超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》 作:SEALs
では予告通り、双方の視点……まずは連邦視点から始まり、次は日本政府視点に移りますのでお楽しみを。
灰田「なお連邦視点ではとある人物がある決心をしますので注目すると良いでしょう。ではではこの言葉に伴い、改めて……」
作者・灰田「「本編であります。どうぞ」」
ヤン司令官から暗号無電でこの報告を受け取った中南海では、久しぶりに明るい雰囲気に包まれた。とくに忠秀副軍事委員会は発狂するように喜んだ。
ついに、連邦軍が日本に一撃を加えたのだ。しかも空母《天安》の各艦載機だけでなく、空母型《ギガントス》の新型艦載機《ヨクリュウ》の能力も充分に発揮できた故に……何よりも味方機の損失もなしに復讐を果たしたのだからだ。
本当ならば戦艦型の《ギガントス》による艦砲射撃の報告も聞きたかったが、次の機会で聞かせればいいと思った。
そう考えると、寧波(ニンポー)から北京に戻って来たロウ海軍司令員は鼻が高かった。
むろん中岡大統領たちの耳にも入り、日本が攻撃されたことに大喜びをした。
なお国民にも歓喜たるニュースとして報道すると、神罰が下ったと喜んでいた。
また各メディアや元著名人たちも輝かしい日として取り上げ、記念日にしようじゃないかネットやSNSなどで掲げていた。
「やりましたな。ヤン中将は」
ロウは言った。
「彼ならきっとやってくれると思いました」
「しかし日本の一地方都市を多少破壊したに過ぎません」
海軍に手柄を取られて面白くもないと言わんばかりに、キョウ空軍司令員が言った。
「これでは、日本の戦力も士気を削ぐことにならないでしょう」
「いや、戦力はともかく、士気については違うぞ」
忠秀は言った。
「日本は太平洋戦争で無条件降伏してから、侵略を受けたことがない。70年以上の平和を享受してきた。朝鮮半島で戦い、またベトナム、インド、チベットで戦ってきた中国様とはちがい、国が侵略されることの心構えが出来ておらんはずだ。空襲を受けてさぞかしショックだったはずだ。しかしこれは始まりに過ぎない。
ヤンの艦隊は太平洋を自由自在に移動して敵を翻弄し、別な都市を攻撃するだろう。そのとき日本人の世論がどう変わるかが見ものだ」
この報告を喜ぶ幹部たちに混じり、戦艦水鬼たちは依然として喜ぶことはなかった。
寧ろ自分たちは恥じるべきことだ。
日本が持つ恐るべきステルス重爆は軍港や各基地など軍事施設だけを空爆したのに対して、
連邦国は戦争には関係のない民間人を虐殺した。
軍港や敵基地ならまだしも市街地を空爆して許されるのかと問いかけた。
これでは山本元帥や英霊たちにどのように詫びればいいのかと、そう考えるばかりであり、もはや最後まで戦わない方が良いとも思えた。
あの灰色服の男ことミスターグレイが言った通り、非人道兵器《ギガントス》が平然と使われたことにより、再生産を決意するだろう。彼とともに現れた山本元帥の亡霊が言ったように歯車が狂い始めたに違いない。それに伴い、中岡たちは日本を完全に怒らせたのではないかと推測した。
「シカシ彼ラハ報復スルダロウ。マダ連邦国ノ大都市ヲ空爆シテイナイ。コレハ明ラカナ政治的メッセージヲ含ム意図的ナモノヨ。コレデ日本政府ノタガガ外レテシマッタラドウスルツモリナノ?」
苛立ちを隠しながらも戦艦水鬼はゆっくりと言い、湯浅も繋ぐように答えた。
「あのステルス爆撃機が北京や上海、南京を爆撃したら、とてつもない被害が出るぞ。我が連邦国は、かつての70年前以上の中国、ましてや発展途上国並みに陥ってしまうぞ」
湯浅の推測に、戦艦水鬼はむしろそうなった方が好都合だと内心に呟いた。
