先へと進んでいった僕らは一番奥だと思われる部屋にたどり着いた。
「ここは……」
部屋の中には沢山の実験道具やモニターとかはなく、ただ何もない部屋だった。だが部屋の中心には一人の女性が待ち構えていた。
「ここまでよく来たわね」
「頼りになる仲間のお陰でね」
「皆のために私達がここで貴方の計画を打ち砕く必要があるからね~そうだよね、宝条さん」
僕らは武器を構えると宝条はため息をついた。
「私の計画を打ち砕く?どうしてかしら?勇者に憧れた女の子の夢を叶えたのよ」
「叶えたんじゃない。ただお前が灯華の夢を利用しただけだろ」
「それも彼女たちの命を弄ぼうとしていた。何が目的かわからないけど……貴方がしでかしたことはとても許せないことだよ」
「……ふふ、実験には大概犠牲はつきもの。彼女たちはその犠牲よ。それが貴方には……」
いい加減宝条の話を聞いていて苛ついてきたから、僕は威力を弱めた弾丸を放った。頭に当たれば気絶くらいはするだろうが……
「痛いわね……」
弾丸があたったはずなのに、宝条は微動だにせずその場に立ち続けていた。
「う~ん、ちょっと人に撃つのはまずいと思ったけど~明らかに人じゃないね~」
「確かに……」
僕と園子が宝条の動きに注意をしていると彼女は白衣のポケットから端末を取り出した。
「教えてあげるわ。私の研究のことを……」
端末のボタンを押した瞬間、宝条の身体が黒い影に包まれた。そして影が破かれるとそこにはさっきまでの宝条とは別の存在がいた。黒い鎧が全身を覆い、赤いマントを羽織り、その存在の近くには黒い大剣が地面に突き刺さっていた。
「私の研究、それは勇者とは全く違った存在をつくり上げること、そいつは人々を救うための存在ではなく、人々を恐怖させ支配させる存在。そう、私がずっと憧れていた存在……魔王よ!!」
まさかの魔王が登場か……僕としてはてっきり魔王は天の神かと思っていたんだけどな……
「私は勇者なんてものに興味がなかった。だってただ怪物を倒して人々にチヤホヤされるだけの存在じゃない。それだったら魔王なんてどうかしら?その力でありとあらゆるものを支配することが出来る。もう憧れとしか感じられないわ。私は研究を続けた」
大剣を引き抜き、大きく振った瞬間、僕らはそのまま吹き飛ばされた。
「だけど、研究を続けてもあなた達が使う勇者システムにはたどり着かなかった」
僕らは同時に攻撃を仕掛けるが宝条は避けることもせず、素手で僕らの武器を掴み、そのまま地面に叩きつけた。
「その時出会ったのよ!彼に!!彼は弱り切っていたが彼の存在自体をデータとして保存することが出来た!!」
大剣を地面に突き刺し、両手から巨大な炎を作り上げ、僕らに向けて放った。僕らは巨大な炎を前にして避けることが出来ず食らってしまった。
「そして彼は提案したのよ。私の研究に協力してくれることを……そして鈴藤灯華を利用した試作型の魔王システムがあなた達勇者を倒すことが証明された!もう少し彼女が力を使ってくれれば……もっと完全な魔王になれたはずだった!邪魔をしてくれたあんたらのせいでね!!でも、これはこれで十分な力が発揮できた」
宝条の笑い声が響く中、園子はなんとか立ち上がり、あることを聞いた。
「その彼って誰のこと?」
「彼は彼よ!最初は変な化物だったけど、データとして保存した瞬間、人の姿に変わったわ!そこの彼にそっくりだったわね」
僕にそっくり?いや、まさかそんなことが……あの時しっかり夏凛が止めを……
「そっか~もう一つ聞くけどその彼は今は?」
「彼ならこの魔王システムと一つになっているわ。彼から提案だったけどね」
「………そっか、じゃあ、貴方も利用されていた人なんだね」
「はっ?うぐっ」
突然宝条が苦しみだすと鎧の隙間から血が流れだした。
「な、なにこれは……」
『ご苦労様、まさか保険のために切り離しておいたかいがあったよ!そして俺にこの力を授けてくれるなんてね』
「ど、どうして……私は……」
『バカだね。今になって利用されていることに気がつくなんて……さぁ、俺に渡すんだ』
「い、いや……私は」
宝条の身体から血が吹き出すと、黒い鎧が白へと変わっていった。
「ふふ、久し振りだな。神宮桔梗!」
「まさか生き残っていたなんてな……キキョウ!消滅したのにしぶといな」
「確かに俺は消滅したさ。だけどあの戦いの前にお前の身体に付けておいたのさ、俺の体の一部を……そして樹海から戻ったお前の身体を離れ、機を待つためにこいつに協力したのさ」
「やっぱり神様の言うとおりだったね~」
「天の神は知っていたのか?」
「う~ん、気がついたのは結構最近だって言ってたよ~何せきょうくんが話をつけた後から暇だからこっちの世界眺めていたって言うからね。それでキキョウを見つけたみたいだよ~」
全く厄介な話だよ。確実に倒した奴がいきなり復活なんてな……
「さぁ、彼女の願いどおりに動いてやる。お前たち勇者を倒し、俺が魔王となるのだ!!」
絶大な力を持ったキキョウ。普通なら絶望くらいはするしか無いのだろうが……
「なぁ、宝条はもう……」
「うん、死んじゃったみたいだね。残ってるのはキキョウの残りカスみたいなものかな?」
「それじゃ遠慮する必要はないか」
「そうだね~」
僕は大鎌を取り出し、園子は槍を構えた。そして目の前にいる敵を睨みつけた。
「さぁ、加減する必要はなくなった」
「徹底的に倒してあげるからね~」