超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》 作:SEALs
では予告どおり、追尾者たちとの海戦であります。
そして毎度お馴染みでありますが、それと伴い、台詞なども一部変更している部分お楽しみを。
それでは、本編であります。
どうぞ!
一同は航路を偽装しつつ、目的の鎮守府を目指していた。
この海域には深海棲艦がいないため、安心して渡航できるが、つねに油断は禁物である、という警戒心を忘れずにしていたのだが……さすがに空腹を知らせる音が聞こえたため、一同は、少し遅めの昼食を摂っていた。
「「「「いただきます」」」」
昼食はニコライたちが脱出時に用意していた軍用携帯食料、陸自が制式採用している戦闘糧食Ⅱ型、通称「パックメシ」を用意した。戦闘糧食Ⅱ型はⅠ型の後継であり、米軍のレーション「MRE」を参考にしている。紙箱の中身を取りだし、そのなかに少量の水を注ぎ、レトルトパックと化学反応を起こすヒーターを、再び紙箱に入れて温める。
そして10分後には……お湯を沸かすことなく、温かい食事ができる便利な代物だ。
また少数だが戦闘糧食I型(缶タイプ)もあるので、こちらも開けて用意した。
「すまないな、大したものでなくて……」
出来上がった食事を渡したニコライは申しわけないといった表情をしていたが……翔鶴たちは短く首を振った。
「いいえ、とても美味しいですし、こんなに温かい食事なんて久々です」
「ニコライさん、この牛肉の野菜煮、凄くおいしいです!」
「翔鶴姉の言うとおり、前まではこんな豪華なもの食べらなかったもの……」
「そうね。死んだあいつらは毎日フランス料理やイタリア料理などのフルコースで、私たちは粗食……だけどそれは、まだ良い方だったし、ひどい場合は食事抜きだったときもあったわ。食事が出た時には、わたしは酒匂に、能代は阿賀野姉ぇに分けていたわ……。
いつも、ふたりは良いよと言ったけど、それでも可愛い妹と、天然だけど阿賀野姉ぇは、大切な姉だから……」
彼女たちは重い口を開きながら答えた。
一般人にとって食事というものは日常的なものだが、兵士たちにとっては心を落ち着かせる娯楽のひとつでもある。戦場での食事は、常に冷たいものが当たり前で、温かい食事だと、それだけでも気分が高揚するのである。
前線で戦わないブラック提督たちは贅沢な食事をし、懸命に戦っている彼女たちには粗食または食事抜きを中心とは聞いてあきれた。それをつまらなくするのは、指揮官として、いや、人間として失格であると言いたい。
これは長年戦場で戦ってきたニコライの経験だからこそ、分かることだ。
またこれらを聞いたら戦友である秀真なら特殊部隊を投入し、その鎮守府にまで行き、ブラック提督に鉄槌を下すか、郡司も同じく尋問か某ロシア大統領の言った「便所の中に隠れようと息の根を止めてやる」とことぐらいは当然するだろうし、彼女たちのために豪華な料理を作るだろうなとニコライは脳裏をよぎった。
「そっか……私のもあるけど食べないかい?」
「俺のチキントマト煮があるけど食うかい?」
「ペパロニのピッツァだ、激ウマだでぇ」
「お前、どこからピッツァを……まぁ、いい。デザートにはドライフルーツもあるし……それにもうひとつはより贅沢なフルーツカクテル缶もあるから開けて、みんなで食べよう」