「いいえ、お言葉ですが、わたしはそのような事はないかと考えます」
あくまでも強気な忠秀は言った。
「これまでの経過を見ますと、日本はあくまでも受け身で、ミサイル基地及び軍港などへの攻撃も事前の災厄を摘み取ったに過ぎません。積極的な攻撃には出ておりません。
これは奴らが長年アメリカに守ってもらっていたために骨を抜かれました。
確かに戦っていますが、我々のような冷酷にはなれないのです。
その気質が突然変わることなんてありません、毛頭ないと考えています。
大都市への戦略爆撃はカーチス・ルメイのように極めて冷酷、残酷な行為を平然とするものであり、いまの日本人にはこのような神経は耐えられないでしょう、くくく。
今度もまた日本の象徴ともいえる場所を空爆しても大丈夫でしょう」
忠秀は自信たっぷりに答えたが、その言葉には虚実が入り混じっている。
確かに今までの日本の行動は、剣道で言うところの後の先、つまり敵が動き出してから攻撃し、撃退した。つまり積極的に打って出たことがない。
ただし元帥や秀真たち率いるホワイト提督ならば、古鷹たちを守るために先制攻撃をするが。
これはROE(交戦規則)が定められているのだが、忠秀はそのようなことは知らないが、おぼろげながら感じ取っていた。
もっとも日本軍も日中事変では九六式陸上攻撃機を運用して、世界初の戦略爆撃を重慶で行なったことがある。
重慶はこのため大打撃を受けたが、陥落はしなかった。
戦略爆撃では敵国を甚だしく疲弊することはできるが、それだけでは勝てない。
最終的には陸軍を投入し、首都ないし国全体を陥落しなければならない。
米軍は日本本土侵攻作戦《オリンピック作戦》《コロネット作戦》などを計画していたのは、そのためである。むろん原爆の開発が失敗していれば、行われた幻の作戦である。
しかし史実では完成し、数百万人の米軍兵士代わりの役目を果たした。
ドイツではドイツ国民と第3帝国と共に滅びるまで、ヒトラーは徹底抗戦を宣言した。
その結果、ソ連軍が怒涛の如く侵攻し、民間人も総動員するほどの地獄の市街戦を繰り広げ、ベルリンは地獄の業火に包まれた。守りに徹していたドイツ軍は持久戦略に移り、残党部隊や国民擲弾兵をも総動員した。
持久戦の目的は敵をできるだけ長期的に留めさせるだけでなく、輜重が枯渇するまでの辛抱だということで戦ったのだ。言い換えればソ連軍が兵站枯渇して撤退するのを待ちつつ、米英連合軍が市内に突入、彼らに降伏するまでの時間を稼げということである。
しかし米英軍は、その間にエルベ河沿いに留まって傍観していたのである。
ソ連がドイツと死闘を繰り返し行い、約2000万人の犠牲者を出した。
その報復を行なわせろとスターリンが主張したが、この身勝手な独裁者の主張を聞き入れたために、ベルリンにいた女性たちは死ぬよりも酷い目に遭わされた。
8歳から70歳までの全ての女性はレイプされたと言われ、このため連合軍はのちに堕胎させるための病院を特設しなければならなかったほどである。
強姦の結果、妊娠した女性が膨大な数に上がったのである。
もしこの時、米英連合軍がベルリンに突入していたら、このような悲劇は防げたのだ。
そんな彼らは傍観していたのである。
パットン将軍ですらもソ連軍の受け入れに大反対し、次の敵になると主張した。
これがのちに正しいとなったのは戦後である。
日本人は確かに軟弱になり、サムライの気概を失った。
同じ日本人でありながらも忠秀のその指摘は確かである……
しかし完全に喪失したのではない。
そのDNAは脈々と目覚めた、いや、もはや完全に目覚めていた。
深海棲艦の登場、連邦国による敵視、そして仙台の破壊がきっかけだったことにより……日本人を完全に目覚めさせたことに気が付いているのは、戦艦水鬼たちだけである。
