超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》 作:SEALs
では予告通り、南方海域で海上封鎖を目論もうとする米原潜部隊を撃沈すべく、こちらも灰田さんの切り札のひとつこと原潜《海龍》との死闘を繰り広げます。
灰田「果たしてどういう展開になるかは本編のお楽しみに」
ではこの言葉に伴い、改めて……
作者・灰田「「本編であります。どうぞ」」
その日の日付が変わる直前……すなわち5月28日、2345時
原潜《ホノルル》の司令場では、当直していた副長が、ソナー・ルームから奇妙な報告を受けた。
「コン(司令所)、こちらソナー、微妙なノイズをキャッチしました」
「ソナー。微妙とはどういう事だ?」
副艦長スミザール少佐は聞き直した。
「それが……ごく小さな音でして、キャビテーションにしてはディーゼルエレクトリック艦にしても小さすぎます」
キャビテーションとは、スクリュウー音が水をかき回す際に真空が発生して、そのために引き起こされるノイズのことである。
「音紋のデータはないのか?」
「ありません、ともかく今まで聞いたことのないノイズです」
これまでの潜水カ級などの深海潜水艦ないし、かつての米国の仮想敵国だった中国潜水艦ではあり得ない……これは日本の潜水艦または潜水艦娘ではないなと少佐は考えた。
日本潜水艦や潜水艦娘たちのノイズパターンは、今まで何度も協同訓練や作戦などで聞いたことがあるので、全てデータに入っている。
「……分かった、艦長を起こす」
副長は艦長室に通じるマイクを握った。
「艦長、すぐに司令所においでください。ソナーが奇妙な音をキャッチしました」
「……分かった。すぐ行こう」
艦長室で仮眠していたレドフォード大佐が帽子を被って上がってきた。
帽子は士官特有の権威とも言える象徴なので、必ず被らなければならない。
「ソナー、こちら艦長だ。詳しく報告しろ」
「はい、いまスピーカーに出します」
すぐに微かなノイズがスピーカーに響いた。
微かなざわざわと言う音で、キャビテーションに似ているが、そうでもないようである。
「ソナー、こいつを出している相手の位置は確認できるか?」
「それが不可能なのであります。パッシブ・ソナーでは探知できません」
艦長と副長は顔を見合わせた。
「……やむを得んな。ソナーを打て、ただしワンピンだけだぞ」
アクティブ・ソナーを打てば、敵にこちらの位置を悟らしてしまうためバレテしまう。
しかし、敵の正体を確かめなくてはならない。
ロサンゼルス級原潜は最大速力32ノット出すので、例え敵潜に攻撃されても逃げ切れる自信はあった。
むろん敵が魚雷発射しようとすれば分かる。その発射管の扉が開く音で分かるのだ。
ピーンという音波の発振音が、艦内に響き渡った。
それが敵潜だとしたら、もし近くにいればカーンという反響音が聞こえてくるはずなのだが……しかし、肝心の音が聞こえなかったのである。
「コン、探知できません」
ソナー員が言ってきた。
「うむ……」
レドフォードは唸った。
「双方じゃなければ、いったい何者なんだ?」
原潜《ホノルル》のクルーが困惑したのも無理はなかった。
この相手は普通の潜水艦やイムヤ率いる潜水艦娘たちではなく、海自が放った《海龍》だった。
海龍・第一戦隊……すなわち101から110までの10隻は南シナ海のタンカーおよび病院船撃沈海域に派遣され、2隻がペアを組んでアメリカ原潜狩りに当たっていた。
つまり、ハンター・キラー・グループである。
彼らは鹿児島湾から出撃したが、なにしろ最大速力36ノットも出すので、目標海域には48時間で到着した。
《ホノルル》のソナーが耳にしたのは、ハイドロフォンが捉えた海龍のハイドロ推進ジェット音である。
海龍の特徴は推進器……つまりスクリューを使わないことである。
スクリューを使うと、どうしてもキャビテーションが生じて敵に探知されてしまう。
未来人の設計した潜水艦は、核融合炉を使うと言う特徴があるが、推進システムはハイドロ(水流)ジェットを使うという特色もあった。
艦首から水を吸い込んで、圧力を加えて艦尾から放出する
この推進はコンピューターで自由自在に操れる……分かりやすく言えばイカやタコと同じ推進システムの調節が可能である。
深海に潜る潜水艇は、やはりこの水流ジェットを用いり、補助用としてスラスターを使うのが、潜水艦のような巨大な艦に使った例はない。
スクリューに比べて推力が落ちるからである。
もっとも旧ソ連が開発した輸送潜水艦として、最大級の原潜《タイフーン》級がこの艦の推進システムを補助用として使った例がある。
音が消えるので、敵から姿をくらますにはこれが理想的だからである。
このとき海龍101と102のペアを組み、パッシブ・ソナーで《ホノルル》を探知し、秘かに接近していた。
海龍101号の艦長は、柴崎一佐である。
