私は一人、ある場所に向かっていた。そこは私達にとって大切な人が住んでいた家であった。その家にその人の家族がまだ住んでいる。
私は物陰に隠れながら家の様子をうかがっていた。
「ねぇ、お母さん。今年は来てくれるかな?」
「どうだろうね?いい子にしていたら来てくれるわ」
「僕、いい子にしてたよ」
「そうね。いい子にしていたわね」
「それじゃあ来てくれるよね。おねえちゃん」
母親と子供の他愛のない会話だけど、子供が言っている姉に私は知っている。
そうこの家は三ノ輪銀の家である。私がここに来ている理由はあの時の願い事が書かれている書類が理由だ。
「娘に……銀にクリスマスの夜だけでももう一度会いたいか……大赦の方針で銀が天の世界で生きていることは伝えないようにって言われてるけど……」
だけど私はそれでもこの家族の願いは叶えてあげたい。それが例え無理だとしても……
そして私は四国の壁の近くまでやってきた。
「待っていてね」
勇者に変身し、天の世界へと向かう私であった。
壁の外は前とは違って新たな大地が作られていっている。前は崩壊した世界だったのがだ。
「敵も襲ってこないから大丈夫だよね~」
そう呟くと目の前にレオバーテックスが立ちはだかった。
『何の用だ。勇者よ』
「天の世界に用事があるんだ~通してくれないかな?」
『駄目だ。いくら神樹と天の神が手を結んだとしても簡単にこちらの世界に入り込んでいいものではない』
「そっか~でもそんなこと言われて諦めるわけには行かないんだ~」
レオバーテックスは見る見るうちに周りに炎の玉を作り始めた。私もそれと同時に槍を構えた。
『ならば力づくでというか』
「せっかく作り直してる世界を壊すことになるけど……しょうがないよね」
炎の玉が襲いかかる中、私はレオバーテックスに向かっていく。無限に放ち続ける炎の玉をかわしていく私であるが、それでも服とか掠っていく。
(流石は最強のバーテックス。強いな~でも私も諦めるわけには行かないんだよね~)
大きく槍を振り上げ、向かってくる炎の玉を切り裂いていく。ある程度の攻撃方法とかは話で聞いている。そのおかげで十分に戦える
「はあああああ!!」
一気に接近し、レオバーテックスに槍を突き刺そうとした瞬間、突然上空から無数の矢が放たれてきた。
「これは!?」
咄嗟に避けながら、矢を弾いていく。そしてレオバーテックスの後方にサジタリウスバーテックスの姿があった。
『何を手こずっているのですか?レオ』
『サジタリウス。すまない』
『お嬢さん、勇者みたいだけど天の世界に何の用かしら?』
『なにやら大事な用があるみたいだが……』
『そう、でも通す訳にはいかないわ。こっちの世界に行くには天の神が許可したものじゃないとね。そして天の神は今忙しいのよ』
「そうなんだ~じゃあ諦めて帰る……って訳にはいかないんだよね」
槍を構えながら二体のバーテックスを睨む私。するとレオバーテックスは呆れたような感じだった。
『人間とは面白いな。簡単に諦めない。ましてや満開を失った状態で我々に挑むとは……』
『一人で十二体全部倒す気で入るのかしらね?』
気が付くと周りに全バーテックスとさっきまで世界を作りなおそうとしていた星屑に囲まれていた。
「一人で倒す気でいるかって……そうだよ」
きょうくんだって、勇者部のみんなだって簡単に諦めなかった。
私だって諦める訳にはいかない
私が目の前のバーテックスたちに挑もうとした瞬間、突然何かに身体を縛られた。
「これは!?」
緑色のワイヤー、これは確か……
「捕まえました。園子さん」
「よくやった樹」
後ろを振り向くときょうくんといっつんがいた。更にその後ろに部長さんとゆーゆ、わっしー、にっぼしーちゃんの姿があった。
「たくっ、大赦から連絡を受けてパーティーを切り上げて来たら……何やらかしてるんだ?」
「きょうくん、これは……」
「どうせ正直に話す気がないだろ。獅子神さん、こいつが何しに聞かたか聞いてるか?」
『……こちらの世界に用があるらしいが、我々としては好き勝手に入ってきては困るのでな』
「前に天の神にみんなで来てもいいって言われたけど……」
『それはこちらがそうしたいと思った時だけだ。おまけにそちらの少女は何があっても押し通る気でいたのでな』
「それは悪いことをしたな。とりあえず帰るよ」
まだ目的も達成してないのに……このまま帰るなんて……私はどうすれば……
「おかえりなさい。ごめんなさい。力になれなくって……」
「ううん、大丈夫だよ。すぐに帰してもらったから……
友奈が笑顔で言うと、桜がこの場にいない桔梗と園子の事を聞くのであった。
「あのお二人は?」
「あぁ、あの二人は……」
「二人っきりでお話してます」
「にしても東郷も行けばよかったんじゃないの?」
「う~ん、今回の場合は桔梗くんの出番かな?」
皆と離れた場所で僕は園子を睨みつけていた。
「お前の勝手な行動で天の神との関係が悪くなったらどうなったか分かっているのか?」
「……でも」
「でもじゃない!!」
「でも叶えてあげたいから……あの人達の願いを……」
「願い?」
すると園子はある書類を見せた。それは『娘にクリスマスの夜だけでももう一度会いたい』と書かれている。差出人は三ノ輪銀の家族……
「…………」
「きっと三ノ輪の家の家族はずっと銀に会いたがってる。お願いをするほどに……だから叶えてあげたいの……そのために無茶を……」
僕はため息を付き、思いっきり園子の頭にチョップを食らわした
「い、痛いんだけど~」
「馬鹿だろ。やっぱり馬鹿だろ。大馬鹿だろ。お前が願いを叶えるために無茶をして……銀が家族と会っても喜ぶと思うのか?そんなわけ無いだろ」
「で、でも……」
「何で一人でやろうとするんだ?みんなに相談しろ!!僕らはきっと一緒に行って銀を連れて来てやるのに……」
「……ごめんなさい」
「全く……こんな事をしなくても願いは叶えてあるのに……」
「えっ?」
僕は大赦から送られたメールを園子に見せた。書かれていたのは……
「えっと『蛇使い座のバーテックスより報告有り、乃木園子が天の世界に向かおうとしている。すぐに救援に迎え』って……もしかして」
メールの文を読んで全てを理解した園子。僕はさらにあることを話した
「もう一つの願いは銀の弟のお願いを聞くことになった。字はまだ幼いから読み取りづらいけど……一言書かれていた。お姉ちゃんに会いたいってな」
銀は恥ずかしそうにしながらも、家族にあっていた。
「銀?銀なの?」
「あ、あはは、ごめんね。お母さん、お父さん、それに……弟……短い時間だけど……会いに来ちゃった」
「ま、まさか願いが……」
「そうみたいなんだ~神様が叶えてやれって……ごめんなさい。死んじゃって……」
「ううん、いいのよ。そんな事……」
「だってお母さんたちより先に死んじゃったし……」
「それでも貴方にもう一度会えたからいいの。今日は大切なクリスマスね」
「うん」
そんな様子を物陰で天の神が見ていた。
「全く神樹も力を使って叶えてあげればいいのに……まぁ仕方ないわね。銀、今日は楽しみなさい。一夜限りの奇跡を……」
こうしてクリスマスの奇跡は終わりを告げるのであった。
という訳で後編でした。日にち的に少し早かったですが、クリスマス会でした。