今回出てくるキャラクターは大学編で本筋に同作品で別キャラクターが一人絡む予定があったので、年齢設定は悩みましたがこれしかないなと思って決めました。
6時丁度に目覚ましが鳴る。
5時58分頃にいつも通り目が覚める。
ぼんやりとしながらアラームがなる前に目覚ましを止める。
朝ごはんとお弁当の準備をしてくれているお母さんにおはようの挨拶をする。
顔を洗って歯を磨く。
ジャージに着替えたらコップ一杯の牛乳を飲んでから家の前で準備運動をする。
後から出てきたお母さんと近くの公園までジョギングする。
告げられた今日の本数と距離でダッシュとジョグを繰り返す。
家に戻ったらシャワーを浴びて汗を流し、朝ごはんを食べて学校に向かう。
授業を受ける。
お母さんの作ってくれたお弁当を食べる。
授業を受ける。
家に帰って、お母さんの車でクラブに向かう。
今日の練習をする。
家に帰り、お風呂に入った後、お母さんに身体をストレッチしてもらう。
夕ごはんを食べ、学校の宿題をする。
寝る時間の10時半にはまだ少し時間がある。クラスメイトが話していたドラマを少しだけ見てみる。
クラスの子達は誰が格好いいとか、誰が誰を好きとかばかり話してる。でも、好きってなんだろう。私にはまだ良く分からない。
いずれ海外に出る時のために必要だと言われていた英語を勉強しておく。
10時25分になったのでベッドに入る。
6時丁度に目覚ましが鳴る。
5時58分頃にいつも通り目が覚める。
ぼんやりとしながらアラームがなる前に目覚ましを止める。
朝ごはんとお弁当の準備をしてくれているお母さんにおはようの挨拶をする。
顔を洗って歯を磨く。
ジャージに着替えたらコップ一杯の牛乳を飲んでから家の前で準備運動をする。
後から出てきたお母さんと近くの公園までジョギングする。
告げられた今日の本数と距離でダッシュとジョグを繰り返す。
家に戻ったらシャワーを浴びて汗を流し、朝ごはんを食べて学校に向かう。
授業を受ける。
お母さんの作ってくれたお弁当を食べる。
授業を受ける。
「なあなあ、清水さん。うちら今からマクドでテスト勉強するんやけど、一緒に行かへん?」
昼ごはんを一緒に食べているクラスメイトの一人に声をかけられた。
こっちの方が中学の間は環境が良いからとお母さんに言われて進学したけれど、どうにも関西弁には慣れない。
「あ、ええっと……。その、今日も、練習があるから」
「そうなん? テニススクールやっけ、部活とちゃうからテスト期間でも休みとかないんや? 大変やね~。ならしゃーないわ。また今度な」
そう言って、彼女は一緒に勉強しに行くという他のメンバーの方に向き直る。
どうしてか分からないけれど、私は急いで教室を出た。
家に帰って、お母さんの車でクラブに向かう。
今日の練習をする。
家に帰り、お風呂に入った後、お母さんに身体をストレッチしてもらう。
夕ごはんを食べ、学校の宿題をする。
寝る時間の10時半にはまだ少し時間がある。
大会で何日か学校を休む分、テスト勉強はしっかりしておく。
英語は普段からやっているので問題ない。あまり得意じゃない数学と理科を30分ずつだけやっておく。
寝る時間の10時半にはまだ少し時間がある。
放課後のことを思い出す。
いつからだろう。
周りの子達が自分より大人っぽく見えるようになったのは。
いつからだろう。
みんながスカートを短くしたり、簡単なお化粧をするようになったのは。
いつからだろう。
みんなが携帯電話を持つようになったのは。
いつからだろう。
男の子の視線がそれまでとは変わっているように感じるようになったのは。
可愛い服とか、休みの日はずっと練習だし。買っても着れないかな。
でも、雑誌くらいは読んでも良いかもしれない。
10時25分になったのでベッドに入る。
6時丁度に目覚ましが鳴る。
5時58分頃にいつも通り目が覚める。
