NARUTO 怪人の歩む道   作:本気 真面夫

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序章

大切なものはいつの間にか手に入れていた。

そして、無くした時に気づくのだ。

それがどれだけ大切なものであったのかを。

 

 

 

運命の日といえる日があるならば、私にとっての運命の日はその日だった。

 

 

「うそ、よね」

 

思わず呟いた声が執務室に広がる。自分でも驚くほど声が震えているのがわかる。報告書を持ってきてくれた側近()は気づいていないかもしれないが、自分の幼なじみには、きっとばれてしまうほどだ。

 

「いいえ、事実です。水影様」

側近()の言葉に、もう一度先程届いた報告書を見る。

書かれていた内容は、自分達が使えている大名とこの国の有力者が暗殺されたことと、その警備をしていた忍13人のうち12人が忍を引退しなくてはならないほどの重傷であり、残りの1人が行方不明となり、その1人が自分の幼なじみであったということ。

 

ーどうして。

 

頭の中をその言葉がぐるぐると回っている。

昨日まで、一緒に笑いあっていた仲間が次の日には、ものを言わない死体になっていたなんて事は、今まで何回も経験してきた。だが、自分の幼なじみがそんな事になるなんて、考えるどころか想像すらできなかった。

霧隠れの里で唯一5種類の性質変化を使用することができ、先代の水影ヤグラが亡くなったときに暴走した三尾を湖へ封印した霧隠れの英雄が。

誰よりも霧隠れの未来を思い、霧隠れの全てを愛していた彼が。

里の長である水影になった時、幾度となく潰されそうになった自分を何度も支えてくれた、誰よりも大切な幼なじみが。

 

「大丈夫です、水影様。あれは、そう簡単には死にはしません。それとも、水影様はあれを信じることはできませんか?」

 

自分の教え子を心から信じているのだろう、その顔に不安も恐れもない。そのおかげなのか自分も少し落ち着いてきた。

 

「たしかに、そうね。ありがとう、青。おかげで頭が冷えたわ」

 

そう、今の自分は水影なのだ。自分が狼狽えていては、他の者たちも不安になってしまう。こういう時だからこそ、自分がしっかりしなくては。

 

「青、今動かせる捜索部隊はどのくらいある?」

「大名たちの所に、現場検証をしに行っている班がいるので、里の防備の事を考えると動かせて4つ、いや5つが限界かと」

「では、その5つの班を30分後に出発できるようにしておきなさい。重傷をおっているかもしれないから、医療忍者も手配して。」

「わかりました。にしても、あいつをやれる忍がいるとは。一体、どこの忍かと」

 

青の言葉に自分も考える。

今回、自分達が警護していた大名たちは極秘の会合のために集まっていたらしく、この情報が他に知り得ることはないはずだ。そのため、今回の警備は自分が選りすぐった暗部たちで構成されていた。

それなのに、今回の事件が発生した。

 

「もしや、岩隠れでしょうか?」

「その可能性も、あるでしょうね」

自分達、霧隠れの里と岩隠れの里は険悪な関係だ。

原因は、2年程前に起きたヨスガ峠の悲劇だ。

当時、各地で術を集めていた雲隠れの忍が霧隠れの機密書類を強奪したのだ。その時の水影であったヤグラは最強の部隊を編成し、同盟を結んでいた岩隠れの忍達とともに奪還に向かった。が、岩隠れの裏切りにより、霧隠れの里の2名が死亡する結果となった。機密書類は奪還できたが、この事件がきっかけとなり、現在も冷戦状態が続いている。

 

「最悪の事件、でしたな」

「そうね、本当に・・・最悪の事件だったわ」

 

あの事件によって、私にとっては姉みたいだった人が、彼にとっては親友だった人がその事件によって亡くしている。

忍にとって命懸けの任務なんて当たり前の事のはずだったのに。

あの人を抱き締めて静かに哭いていた幼なじみを見たときに、戦争なんて無くなればいいのにと、本気で思った。自分が水影になろうと決意したあの日。

自分を今まで守ってくれた彼の初めて見た慟哭。

それが今の私の原動力。

 

「た、大変です。水影様」

 

いきなり執務室に秘書の女性が飛び込んできた。余程の事なのか、普段は、真っ直ぐな綺麗な髪が所々はねている。

 

「少し、落ち着け、美瑠。まったく近頃の若いやつは」

「あ、青様。申し訳ございません。ですが」

「大丈夫よ、美瑠。それよりも何があったの」

 

元暗号部の所属にして、現在は霧隠れの業務をこなしてくれる彼女が 何をここまで慌てているのだろうか。それに、顔色が悪い。まるで、悪い夢を見てしまったかのようだ。

 

「先程、1人意識を取り戻しました」

「何!それは、本当か?で、今回の下手人はだれなんだ?」

 