敵潜がソナー発振したことはすぐに分かった。なにしろ完全水中ステルス潜水艦なので、音波を吸収してしまい、反射音はしないが、そのデータは司令所の統合コンバット・スクリーンに現われる。
海龍101号は現在位置……敵潜から30キロメートルの距離にいて、北東に5キロメートル離れて、海龍102号が追随していた。
敵潜は針路180で南下し始めていた、速力は25ノットである。
柴崎艦長は、5キロメートルまで接近してから雷撃するつもりだった。
前部魚雷発射管の四発を全て使う。それだけ接近しても敵に探知されるはずはない。
海龍同士による模擬戦も行われ、その静粛性には驚かされた。
ともかく、エンジンに関するノイズは全く聞こえることもなく、推進音も聞こえない。
極めて耳の良い聴音員に掛かれば、なんだか訳の分からないノイズが微かに聞こえるだろう。
しかし、さすがに魚雷発射管扉が開く音は消せない。
そのとき初めて、敵潜はこちらに近くにいることに気付くことになる。
発射された魚雷の急ピッチの推進音を聞きつけ、その方角と速力を割り出して緊急回避することになる。そのときは魚雷を攪乱させるためにチャフを放出する。
模擬訓練は、海自の保有する通常型潜水艦《そうりゅう》などを相手に行なわれ、これはターゲット役を務めた。
しかし安全装置を解除できるギリギリの距離で発射されると、いかに回避しても逃げ切れないことが分かった。
なにしろ海龍の装備している魚雷は、音響ホーミング、さらに熱源双方追尾センサーの両方を兼ね備えており、50ノットの高速である。
炸薬も海自やPMCのよりも威力があり、実験結果は、およそ30パーセント増しの威力と計算された。
「針路180維持、深さ250メートル、速力30ノットに上げよ」
ホノルルでは、レッドフォード艦長が命じた。
ホノルルの蒸気タービン音が高まり、ぐうっと増速した。
彼はなんだか分からないが、背筋に悪寒を感じた。
なんとかして、こいつを振り切らなくてはいけないとホノルルは速力を上げつつ、深度250メートルに潜っていた。
ロサンゼルス級原潜の安全最大深度は、約300メートル。
プラス50メートルのマージンがあるが、1メートル潜ることに圧壊の危険が増す。
「目標は潜りました……速力30ノット」
海龍101号では副長がスクリーンを睨みながら報告した。
「針路そのまま」
「よし、35ノットに増速」
海龍はそのまま30ノットで敵に忍び寄っていたのだが、最大速力前後に増速した。
「距離10キロメートルになったら知らせろ」
柴崎艦長は当初の作戦を変え、距離10キロメートルで雷撃するつもりである。
なにしろ雷速が速いので、それだけ離れていても目標には2分足らずで到着する。
「……距離10キロメートルです」
副長が報告する。
「雷撃戦用意」
艦長が砲雷長に報告する。
「魚雷管扉開け」
艦長の命令とともに、前部の魚雷発射管の扉が開く音が聞こえた。
強い水圧に逆らってモーターで開けるので、どうしても音が発生するのは避けられない。
ホノルルでは、聞き耳を立てていた先任ソナー員の兵曹が顔色を変えた。
「魚雷発射管扉らしきものが開きました」
「しまった、やはり敵潜だったか!」
司令所では艦長が唸った。
「敵魚雷が来るぞ、チャフを撒け!」
チャフとは、音響探知を妨げる多数の薄いアルミ破片である。
「敵、魚雷発射しました。4発、速力およそ50ノット」
矢継ぎ早に報告が来る。
レッドフォード艦長と副長は顔を見合わせた。
「なんだと、そんなに速いはずがない!」
それも通りで、50ノットと言えば時速90キロちかくである。
「距離5000メートル、4500メートル」
副長が魚雷との距離を読み上げる。
「2000メートルでチャフ発射」
「了解……」
「3500メートル」
「針路360、上げ角5度」
レッドフォード艦長は命じた。
敵の魚雷があまりにも速すぎるので、振り切れないと覚悟し、急旋回して逆に魚雷に向かっていくことによって、敵潜が安全装置を解除するまえに魚雷と衝突するか、すれ違おうとしたのである。
大胆な行為だが、だから返って成功する。
「チャフを発射せよ!」
命令に応じて、艦尾から大量のチャフが発射された。
しかし、このときすでに魚雷は安全装置が自動的に解除されていたのである。
目標との距離が1000メートルを切った瞬間、自動的に解除されるように設定されてあった。
しかもこの魚雷は自艦の音響や熱源は判別して追わないよう、セットされている高性能の優れものである。
……というのも接近戦で雷撃し合うと、敵に逸らされた魚雷が目標を探して迷走、自艦に向かってくることもあり得るからだ。
「魚雷振り切れません、インパクトまで10秒!」
副長の絶叫が響いた。
「くそっ、こいつはいったい何者なんだ!」
レッドフォード大佐は叫んだが、それが大佐のこの世での最後の台詞である。
