超艦隊これくしょんR -天空の富嶽、艦娘と出撃ス!- 《完結》 作:SEALs
では予告通り、今回もアメリカ視点から始まります。
そして少しだけですが、サブタイトルと同じようにとある偵察機も登場します故に、少しだけですが哲学的な話もあります。
灰田「前者は『トランスフォーマー/リベンジ』や『ヘルシング』にも登場した偵察機であり、後者は戦史研究でもあります」
今回も久々の短めです。
それでは改めて……
作者・灰田『本編であります。どうぞ!!』
太平洋艦隊司令部では、喪失した原潜の代わりにサンディエゴから持って来た《ロサンゼルス》級原潜4隻を日本海に派遣して、情報収集に当たらせた。
また1998年に退役した超音速・高高度戦略偵察機SR-71《ブラックバード》を近代化改修して投入、日本上空に送り込んだ
この偵察機は実用ジェット機としては世界最速のマッハ3で飛行、ステルス性能を持ち、まさに究極のステルス偵察機である。
この機体をハワイに送り、空中給油機KC-135R《ストラトタンカー》を付け足して、日本との中間地点でハワイまで帰投できるまで給油した。
さしもの日本も気付かなかったようだ。
SR-71は無事帰還に伴い、貴重な情報を持ち帰ることに成功した。
横須賀鎮守府を始めとする、佐世保鎮守府、呉鎮守府、舞鶴鎮守府など主要な軍港の撮影に成功したが、写真を解析してみると……明らかに出撃準備を整えていた。
しかも、海自が誇る《おおすみ》級揚陸艦が出撃準備を行っている。
なお艦娘たちの姿は見られなかったが、恐らくは海自と共に出撃するであろうと考えた。
しかし、元帥からは『別名あるまで待機』だと言うことを、彼らは知らない。
これらの事からして、ペンタゴンでは日本の次期作戦は『ハワイ攻略作戦』だと判断した。
かつて運命の海戦と言われたMI作戦ことミッドウェー作戦でもミッドウェー島を占領後に行なわれる作戦でもある。
ハワイ占領の橋となり、ここを占領すればアメリカは必ず講和を結ぶと考えられた。
米海軍の重要拠点であり、太平洋海域を抑えるにはハワイは必要不可欠だからである。
なお真珠湾攻撃後に、同時に占領すればアメリカ政府は度肝を抜いただろうと思われる。
日本軍が真珠湾に停泊していたアリゾナ率いる太平洋艦隊や他の艦艇だけでなく、ここにある燃料タンクや港湾施設、空母などを同時に葬っていれば完全勝利になっていたかもしれない。
運命は奇遇にも空母部隊は外洋に出ており、さらに重要拠点などを爆撃しなかった。
ニミッツの回顧録には『もし日本軍が燃料タンクなど重要拠点を破壊していたら、反撃が半年か1年ぐらいは遅れていた』と記しているほどだ。
ともあれ、寧ろこれは好都合だとヨーク大将は判断した。
敵をハワイ近くに引きつけて戦えば、オアフ島の海兵隊機や陸軍機も参加できる。
地の利が生まれるのは良いものの、70年以上から戦争と言う言葉を遠ざけていた日本としてはずいぶん大胆な作戦である。
「果たして、こう判断していいものだろうか……」
ヨーク大将はいまひとつ自信がなく、統合参謀本部・戦略アナリストからの意見を徴した。
アナリストとは……分析官であり、敵国の民族性までも読み込んで敵の動きを予測ないし分析する。なお軍服を着ておらずシビリアンである。
「ここでは、戦後の歴史を経た日本人の国民性がキー・ファクターとなります」
アナリストは、まずそう指摘した。
アナリストの名は、サラ・ジョーンズと言う女性である。
しかもIQは160もあり、大学の現代史教授から引き抜かれた。
「つまりワシの言いたいことはな……日本の戦いは全て受け身だった。我が国とも戦いにおいてもそうだ。東経160度という防衛ラインを設定し、そこで我が軍は迎え撃った。
連邦は未だに分からない連中だが、我が軍と同じようにしているだろう。
しかし、今度はハワイまで出てくると読んだのだが……