「皆さん、良いのですか?」
「ああ、構わないよ。いま紅茶も用意するから」
どんな時でも艦娘を大切にすることは忘れてはならない、まして人の心も同じく、という秀真や郡司、元帥の言葉を心掛けているニコライたちは、自分たちの食事を分けた。翔鶴たちはそれを嬉しそうに食べている姿を見たニコライたちは微笑み、彼女たちも微笑み返した。食事が済むと、かれらが用意してくれた温かい紅茶とドライフルーツを堪能した。
翔鶴たちは、紅茶のたちのぼる香りとドライフルーツとフルーツカクテル缶という久しぶりの食事後のデザートと芳醇な香りを漂わせる紅茶を楽しんでいた一方……
”目標艦タル空母二、軽巡一、駆逐艦一、高速艦艇一、ヲ含ムモノト見ユ……”
遠くから、その様子を窺う一隻の深海棲艦、潜水カ級が、明瀬たちの艦隊に報告した。
「よし、こちらもヲ級を含む機動部隊を出す。お前はさっさと基地に帰れ」
カ級は不満はあったが、ただ了解と返答するだけであった。明瀬の命令通り、彼女は友軍がいる基地へ帰投した。明瀬にとっては、狩りのような娯楽に等しく、弱いものをいじめるのが嗜好であった。
これほどたちの悪い趣味を持つのは、ブラック提督たちのなかでもトップと言っても良いし、多くの提督たちから“捻くれた小男"と呼ばれるのも納得である。
「いいか、俺たちが到着するまで足止めすればいいんだ。もしも1隻でも轟沈させたら、お前たちを沈めてやるから覚悟しろ」
無表情ではあるが、ただ了解と頷くヲ級を含む偵察機動部隊は、翔鶴たちがいる海域を目指していった。
ヲ級を含む偵察艦隊が出撃した頃。
食事を終え、ひと休憩を終えた翔鶴とニコライたちは、ふたたび気持ちを切り替え、周囲を警戒していた。
翔鶴たちは、このまま何事もなく、無事に目的の鎮守府に辿り着けたらいいな、と思ったときだ。
翔鶴が放った一機の哨戒機、上空を警戒していた二式艦上偵察機から緊急電が送ってきた。
「緊急電です。敵偵察艦隊。真っ直ぐこちらに向かっているとの事です!」
緊急電を受け取った一同は、即座に緊張感に包まれた。
だが、海中から一隻の敵影、翔鶴たちに向かって、猛スピードで接近し、突如と姿を現した。浮上してきた襲来者、その正体は深海棲艦、駆逐イ級が翔鶴たちに襲い掛かろうと出現した。
しかし咄嗟の判断により、矢矧の15.2cm連装砲改が火を噴いた。浮上したイ級は、彼女の砲撃を喰らい、そして爆発四散した。
「捨て身の威力偵察か、同志たち、気を抜くな!」
ニコライの意気込みに隊員たちは、了解と返答する。
「瑞鶴、準備はいい?」
「任せて!翔鶴姉!」
「軽巡矢矧、出撃します!」
「防空駆逐艦、秋月。出撃致します!」
翔鶴たちも、己の気合いを入れるかのように言ったときだ。
こちらに向かってくる五隻の敵艦、空母ヲ級を旗艦とする明瀬の放った機動部隊である。
敵艦隊との会敵を知った一同は、すぐさま戦闘態勢にうつった。
第一艦隊
旗艦:高速艇DV-15《インターセプター》
軽巡:矢矧改
駆逐:秋月改
空母:翔鶴改
空母:瑞鶴改
対する追尾者たち、明瀬が放った深海棲艦たちは、以下の通りである。
敵艦隊
旗艦:ヲ級flagship
軽空:ヌ級elite
重巡:リ級elite
軽巡:ホ級elite
駆逐:ハ級elite
なお先ほど捨て身の威力偵察をした駆逐イ級は、矢矧の砲撃により、撃沈している。
―――戦闘開始!!