ホノルルはなおも大きく回頭していたが、魚雷4発のうち2発が命中したからである。
凄まじい爆圧とともに、その艦体は真っ二つに裂けて、彼や多くの乗組員が即死した。
司令所にいた全員も即死した。幸いにも一瞬で死ねたことに関しては運が良かったのかもしれない。
ほかの2隻《シカゴ》《サンタフェ》も海龍ペアに追い詰められて、同様の目に遭って沈められた。
しかし、サンタフェは逃げ回ったあと撃沈される寸前、ラジオブイを打ち上げ、敵潜のデータを緊急通信したので、そのデータはハワイの太平洋司令部に届いた。
太平洋潜水艦艦隊司令官・ヒメネス中将は、これを受け取って驚愕した。
敵潜は速力推進力35ノット以上。雷速50ノット以上。
静粛性は極めて優秀、キャビテーション・ノイズなし、探知不可能という内容だったからである。
それきり3隻からの定期通信も途絶えたので、3隻とも撃沈されたと認定された。
中将は、ディエゴ大将にその旨を報告した。
「3隻とも沈められたというのか、偵察衛星が捉えた例の潜水艦によってか!?」
ディエゴはその報告が信じられない様子だった。
「キャビテーション・ノイズなしとは、どういうことだ?」
「おそらく敵潜は、我々のそれとは違うシステムを持っているものと考えられます。
ジェット推進のような……しかしハイドロジェット・システムではこれほどスピードを出せないはずではありますが、より強力な機関エンジンを積んでいるのでしょう」
「しかも、静粛性に優れていると言うのかね?」
「我々の常識は反しますが、今の日本では何でもあり得ます。2隻の原潜《トーピカ》《バッファロー》による十勝攻撃も失敗しましたし……」
ヒメネス中将は静かに答えた。
「おそらく画期的な原子力機関を搭載しているのでしょう」
しかし、さすがのヒメネスもそれが核融合炉であるとは思っても見なかったのである。
ペンタゴンにもこの報告が上げられ、ヨーク大将は顔色を変えた。
なにしろ、日本はアメリカの誇る原子力潜水艦《ロサンゼルス》級を100隻も持っていることが確認されている。
偵察衛星がない今は、その位置を確認することが出来ない。
余談だが、かつてアメリカ海軍が日本近海に張り巡らせたソーサス、つまり海底潜水艦探知網も機能不全に陥っていた。
ロサンゼルス級があえなく撃沈されているということは、より戦闘性能の落ちる戦略原潜には敵うはずもない。
つまり、容易く出動させることが出来ないのである。
これに伴い、空母戦闘群の水中スクリーンも信頼できない。
連邦残党軍は犠牲を払ってでも出動させろと言ってきたが、迂闊に出動は出来ない。
敵を知り己を知れば百戦危からずという言葉を知らない連中の言う事を聞いたら勝つ前に経済崩壊しかねない。
現状に戻る。
ペンタゴンでは、必死にこの原潜の喪失のことは隠蔽した。
全海軍に厳重な緘口令が敷かれ、幸いマスコミには嗅ぎ付けられないで済んだ。
もし世界中にこの噂が広がれば、ハドソン大統領のもっとも心配するドルの大暴落が起こりかねなかった。
その2日後……5月31日のことだ。
パールハーバーに4個空母戦闘群が揃い、ようやく西太平洋に押し出す準備が整うことになってきた。
また連邦残党軍が提供してくれた技術によって生まれた最新鋭戦闘機《ヘルキャット》や人造棲艦《ギガントス》も準備もできた。こちらは連邦残党軍が担当することに決定した。
これからが本番だなと、ヨーク大将は考えた。
我が国が誇る空母戦闘群で日本海軍を翻弄させてやると……
「見ていろよ、黄色い猿と兵器女ども目に物を見せてやる!」
しかし、彼らはまだ知らない。その言葉が自分たちに返ってくることも知らずに……
もはやフラグを立てたヨーク大将の台詞と共に、今回はここまでです。
因みにこの台詞は漫画版でしか見られません。
灰田「人はそれを”死亡フラグ”と言います」ニヤリ
まあ、そうなるな(日向ふうに)
秀真「どぶねずみの味方に付いたアメリカなんてダメリカさ、もう”飴”と言っても良いだろう」
古鷹「相変わらずキツいですね、提督」ニガワライ
……否定はしませんけどね、わたしも。
神通「提督、この神通が行きます!」
海の藻屑にするならば良いけど、無理はしちゃダメ。
灰田「あまり時間を掛けてはいけませんので、わたしが予告編をしますね」
よろしくお願いいたします。
灰田「次回はグアム基地を爆撃したZ機部隊、待機していたZ機部隊とともに大東亜戦争の開戦日に行われた”真珠湾攻撃”を、第二次真珠湾攻撃を開始します。
ここでもまた米軍は自慢の空母戦闘群が少しですが登場します。果たしてどういう展開になるかは次回のお楽しみです」
次回もまた遅くなるかもしれませんので、ご了承ください。
灰田「ではそろそろお時間になりましたので……。次回まで、第七十九話までダスビダーニャ(さよならだ)」
秀真・古鷹『ダスビダーニャ』
作者・神通『ダスビダーニャ、次回もお楽しみに』