戦後、日本人のメンタリティからして、そのモチベーション裏付けられるのか?」
「なかなか微妙な質問ですね」
サラは答えた。
「まずヨーク大将の御質問は戦後、日本人とはいかなるものかと言う重大な問題を含んでいると私は考えます。
私はその点についてはずいぶん研究をしてきましたが、確かに定説どおり、占領とともにGHQが日本に叩き込んだ『ギルティ・フォーメーション・プログラム』が効き過ぎて、日本人は腑抜けたような民族になりました。罪悪感が深層心理にこびり付いてしまったのです。
また憲法が紛争解決の手段としての戦争と言うものを放棄し、日米安保により自ら戦う必要がなくなったことも日本人が独立心を失ったことが原因でしょう。
およそ国家と言うものは、外交と自衛力のふたつの柱が重要です。
しかし、日本は我が国に防衛力を委ねてしまったために、極めて歪んだ国家になってしまったわけですね。
日本は余ったエネルギーを経済活動に注ぎ、世界でも有数な富裕な国家となりました。
しかし地政学的には、中国・朝鮮民族と言う敵性国家に囲まれていました。
これえらの国々は内政が危うくなると反日政策で、日本を叩くと言う習性があります。
つまり日本は彼らにとって一種の危機緩和装置として機能していたと言うわけです。
そのような状況のときに、突如と現れた深海棲艦により、この敵性国家は消滅しました。
この危機を察知したかのように深海棲艦に対抗できる手段として、艦娘たちも現れました。
先の戦争に戦い散った軍艦の魂、日本神話で登場する式神のようなものかもしれません。
今の危機と艦娘たちの登場により、日本を目覚めさせたことは否めません。
日本は戦国時代、秀吉が朝鮮半島に攻め入ったように、戦争と言うものに嫌悪感を持たない、ある意味では普遍的な民族であったわけです。
そして日清、日露戦争の勝利以降は、振り子が大きく振り過ぎてしまい、戦争によって全て解決すると言う思考の民族に変わりました。
その頂点が太平洋戦争ですが、この戦いで惨敗した結果……今度は振り子が反対側に振れてしまい、非戦民族となってしまったわけです。
そして我が国との援助を打ち切られて孤立した結果、また振り子が振れ、好戦的気質が目覚めました。なにしろ深海棲艦と連邦国と言う強大な敵がいますので、その危機感が奇跡を呼び、現在のような兵力を持つと言うことに至ったわけですが……」
「ちょっと待ってくれ、ドクター・ジョーンズ」
ヨーク大将は遮った。
サラ・ジョーンズは『現代史論』と『戦争歴史学論』と言う博士号をふたつ持っている。
あまりにも長すぎると1日が終わりかねないと思ったからだ。
「私はキミのレクチャーを聞きたいのではないのだ。日本がハワイに攻めてくるガッツはあるかどうか……それだけのメリットがあるのかと考えているのか。
そして何よりも大切なことだが、この戦闘について自信を持っているかどうかを聞きたいのだ」
サラは微笑した。彼女の歳は35歳だが、中々の美貌の持ち主である。
「日本はすでにルビコン川を渡ってしまったのです。我が国はここで和平交渉をしない限り、その兵力をとことん駆使するでしょう。
戦争と言うのは、いったん始めたら止められないものです。それだけのモーメンタムを持っています。
まして我が国は、日本に対して連邦同残党軍同様に不法な仕打ちをしました。
国際法を照らしても許されない行為を行ないました」
これはむろん国債を無効にした行為を言っている。
「もし日本がハワイまでやって来るとすれば、リベンジの要素もそこに含まれていると、私は考えます。ええ……私はここで断言します」
サラはきっぱりと答えた。
「日本は、必ずハワイを占領しにやって来るでしょう」
「うむ……」
ヨーク大将は唸った。
「キミの意見はよく分かった。もう引き取ってもよろしい。ご苦労」