「ったく。単純な救出活動から大規模な戦闘になってしまったな!」
右側面に張り付いた機銃士が文句を零した。
「文句言うなら、あいつ等にぶちまけな!」
「ダー(了解)!」
言われなくてもと言い、軽巡ホ級に向けると25mm機関砲が小刻みな連射音を上げて、砲撃を開始した。
本来は対人や軽装甲車両に有効だが、装甲を貫徹さえすれば重装甲車両でも大ダメージを与えることができる。
それを、砲弾の雨をまともに受けた軽巡ホ級を容赦なく喰い破っていった。制圧完了、目標を駆逐ハ級に。
再び砲撃を開始――いくら強靭な防御力を誇る深海棲艦と言えど駆逐艦クラスならば、いとも容易くダメージを与えることができる。
「ヘルファイア、発射準備完了!」
「目標、駆逐ハ級。アゴーイ!(撃て!)」
さらに次発装填済みのAGM-114ヘルファイアを中破した駆逐ハ級に狙いを定め、発射した。
発射されたヘルファイア・ミサイルは捉えた獲物に目掛けて、飛翔した。ハ級は逃げようとしたが、それを躱すことはできず直撃を受けた。爆音が鳴り響き怪物が悲痛な叫びを上げ、そして止めにもう一発のヘルファイアを発射、最期に断末魔とも呼べないような小さな声で鳴き、あっけなく撃沈した。
「やったぞ!」
しかし、安心するのも束の間、リ級が砲撃しようと襲いかかるが―――
「秋月、ニコライさんを援護します!」
秋月は4基8門の長10cm砲を撃ちながら、ニコライたちを援護する。
「いざとなったら夜戦で始末するよ!」
秋月がリ級を引き付けているあいだ、矢矧は61cm四連装(酸素)魚雷――かつて連合軍を震え上がらせた、日本海軍必殺とも言える秘密兵器《九三式酸素魚雷》を装填、リ級に向けて、撃ち放つ!
矢矧が放った四本の酸素魚雷は青い海と一体化するように溶け込み、雷跡はなく、海の暗殺者は見事、目標たる重巡リ級に命中、大破へと追い込む。
「瑞鶴、私たちも!」
「分かったわ!翔鶴姉!」
輪形陣で守られている二人は弓を構え、矢を放つ。放たれた矢は本来の姿――艦載機へ変化、あっという間に編隊を組み、直掩隊である紫電改は制空権の維持を務め、彼女たちの主力攻撃隊――双方は二手に分かれ、艦上攻撃機《天山》は雷撃態勢にうつり、艦上攻撃機『彗星』は真上から急降下体勢にうつる。
紫電改たちは敵旗艦のヲ級と軽空母ヌ級が放った深海艦載機群を蠅のように叩き落とす。
炎に包まれ、黒煙を吐き出しながら落ちていく敵機、激しい格闘戦を眺めながら、制空権確保に努める紫電改部隊をあとに、攻撃隊は母艦であるヲ級たちに攻撃を仕掛けた。
彗星は500キロ爆弾を投下する。ヲ級たちはそうはさせないと対空砲火を開始した。
急降下に移った数機の機体が撃ち落とされるも彼らの仇を取ろうと腹に抱えた爆弾、復讐の気持ちを込めた500キロ爆弾を投下、これに加え、彗星たちは次々と投下した。
彗星が投下した500キロ爆弾を集中的に喰らったリ級は撃沈、軽空母ヌ級には三発命中したため、瞬く間に中破させた。その一方、ヲ級はこれらをたくみに躱したために、爆弾は一発しか命中しなかった。しかし別方向から低空飛行する天山も腹に吊り下げていた航空魚雷《九一式魚雷》を投下した。水しぶきをあげ、投下した数本の九一式魚雷は白い航路を残して、ヲ級たちに向かって突進する。
攻撃隊が放った魚雷を眼中にしたヲ級たちは回避行動に努めるようとするが……気付いた頃には、時すでに遅し。回避行動をしようと努めたが、青い海の暗殺者たちは牙を剥き、数本が直撃、水柱を立てた後、ヲ級は大破、ヌ級は無惨にも轟沈した。
「オ、オノレ……」
「やったわ!」
敵艦隊の壊滅を見て、瑞鶴は歓声を上げる。
「矢矧さん、秋月さん、敵艦隊の止めをお願いします!」
翔鶴は矢矧たちに止めをさすように依頼する。
翔鶴たちの自慢の航空隊は、もはや飛ばすことは無理である。先ほどの戦闘で、ほとんど矢を使い切ってしまったからだ。矢矧たちも同じく、このまま長引けば弾薬が底をついてしまう。
「了解しました。秋月、止めをさすわよ!」
「はい、矢矧さん!」
これを躊躇うことなく、魚雷を次発装填済み、ふたりに続き―――
「我々もサムライガールに担おう。同志たち!」
ニコライの問いに隊員たちは迷わず、おうと返事をする。
―――雷撃戦、開始!!