青の言葉に美瑠が唇を噛んで俯く。肩もわずかに震えている。

嫌な予感がする。聞いてはならないと本能が警告してくる。だが、そんなこと、お構い無しに美瑠が下手人の名前を告げる。

その名前を聞いた瞬間に、自分の中で何かが崩れていった音が響いた。

 

 

霧隠れの英雄が抜けたことに、霧隠れの人々は愕然とした。特に、彼から教えを受けていた者たちは信じようとしなかった。しかし、凄惨な事件で度々あがる彼の名によって、1人、また1人彼の事を犯罪者としか意識しなくなるようになった。

 

今でも、思うのだ。

あの日常がどれだけかけがえのないものであったのか。

あの時間がもう2度と戻ってこないのだと。

そしてー。

 

私は、彼の事をどれだけ知っていたのだろうか、と。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

空を見上げると今もなお降り続ける雨と分厚い雨雲。

正面を向くと数多くの鉄塔が乱雑に存在している。

なんとも。

 

「色の乏しい里ですね」

 

水の上を歩きながら、1人の男が溢す。

雨隠れの里。

土・風・火の3大国に囲まれている。昔から大国の戦場となることが多かったため、内線が多発しており治安も安定しなかった。

そう、安定しなかったのは過去の事。

現在の雨隠れの里は神が治める里となっている・・・らしい。

実際に自分が見たわけではなく、言伝てに聞いた情報なので信憑性にはかけるが。

 

「雨が止みましたか」

 

先程まで降っていた雨が止み、分厚い雨雲も少しは薄くなってきていた。代わりに

 

「これは、驚きましたねぇ。まさか、天使がいるだなんて」

 

雲の合間から延びる光の中に天使がいた。

見惚れてしまいそうな美貌。艶やかな髪には、紙で出来た花のコサージュ。そして、背中には自分の体の何倍もあるであろう翼。身に纏う衣は黒地に赤い雲。

 

「あなたが、マダラが言っていた新しいメンバーね。それにしても」

「それにしても・・・なんです?」

 

落ち着いた声で、こちらを見下ろす天使(小南)。目線はこちらを探っているのか、あるいは観察しているかのよう。

その目線の不愉快さに思わず、殺気が漏れ出す。

 

「勘違いしないでちょうだい。マダラが言った通りだったから、思わず見ちゃったのよ」

「マダラさんは、なんと?」

「青い髪に、目の下には3本のエラのような模様。そして、背には布で巻いた武器を、右腰には1対の独特な形をした刀、左腰には白い刀。本当に、その通りなのね」

「変化の術で、誰かが成り代わっていたらどうするつもりだったんですかね」

 

外見の特徴しか言っていないではないかと思わず、溜め息を漏らす。忍の世界で基礎中の基礎でもあるが、それ故に応用がきく変化の術。外見は見分けがつかないほどになるので、仲間同士で合言葉を決めておくほどだ。

 

「その心配はないわ。あの殺気は偽物なんかには出せないわ、元水影候補筆頭さ」

 

ま、と続けそうになった天使(小南)の下から鉄と鉄をぶつけたような音がした。ちらりと、天使(小南)が下を見ると先程は無かった線がまるで機械で削られたかのように真っ直ぐとひかれていた。

 

「それ以上言ったら、次は首を飛ばしますよ」

 

丁寧な言葉とは裏腹に高まりつつある殺気に、ごくりと天使(小南)の喉から音がする。

今まで、何度も命の窮地に立たされたこともある天使だが、目の前にいるこれから同じ組織に所属することになるこの男が本当に自分と同じ人間なのかが解らない。それほどまでに、男と自分との間に壁を感じる。

 

「待て」

 

高まりつつある殺気が霧散していく。

男の目の前に顔中に黒いピアスをつけたオレンジ色のかみをした人間が降りてくるのと同時に、天使(小南)も地上に降りてくる。紙の翼は消え、代わりに足が作られていく。

 

「誰です?」

「俺の名前は、ペイン。暁のリーダーだ」

「ペイン、どうしてここに?」

「お前が出ていってから、しばらくしたら殺気を感じたからな」

 

ちらりと先程傷つけられた鉄塔を見て、正面の傷をつけたであろう男を見る。

 

ーなるほど。マダラが言った通りだな。

 

マダラをもってしても、相手をしたくないといった理由がわかる。先程、鉄塔を傷つけたであろう攻撃がどの武器を使い、いつ抜いたのか自分のこの目をもってしても見切ることができなかった。

 

「お前を暁に迎え入れられることを嬉しく思う。名前を聞かせてくれ、新しい同士よ」

 

その言葉に目の前の男は口の端を挙げて答える。

これから始まるであろう血生臭い戦いを歓喜しているかのように

 

「干柿鬼鮫です。以後お見知りおきを」

 

 

 

 

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