジャガンナートの祭を見た宣教師が、信者が救済を求めて巨大な山車にひき殺される風景を目撃したと言い伝えられている。
「もう逃げることは出来ない。銃を捨てて、いますぐ投降しろ」
この重装甲兵の正体は秀真であり、彼の手にはFN社が1970年代に開発した傑作軽機関銃《MINIMI》を、米特殊作戦軍の要請で開発された7.62mm×51弾を使用するモデル――Mk.46 Mod1を携えている。
「ストーイ!」
ロシア語で「止まれ!」と警告する郡司も同じくジャガノートを纏い、手にはロシア製軽機関銃PKMベースの改良モデル――PKP”ペチェネグ”を携えている。
そして二人に遅れ、双方の憲兵隊が現われた。
秀真の憲兵隊が携えているのは、米特殊部隊をはじめ自衛隊の特殊部隊《特殊作戦群》が制式採用しているドイツのヘッケラー&コッホ社(H&K社)が2005年に開発した、M4カービンの近代改良化版のエンハンスド(強化/改良)を施したHK416である。
その銃身の下には特殊部隊向けに開発されたアンダーバレルショットガン《M26MASS》が装着されている。
ただし犯人を殺害するのが目的ではなく、確保するため、今回はゴム弾といった非致死性兵器を装填している。
郡司の憲兵隊が携えているレーザーサイトを標準装備している新型突撃銃は、イタリア軍が制式採用しているAR70/90の後継として、ソルダートフトゥーロ計画(未来兵士計画、つまりイタリア版フューチャーソルジャー)下で開発されたARX-160突撃銃である。本来ならばロシア軍好きの彼としては珍しく、このイタリア製のアサルトライフルを制式採用している。
本人いわく「某異世界にて自衛隊が活躍する小説と、その漫画版を読んで真似した」ということらしい。
「提督のご命令通り、上空にはAH-1W《スーパーコブラ》を展開させています」
「こちらも同志郡司の命令通り、上空にはMi-24《ハインド》を展開させております」
万が一に備えて、双方は上空に攻撃ヘリを展開させている。
これらもまた逃げようとしていた特殊工作員らを機関砲で、ハチの巣にしたのは言うまでもない。
「ご苦労様、引き続き警戒を」
「スパシーバ(ありがとう)、同志たち。同志……」
ふたりは憲兵たちを労いの言葉をかけると、郡司はアイコンタクトをした。
「もう一度言う…… 銃を捨てて、いますぐ投降しろ」
秀真は短くうなずき、落ち着いた口調で言った。
「ち、畜生……」
護衛兵は全員戦死し、仲間に見捨てられ、双方らに銃口を向けられた男はPP-2000を足元に捨て、もはや観念したかに思えたが、男は胸ポケットから煙草を取り出した。誰もが投降前に一服とは余裕だな、と思ったが……
「不味い、あの煙草を取り出せ!」
えっ、と驚いた表情を浮かべた隊員たちは秀真の命令通り、すぐに男が持っていた煙草を必死に取り出そうとしたが、あと一歩のところ拘束できたものの男は煙草を咥えた。
その瞬間、煙草をくわえた男は喉を搔きむしり悶え苦しみ口から泡を吹き出してから数秒後――息を引き取った。
「同志、どうだ?」
首の頚動脈に指を当てるも、提督は首を振った。
「駄目だ。死んでいる……」
「北の工作員たちが得意な自決方法だ。敵に捕らわれる前にあらかじめ用意していたカプセル入り薬物で服毒自殺とは……抜かりないな……」
「ああ。ラジコンだけでもかなり時間が掛かるな、これは……」
そうだなと頷き、重い口を開いた。
「……死体とラジコンは回収し、これらの証拠とともに、元帥たちの協力を求めよう」
「そうだな……」
夕陽は沈み、そろそろ夜になる。これ以上の索敵は危険だし、それに古鷹たちも心配している。
「では俺たちも帰ろう、我が家である鎮守府に」
「ああ、そうだな」
死体とB-17を回収した秀真たちは、我が家である鎮守府へ帰投した。
後日……秀真や郡司の鎮守府だけでなく、古鷹の言う通り、ほかの鎮守府も同じくラジコン機による空襲に遭った。
辛うじて防げたものの、しばし出撃可能なところは、ほんの一握りしかいなかった。
某所。
「奴は死んだか」
ひとりの男が尋ねると、もう一人の男は答えた。
「ああ、だけど奴個人のテロリズムで終わるから解明されるまで時間稼ぎができる。自己責任ってことだな♪」
「確かにな。明日は将軍様が直々に、われわれにお褒めの言葉がかかるからこんな嬉しいことはない」
「しかももうそろそろすれば、世界は全て我々のものとなるのが楽しみだ」
「そうだな。つねに将軍様とともに勝利があらんことを願って」
刻々と彼らの計画が進んでいることも知らずに、この首謀者たちはその日を楽しみにしていた。
前回とやや違った展開ではありますが、気に入ってくれたら幸いであります。
なお余談ですが、CoD:MW3の最終ステージにかかるBGM『Arabian End Game』を聴きながら執筆しました。死刑用BGMと復讐BGMも兼ねましてですが。
ラストに関しては次回にそのラジコン男を操っていた(?)男たちの正体が明らかになるとともに、恐るべき陰謀もまた知ることになります。
こちらに関しては前編・後編に分けるかもしれませんが、楽しんで頂ければ幸いであります。
では長話はさて置き、次回もお楽しみを。
それでは第七話まで、ダスビダーニャ(さよならだ)。