矢矧たちがよく狙って撃とうとした瞬間、近くで咆哮を上げる轟音、直後、水柱が立った。
次の瞬間、何者かが翔鶴に対し、砲撃を喰らわした。
「きゃっ!」
短い悲鳴と伴い、たちまち翔鶴は被弾し、中破した。
「翔鶴姉!」
瑞鶴は翔鶴を助けようとするが、咆哮ともいえる砲撃が彼女にも襲い掛かった。
しかし幸運にも瑞鶴を狙おうとした徹甲弾は、彼女が素早く回避行動をしたためすべて命中しなかった。
「「「何者(何者だ)!!!」」」
矢矧たちが声を合わせて、砲撃をしたであろうとした方角に視線を移した。
『てめぇーら、一歩でも動くんじゃないぞ?』
砲撃したであろう第三者が拡声器を持って警告を告げた。その正体は中岡の手下、明瀬だ。
しかも彼の趣味だろうか北朝鮮の国旗を揚げていた一隻のフリゲートが現われた。
「っく、敵の増援か……」
「迂闊でした…しかし、隙だらけです!」
秋月は61cm四連装(酸素)魚雷で明瀬が乗艦しているナジン級フリゲートに対して、雷撃を試みようとした――
『お前の眼は節穴か?』
「きゃあ!」
構わずに砲撃する。翔鶴同様、彼女も中破する。
「「「「秋月!(秋月さん!)」」」」
砲撃したのは彼ではなく、随伴艦として隷下した深海棲艦――戦艦ル級だ。
「馬鹿メ、警告ヲ聞カナイカラソウナルノダ」
彼女だけでなく、明瀬の部下が乗艦している高速艇や他の深海棲艦も砲身をむき出し、今にでも砲撃をしようと見せつけていた。
「アフガン侵攻並みに、ついてないな……」
立場が逆転された状況を見て、ニコライは呟いた。
「不幸だ……」
「そこは『不幸だわ』だろう、同志……」
「そいつは、きついジョークだぜ……」
同じく隊員たちも冗談をいうものの、本心はどう打開しようかと考えていた。
「翔鶴姉、大丈夫?」
「私は大丈夫よ、瑞鶴」
瑞鶴は心配するが、翔鶴は負傷しながらも彼女に笑顔を見せる。
「……矢矧さん、ごめんなさい」
「謝る事ないわ。秋月は最後まで戦おうとしたんだから立派よ」
矢矧は、どんな状況でも諦めず闘志を見せようとした秋月を褒めた。
『ああ~。そんな陳腐なものを見せつけられると漫画を読んだ方がマシだな……』
退屈なテレビを見るように、明瀬は翔鶴たちをまるでゴミを見るような目でつぶやき―――
『ってか、死なない程度に痛めつけて良いからやれ、人殺しはこっちでやるから』
彼の問いにル級たちは了解とうなずき、翔鶴たちを痛めつけて楽しんだ。
しかしその様子を窺う者に気づかず、もし上空を警戒していれば良かったと後々知ることも知らずに……
“ワレ敵艦発見、敵旗艦を含め戦艦二、重巡二、駆逐艦二、ほか友軍とおぼしき小型高速艦多数見ユ。なお味方の損傷は甚大なり、急ぐことを勧める。以上”
一機の哨戒機――二式飛行艇が敵情を送り、明瀬たちに気づかれぬように戦線を離脱した。
前作同様ですが、翔鶴たちと追尾者たちによる海戦であります。
一部有名な台詞があった? いいえ、知らない子ですね(赤城さんふうに)
では長話もさておき、次回は捕らわれた翔鶴とニコライたちを救出に行きます。
こちらも時間がかかるため、前編・後編に分けますのでお待ちを。そして前作同様ですが秀真たちが大活躍しますので、こちらもお楽しみを。
それでは第十話まで、ダスビダーニャ(さよならだ)。