高らかに宣言した忠秀や彼を支持する幹部、中岡たちは気づいていなかった。
コイツラニ、付キ合ウ必要ハナイ、コノ作戦終了後ニハ同胞タチトトモニ脱出ダ……
彼女もまた新たな決心をしたのである。
霞ヶ関・首相官邸地下コマンド・ルーム
国防会議が開かれ、連邦・深海棲艦の動きをどう読むかについて統幕長と防衛省長官との間で激論が交わされていた。
まず安藤首相からは、仙台攻撃をなぜ許したのかについて、杉浦統幕長はこう答えた。
「残念ながら、両敵は我々の思い込みの逆を衝いたことは確かです。我々は東京・大阪がターゲットばかりと思い込み、こちらの重要防衛を展開していました。
しかし考えてみますと、敵にとってはその防衛ネットワークを躱すことがまず大切で……今回のようにターゲットはどこでも良かったわけです。
空母戦闘群・人造棲艦は快速ですから、いったん先行されると容易に追いかけられません。
東北は三沢基地があるとはいえ、我が国のなかではもっとも防衛優先順位の低い地域でしたから、そこを衝いたわけです」
統幕長の言っていることは、別に東北地域を蔑視したわけではなく、軍事的視点からものを言ったまでである。
つまり、従来の自衛隊の最大防衛方面は北海道だった。
冷戦当時のソ連を仮想敵国として見たからである。
しかし1991年にソ連は崩壊し、ロシア極東軍が然したる脅威でなくなると、次の重点地域は南……沖縄県に移った。今度は中国・韓国・北朝鮮と言った日本にとっては最悪な隣国であり、自称『先進国』の皮を被った後進国であり、ならず者国家が仮想敵国となったからである。
「ふむ、キミの言いたいことはわかった」
安藤はそっけなく言った。
「ともかく敵はまだ発見されていない。連邦空母戦闘群、人造棲艦は野放しになっているわけだ。彼らは次にどこを狙うと考えるかね?」
「わたしは、彼らがさらに北に上がると考えます」
矢島防衛省長官は言った。
「札幌市、あるいは我が切り札とも言える十勝のZ機基地を狙うでしょう。これが成功すれば、空母戦闘群の指揮官にとっては殊勲章です。
なにしろ、Z機は彼らにとっては最大の目の上のたんこぶですから……」
矢島は古風な言い回しで答えた。
「いや、本職は…敵の指揮官の立場に立って、よく考えてみました」
杉浦統幕長は静かに答えた。
「確かに北上し、北海道を狙うこともひとつの選択肢でしょうが、十勝基地上空には例のシールドで守られ、核ミサイルを無効化したほどですから、敵艦載機による空爆、敵艦の砲撃などのあらゆる攻撃でもびくともしないでしょう。ですが、敵指揮官としては北に向かうと見せかけて空母戦闘群は反転南下して、我々の目を再び欺いて硫黄島を攻撃、その後東京を狙います。
人造棲艦は空母戦闘群から離れ、深海棲艦とともに北上して、北海道攻撃をするかと思います……」
「北だ!全敵艦は北に決まっておる!」
「いや空母戦闘群は南、人造棲艦は北です!あなたは実戦を知らなさすぎる!」
矢島の反駁に、杉浦も負けじと言い返す。
この口論で二人は互いの頬を引っ張り合うほどの展開になった。
「「いい加減にしたまえ!!」」
安藤・元帥の言葉でようやく治まり、注意を促された矢島・杉浦は深く反省した。
「戦闘機主力群は、もう北に移したのかね?」
「はあ、三沢基地と新千歳に移動しました」
安藤の問いに、佐伯空幕長が答えた。
「空母《飛鳥》率いる第八護衛艦隊に、秀真・郡司提督率いる連合艦隊は、いまは何処いるのだ?」
「現在地はここであります」
コマンド・ルームにはコンピューター・データーに映し出す巨大なスクリーンがある。
黒川海幕長が席を立つと、レーザー棒を持ってそこに近づき、太平洋上の一点を指し示す。