ぼんやりとしながらアラームがなる前に目覚ましを止めようとする。
ホテルのそれはいつものと勝手が違って上手く止められない。
アラーム音で隣で寝ていたお母さんが目を覚まし、目覚ましを止めてくれる。
顔を洗って歯を磨く。
お母さんと一緒に30分ほど外でジョギングし、シャワーを浴びてから朝食のバイキングに向かう。
「今日は4回戦と準決勝ね。組み合わせ的には問題ないからいつも通りプレーすれば大丈夫。
昨日のうちに決勝で当たりそうな相手の試合は見れたから、試合が終わったらゆっくりしていてもいいわ」
バターをつけたロールパンをかじりながらうなずく。
お母さんは私の方を見て小さく息をついた。
「……そうね。もし時間があったら男子の方の試合を見てくると良いかもしれないわ。池爽児っていう子の試合。多分準決勝で江川逞という子と当たると思うけれど、いい刺激になるかもしれないから」
ああ、私は一応あなたの決勝の相手を撮っておくから。
予備のビデオカメラで池君の試合も撮ってきてね。
機械の苦手な私にとっては死刑宣告に等しい言葉に、思わず眉をむにゅっとひそめた。
準決勝で当たった中城さんは1年生にしては強いと思ったけれど、それほどうまいという感じはしなかった。
まだまだ一つ一つの技術が甘くて、ぎこちない動作が多い。
そういったほころびのつなぎ目をついていけばそれほど勝つのは難しい相手じゃなかった。
思ったより早く試合が終わったので、私は結果を運営に報告した後、池君のコートへ向かった。試合までまだ15分あったけれど、私の試合よりもずっと多くの観客が来ていた。
テニスバッグから縮めた三脚とビデオカメラを取り出す。
三脚を伸ばす。
……。上手くいかない。
三脚を伸ばす。
……。上手くいかない。
三脚を伸ばす。
……。上手くいかない……。
「おーい、アキ! こっちこっち!」
突然、前にいる人に名前を呼ばれて私はびっくりした。
思わず両手で握っていた三脚を倒してしまう。
「あ、ご、ごめんなさい……」
大丈夫大丈夫とメガネをかけた前の男の子が、倒れた三脚を私に返してくれる。
そして、テニスバッグを肩にかけた同年代にしては身長が高く、やや細身の、前のメガネをかけた男の子によく似た男の子がこちらに近づいてきた。
「お待たせ、アニキ。……ん? そっちの子は……。もしかして、清水さん?」
「……はい、そうです」
「ああ、ごめん。俺、高木文秋(ふみあき)。君の試合見たことあるんだ。俺は次の試合でこの試合の勝った方と当たるんだけどね」
プロ選手で有名な人とか雑誌で最近取り上げられている池君の話は何度か聞いたことがあったけれど、クラブで一緒に練習する人以外の男子選手なんて私は知らなかった。知らない男の子が私のことを知っているなんて、思わず顔が熱くなってしまう。
「アキが知ってるなんて、君、強いんだ?」
高木くんのお兄さんに聞かれたが、上手く答えられない。距離が近いというか、口調がナンパっぽいというか。悪い人ではないんだろうけど、なんだかこういう風にぐいぐい来られると思わず引いてしまう。
「ほら、そういう風に馴れ馴れしいのが駄目な子もいるんだって。ごめんね。この子は清水亜希さん。俺達と確か学年は同じ。お母さんが元プロで、清水さん自身も去年の全国でベスト16。今年の全国にも出てる。……あってるよね?」
お母さんのことまで知ってるなんて。日本ランキングである程度までは行っていたというのは知っているけれど、世界で有名な矢沢選手とかに比べると成績は全然だし、プレイヤーとしてはかなり前の選手なのに。
「お母さんを知っているんですか?」
「ああ、アキは……。あっごめん、呼び方が紛らわしいね。弟は、超が付くくらいのテニスバカでさあ。映像に残っていれば日本人選手の試合ならほとんど見てるんじゃないかな」
バカは余計だ、なんて高木くんはちょっとだけぶっきらぼうにお兄さんに言う。