ジョーンズ博士が退出した後、ヨーク大将はしばらく考え込んだ。
「なるほど、日本はリベンジをするためにハワイまでやって来るのか……」
それは、もっとも筋の通った話ではないか。
日本は米軍のスパイ機こと、SR-71《ブラックバード》の侵入に気づかなかったわけではなかった。
バッジ・システムは、その動きをしっかり捉えていた。
しかし戦闘機や対空ミサイルで迎撃しなかったのは、むしろ手の内を見せたかったのである。
今度こそ正念場だ。
この戦いに敗れれば、さしものアメリカもこの戦いを諦めて、中岡たち率いる連邦残党軍と同盟を決裂してでも和平を応じるだろう。
統幕本部では、オアフ島占領はできればしたいものと考えたが、極めて困難であるゆえに損害も大きいだろうから、それほど固執していたわけではない。
米軍は連邦残党軍と協力して当然太平洋軍を増強し、自衛隊の上陸に備えるだろう。
これは生やさしい戦いではない。
しかし、ハワイを占領すると言う意図を示すことは大切である。
この意図も当然世界中に流れ、世界は太平洋に注目するだろう。
ハワイと言うのは、太平洋覇権を争う者のシンボルである。
だからこそ、アメリカはハワイにまず牧師を送り込み、現地人のクリスチャン化に務めた後は、軍を送り込んで武力で制圧して植民地にした。
その勢いを駆って、フィリピンにまで進出、ここを植民地化した。
スペインによる長年の抑圧に喘いでいたフィリピン国民は、むしろアメリカを歓迎した。
しかし、植民地にされたフィリピン国民は虫けらのような扱いを受けた。
暴行やレイプは当たり前、挙げ句は娯楽のために殺された者が大勢いた。
白人以外は人間ではないという猛烈な差別思想が、彼らフィリピン人を苦しめたのだ。
アメリカはイギリスと同じように、中国本土の一部を狙っていた。
しかし、アメリカの西進は、元より野望は日本によって阻まれてしまう。
フィリピンでは今でも『アメリカは鉛筆をくれたが、日本は鉛筆を作る技術をくれた』と言われるほど感謝されている。
アメリカにとっては、あの時の挫折感が深層心理の中にあり、為政者に受け継がれている。
太平洋戦争はその文脈の中で起こっている。
いままたハワイが争われることになったわけだが、これは日米決戦の正念場だ。
負けた方の国家は消滅しかねない決戦でもある。
そしてパワー・オブ・バランスは大きく変化し、新たな世界構造ないし秩序が生まれるだろう。
そろそろパックス・アメリカーナ……つまりアメリカ一国から世界構造が変わっても良い頃だと世界中が考えている。
その意味ではアメリカを憎んでいる中東各国やアジア諸国、そしてフランスは元より、全ての発展途上国が日本を応援していると考えられる。
元帥・秀真・安藤たちはそう考えていた。
今回は米軍視点に伴い、やや哲学的な話になりました。
そしてもう退役しましたが、究極のステルス偵察機SR-71《ブラックバード》も登場しました。
灰田「アメリカもしつこいですから、本当に困りますね」
まあ、そうなるな(日向ふうに)
ともあれ本編で少しですが、日本もハワイ攻略作戦に向けて準備中です。
次回で明らかにもなりますが。
気がつきましたが、あと少しで第三章も終わりに使づきました。
それに相応しい戦いに終わり、第四章に突入します。
そろそろ時間になりますから、次回の予告に移ります。
灰田「では次回予告に参ります。次回は米軍が秘かに開発した二つの新兵器に伴い、前哨戦とも言える日米潜水艦同士の戦いがまたしても始まりますのでお楽しみを」
なお予定ではこれを機に前編・中編・後編と分けて、第三章を終えようと思います。
また予定変更するときもありますが、楽しみに待っていて下さい。
灰田「ではそろそろお時間になりましたので……。次回まで、第九十六話までダスビダーニャ(さよならだ)」
ダスビダーニャ!次回もお楽しみに