「房総半島の真西300海里を30ノットで北上しております」
「ふむ、つまり我が軍の主力は北に指向されているわけだな。統幕長の意見が正しく、敵が再び我々の裏をかくつもりでいれば、東京・北海道が危ない。
第八護衛艦隊は房総沖で留めるように。万一敵が北海道を攻撃した場合は、秀真・郡司提督率いる連合艦隊、空自・多国籍両軍の航空隊および高射砲群で対応するように。
我が空母戦闘群は、保険として東京近くに留めておく」
「……分かりました」
最高司令官である首相の命令には逆らえない。矢島はそう答えるしかなかった。
このとき、空母《天安》はじめ連邦空母戦闘群はどこにいたか。
杉浦統幕長の推測どおり、敵は大胆不敵な行動をしていた。
仙台攻撃を終えた全攻撃隊を収容した両艦隊は、直ちに反転して南東に向かった。
これは急行して来るだろう日本艦隊を撒くためである。
おそらく敵は、我々が北上するだろうと考えるだろうと、ヤン中将はそう読んでいた。
もちろんそうしても構わない。
ヤンの選択肢はふたつ。ひとつは北上して北海道を叩く。
できればあの恐ろしいステルス重爆、Z基地を叩きたいが、核ミサイルで駄目だったものが、両艦載機による空爆が効くとは思えない。
もうひとつは北に向かうと見せかけて、じつは南東から迂回して小笠原諸島の北をかすめ、伊豆諸島の南端まで北上し、そこから東京攻撃に行なう。
おそらく敵の防衛主力、特に戦闘機群はきたにしこうされているだろうと、ヤンは読んでいた。
敵は、まさか我々が伊豆諸島にまで近づくとは思うまい。
発見もされにくい、索敵とすればもっと遠力を索敵しているはずだ。
そうすれば、硫黄島を潰す必要もない。むしろ、そうすれば所在がばれてしてしまう。
ヤンの目論みはあくまで敵の鼻面を引き起こすことであり、そのために常に敵に一歩先に行く必要があった。
ヤンはものの10分ほども考えた末に、独断を下した。
空母戦闘群は東京攻撃を行ない、人造棲艦は深海棲艦と共に北海道を攻撃すること決心をしたのである。これを行なったあとは逃げきれないかもしれない。それでもよかった。
敵の首都およびステルス重爆基地を攻撃したと言う栄誉は、永遠に歴史に残る。
連邦海軍の面子も大いに立つと言うというものだ。
もはや慢心状態の連邦幹部たちを見て、戦艦水鬼さんたちは決意したようですが、これは後ほどどういう展開になるかは、まだ先でありますのでしばしお待ちを。
なお原作では空母《天安》率いる空母戦闘群は、ヤン中将が下した命令通り『東京攻撃』のみを実行しますが、しかし人造棲艦《ギガントス》がいるため、空母棲姫たちとともに北海道にあるZ基地を破壊するために北上し、北海道を目指します。
ここでオリジナル展開となりましたが。
灰田「この前の冬イベントでは派手にしていましたよ。Z機基地も危うかったんですよ。
わたしとしては支援爆撃さえあれば、支援攻撃しても良かったのですが……」
Z機による支援爆撃要請を実装したら、流石に拙いでしょう。富嶽や連山でも同じく。
秀真「もしも爆撃機による支援要請が実装したらしたで、飛行場姫や集積地棲姫たちなどの陸上タイプには大ダメージ与えるだろうな」
250キロ、500キロ爆弾の嵐でしょうね、これはこれで……長くなりかねないから次回予告をお願いしますね。
灰田「承りました。では次回は連邦空母戦闘群を追いかける第八護衛艦隊視点からになります。またマザーも少しですが活躍しますのでお楽しみを」
マザー『私の手に掛かれば、どんな戦況でも大丈夫ですよ』
灰田「ではそろそろお時間になりましたので……。次回まで、第六十二話までダスビダーニャ(さよならだ)」
秀真「ダスビダーニャ」
マザー『ダスビダーニャ』
ダスビダーニャ、次回もお楽しみに。