どうしてだろう。さっきの話だと私と同い年のはずなのに。高木くんがずっと年上みたいに感じる。
少し話をした後、私たちは一緒に試合を見ることになった。
三脚とかビデオカメラとかを中々準備できない私を見かねたのか、高木くんが手伝ってくれたのだ。
「ありがとうございます」
「ううん、携帯とかならともかく、ビデオカメラとか普通は普段あんまり触らないから。機械に興味のない女の子とか使い方分からなくてもおかしくないよ」
すみません……。携帯も持ってません……。
そんなことは何となく恥ずかしくて口に出せない。
「たっ、高木くんは機械とか得意なんですか?」
「うーん、パソコンとかはもともと嫌いじゃないけどね。ビデオカメラなんかは練習でもよく使うし」
話を聞くと、どうやら普段の練習でも自分のフォームを確認するのに使っているらしい。私の場合はお母さんがそういうのは全部指摘してくれたり撮影してくれるから、全然気にしてなかった。
「テニス、好きなんですね」
「うん。清水さんだって、嫌いじゃないでしょ?」
……はい。嫌いじゃないです。
どうしてだろう。高木くんは、私もテニスが好きなんでしょ、とは聞かなかった。
そして、嫌いじゃないかと聞かれたからすぐに答えられたけど、多分、私はテニスが好きかと聞かれたらそんなにすぐには答えられなかったような気がする。
池君の試合は凄かった。
相手の江川さんのサーブも中学生離れしていたけれど(恐らく200kmは出ていた)、池君はそれをほとんど意に介さずリターンエースを決めることも少なくなかった。
江川さんはほとんどポイントできず、6-0,6-0のダンゴで負けてしまった。
池君はすごく、強い。
でも、何故だろう。
池くんが上手なこと、強いことがとても良くわかるすごい試合だったのに。
ワクワクはしなかった。
何故かちょっと手に汗握ってしまう、緊張感があった。
どうしてだろう。
最後のポイントが決まり、選手二人が握手をしようとネットに近づいた時、私はそれに気づいてしまった。
あ、ひょっとして……。
思わず赤くなり、そしてすぐに青ざめる。
「清水さん? 試合終わったよ? 行かないの?」
高木くんがビデオを片付けてくれていると、お兄さんが声をかけてくれた。
私は恥ずかしいのと男の子には言い出せないことで、頭がまっしろになってしまう。
「え、お、俺、何か悪いことした!?」
下を向き、膝の上にぽろぽろと涙が流れる。
そうだ、どうして忘れていたんだろう。緊張していたんだろうか。
「……違ったらごめん。もしかして女の子のあれ……?」
耳元がささやきでくすぐられる。
そう、女子選手は体調面で男子とは違うからしっかり管理しなさいとお母さんに言われていたのに。去年はなかったことだから、気付かなかった。あれが遅れていたんだ。
真っ赤になりながら、私は小さく頷いて声を振り絞った。
「……準備してないの」
高木くんがタオルで私の顔を拭いてくれる。
「アニキ、誰でも良いからそこら辺にいる女の子に声かけて」
「お、おう」
お兄さんは高木くんの低い声に気圧されながら近くにいた小柄なジャージの子に声をかける。
「あー、悪いんだけどさ、キミ、ちょっと良いかな?」
「ええと、ぼく?」
「うん、キミ。すぐ済むと思うか―」
高木くんは言葉を遮るようにお兄さんの頭を半ば本気で叩いた。
「っってー! 何すんだよ急に!?」
「アホアニキ。あの子は男の子だ」
「ええっ!?」
一瞬の沈黙。
そして、その子は一瞬沈んだように頭をもたれさせる。
「……うん。よく間違われるんだけど、ぼく、男子。戸塚彩加って言います」
その子は女の私より色白で、そして思わずかまってしまいたくなる小型犬のような瞳をしていた。
確かに、声も高いし私から見ても女の子と見間違えてもおかしくない。
おい、どうすんだよ!?
知らねーよ。こっちは俺が何とかするから戸塚くんとしばらく話してれば?
高木くんはお兄さんを突き放すと、ちょっと離れた場所にいた女の子に声をかけた(今度は見た目からして間違いなく女子だ)。
「あーしになんか用?」
ウェーブのかかったセミロングを薄く茶に染めたちょっと派手目な女の子。
美人で、ちょっぴりキツそうな目をした、縦ロールとか似合いそうな子。私だったら気後れして声をかけられないタイプの女の子。
「ごめん。急に声をかけて。女の子にしかできない相談だから。この子のこと、ちょっと見てやってほしい」
「……あー、そういうことね。はいはい。そりゃ女子にしか分からんわ」
「まさか、中城の応援に来たのにそれを負かした相手の世話をするなんてね……」
高木くんが声をかけてくれたのは三浦優美子さん。
私より一つ下の学年だけれど、県大会で負かされたライバルの中城さんの応援と雑誌で取り上げられた池君の試合を見に来ていたらしい。
色々と恥ずかしかったけれど、三浦さんのおかげで何とかなった。
高木くんは気を利かせて、観客席に置いてきたビデオカメラとテニスバッグは私がトイレに行っている間に三浦さん経由で返してくれた。
「やっぱり池爽児はすごかったなー。高木は勝つの難しいかもしれないけど、あんたは中城に勝ったんだから優勝しなさいよ」
どこかぶっきらぼうだけど優しい、高木君に似ている三浦さんに返事をして、私はホテルに戻った。
なぜだろう。寝る前はなんだかドキドキしてなかなか寝付けなかった。
中学に入ってから一番大きい大会の決勝だからだろうか。
いままでこんな風に感じたことはなかったのに。
決勝の相手は私よりひとつ上の選手だったけれど何とか勝つことができた。
昨日お母さんが撮影してきてくれた通り、基本に忠実ないいテニスをする選手。
でも、技術的には私のほうが控えめに見てもほぼすべての面で2ランクは上だ。
昨日のこともあり体調面での若干の不安と、あとは年齢から来る体力差が多少問題になるかもしれないくらいしか気になる点はなかった。
試合は終始私ペースで進んだ。
2ゲーム終了まで様子を見てお互いに1ゲームずつキープ。その後サーブに変化をつけて2ゲームをブレイクした後はペースを戻し6-4で1セット目を取った。
2セット目は相手も必死になってくることが分かっていたので、最初からこちらは全力。ラリーで相手を上手く走らせることを意識して3ゲーム目までで体力を奪い、6-2で勝利した。
礼をした後、お母さんが近づいてきたがそんなことは構いもせず、私は走りだしていた。
「ちょっと亜希! どこ行くの!?」
「ごめんなさい、男子の試合見たいの!」
叫んだ後、一生懸命走ったけれど荷物もあったし疲れていたせいか、あっという間にお母さんに追いつかれてしまった。
仕方なく運営に決勝の結果を報告し、お母さんを急かして男子の決勝を見に行く。
「まったく、フルセットまで持ち込んで3時間とかかかってるならともかく……。1時間ちょっとで試合が終わったんだから間に合わないどころか待つに決っているじゃない」
やれやれ、という声が聞こえてきそうな雰囲気だったけれど、お母さんはどこか嬉しそうだった。
コートの上を飛ぶように駆けるのは二匹の美しい獣だった。
一匹は若く、それが興味のない初めて見た人にすら分かってしまうほどの才能に溢れた眩いばかりの輝きを放つ獣。
もう一匹は才能よりもむしろここまで何かに対して真摯になれるのかという尊敬や畏怖を感じさせる、玉(ぎょく)になるまで磨き上げられた尊い努力の結晶を両の前脚に抱えた獣。
二人の実力差は歴然で、
そして、それ以上に才能の差は明白だった。
一ポイントを重ねる度に彼は彼に追いつかれていく。
一ポイントを失う度に彼は彼に追い越されていく。
一ポイントを取られる度に彼は彼に取り残されていく。
その試合は私から見たらとても哀しくて。
それなのに彼らは二人とも最後まで笑うように戦っていて。
見ている人はすべてその姿に心奪われるように静寂と歓声を繰り返し。
きっと、昨日池君の試合を見ていてワクワクより緊張を強く感じたのはそれを予感していたからなのだろう。
最後にボールが彼のラケットの横をすり抜けていったとき、
私はひとすじだけ細く透明で、たぶんものすごくしょっぱい涙を流した。
表彰式のことはほとんどふわふわとしていて、よく覚えていない。
ただ、帰りの新幹線の中でぼんやりとふたつ考えた。
この気持ちを何と呼べば良いのだろうということと、
ああ、そういえば、機械を触るのは苦手だけれど、携帯電話を持つのも悪くないかもしれないなということを。
テニス回は次話で終わる予定です。
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